*A部門入選作発表*


当季雑詠=全73投句(入選61句)

【特選】

一席
●遠投の先に夕陽とタンポポと=十志夫


◎る、ぼ、砂、葱○ラ、ま、紅△淳、ス=20点
(る:青春の、爽やかな汗や憧れのようなものが感じられます。 ぼ:いいね!この詩情。 葱: こどもの頃の記憶でしょうか? 詩情を感じます。 ラ:能村登四郎の句、「春ひとり槍投げて槍に歩み寄る」を思い出しました。 紅:大きな景が浮かびます。色あいもいいですね。)


ニ席
●ジプシーのまどゐは尽きず月朧=ぼくる


◎五、白、子○葱△秋=12点
(五:西洋の香りがする句も特選にあっていい。 白:ジプシーと月朧そして中七。佳いです。 葱:昔、サクロモンテの丘からアルハンブラを眺めた日の夕焼けを思い出しました。)


ニ席
●蒲公英の絮けとばしてファールフライ=資料官


◎修、雪○ラ、ス△紅、秋=12点
(修:とんでもない処にボールが上がっている感じがリアルに伝わってきます。 雪:無心にボールを追っている様子が目に見えます。 ラ:下五の展開に、意外性があって面白いです。 紅:動きのある、若々しいお句です。)


【入選】

●聖堂を動かぬ女春深し=ぼくる
◎十○五、弧△砂、葱、英=10点
(十:動かない理由を詮索する必要はない。そこに作者は「春愁」を見たのである。 五:信じずにいられない。すがるしかない。思いの丈を!薄幸の女。深い春。 弧:動植物にとってはいよいよ命の濃くなる晩春ですが、キリスト教では受難節という重要な時期にあたります。静まり返った聖堂でる女は何者と対話し ているのでしょう。 葱: 「動かぬ」がなにかを言い尽くしています。 英:そっとして…)

●敵はぬと思へど薔薇をじつと見る=十志夫
◎風○英△メ、喋、弧、資=9点
(風:薔薇に対してライバル心を持って見る人がいるかどうかは現実には疑問ですが文芸上のリアリティはあってそのリアリティが詩的なファンタジーを生み出す俳句ならではと思います。あるいは「敵」は薔薇そのものではなく恋敵なのか<独り言:叶わぬだとなんか絶対叶わぬ恋だけどプレゼントに花屋で買うかどうしようか考えてる男性みたいで面白いかなとも思いました。> 英:花屋さんの前で想い迷っているのでしょうか〜。 資:薔薇にしても牡丹にしてもそうだけど,季節の花題材の句作の難しさをうまく詠んでいる。) 

●カーナビの道失へる春の闇=雪絵
◎久○十、水△淳=8点
(久:カーナビの情報が古かったのか、それを闇につなげてる、いいですね。 十:迷うはずのない機械<メカ>が迷宮に入り込むという面白さ。 水:春の闇の妖しさですね。怖い感じもする。)

●くちぶえの高音かすれ鳥雲に=葱男
◎喋○雪△十、白、ス=8点
(十:口笛のかすれが共鳴して、鳥とともに雲の彼方に吸いこまれ消えてゆく。 白:くちぶえも鳥も消えていく。)

●どの家にも何かが干され蝶の昼=紅椿
○十、砂、秋△る、英=8点
(十:ぶっきらぼうな言い方で表現された当たり前の景こそが春昼の本意である。 秋:春は意外に雨が多い。洗濯日和。考えることは皆同じらしい。 る:好いお天気なのですね。「何か」がやや気になりました。 英:よい天気!)

