*A部門入選作発表*


当季雑詠=全65投句(入選50句)

【特選】

一席
●和すことに小さき怖れ檸檬吸ふ=葱男


◎砂、ワ、ま○ス、雪、久△十、秋、香、紅=19点
(ま:とてもよくわかります。繊細な気持ちに檸檬吸ふがぴったりですね。 雪:この感性、好きです。檸檬「吸ふ」の表現が新鮮に感じました。 久:時世の憂慮でしょうか。解雇自由化とか発明は会社のものとか、つまらない国だけにはならないように祈ります。檸檬で一息。 十:箴言の句。和して同ぜず。 紅:「和すこと」もひとつ間違えれば、危うい事に・・。季語が効いています。)


二席
●白露はきのふの星の欠片とも=雪絵


◎ス、久○五、紅、ま△十、水、ぼ、白=16点
(久:地上の星のようですね。「きのふ」が句の厚みを感じさせます。「とも」で断定を避けているのもいいです。 五:白露が季語。星の流した涙が白露?いいですね。 紅:ロマンですね〜!ため息が出ました。 ま:星の欠片とは素敵な発想ですね。 十:感覚的にそう思う作者の詩心に同意。 水:きれいです。ロマンチックです。 ぼ:たまにはいいね、こういう乙女ちっくな句も。 白:ロマンチックですね。)


二席
●縦に夏消えて横より来る秋=十志夫


◎メ、ぼ、ラ○白△二、葱、香、紅、喋=16点
(メ:縦と横の使い方がすばらしい。 ぼ:思わず唸ってしまった、みごとな措辞。 ラ:感覚的ですが、説得力のある句だと思います。白:何となく分かります。 葱:上手い! 香:縦、横の表現が斬新ですね。 紅:発想に感服致しました。柔軟な頭をお持ちで羨ましいです。)


【入選】

●地球てふ星の孤独や天の川=葱男
◎雪、資○秋、香 、紅△砂、淳、白=15点
(雪:確かに水の惑星と呼ばれるものは、地球しかないようですね。でもどこかに、とロマンもかきたてられます。 資:天の川の賑わいと孤独の文字を対比させたところが面白い。 紅:スケールの大きさにびっくり。いろいろ深読みできそうです。白:天の川から見た地球。)

●弾痕の残りし土蔵赤とんぼ=雪絵
◎十○砂、五、ラ△二、遼、水、久=13点
(十:太平洋戦争は国内の地上戦がなかったから、弾痕はない。土蔵の弾痕はいつのものなのか。西南の役? 戊辰戦争? 考えるだけでもミステリアス。 五:終戦記念日の頃の作でしょう!機銃掃射されて出来た弾痕。赤とんぼに平和が暗示されている。 ラ:平和であることの有り難さを、しみじみと感じました。 水:過去に想いを馳せる時の薄赤い光景が浮かびます。 久:敗戦と赤トンボが思い浮かびました。物言わぬ土蔵を入れたのがいいですね。)

●大鍋に灰汁の浮き立ち野分来る=ラスカル
◎二○葱、ス、水、修△十=12点
(二:助詞に問題あり。 葱:ふたつのイメージの連立が素晴らしい。 水:野分が来る前の不穏な気配が灰汁が浮き立つことでよく表れている。 修:灰汁の斡旋、ただならぬ予感。 十:灰汁が浮き上がって来るのは野分のせいではないけれど、何となく納得。)

●潮の香の窓辺に展く月の道=まさこ
◎修○メ△秋、ス、遼 =8点
(修:穏やかな宵の海。屋久島だろうか?嗅覚と視覚、心地よいリズム。 メ:壁に飾っておきたい。)

●邯鄲のこゑは隠せぬ鯨幕=十志夫
◎香○遼、喋=7点
(香:鯨幕が出てくるとは、意外でした。)

●嵌め板を外し一礼海の家=久郎兎
◎五、淳△=7点
(五:海の家のオープン。嵌め板をしていたのですね。それが、外れて一礼。商売繁盛に一礼?いや、海の事故がありませんようにと祈っているのでは?主人の人柄が浮き出る傑作です。)

