*A部門入選作発表*


当季雑詠=全72投句(入選52句)

【特選】

一席
●刈りたての稲抱く赤子抱くやうに=ぼくる


◎砂、ス○修、水、紅△雪、メ、香=15点
(修:でも、顔から離さないとね。 水:稲を大切に扱う様子がよくわかります。 紅:農業への愛着がよく出ています。 雪:丹精込めて稲を育てたことがよく伝わってきます。)


二席
●長椅子の端に秋思を置いてきし=ラスカル


◎メ○雪、ま、久、ワ△白、ス、紅=14点
(雪:教会の長椅子、公園のベンチ、大学の講義室の椅子。さてどんな椅子? ま:立ち上がって今はもう前向きになられたでしょうか。これもまた巧く表現されていて好きです。 久:長いと言う言葉が秋には似合いますね。 白:病院の長椅子か、公園の長椅子か。 紅:ドラマを感じます。)


二席
●歯に触るる葡萄の種の胸騒ぎ=十志夫


◎資、ま○五、砂、久△葱、ワ=14点
(資:種無しでは味わえない微妙な感触を旨く現している。 ま:すっきりとしない、奥のほうに感じる不安を巧く表現されています。 五:物語性のある句。夫婦の微妙な関係か? 久:歯の被せものがとれたかなとの心配顔が目に浮かびます。 葱:比喩が可愛い。)


【入選】

●三叉路も五叉路も冬の風抜ける=海苔子
★葱=★点
(葱:ゲストにお迎えしながら「清記」に落ちていました。海苔子様、すみませぬ。)    

●菊咲かせ高取窯に火の匂ひ=砂太
◎海、紅○香、ぼ△葱、五、資=13点
(海:福岡県の400年の歴史ある陶器。黒田藩の御用窯。ならば今も「菊咲かせ」で皇室御用達の陶器を焼いているのでしょう。 紅:高尚で、景の浮かぶ秀句です。「菊」は動かないし、下五がまたいいですね〜! ぼ:香と匂が伝わってくる、丈高い句。 葱:窯場と菊の取り合わせ、過不足なく調和しています。 五:これが俳句という出来です。)

●四万十を鮎悠々と落ちゆけり=ぼくる
◎五、英○ラ△修、ス=10点
(五:景が大きい!文句なしの天位です。 ラ:「悠々と」という措辞に惹かれます。 修:四万十川でいいと思うけど。なにしろダムがないんだ。)

●満月へ繋がつてゐる橋さがす=ラスカル
◎雪○五、水、喋△葱=10点
(雪:橋を渡って月へ行ってみたいものです。 五:上手い。そんなことはないんだが、無性に月に行きたいと思う。ロマンある句だ。 水:渡ってみたい橋です。 葱:心象風景にポエジーを感じます。)

●散会や檸檬がひとつ残りをり=メゴチ
◎ラ△葱、十、ま、修、香、喋=9点
(ラ:どんな会だったのでしょう。紅茶の試飲会とか? 葱:なんの会だったのでしょう、さっきまでにぎわっていたテーブルに今は散会後に人気もなく、飾りのように置かれた檸檬が残っている。檸檬の存在感は梶井基次郎のそれを思い起こさせます。 十:上5のさりげない言い切りが上手。いかにもありさうな景。 ま:檸檬が新鮮です。 修:なぜ残ってる?と思うけど、直前の賑わいがよく伝わってくる。)

●今年藁四角く固め積まれをり=スライトリ・マッド
◎白○ラ、海△英=8点
(白:農村の風景カット。中七が佳いですね。 ラ:「四角く」に、写実の眼が感じられます。 海:普通ピラミッド型か俵型と思っていましたが、四角いのもあるのですね。小農家の四角四面の勤勉な、頑固親父を想像して楽しい一句と思います。)

●七人の小人の影やきのこ狩り=雪絵
○白、砂、英△信、紅=8点
(白:白雪姫も寝ていたりして。 紅:ファンタジーですね。小人が毒きのこを教えてくれるのかもしれません。)

●街角の小さき画廊や銀杏散る=ラスカル
○資、修△ま、弧、ぼ、紅=8点
(修:絵のようにピッタリきまっています。 ま:佳い絵に出会えそうな温かい気持ちになります。 ぼ:こういう絵描きたいなあ。 紅:おしゃれな絵画をみるようです。)

●秋の雲速し神鈴強く振る=砂太
◎葱○ス△修、弧=7点
(葱:自然と共振している作者の姿、祈りのようなものを強く感じる。 修:何か、切迫した感じ。)