●福耳の地蔵の傾ぐ落椿=雪絵
○喋、水△メ、英、久、風=8点
(水:大きな椿の木の下にあるお地蔵さんなのでしょうね。福耳がいいですね。 英:いいですねぇ。 久:上から下へ幸せが行き渡りますように。 風:確かに地蔵堂には椿は良く植えてあると思います。私の読む力不足で「傾ぐ」の特別な意味合いを読み切れず△選です。)

●山姥の来るぞと谷の朧月=砂太
○ぼ、子△水、葱、英、ス=8点
(ぼ:月が誘う民話の世界。 水:確かに来そうです。 葱: 昔ながらの童話みたい。 英:遠くなりました。)

●カツ丼にグリーンピース荷風の忌=風牙
◎ス○る△ラ、葱=7点
(る:忌日の句としては、ちょうど良い塩梅のつき具合かと。 ラ:「グリーンピース」に、焦点を絞ったところがよいと思います。 葱: 確かに昔、カツ丼が大のご馳走だった時代にはグリーンピースが飾りのように真ん中に乗せられていたような〜。)

●さざなみのごとくに頭痛ヒヤシンス=ラスカル
○雪、風△五、ま、紅=7点
(雪:波打つような痛み、辛いです。ヒヤシンスが効いてます。 風:上手いなと思います。勿論現実のヒヤシンスと病体は響きあってますが字面としても面白いですよね「ちょっと頭をヒヤシンス」みたいな駄洒落感はけっこうツボです。 五:これも洒脱な句!いいね! ま:ヒヤシンスがぴったりですね。 紅:「さざなみのごとくに」がリアルです。)

●春泥を踏み水に会ふ鳥に会ふ=るな
◎ま、秋△葱=7点
(ま:豊かな水、心に触れるような鳥の声が想像されとても好きな句です。 秋:北国の遅い春の訪れは人にとっても生き物にとっても嬉しく眩しいものなのでしょう。 葱:リフレインのリズムが好きです。)

●しやぼん玉言ひたき言をのみ込んで=まさこ
◎メ○秋△砂、風=7点
(秋:言葉をのみ込む切なさ?悔しさ?がしゃぼん玉のはかなさと重なって妙。 風:言い止しの俳句は苦手であまり採らないのですがこれはそんなに気になりませんね。)

●頭上より記憶の中へ降る桜=十志夫 
○修、ま、資△英=7点
(修:現実と内面世界の交錯する意外性! ま:とても良くわかります、いろいろ蘇ってきますね。 英:すてき!)

●アユタヤの菩薩のねむり雉の声=るな
○子△弧、ま、葱、久=6点
(葱:昔々、アユタヤの町を通り過ぎたことがありました。そのあとに訪ねたチェンマイはたくさんの記憶が蘇るのですが、アユタヤは薄らいでいます。スコタイの遺跡も訪ねたのでどちらがどちらだかよく分かりません。ただ、日本人に深い縁のある町だということは印象に残っています。「ねむりの町」、そんな感じもします。 久:眠りを醒ます雉、静けさを感じます。)

●桜蕊お地蔵様のかんざしに=秋波
○喋△五、紅、葱、英=6点
(五:ユーモラスな句で微笑ましい。 紅:お地蔵様にかんざし?「♪よさこ〜い、よさこい」みたいですね。 葱:「桜蘂付けてそのまま払はざる 葱」 英:なるほど、かんざし!)

●受けとめし一片を呑む花の宴=水音
◎英○資=5点
(英:綺麗ですねぇ。 資:ただ飲むだけではない花見の姿勢に共感。)  

●常夜灯白く立ちたる暮の春=修一
○五△る、子、風=5点
(五:白く立つのは、温度が上がってきている証拠?上手い! る:雰囲気は良いのですが、もうひとつ何か。 風:一読即景は好感。「立ちたり」と中七を終止形で切って発句体にしてもらったほうが好みなので△選。)

●臓器提供意志は△木の芽雨=風牙
◎水△る、葱=5点
(水:木の芽時のしっとりとした雨が何やら心もとない感じで、△に葛藤が感じられます。 る:季語も良いし内容も同感なのですが、中七の表現はこれで良いのかなと。 葱:記入欄に△はないのでしょう、マルバツだけでは決められないことってありますよね。)

