*A部門入選作発表*


当季雑詠=全73投句(入選57句)

【特選】

一席
●啓蟄や庭の四隅の軽くなる=十志夫


◎資、香○や、ま、雪、メ△葱、英=16点
(資:軽くなるに大きな発見。 香:暖かくなったのを、軽くなる と表現されたのと、実際に虫たちが、動き出すと、ほぐれてくるんですね。 ま:季語がとてもうまく表現されていて、希望に満ちています。 雪:庭が軽くなるという感覚がおもしろいです。 葱:そんなはずはないのに妙に納得。 英:蠢く土が感じられます。)


ニ席
●卒園や見えない翼どの子にも=ぼくる


◎白、砂、紅○英、ま△ス、香=15点
(白:希望の春が素直に詠まれていますね。 紅:やさしいまなざし。このまま成長してほしいですね。 英:温かい視線を感じます。 ま:みんな元気に育ってほしいですね。)


三席
●春愁はS字カーブのその先に=水音


◎雪、メ○ま、ス△葱、十、紅、喋=14点
(雪:S字カーブそのものが春愁と感じました。 ま:確かに、そういう気がします。 葱:「S字カーブ」に意味がないところがよい、それが「春愁」だから。 十:様々な出来事<苦労>の果ての愁いということでしょうか。)


【入選】

●アネモネや旅を了へたる靴洗ふ=るな 
○子、水、資、秋△葱、砂、紅、五=12点
(水:きっと楽しい旅だったのでしょう。 葱:「アネモネ」の音に惹かれました、「あっちもね、こっちもね、いろんな旅のアレコレ、みたいな。 五:アネモネが旅人を優しく迎えてくれている。)

●百色の色えんぴつや囀れり=まさこ
◎や○紅、資、ぼ△ラ、メ=11点
(紅:百色でも描ききれない春を見事に表しておられます。 資:百千鳥という言葉を見事に分解している。 ぼ:のどかで楽しいですね。 ラ:「百色」という具体性がよいと思います。)

●風船に息入れ息のまるくなる=るな
◎水、ま△葱、や、雪、ス=10点
(水:息を吹き込むと風船の内側に沿う気流が見えるようだが、円くなるとの表現がいい。 ま:まるくなるのですね!表現がお見事です。 葱:「俳句が上手くなる法」なんて本に書かれそうな俳句作法のひとつ。 雪:確かに息の形ですね、風船は。)

●沐浴の大きあくびや桃の花=紅椿
◎風○る、雪△英、ま、五=10点
(風:「桃の花」の持つ梅や桜とは違う長閑さや田舎な感じが本当に良く出ていて大好きな句です。活字では気になりませんが声に出してみると中七「大きあくびや」が少し引っかかって長閑さが薄れてしまう気もしますが好みの問題ですね好みは「大きなあくび」です。◎は◎ですし。 る:言わなくてもたぶん女の赤ん坊だろうとわかる。 雪:三十数年前、子を沐浴していた頃を思い出しました。湯の中は赤ん坊にとって、まさに羊水なんですね。 英:可愛い女のお孫さんでしょうか〜。 ま:思わず、可愛い!と声が出ました。 五:これも俳味たっぷり!)

●ミルフィーユ食めばこぼるる春の音=雪絵
◎久、ぼ○る△十=9点
(久:聞こえるかどうか分からないくらいの音。そこに春を感じたと言うのがとても新鮮です。他の季節は似合わないと思います。 ぼ:こちらまで幸せな気持ちになります。春の音がいい。 る:柔らかい調べも良くて春らしい句。ただしやや短歌的なので、切れが欲しいところ。 十:あのサクサク感は、確かに春の舌触りだし、春の音ですね。)

●あやふやな記憶のかけら初蝶来=まさこ
○砂、メ△水、久、資、五=8点
(水:確たる軌道のない初蝶の飛び方と、キオク、、が、、 久:あやふやが初蝶の心許なさにかかっていていいですね。 五:俳味あり。)

●頑なな心を解く初桜=雪絵
○英、久△ラ、ぼ、風、五=8点
(英:優しい気持ちにさせる桜ですね。 久:うわぁーって感じ。花はコミュニケーションツールですね。 ラ:具体性に欠けますが、心情としては共感出来ます。 ぼ:素直さ買いたい。 風:心象+季語の俳句はあまり好みではありませんがこれは「初桜」そのものなのが気持ち良いです。 五:上手い句。)