●満月を隠したるもの見つめけり=香久夜
◎十○弧、淳=7点
(十:月蝕で満月をかくすものは地球の影。その地球に立って地球を見つめている不思議さ。 弧:満月でなく、あえてそれを隠すものに注目し観察することで、満月の姿が明晰に意識されました。 淳:ふと、そんな時ってありますよね。)

●深秋のおのが書斎に殺さるる=スライトリ・マッド
◎ワ、喋=6点

●真直ぐなる道かなしけれ麦蜻蛉=葱男
○ス△白、十、弧、英=6点
(白:子供の頃そんなふうに思ったことありました。 十:塩辛蜻蛉のメスが麦蜻蛉。とすると、この「道」は単なる道でなく、与謝野晶子のいう「道を説く君」の道と考えるべき。)

●あな怪しわが地の影が月に満つ=秋波
◎修○信=5点
(修:実感できないことを言い得ている。)

●いちじくやアイフォンつかふ猿のをり=水音
○白、十△ぼ=5点
  (白:本当かいな!と思わせる奇抜さ。 十:アダムとイヴが食べてしまった禁断の果実はリンゴではなく「いちじく」だったという説も。そう考えると季語の持つ意味が膨らむ。 ぼ:面白ーい、わたしゃ猿に負けそう。)

●銀杏を拾ひ家路の勇み足=久郎兎
◎信○淳=5点
(淳:この銀杏を家族に見せようっていう子供の心ですね。)

●そそくさと子の帰り行く十三夜=雪絵
◎水△五、海=5点
(水:その子はかぐや姫? 五:親子の微妙なずれ!十三夜とうまく符号する。 海:この句の子は成人した子供か結婚して別に暮らす子供と思いました。名月と違って物悲しい十三夜、年老いた両親をおいてそそくさと帰らないでも良いじゃないかと。。○にするべきだったかも。)

●眉を引く指先ほのと檸檬の香=まさこ
◎香△砂、メ=5点


●右肩の林檎を少し囓りけり=スビキワァ
○雪△葱、信、ス=5点
(雪:林檎に左右があるわけではないけれど、何となく納得してしまう句です。 葱:これは右肩に林檎が乗っているわけではなく、「林檎のように美味しい、または愛しい」恋人の肩に噛み付いた、と読みました。初々しさのある句。)      

●秋高しアンパンマンは海渡る=資料官
◎ぼ△葱=4点
(ぼ:理屈抜きで愉しい、好きだなあ、こういう句。 葱:海外でも「アンパンマン」は活躍してるんだ。)

●今喰つた無花果も虚か白き皿=弧七
○海、ワ=4点
(海:無花果の赤と白い皿との対比。虚かで本当に無花果があったのかどうかも分からない。空事かも知れない。不思議な魅力ある一句だと思いました。)

●色褪せし少年の日や青写真=修一
○淳△雪、久=4点
(雪:でも心の中には鮮明に残っている少年時代。 久:当初◎でしたが季語が分からなかったので△にしました。いい句です。)

●警笛の一つ響きて秋の虹=弧七
○喋△水、淳=4点
(水:運転士さんが見事な虹を見て思わず警笛を鳴らしてしまった。 淳:警笛がなって、ふと見上げると虹がかかっている。)

●交番の後ろの住まひ草の花=雪絵
△葱、資、香、水=4点
(葱:わび住まいでも安心感がありますね! 資:田舎の交番ですね。草の花が効いている。 水:鄙びた、犯罪など起こりそうもない交番を思い浮かべます。)

●銅像の手は高き空指しにけり=五六二三斎
○海△雪、十=4点
(海:手を高く上げている銅像は?アメリカの自由の女神だって上げているし坂本竜馬も然り。でも私は広島の平和記念像として頂きました。 雪:よく手の方向を見られましたね。鋭い観察力! 十:北朝鮮かロシアか、それとも岡本太郎か? 40番の駄句(三波春夫)の作者としては取らざるをえない<笑>)

●溝に落つ月にうつつの十三夜=秋波
◎久○メ=4点
(久:溝の溜まり水に映ったのでしょう。落ちるとしたところが現実の厳しさを表していていいです。)

●落ち葉踏むタイヤの音に足踏めず=信頭火
◎淳=3点
(淳:情景が伝わってきます、自然を愛する心ですね。)