●それぞれのパート練習花は葉に=紅椿
◎ラ△ぼ、英=5点
(ラ:合唱の練習でしょう。「花は葉に」という季語がよく利いています。ぼ:本番間近、時の経過を上手く表現。 英:コーラスでしょうか。)

●耕すや老いて仲良き兄弟=ぼくる
○修△ま、葱、英=5点
(修:若き日の確執を想像させられます。 ま:温かい幸せな気持ちになります。 葱: 耕すや、の「や」が少し気になりましたが、姉妹ではなく、兄弟であるところがいいですね。 英:元気をもらいますね。)

●躑躅燃ゆる家の角あたり危険=スライトリ・マッド
◎弧○久=5点
(弧:ユーモアの句かと思いますが、日常に潜む異界が鮮烈に伝わってきます。 久:破調なんでしょうね。句の中身よくわかります。)

●夜桜や人待ち顔の地蔵あり=秋波
△メ、淳、英、資、風=5点
(英:静かな夜ですね。 風:地蔵の「人待ち顔」ってどんな顔?っと緩い描写はいつもは採らないのですが上五「夜桜」ならではの雰囲気があると思います。)

●この蝶の夢を閉じ込めゐる私=五六二三斎
○弧、紅△葱=5点
(弧:閉じ込められているのは蝶ではなく、私が蝶によって夢という籠に閉じ込められているのかもしれません。 紅:蝶の夢はどんなものなのでしょうね? とても惹かれました。 葱:「時計仕掛けのオレンジ」が浮かびました。)

●シャボン玉ひとつが壊れ夢遠し=砂太
○白△喋、英=4点
(白:15歳の感傷。 英:もっとたくさん作りましょう!)

●通学路辿れば遠き日の暮春=雪絵
○淳△五、英=4点
(淳:通学路を通ると想い出がよぎります。 五:思い出に浸る。 英:わかります!)

●鳥雲にアリスは深き穴へ落ち=ラスカル
○ぼ△白、英=4点
(ぼ:アリスは自分か、心は異次元へ。 白:そして何処に。 英:不思議の国のアリスですね。)

●七段の状差し薬菜種梅雨=久郎兎
◎資○メ=4点
(資:年寄りの服薬管理には大変苦労しますがやがて我が身もそういう姿が忍び寄ってくる。菜種梅雨がぴったり。)

●紋白蝶赤信号に迷い込む=香久夜
○久△水、雪=4点
(水:人も車もすべてが停止した一瞬に、紋白蝶だけがふわりふわりと、、. 久:危ないっと思う気持ちを誘いますね。)

●リタイアの空にぽっかり朧月=メゴチ
△十、ラ、英=4点 
(十:共感するが、定年後の不安(朧月)では当たり前過ぎる。ここは「空にくつきり春満月」くらい翔んだほうがいいかも。 ラ:「ぽっかり」という表現はやや安易ですが、心情的に深く共感しました。 英:癒されますね。)

●老人の憩の家の鯉のぼり=紅椿
◎淳△雪=4点
(淳:「老人」と「鯉のぼり」が対照的で良いですね。)

●車窓から近江あたりで桜狩=資料官
◎紅△修=4点
(紅:飄々としたところが魅力です。中七が効いていますね。 修:「あたりで」という気儘な感じがいいです。)

●春月や嘘をつきたき肌年齢=水音
○風△英、久=4点
(風:春の月が必ずしも朧月ではありませんが、やはり湿った感じの月に下12音を感じて潤いの肌よ再びでしょうか。中七「嘘をつきたき」がもう一つ伝わってきませんでした。 英:夜桜なら大丈夫! 久:月面より綺麗でありたい。)

●乳母車落花盛りの轍行く=久郎兎
○ス△英=3点
(英:いいですねぇ。)

●遠足の列を追ひ抜き振り返る=メゴチ
○淳△喋=3点
(淳:振り返ると、子供たちが春の中で微笑んでいます。)

●黒髪の微か湿りて春日傘=弧七
○メ△白=3点
(白:そんな気のする美人が通る。)