●乗継の人の流れや風光る=秋波
○十△や、る、英、水、メ、風=8点
(十:「乗継」としたことで景に動きが出て、いかにも春らしい句に。 る:季語が魅力的な、都会の景。 英:きらっと光る感じが素敵です。 水:春の通勤風景はほかの季節とは違った活気がるのでしょうね。 風:見たままというか感じたままで景もはっきりしています。)

●在りし日の僕らの桜咲き満てり=ぼくる
◎葱、五△英=7点
(葱:これからの残りの人生、同世代の友人たちとなるだけ多くの時間を過ごしたいと思います。若者文化に拘泥するより、時代遅れでもそのほうがストレスがない、と、北山修先生も仰っていました。 五:桜を見て、昔を思い出す感性の素晴らしさ! 英:母校に集って感慨深いですね。)

●急坂に姉さんかぶり土筆採り=久郎兎
○喋、風△や、英、淳=7点
(風:見たままの何も言ってない句で景のはっきりとした句は本当に私の好みなので○選。 英:田舎の土手でしょうか。)

●春愁やうどんに七味たんと振り=ラスカル
◎る△十、砂、風、秋=7点
(る:春愁なんて、所詮そんなもの。それほど深刻にならず食欲に走っている点に好感。 ぼ:面白い。この感じよく分かります。 十:季語との不即不離の具合が絶妙です。 風:句末の連用中止の言い止し型がなんか春愁の感じがしました。正格の「春愁やうどんにたんと振る七味」だったら採らなかった思います。)

●何本も傘の干されて花吹雪=紅椿
◎ラ○喋△メ、香=7点
(ラ:「何本もの傘」の存在感が際立っています。)

●右手右足を同時に卒園す=風牙
◎喋○葱、香=7点
(葱:ほほえましい光景ですね。)

●マドンナの還暦過ぎて桜餅=資料官
○子、白△英、雪=6点
(白:餅肌健在。充分美しい。 英:あっという間の年月でしたね。 雪:マドンナは桜餅、私はぼたもちかな?!)

●ゆらゆらと土筆の原に母が立つ=まさこ
○白、淳△子、英=6点
(白:何とも言えない雰囲気ですね。 淳:年老いたお母さんの姿が目に浮かびます。 英:陽炎でしょうか。)

●しゃぶしゃぶと緑を得たる生ワカメ=香久夜
○ラ△英、久、五=5点
(ラ:レトリックが面白いです。「銀化」調ですね。 英:一気に変色する美味しそうな情景が目に浮かびます。 久:踊る生ワカメ、自由形。いいですね。 五:食通の一句!)

●誰にでも尾を振る犬や春祭=ラスカル
○紅△葱、淳、風=5点
(紅:上五、中七は類想がありそうですが、下五の飛躍がいいです。 葱:その、「節操のなさ」が可愛い。 風:<夏祭>や秋祭と違う春祭の本意って何だろうかと考えたら確かに「誰にでも尾を振る」かもしれませんね。)

●トラックの轍に嵌る落椿=ラスカル
○水、久△秋=5点
(水:春がたくさん見える。光や風や泥や、、 久:落花して転がったのか、気になりますね。落ちに落ちた感じで不幸を表現されたのでしょうか。)

●波止の鵜の広げし羽根に光る春=砂太
○や、秋△葱=5点
(葱:「鵜」という、あまりパッとしない外見の鳥だけに、より、輝きを増すように感じる。)

●暗黒の時を隔てて桜咲く=五六二三斎
◎十△ぼ=4点
(十:硬く暗い莟。その長い試練があればこその儚さと美しさ。 ぼ:哲学的、桜の色と存在が鮮やかに。)

●春うれひ赤色に染むリトマス紙=雪絵
△葱、る、白、砂=4点
(葱:体が「酸性」ってことか、つまり、疲れているんだね。 る:中七の表現をきちんとされれば、○で頂けた句。 白:そうだ。うれひは酸性だ。)

●テロップを死んでゆく人春炬燵=十志夫
○葱△る、風=4点
(葱:コタツでテレビを見ながら、各分野で一時代を築いた著名な同時代人の「死」を知る。その喪失感、虚無感はなんとも薄っぺらい気がして自分が情けなくなることがあります。 る:何故「を」?ここが納得できれば○で頂けた句。 風:「死んでゆく」ですからまだ事件(事故)に巻き込まれて生死は定かではないが確実に死んでゆく人の名前が流れているんですよね。変にリベラルにならず断定的に「死んでゆく」と冷徹な描写に共感。)

●鬼嫁と呼ばれし頃も燕の巣=紅椿
△ま、喋、五=3点
(ま:新妻にも燕にも歴史があるのですね。 五:何か同感な点あり。)

●顔出そか土筆兄弟春北風=喋九厘
◎英=3点
(英:温かな日差しと冷たい風が眼に浮かびます。)

●かげろふや矢張り切れてる赤い糸=ぼくる
○五△葱=3点
(五:恋の予感か? 葱:「矢張り」が眼目。)

●勝ち方を知らない男桜散る=やんま
△葱、香、五=3点
(葱:付き過ぎは承知の上。 五:麻雀をやってるの?)