●星空の広がる島や竹婦人=ぼくる
◎紅○修△葱、ラ=7点
(紅:一番心癒されるお句でした。季語の斡旋が抜群ですね。修:何という涼感!内にも外にも広い空間。 葱:南洋の小島を思い浮かべました。 ラ:下五の展開に、意外性があります。)

●朝顔や角のパン屋の限定品=紅椿
○水、資△雪、ま=6点
(水:限定品を買うために朝早く出かけたのでしょう、焼きたてのパンの香りと新鮮な朝顔がとてもさわやかです。 資:早起きどおしを並べてすがすがしい。 雪:限定ものに弱くって・・。どんなパンでしたか?朝の早いパン屋さんには朝顔の季語がよく似合います。 ま:パンが美味しくなる季節、私も狙っています!)

●秋めく日煮物の碗を買ひ足せり=秋波
○水、淳△二、久=6点
(水:家族が増えたのか、これからの季節出番の多さを考えて買っているのか。秋めく日が効いている。 淳:食欲の秋、気持ちが分かります。 二:類想なし。 久:)「買い足す」が面白いのです。「秋めく」を何かに変えられないかとも思います。「秋めく」でもいいのかも知れません。)

●錆色の庇の反りや牽牛花=紅椿
○香、ラ△資、久=6点
(香:こちらも◎にしたい句でした。錆びた庇と瑞々しく咲いたばかりの牽牛花の取り合わせがいいですね。 ラ:色の対比が鮮明で、絵画的な美しさが感じられます。 資:錆とあさがおの花の深みの組み合わせが良い。 久:「反り」が効いていますね。庇が朝顔と一体になってるようで、誰も住んでないのかも知れませんね。)

●〆切に腕まくらされ夢檸檬=スビキワアッ
○久、喋△葱、メ=6点
(久:締め切りに追われる身なら、これ分かります。やはり酸っぱいかな。 葱:「腕まくらして」ならとっていません、「され」がいい。 メ:〆切過ぎてるんだろうな。)

●大文字今年は西瓜を割ったりしない=スビキワアッ
◎二○葱△秋=6点
(葱:「西瓜割り」という乱暴な行為はもう今年からやめにする、ということ。少年、あるいは少女から大人への途上です。)

●結ぶ手の君より響く花火かな=五六二三斎
◎葱△メ、雪、久=6点
(葱:掌から伝わってくる振動は彼女の心臓の鼓動ともオーバーラップします。 メ:どきどきする。 雪:まさに青春の一頁!繊細な心に感動です。 久:感激が手から伝わる感じ、いいですね。)

●よく切れるペティナイフや涼新た=まさこ
○十、ワ△雪、ラ=6点
(十:取り合わせの句。ナイフの切れ味と新涼がよく合っている。 雪:ナイフの切れ味にひやり!涼新たが効いてます。 ラ:どんな料理を作るのでしょうか。わくわく。)

●黒雲のそこに来てゐる門火かな=紅椿
○遼△二、修、喋=5点
(二:類想なし。 修:そう、偶然ではないと思う。)

●ほのかなる和紙の行燈虫の声=水音
○秋、資△紅=5点
(資:ほのかなるが良く効いている。虫の声とともに風情がある句になっている。 紅:静かな夜を感じる事ができました。)

●逝く夏やもう幼児ではない背丈=ぼくる
◎秋△砂、雪=5点
(雪:ひと夏で、きっと身も心も大きく成長されたんでしょうね。)

●草を刈る青き香りのど真ん中=砂太
○ま△葱、喋=4点
(ま:草の香りが爽やかに漂ってきます、私も昨日そこにいました。。 葱:気持ちよい。)

●ぞめきてふ大地の勃起にはか連=葱男
◎喋△二=4点

●台風の逸れて安堵の茄子の艶=ぼくる
○砂△ワ、淳=4点


●蓑虫の衣にストローの欠片かな=ラスカル
○雪△久、ぼ=4点
(雪:蓑虫はどんなものでも衣にするようですね。でもストローの欠片とはね! 久:細い枝に混じるストローは太いですね。 ぼ:蓑虫にも現代が反映。)

●山の子らプールのしぶき高くして=香久夜
△ワ、雪、ぼ、ラ=4点
(雪:山の子にとってはプールは欠かせないもの。喜びが伝わってきます。 ぼ:山の子らのはしゃぎぶり目に浮かぶ。 ラ:「山の子」であればこそ!)

