*A部門入選作発表*


当季雑詠=全76投句(入選句)

【特選】

一席
●道草に付き合ってゐる春日傘=ぼくる


◎砂〇メ、ラ、香、久△白、ぶ、入、茶、修=16点
(ラ:幼い子に付き合うお母さんですね。優しい心が感じられます。 香:日傘を主語に持ってきたとこが面白いです。ぶ:何とも微笑ましい…子どもの道草に付き合う美しく若い母がみえる 白:おしゃべりにも友の誼。 入:春ののんびりした、平和で安全な奇跡のようなひと日ですね。 茶:母子連れでしょうか。最近はせかせかしている人の多い中、ほのぼのとした光景に拍手です。 修:春日傘の人って特に用はなさそう。)


二席
●清明や樹々は雨音蓄へて=秀子


◎十、葱○裕、紅、や、メ△ス=15点
(葱:「雨」ではなく「雨音」が秀逸。 十:雨音を「蓄える」という措辞が眼目。「清明」という季語が雨上がりの明るさを見事に捉えている。 紅:「雨音蓄へて」が素敵です。季語とも合っています。 裕:「雨音蓄へて」が春らしくて生命を感じます。)


二席
●しゃぼん玉言ひ残すことなかりけり=清一


◎ス、や、五○水△メ、ま、雪、久=15点
(五:この瞬間を巧く言い当てている。水:潔さがいいです。ま:何も言い残さない、潔さが素敵です。)


【入選】

●可愛いと言はれ可愛くなる子猫=ラスカル
◎水〇秀、ぼ、砂、子△葱=12点
(水:見方が面白い。 ぼ:猫は何でもよく分かっている、そんな感じが面白い。 葱:女の子もそうだと思います。)

●清明や白磁に白磁あたる音=秀子
◎ま、ぶ○葱、茶△資、雪=12点
(ま:視覚的にも聴覚的にも季語が効いて透き通る感じがとても良く出ています。 ぶ:難しい季語を活かして、白磁がぶつかる音を響かせている。 茶:「白磁に白磁」の12 シンプルさが清明にしっくりきました。 葱:「白磁」の繰り返しが心地良い。資:何かすがすがしい音が聞こえてくる。)

●鳶の輪の昇りつめたり春干潟=砂太
◎入、ぼ○前、葱、修=12点
(ぼ:のどかで大きな景が広がります。 葱:鳶が輪を描きながら高く高く舞い上がっていく様子が見事に表現されています。春干潟で景色が眼前に広がります。 入:日ごろ鳶ってみさごやチュウヒに比べるとなーんだって感じがあるが、素晴らしいお句です! 修:読む私が高い処に上がった感じ。)

●農協の防犯カメラつばめ来る=資料官
◎久◯清○五△香、水、葱、や=11点
(清:日本も今や田舎まで監視社会の波が押し寄せ燕もその対象だ。 五:実景の凄さを感じる 。香:毎年 楽しみになりますね。ショッピング街でも、ツバメに優しいところあります。 水:防犯カメラに映っちゃうんですね。 葱:この場合、「つばめ」は犯人として逮捕されるのでしょうか? 久:新旧のものにもお構い無しにやって来るつばめが面白いです。)

●まなざしに水底ありき白鴨忌 =葱男
○雪、入、秀△十、砂、五、淳=10点
(葱:白鴨忌:5月1日は「白髪鴨さん=一木正治君」の命日。 秀:「丘ふみ」では、季語としましょうね。心に沁みました。 十:「水底ありき」が亡くなられた時の状況を髣髴させ哀感を誘います。 五:「逝きし友陸より北の海に南風」)

●ゆで玉子漢一人の目借時=やんま
◎清○裕、水、砂△ぶ=10点
(清:妻の留守にめんどくさい昼飯をゆで玉子で終わらせる詠者、目借時の季語も効いている。 裕:危なっかしいですが、面白いです。  水:けだるさですね。 ぶ:面白い!こちらまでこっくりしてしまう。)

●ガリバーの足を見上ぐる犬ふぐり=清一
◎雪、香○五△十=9点
(香:ユーモアがあって、何という発想か。犬ふぐりさんもビックリですね。 五:スケールが大きい! 十:擬人法として「犬ふぐり」から人間をみた景ですが、屈折感のある句。)

