*A部門入選作発表*
当季雑詠=全69投句(入選55句)
【特選】
一席
●鵙のこゑ乾き切つたる古雑巾=十志夫
◎信、ラ○喋、五、資、メ△葱、久、水、ぼ=18点
(ラ:取り合わせの妙。 五:乾いた秋を古い雑巾に託する上手さ。 資:68の鵙と迷ったけど,上五中七のK音と鵙のキ−イッという声がうまくマッチしていたのでこちらを採らせていただきました。 メ:カ行音の連続が爽やか。葱:もうそれ以上、搾り出せない「感」。 久:モズの鳴き声が乾いた感じかよくわかりませんが、古雑巾は古い雑木林を連想させますね。 水:はやにえを連想させる。68番の「しやもじに乾くご飯粒」とどちらか迷って、両方残しました。 ぼ:硬質で句も乾いている。)
二席
●花魁の簪の数曼珠沙華=久郎兎
◎白、喋、香○十、ス△砂、ぼ=15点
(白:簪と同じ数の曼珠沙華が咲いていた。対照的なところが絵になっている。 香:花魁とは、意外な発想です。十:花魁のかんざしの数が多い分だけ、彼女らの身の上と彼岸花の悲しげな色合いとが重なる。 ぼ:「昔おいらん泣きました」のオマージュ、いいですね。)
三席
●朝露を赤く丸めて彼岸花=喋九厘
◎メ、ス○香、水△英、ワ=12点
(メ:赤く丸めてがすばらしい。 香:露の小さな水玉が大きく取り上げられ素敵です。 水:「赤く丸めて」でいただきました。)
三席
●カンナ燃ゆひたすら海の青き日を=ぼくる
◎ま、秋○理△香、砂、紅、遼=12点
(ま:色彩が鮮やかで美しく、又、カンナに込められている心情を強く感じます。 秋:とても晴れやかな気分になれる。色彩のメリハリが効いています。 香:海辺のドライブでしょうか? 紅:鮮やかな色が見えてきました。)
三席
●鵙鳴くやしやもじに乾くご飯粒=ラスカル
◎十○信、白、雪、秋△水、ま=12点
(十:「鵙の贄」は枝先に刺されて乾燥したイメージ。ご飯粒という身近な素材の取り合わせに成功している。:鵙贄の如く張り付いたご飯粒。 雪:古雑巾の鵙の方と迷ったのですが、「ご飯粒」の方をいただきました。鵙の声を聞いてみたいです。 秋:鵙は餌を枝に刺すと云いますが。しゃもじの先の飯粒とは。脱帽です。 水:62番「乾ききったる古雑巾と」迷い両方のこしました。鵙と言えば干からびた感。季語と少し近いかも。)
【入選】
●平和なるツクツクボウシだけの島=五六二三斎
○葱、砂、紅△十、修、ぼ、遼、入=11点
(葱:「無人島」が一番平和なのかもしれません、人間のいないところが「平和」であることのアイロニーを感じます。 紅:不思議なお句。でも、あの鳴き声が大好きなので・・。 十:同じ蝉でも、みんみんや油蝉には「戦闘感」がともなうのだろう。 修:職場での仲の良い人たちのおしゃべりのよう。平和なんだ。 ぼ:人間がいなければ平和だ、でも淋しい。)
●観月や時計まはりに闇来る=十志夫
○理、英、メ、遼△ぼ、紅=10点
(メ:うまいなあ。 ぼ:なるほど面白い見方です。 紅:中七、下五の言い回しが素敵です。)
●満月や波止場に集ふ猫の影=ぼくる
◎英○紅△淳、修、ラ、雪、ス=10点
(修:ポソポソ猫たちきっと話している。紅:神秘的で、モノクロの世界が広がります。 ラ:月と猫はよく合います。萩原朔太郎の詩を思い出しました。 雪:「キャッツ」を思い出しました。)
●妖精の飛び出す絵本星月夜=まさこ
◎白、砂△英、入、ス=9点
(白:お孫さんと見ている絵本。もう寝る時間だよ。)
●合はせ湯にいざよひの月揺らぎをり=葱男
◎淳、五△喋、ス=8点
(五:温泉のはしご。十六夜の月もマッサージ。素晴らしい。)
●お懐紙のすかし模様や萩の風=紅椿
◎資○ぼ△英、十、ま=8点
(資:茶会の風景,萩を揺らす風が抜ける。懐紙の透かし模様への着眼はすばらしい。 ぼ:澄んでいて端正な句。 十:如何にも「秋」という爽やかな一景。 ま:繊細にとらえられていて美しいです。)
●黄落や菓子の塔立つ飾り窓=ラスカル
◎水○砂、ぼ△ま=8点
(水:黄落のパリでマカロンの塔を見ているみたい。 ぼ:シャンソンが聞こえてきそうな。 ま:大人になった今でも、見ると温かい気持ちになりますね。)
