*A部門入選作発表*


当季雑詠=全75投句(入選句)

【特選】

一席
●おにぎりの○や△山笑ふ=ラスカル


◎る、五○砂、紅△喋、葱、風、香、や=15点
(る: これは記号であって文字ではない、という方もあろうかと思いますが、季語と相俟って視覚的に楽しいです。 五:傑作です。アイデア賞! 紅:横書きのネット句会ならではの句ですね。 葱:記号入りとは若々しいチャレンジ精神ですね! 風:遠足かピクニックの1コマでしょうか、手垢の付いた上12音だとは思いますが「山笑ふ」が効果的で類想云々を気にさせませんね。 や:おにぎりと聞いただけで思わずにっこり、ピクニックに来た山も笑っている。)


一席
●ほどけ出すト音記号や卒業歌=十志夫


◎英、メ、雪、ス○水△白=15点
(水:「ほどけ出す」が卒業時の万感迫る思いをよく表していると思います。 雪:「ほどけ出す」がいいですね。譜面から音符が飛び出すイメージでしょうか? 白: 丸まっていたものが一本の紐になってしまい、お別れです。)


三席
●草萌や車道を塞ぐ島の牛=ぼくる


○ラ、資△る、十、葱、風、ま、紅、雪、や=12点
(ラ:「島の」という一語が利いています。 る:のどかな景がよく見えます。 十:小さな島の長閑な雰囲気が伝わってきます。 葱:島なら車道といっても路肩には草が生えているような土の道路かも。 風:下12音の手垢感と「草萌」ならではという感じがしないのが残念。長閑な景は大好きです。 紅:景が浮かびます。 雪:ゆったり、のんびり、いいですね〜。 や:沖縄以南の島、真っ青な海に囲まれたのどかな島の風景。)


三席
●献血を了へて貰ひし種袋=修一


◎資○風、ラ△る、十、葱、ぼ、雪=12点
(風:過去回想の助動詞「き(し)」が絶妙です。鞄の中を整理していたら種袋が出てきて「あっ!そうか献血した時に貰ったやつだ」という「気づき」の句。中七の「了へて」が説明的なのが惜しまれます◎に推したかった一句。 「献血」と「種袋」の命の連鎖感も響きあっていると思います。 ラ:素敵な景品ですね♪ る:中七あたりの表現を工夫されればもっと良くなると思います。 十:献血後の気怠さを取り除いてくれる種袋の明るい色。 葱:良いことをしたあとに貰う花の種、良い気分ですね。 ぼ:清々しい句ですね。 雪:さて何の種?献血のいい記念になりましたね。)


三席
●紅梅の蘂八方に開ききる=香久夜


◎弧○る、修、ぼ△葱、風、秋=12点
(る:色香の漂う句。白梅ではダメでしょう。 修:紅梅の本意が、八方に開ききるに言い表わされている。 ぼ:満開の全体像が浮かんでくる。 葱:写生の確かさ。 風:これも○選迷いましたが僕には景としては「紅梅」ならではという感じがしなかったので△選。「紅梅」から深読みしようと思えばできるのですが....。どうしても「白梅の蘂八方に開ききる」或いは「八方に開ききったる梅の蘂」のほうが景として広がってゆくんですよね。 秋:梅の花のたしかな観察眼。)


【入選】

●春宵の一汁一采ちょっと酒=やんま
◎ラ、ぼ○香△水、紅、資=11点
(ラ:「ちょっと」が面白いです。本当は、「ちょっと」では無いと思います〜(笑) ぼ:正に悠々自適、ちょっと酒に得も言われぬ味がある。 水:冬ならば「ずっと酒」でしょうが、春宵は「ちょっと」ですね。もっとも、「ちょっと」で終わればいいですけどね。 紅:下五が楽しい。)

●掬はれし魚透き通る二月かな=砂太
◎ま、秋○る△葱、資、弧=11点
(ま:二月の冷たい、澄んだ感じがよく伝わってきます。 秋:春まだ浅い2月のこの空気感! る:寒そうな感覚が、二月に相応しいと思います。 葱:白魚のことかな?)