●草の餅鈴(りん)を鳴らしてお相伴=香久夜
△る、英、喋=3点
(る:お仏壇に向かい、故人と一緒に。 英:お彼岸ですね。)

●考と妣の別々にでる夢朧=水音
△る、十、資=3点
(る:夢が朧なのは当たり前のような気もするので、素直に「春の夢」ではいかがでしょうか。 十:「死んだ父=考」と「死んだ母=妣」が別々に夢に出て来るという。理由など他人には分からないし、「朧」なのだから作者にも分からない。 葱:「考=死んだ父親」とは全く知りませんでした。)

●佐保姫の直腸あたり寒卵=風牙
◎ス=3点

●足りて寝る猫や赤児や春ともし=るな
○砂△ぼ=3点
(ぼ:平和で幸せな風景。)


●春雨に蕾だんまり露光る=久郎兎
◎淳=3点
(淳:蕾が黙って静かに春の雨を受け入れていますね。)

●春めく日異国語飛び交ふ数寄屋橋=メゴチ
◎秋=3点

●冒険はすこしお休み入学式=水音
△英、淳、秋=3点
(英:男のお孫さんでしょうか<笑>)

●目の奥の瞳つぶらな仔馬かな=葱男
◎子=3点

●雪柳白衣が似合ふ薬剤師=資料官
○風△白=3点
(風:最初は雪柳の白と白衣ねという感じでスルーしたのですがどうにも気になりました。「雪柳」と「薬剤師」理屈でなく良いです。 白: 河岸を急ぎ足でどこに行くのか。)

●いぬふぐり何処ぞの猫は塀の上=秋波
○十△紅=3点
(十:犬と猫との組み合わせといい、とぼけた春風駘蕩の趣きの句。「何処ぞ猫は塀の上」のあとに「我が家の猫は春炬燵」とつつぎそう。)

●梅の香や臨時駅から人の波=資料官
△英、水=2点
(英:早春を感じます。 水:どんな梅の名所なんでしょう。)

●ツンツンとすっくり立ちし土筆かな=英心
○淳=2点
(淳:「ツンツン」とか「すっくり」とかの表現がよくできますね。)

●道産子の義母直伝の鰊漬け
△子、英=2点
(英:時の流れの中の生活感が良いですね。)

●春雨を吉報とせん告知板=メゴチ
○香=2点

●春の月俳句話に燻さるる=葱男
△ラ、雪=2点
(ラ:「燻さるる」が、意味深ですね<笑> 雪:俳句談義はきりがありませんよね。春の月煙たそう!)

●雛納む小雨もよいの淡き夜=秋波
△久、資=2点
(久:よい=良い、でしょうか。納む=神社に?、淡島神社? 資:雛を納める穏やかな心境が良く表れている。 葱:「小雨催ひ」のことでしょね。)

●プラトニクまたは肉欲春と修羅=やんま
△葱、ス=2点
(葱:宮沢賢治に怒られそうだけど<笑>)

●ものの芽の兄妹のごと育ちをり=葱男
○ス=2点

●蘇る苔の緑に春の雪=子白
○ラ=2点
(ラ:色彩感覚豊かな句。)

●加賀の国かがやく春にきらめきぬ=喋九厘
△資=1点
(資:今月北陸新幹線関係が多かったけど,この句のK音のリズム感に共感しました。)

●清し空桜ヒラヒラワルツかな=淳一
△英=1点
(英:音符が飛んでいますね。)

●啓蟄や生きとし生くるもの愛し=砂太
△英=1点
(英:作者の年輪を感じます。)

●春眠に小犬求める腕まくら=子白
△白=1点
(白:可愛い子犬の動作が見えます。)

●侵略をマスクで防ぐ春疾風=喋九厘
△英=1点
(英:今年は特に酷いですね。)

●スプリングハズカムインザ鰆レター
△葱=1点
(葱:「鰆レター」は「触られたー!」ってことでしょうか?<笑> 面白い!)

●ハチ公忌東大教授瞑目す=白馬
△五=1点
(五:俳味ありすぎます。)

●初花や便りをそっと秘めてをり=弧七
△子=1点

●春彼岸賑わひ嬉し人気者=メゴチ
△英=1点
(英:故人の人柄が偲ばれます。)


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