57●哺乳瓶持つ育メンに小鳥くる=雪絵
◎久、ぼ○入=8点
(久:育メンを詠むとはすごいですね。ご褒美を小鳥にするなんて考えもつきませんでした。 ぼ:ほのぼのとして、ペーソスあり。)
●ゆつくりと竹ひご曲げる夜長かな=ラスカル
○十、修、資△葱、雪=8点
(十:昔懐かしい竹と紙のゴム飛行機でも作っているのだろうか。「ゆっくり」「竹ひご」「夜長」の語の一体感。 修:穏やかな長い息、作業に没頭している。 資:秋の夜に模型飛行機でも作っているのだろうか。懐かしい風景。 葱:弧を描く竹ひごのしなりが「長い夜」にゆっくりとかぶさってきます。 雪:夜長にぴったりの手仕事。何が出来上がるのでしょうか。)
●釈迦牟尼は美男供物に大西瓜=砂太
◎紅△白、葱、資、雪=7点
(紅:白:確かに美男子ですね。西瓜の表面のように艶のあるお顔。 葱:漢字の多用がこの場合は成功していると思います、「釈迦牟尼」がそうさせているのでしょう。 資:与謝野晶子の鎌倉の大仏から。供物に着目したところは面白い。 雪:美男子には供物も大きいのですね<笑>)
●花びらの尖ってをりぬ秋の薔薇=白馬
◎雪○ラ、香=7点
(雪:そういえば尖っているのかも知れない、と思える感覚を持ちました、秋の薔薇は。ラ:観察眼の鋭さが光っています。 香:尖って で、秋の空気の冷たさ、キリッとした爽やかさが表れています。)
●秋深し机上を撥ぬるマナー音=十志夫
◎修、亜=6点
(修:季語が効いている。孤独な思いが目の前に。)
●こんがりと釣瓶落しの油揚げ=紅椿
○喋△理、信、修、五=6点
(修:そうなんだ。とても早くあがるんだ。 五:釣瓶落しと油揚げの対比!上手い。)
●鹿笛の異界ともども呼び寄する=葱男
○五、遼△理、秋=6点
(五:「鹿笛や」なら、◎。)
●ETのしぐさを真似る月夜かな=紅椿
◎葱○ラ△淳=6点
(葱:そのしぐさを「システィーナ礼拝堂」の天井画に見たことがあります、美しかった。人間のコミュニケーションの根本にある行為を象徴しているかのごとく哲学的美を感じます。 ラ:指先を合わせる仕草ですね。懐かしい〜!)
●カーブミラー木槿の揺るる方へ行く=雪絵
○信、ス△香=5点
(香:なんか、ゆるーい雰囲気がいいですね。)
●区画地に重機鎮座の月雫=久郎兎
○秋、ワ△葱−5点
(秋:夜半の機械達は硬質の光を放ち幻想的ですらある。月雫の表現がいい。 葱:字面の重たさが句の内容に添っています。)
●十四の鉛の言葉秋時雨=弧七
◎ワ○ま=5点
(ま:鉛ですよね、よく分かります。季語がよく効いていると思います。)
●ほたる草胸の隙間を揺らしてみる=まさこ
◎遼○修=5点
(修:露草の青と胸の取り合わせ。)
●秋雨やバスを待ちたる祖父に逢ひ=弧七
○淳、久=4点
(久:この場合、祖母では感じが出ないのでしょうね。雨に負けない頑固さがいいですね。)
●虫の音やこちらの耳に母の声=香久夜
○雪△メ、遼=4点
(雪:こちらの耳に」、と限定したことによって、はっきり景が見えるような気がします。母親との夜長のひととき。 メ:母の声はやさしかったのだろうか。)
●背にある魔除けの模様夜夜の月=スライトリ・マッド
○水△白=3点
(水:月光には魔力が潜んでいそうなので、子どもでなくても背守り欲しいですよね。 白:着物?服?まさか刺青ではないでしょうね。)
●夕映えて秋晴れ落ちる日本海=喋九厘
◎入△資=4点
(資:まさにトワイライトエクスプレスの車窓風景。)
●茜雲つつつとぷかり大井川=喋九厘
△信、秋、ワ=3点
(秋:リズムがいい。)
●稲妻や胎おびやかすほどに雨=弧七
◎理=3点
●雲柔ら頬ずりをする十六夜=白馬
○ワ△メ=3点
(メ:観察眼が柔らかい。)
●老犬のウロウロついて来る残暑=白馬
△十、砂、入=3点
(十:暑さを感じさせる言葉探しに俳人は躍起になるが、「老犬のうろつき」も一つの新しい発見。)
●秋の日のまぶしく光る遺影かな=修一
○淳=2点
●甘酢いいかほりに秋の実りかな=英心
○ま=2点
(ま:ぴかぴかのご飯で作るお寿司、美味しそう!!)