●靴底のクレーコートの暮の秋=メゴチ
○十△ワ=3点
(十:冷たい廊下など素足から感じる秋もある。この句もそうした季節感の把握のひとつ。) 

●暮の秋会社をやめてチチカエル=資料官
△葱、ぼ、喋=3点
(葱:カタカナの「チチカエル」がポイント。 ぼ:ペーソス溢るる。)

●長き影兄と背比べ下校道=久郎兎
△葱、五、白=3点
(葱:情景にポエジーがありますが、惜しむらくは中七が少しもたついています。 五:兄は亡くなっているのだろう。でないと意味のない句になる。葱男部長の句か? 白:仲良し兄弟微笑まし。)

●火をおこす体験授業鰯雲=修一
△葱、ラ、水=3点
(葱:鰯雲の季語の本意が十分に生かされています。 ラ:自然災害に備えての授業かもしれません。 水:煙がのどかに秋の広い空に昇って行く。)

●ボサノバの小さき波動や寒波来る=十志夫
△資、ま、英=3点
(ま:ボサノバに乗ってくるとは素敵ですね。)

●またたきの間に秋蝶の去ににけり=紅椿
◎弧=3点
(弧:静かに寄り添っていたものがふといなくなったときの小さな衝撃。しかし軽やかさも感じます。)

●妖精は低く飛び交ひ瓢の笛=葱男
○ま△ラ=3点
(ま:そういう感じのする場所がありますね。瓢の笛がこの世界観にぴったり。 ラ:「妖精」と「瓢の笛」との、取合せの妙。)

●愛想無し夜間学校の七席目=スビキワァ
○葱=2点
(葱:視点がユニークで俳句的ではないモチーフが新鮮。アルバイトで疲れたあと、夜間学校に通いながらも若者は少々ふてくされながら勉学の席についている。いろんな迷いや逡巡の中に若者の怠惰と傲慢が透けて見える。)

●赤い月宇宙の息吹煌々と=英心
○香=2点
(英:月食の夜に読みました。そのまんまです(^^ゞ。)

●赤い月地球の影の秋を読む=喋九厘
○資=2点
(資:皆既月食の句ですが赤と秋の響きが良い。)

●秋高し海辺の市の焼きたてパン=まさこ
○ぼ=2点
(ぼ:いいですね、この幸せ感。)

●明けぬ間に家出し外は肌寒し=淳一
○信=2点

●エレベーター前の空間秋扇=海苔子
○葱=2点
(葱:知らない者同士がエレベーター前の狭い空間に密着してエレベーターの扉が開くのを待つ、気まずいのだが場所を確保するためにはますます密着しなければならない、男の側からの視点ではこうはならないだろう、むしろ若い女子と密着できるのは合法的な小さな喜びでもある、女性の句。)

●風渡るススキ海原夕陽映ゆ=淳一
○英=2点

●時雨るるや家電量販店銀座=水音
△砂、久=2点
(久:一流の地にも来るものがやってきたんですね。五七五にしないのがインパクトがあっていいです。)

●心字池紅映して鎮まりぬ=英心
○メ=2点
(英:雷山千如寺の心字池です。これもそのまんまの句です〜もう1工夫出来たらよいのですが…。)

●庭影にルゥ〜ルゥルルルゥ〜と軒忍=喋九厘
△信、ラ=2点
(ラ:この中七の表現は初見です!<笑>)

●目覚ましに腕伸びて行くそぞろ寒=海苔子
△砂、紅=2点 

●ゆく秋の猫の足音ひたひたと=まさこ
△海、淳=2点
(海:寒がり猫は秋が終わると、冬がひたひたと来る事を知っている。足音のひたひたと掛けた所が面白い。 淳:猫の足音でますます秋を感じます。)

●秋灯し地蔵通りのオルゴール=資料官
△葱=1点
(葱:しっとりとした情緒があります。)

●紅葉を望んでないが見てしもた=信頭火
△ワ=1点

●秋天や三波春夫の掌の高さ=十志夫
△葱=1点
(葱:発想の転換が素晴らしい、肩の力が抜けています。)

●シルエット流れてゐたり式部の實=五六二三斎 
△喋=1点

●濡れ縁に転がる冬至南瓜かな=修一
△海=1点
(海:こんな風景は都会では見られない。ベランダに転がして置く南瓜では俳句にならない。羨ましい作者です。)

●三日月のブローチつけて音楽会=スライトリ・マッド
△葱=1点
(葱:ロマンチックな夜、デートですか?)


A部門入選作〈back number〉

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