●酒蔵に集ひし女人薄暑かな=修一
○葱△資=3点
(葱:薄暑の酒蔵に女人とは!「女=をんな」では俗になるような気がします、「女人」だからギリで俳句。)

●受難日に我が殺したる虫の跡=弧七
○白△水=3点
(白:懺悔の感慨。 水:Good Fridayとの面白い取り合わせだと思いました。)

●鳥の来て藤の雫を浴びてをり=スライトリ・マッド
△ラ、修、英=3点
(ラ:中七下五のフレーズが魅力的です。「の来て」を削りたいところ。 修:俳人も鳥になって幸せ。 英:綺麗ですね。)

●葱坊主まんまるに夢咲かせけり=葱男
○英△子=3点
(英:笑顔になります。)

●踏み入りて喉の奥まで三つ葉の香=まさこ
△る、五、葱=3点
(る:よくわかりますが、上五の表現がやや気になりました。 五:三つ葉の香りが強烈! 葱:足で踏んだときに立つ三つ葉の香りが五感に響きます。)

●八重桜ひとの隣にひとはゐる=弧七
○る△英=3点
(る:こういうことは、ときどき誰かに言ってもらって思い出したいものだと思います。 英:まったく!)

●八重山吹やがて降り出しさうな空=資料官
△修、砂、風=3点
(修:ーヤ、ヤ、ヤ、という音。舌のもつれそうな「八重山吹」が厚ぼったい感じもあって、「降り出しさう」にピッタリ。 風:万葉集以来山吹は水辺を詠むのがお約束事で雨が降れば直ぐ増水する水路のような川辺の山吹を思い浮かべました。美しい景ですよね。ただ伝統的な本意そのものというか頼り過ぎな感じで○選以上では採れませんでした。好きな句ですけど。)

●風車七百まはる透明度=水音
○砂=2点

●ダム放水大音量で春流る=スライトリ・マッド
△葱、英=2点
(葱:スペクタクルがあります。 英:見てみたいです。)

●萩若葉白きうなじと行き交ひぬ=白馬
△弧、風=2点
(風:「行き交う」に「すれ違う」の意味はないと思うのですが作例のあったのと出先で調べられず保留的な感じもあるのですが良い雰囲気は雰囲気なので△。行き交うの本来の意味で中七「白きうなじの」だと採れませんが。)

●フクオカの五百万余の夏隣=喋九厘
△十、五=2点
(十:福岡県500万人それぞれにくる夏。それを代表する大仰な表現がいい。 五:福岡県万歳!博多どんたく万歳!)

●雨に濡れ飛ぶ巣作りのツバメかな=子白
△英=1点
(英:つばめは毎年同じ場所に巣作りするので季節を感じますよね。)

●歓迎の花片舞へるレストラン=五六二三斎
△英=1点
(英:歓迎会?花見?単におもてなし?でもいいですねぇ。)

●クールビズ待ちどおしくて指数え=淳一
△英=1点
(英:本当に、いきなり暑くなりました。)

●クロワッサンは勾玉の形桜草=ラスカル
△雪=1点

●候補者はハコ乗り絶叫春暮れて=喋九厘
△英=1点
(英:そのとおり!)

●桜散りピンクの雪を敷き詰める=淳一 △英=1点
(英:綺麗ですね。)   

●サムシェパードの横顔春深みけり=まさこ
△葱=1点
(葱:サムシェパードが出ただけでもう、十分です。ライトスタッフです、天国の日々です。)

●千年の鯉を天へと紅枝垂=風牙
△英=1点
(英:力強い!)

●初夏の光のなかへ魚跳ね=修一
△ぼ=1点
(ぼ:自然、生命、躍動。)

●春風や無心なるかな名無し草=子白
△秋=1点   

●一片(ひとひら)の桜頭(つむり)に酔ふて来る=砂太
△英=1点
(英:綺麗!)

●藤の花蜂人集め花見酒=喋九厘
△英=1点
(英:わかります。)

●路線バス二十分の花遍路=秋波
△英=1点
(英:田舎道でしょうか。)


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