●いわし雲最西端にサウダージ=葱男
△久、五=2点
(久:唯一一般人が行ける日本の端っこに乾杯。 五:サウダージはポルトガル語!知識人の郷愁?)
●神の旅つばめに乗つて行かれけり=修一
○葱=2点
(葱:丁寧語の語感と、「神の旅」の爽やかさが伝わってきます。)
●食ひ切れぬ苦瓜ぶらり苦笑ひ=資料官
○英=2点
●好物の恵まれものに秋を知る=英心
△淳、香=2点
●ざわめく怪置いていかれる新豆腐 =スビキワァ
△喋、葱=2点
(葱:「怪」はシャレだが、「怪」という空気感を想像させてくれる。それが新豆腐と重なることによって奇妙なユーモアを生み出している。)
●従順な人よ白花まんじゆしやげ=五六二三斎
△葱、メ=2点
(葱:取り合わせが美しい。 メ:従順と白と赤の対比がおもしろい。)
●数独の解けて金木犀かほる=香久夜
△資、紅=2点
(資:数独と金木犀の組合せも妙であるが,とけて・かほるの響きが良い。 紅:勉強から開放されて、やっと香りに気付いたのですね・・。)
●大病院に潜む冷やか法師蝉=砂太
△葱、久=2点
(葱:「冷やか」と「法師蝉」は季重なりだけど、空気が伝わってきました。 久:ミステリアスですね。何か秘密があって蝉がそれを知っているような。)
●澄む秋の旅先で選る落款印=まさこ
△ラ、水=2点
(ラ:季語次第で、もっといい句になりそう♪ 水:羅漢印を選ぶことと、物事が成る秋とが呼応します。)
●ハモニカで辿る昭和や月今宵=ぼくる
△白、資=2点
(白:ひとりでそっと懐かしむ昭和。 資:小沢昭一を思い出します。)
●秋うらら手相にMのくつきりと=五六二三斎
△葱=1点
(葱:手相の「M」は今の仕事が天職であることを示している、とどこかで聞いたことがあります。)
●有明や鶴の港の静もれり=水音
△資=1点
(資:鶴の港といえば長崎の港,有明の月と絶妙の組み合わせ。)
●風立ちぬ小さいすずめのこぼれる鉄線=スビキワァ
△信=1点
●金木犀香りて遥か下宿家の=信頭火
△ラ=1点
(ラ:青春時代を過ごした、懐かしい下宿なのでしょう。)
●コオロギとニールヤングでヘルプレス=信頭火
△五=1点
(五:面白い。味のある句。)
●爽やかや延命水に長き列=水音
△雪=1点
(雪:「延命水」がストレートでいいです。)
●しぶき上げバス走る湖秋涼し=スライトリ・マッド
△理=1点
●「白いかもめ」さだまさしに似た案山子=資料官
△葱=1点
(葱:「さだまさしに似た案山子」ってのが面白い、彼の歌に「白いかもめ」ってのがあるのだろうか?)
●初嵐味わい深き柿茶かな=英心
△喋=1点
●真夜中の誕生祝夜業かな=スライトリ・マッド
△ワ=1点
●三日月にぴったしだよねギターの音=信頭火
△葱=1点
(葱:口語体を直せばもっと良くなりそう。)
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