●観音の背ナなまめける春暮かな=ぼくる
◎白〇紅、雪△ラ=8点
( 白: 観音様は女性、なり。 紅:いかにも「春暮」です。ラ:観音の句は割りと多く見かけますが、「なまめける」は初見です。)

●両膝の机で描く春の海=十志夫
○ま、入、子△ラ、前=8点
(ま:可愛い膝小僧と、草原が見えてきます。 入:いつもこういう雰囲気でスケッチできたらなあ。 ラ:「画板」ではなく「机」と表現したところがユニークです。)

●風光る校旗支ふる腕(かいな)かな=葱男
◎裕、ラ△香=7点
(裕:高校野球か総体か、爽やかです。 ラ:校旗を支える、逞しい腕が見えてきます。元気を貰える句。 香:これは白髪鴨さんのかつての勇姿ですね。)

●立ち向かふ人間力よ春のなゐ=五六二三斎
○ぶ、ラ、香△紅=7点
(香:人間力が試されるというけど、養っておかなければ。 ぶ:今回の地震の句が多かったが、前向きな人間が浮かび上がっている。  ラ:「人間力」に、言葉としての強さを感じました。一日も早く余震が収まりますように。 紅:人間力を信じたいです。余震が早く収まりますように・・。)

●回覧板もつこう薔薇の香をまとひ=まさこ
◎修△や、白、雪=6点
(白:作者の人生を感じさせペーソスあり。 修:平凡な生活にある歓び! )

●野遊びや八十歳を姫として=入鈴
○ま△裕、葱、砂、久=6点
(ま:とても可愛い、姫が良いですね! 葱:老いた母を囲む周りのみんなの優しい気持ちが伝わります。 裕:素敵な老後かも。 久:老人ホームの風景でしょうか。)

●青色の絵の具の滲む春愁ひ=雪絵
○ス、修△資=5点
(修:愁いはやはり青色?)

●筋トレに精出す憲法記念の日=裕
〇ラ△ま、秀、十=5点
(ラ:ミスマッチが面白いです。 ま:まだまだ若いものの好きにはさせない!という心意気に元気を頂きました。 秀:憲法って、とてもハードな問題。筋トレしなくっちゃ。 十:憲法」という硬い言葉と「筋肉」という柔らかい肉体の組み合わせの面白さ。)

●白つつじ老眼鏡は外しけり=茶輪子
○資△淳、入、久=5点
(資:白つつじの眩しさにはっとした時のしぐさ。 入:白つつじのふわっとした光だけで充分ですものね。 久:白いつつじに思いがあるのか、まだ花びら一枚一枚が見えるよと言うことでしょうか。)

●千年の大杉のこえ木の芽雨=ぶせふ
◎喋○や=5点

●猫の子に一丁前の髭ありぬ=ラスカル
◎紅△秀△白=5点
(紅:中七が微笑ましくて、とても好きです。 秀:「一丁前」で頂き。白: 可愛い吾輩である。)

●居酒屋の昼定食や花埃=水音
◎秀△茶=4点
(秀:居酒屋の昼定食って、いかにも実のある定食って感じ。その実と「花」の取り合わせに参りました。 茶:B級な感じにキュンとしました。)

●熊ん蜂枯山水の空に浮く=修一
◯ぼ△葱、子=4点
(ぼ:一瞬即永遠、鮮やかです。 葱:取り合わせの妙、ですね。)

●囀りやその七色に佇ち止まる=砂太
△ま〇喋△メ=4点
(ま:七色と感じるほどの小鳥の声、私も経験あります。)

●千年の時空を紡ぐ滝桜=前鰤
○子△裕△メ=4点
(裕:日本人=桜がずっと続いているんですね。)

●花筏あらたな軸に押印す=茶輪子
○ぶ、ス=4点
(ぶ:書だろうか・絵だろか、快心作に印を押し完成する。折から水面に花筏。気分のいい句だ。)

●ぼうたんの花剪る音の潔し=十志夫
○白△資、葱=4点
(白: えいやっと思い切って。 葱:潔いのは花人の決断力です)

●社守る梛の古木やかたつむり=修一
〇喋、茶=4点
(茶:古木とかたつむりの共存の姿が社の守りにつながるのだと思いました。)



●焼きそばのにほふ境内藤の花=資料官
○淳△五、ぼ=4点
(ぼ:俗と雅の取り合わせ、面白いです。 五:大きな神社は春の大祭で出店の焼きそばが匂う。)