●頂を知れば知るほど秋の山=五六二三斎
○ぼ△メ=3点
(ぼ:真っ青な空、澄んだ空気がいよよ。 メ:知らなきことの多かりき。)

●鬼のよな瓜提灯に迎えらる=スライトリ・マッド
△葱、五、ま=3点 (葱:こどものころの記憶か、それとも、、、。 五:大きな提灯灯がある家。おそらく初盆か?逆に鬼の魔よけかな? ま:瓜や西瓜をくり抜いたものでしょうか。見てみたいです。)

●コスモスのもう咲く頃か母の墓=ラスカル
○白△ぼ=3点
(白:中七で感慨を。 ぼ:亡き母上の人柄が偲ばれます。)

●月の名を丘に並べし夜みちかな=弧七
○ワ△メ=3点
(メ:丘に並べしがいいです。)

●点滴の腕の傷跡今朝の秋=資料官
○十△五=3点
(十:暑かった夏が終わり、夏バテで入院した時の点滴痕。新涼にホッとしている様子が窺える。 五:みんな年を取った。健康に生きたいものだ、考えさせられる句。

●夏の雲窓塞がれし煉瓦棟=修治
△遼、資、久=3点
(資:線路の横の使われないレンガの歴史的建造物を想像。何かなつかしい。 久:「塞がれし」が息苦さを感じさせますが、何か別の意味があるのでしょうか。)

●野分過ぐ水の鏡に神の顔=弧七
△五、ま、修=3点
(五:洪水寸前になった川が、台風一過、水が引き、川面が光る。そこに神の顔が現れる。救われた。今回は! ま:神の顔見えるのかもしれませんね。 修:水の鏡なら映りそう。神は何を仰りたいのか?

●法師蝉ため息残して暮るるなり=秋波
◎白=3点
(白: ため息=ホイ・ホイヨース・ホイヨース・ジー)

●冥土さえ音も消え失す花火かな=喋九厘
◎遼=3点

●秋の蟇歩けば涙落ちんとす=白馬
○ぼ=2点
(ぼ:蟇も秋はセンチになるか。)

●外周路目線を滑る赤蜻蛉=久郎兎
○メ=2点
(メ:目線を滑るがいいです。)

●夏草の轍痩せをり里の家=久郎兎
○淳=2点
(淳:里の家のイメージが伝わってきます。)

●ピアノ椅子置きて始まる芝居秋=雪絵
△ス、水=2点
(水:見たいです。)

●めはじきや一重瞼の治療法=白馬
△二、資=2点
(資:そういう薬草があることを初めて知りました。一重瞼の治療にもってきた所が面白い。)

●18きっぷ二つ残して夏果つる=資料官
△ワ、雪=2点
(雪:夏を惜しむ気持ちが、いつまでも切符を眺めている姿に表現されてます。)

58●山々の霊を集めて盂蘭盆会=五六二三斎
△ス、白=2点
(白: 大きな霊がいっぱい。)

●汗引きの速さ身に沁む窓の秋=メゴチ
△淳=1点
(淳:汗が引く速さという表現がいいですね。)

●がらつぱに抱かるる幼秋暑し=スライトリ・マッド
△久=1点
(久:水に入ってる子には誰にでも河童が守ってくれていると言うことでしょうか。)

●恐竜の標本の眼のぎろり夏=スライトリ・マッド
△修=1点
(修:ああ懐かしい怖れの感覚。)

●恍惚と犬尿りゆく秋の暮=十志夫
△砂=1点

21●サッカーの少年頑と夏終る=砂太
△葱=1点
(葱:「頑と」に「ガン」ときました。)

●ドドンドンおーっと叫ぶ祭りの夜 =淳一
△メ=1点
(メ:お祭りの感じが素直にでている。)

46●人の声がしてひとりなる星月夜=弧七
△香=1点

47●吹きくだる風を封じて風の盆=水音
△二=1点

52●曼珠沙華ごめんねなんにもみてないよ=スビキワアッ
△葱=1点
(葱:いろいろと想像させてくれる句、口語体が「生身の切なさ」を助長している。)


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