●朧夜の風の音とも余震とも=紅椿
△清、水、淳=3点
(清:被災地の不安が朧夜と相俟って臨場感溢れる句。水:熊本の方々は怖いでしょうね。)

●木曾川の深き緑に飛花落花=ぶせふ
△や、五、子=3点
(五:木曾川には、飛花落花がなぜか似合う。)

●ゴム風船吹けば胃袋移りけり=十志夫
○白△裕=3点
(白: 風船と胃袋の相似性。 裕:なんか分からないけど面白いです)

●スイトピー髪のりぼんの縦結び=まさこ
△水、茶、ス=3点
(水:ちっちゃな女の子の可愛らしさ。 茶:縦とスイートピーのマッチングがよいと思います。もちろん色は赤!)

●すれ違ふ空似の人やヒヤシンス=雪絵
◎茶=3点
(茶:あっ!まさか!と冷や冷やする心持ちと知らんぷりのヒヤシンスとの取り合わせが絶妙です。)

●春疾風非常持ち出し検索中=紅椿
◯清△香=3点
(清:今回の熊本地震のことで俄に非常時のコーナーを急いで検索。 香:思っててもなかなか準備ができません。)

●飛花落花快速電車の最後尾=資料官
△清、十、ぼ=3点
(清:風で桜が散る様子が丁度電車の最後尾に桜が放物線を描きながら散るように。 十:景鮮明。「最後尾」が効いています。ぼ:スピード感と美感と。 入:最後尾も捨てたもんじゃないです。

●頬撫でる薫風来たれ焼き魚=久郎兎
○前△子=3点

●瞬きの花びら風のハナミズキ=白馬
◎資=3点
(資:ハナミズキの花を瞬きと言い切ったところに引かれた。ブラタモリのエンディング。)

●逝く春や水切り石の届かざる=やんま
◎メ=3点

●幼児語の母子の春の糸電話=砂太
○淳△前=3点

●来客の帽子に潜り込む子猫=ラスカル
〇十△紅=3点
(紅:目に浮かびます。十:ありそうな日常の景で、気取らない一句一章が心地よい。)

●鶯の谷渡りして余震なほ=紅椿
△秀、久=2点<BR> (秀:地震があろうと、四季は巡るんですね。 久:街も大変ですが山間地の地震も大変なものです。)

●少女の写る鉄道写真夏隣り=雪絵
△喋、葱=2点
(葱:喋九厘さんの写真展に行かれたのでしょう。好きな句です。)

●花の雪パクリ食いつく少女居て=葱男
○淳=2点

●行き先を見失なひけり蜷の道=やんま
△ぼ、入=2点  (ぼ:作者の人生を感じさせペーソスあり。 入:福岡の和白海岸で同じ景を。亡くなった同級生ゆかりの浜です。)

●連翹や身寄りの多き本籍地=清一
○資=2点
(資:にぎやかに咲いている連翹から戸籍を連想したところが面白い。)

●いつ夏か南阿蘇にも汽車走る=喋九厘
△前=1点<BR> (前:昔、資料官さんが「高森線ひねもす乗ったり歩いたり」と言っていたのを思い出しました。

●雲のごと百年藤が湧き起こる=メゴチ
△喋=1点

●経済と政治に疎し夜の桜=秀子 △修=1点
(修:なんと大胆な。)

●シャボン玉父と湯あみをせし記憶=ぶせふ △=1点 (修:せっけんの香でつながっている。)

●鉄塊の名は機関車や飛花落下=水音
△砂=1点

●牡丹や玻璃の中なる写経場=修一
△ぶ=1点
(ぶ:名刹の牡丹を庭に眺めながら、ガラス越しの写経を除いている。静かで豪華な句だ。)

●益荒男の如き葉桜仁王立ち=五六二三斎
△喋=1点

●道の駅ブレーキを踏む穀雨かな=白馬
△清=1点
(清:とある道の駅に近づいたとき今日が穀雨であることを思い出しブレーキを踏む。)

●行く春や第一便は被災地へ=五六二三斎
△紅=1点
(紅:日本中の人の祈りの詰まった「第一便」ですね。)

●ゆく春や広場の大きユニコーン=まさこ<BR> △ス=1点

●ロブ上げしネットの上に風光る=メゴチ
△葱=1点
(葱:とても、気持ち良い句です。)


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