●紙雛の前にちよこんとチロルチョコ=ラスカル
○五、風、水、淳△紅、ぼ=10点
(五:小さきチロルチョコに目が行く素晴らしさ! 風:類想感はあるのですがそれはそれとしてとても可愛いらしくて好きです。「紙雛」がとても有効打になってると思います。他の雛だったらとらなかったかもしれません。 水:素朴で可愛い景。おかっぱの少女が見えてきたりして。 淳:小さな子供が置いたのかな? 紅:また採らされてしまいました。下五がリアルです。 ぼ:ささやかな幸せ感あり。)

●お歯黒の口少し開く古雛=雪絵
◎香○ス△葱、風、水、ラ、久=10点
(葱:いかにも骨董品の感じ。風:本来「古雛」は 引目鉤鼻の平安調の 内裏雛のことだと思いますが歳時記の例句等もこの句のように「古びた雛」なのでそれはどうでもよいです。ただ三人官女の1人は新品の時から少し口を開けてお歯黒が見えているのではと、「古雛」でなくともと思ってしまうのが○選以上でとれなかった理由です。 水:そのお雛様の経てきた年月がわかります。  ラ:「お歯黒」がリアルです。 久:この細かいところが話を広げるようで。)

●桜貝最期はきつと波の音=るな
◎喋、葱○弧△砂、秋=10点
(葱:ジーンとくる感慨があります。 秋:桜貝って透明ではかなげなイメージですものね。)

●かげろへる女の顔の非対称=葱男
◎や○資△五、メ=7点
(や:非対称によって美人がその魅力を増殖した。 五:顔って対称じゃないの?そう言い切るのが俳句。)

●カーテンの見本ずつしり春炬燵=紅椿
◎風○雪△水、秋=7点
(風:そうそう、カーテンの見本帳は分厚くて重いんですよ。冬用のカーテンから春(〜夏)用のカーテンに換えるのに新調するんですね、それを春炬燵に入って眺めている初春の雰囲気が良く出ていると思います。最低限の景だけを描ききって(作者が)余計な事を語らない俳句は季語の持つ本意が勝手に詩の世界を立ち上げてくれると思います。 雪:ほんとの春を待ちわびる思いを、カーテンに託して! 水:楽しみつつ、迷いつつめくっていく、、春炬燵が良いですね。 秋:春を待ちわびるうきうき感が伝わります。)

●じゃれあうて四の字固め草萌ゆる=風牙
◎十△葱、修、ラ、資=7点
(十:草の香りの中、誰もが経験したこと。春の景を簡易な言葉で上手く表現している。 葱:溌剌とした若さと楽しさが横溢して、春を謳歌しています。 修:男の子ならよく分かる? ラ:可愛いです! 「草萌ゆる」という季語もぴったり。)

●スケボーの片足助走春の虹=雪絵
○十、ぼ△葱、風、修=7点
(十:さり気ない動作の瞬間をうまくとらえている。 ぼ:童画、童謡の世界、好みです。 葱:「片足助走」が小さな発見。季語との取り合わせがいいですね。 風:「片足」の説明が惜しまれます。 修:助走だから春なんだ。季語ぴったり。)

●青春はクレヨンのいろ草萌ゆる=十志夫
◎砂○雪△子、メ=7点
(雪:絵具でもない、色鉛筆でもない、クレヨン!納得させられます。)

●壺焼の匂ふ江の島日和かな=ぼくる
○紅△る、ラ、雪、白、や=7点
(紅:江の島ならではの句ですね。いい匂いがしてきます。 る:また行きたくなりますね! ラ:「江ノ島日和」という造語が魅力的です。 雪:こちらまで匂ってきそう〜! 白:とても素直に入ってくる句です。波郷の句も思いだされます。 や:匂うのです、江の島へ来た何故かうれしい臨場感。)

●夕風にみつまた白くふるえたり=子白
○英、喋、葱△ス=7点
(葱:哲学の道の路傍でしょうか? 字の配置が美しい。)

●旧道のま白き暖簾椿餅=まさこ
○修△子、風、ぼ、白=6点
(修:椿餅がぴったりおさまっている。 風:一読即景の句は予選は必ず取ります。変に作り込んだりしていなくて好きなタイプなんですが僕にはもう一つ景が広がって行きませんでした。「椿餅」以外の春の菓子だったらとってなかったです。 ぼ:いかにも旧道らしい、椿餅もしっくり。 白:上五と下五に挟まれた中七が佳いですね。)

●ご破算で願ひましては猫の恋=ラスカル
○メ、香△五、ス=6点
(五:意味がよく分からないが、その面白さが俳句です。)

●喉過ぎてより白魚を哀しめり=砂太
◎水○葱△五=6点
(水:食べた喜びの後のこの切ない感覚。わかります。 葱:上五が秀逸! 五:踊り食いの妙を上手く言い当てている。)

●春浅し少し昭和な私鉄線=資料官
○砂、や△風、久=6点
(や:ワタクシ葛飾柴又京成電車です。 風:私鉄選に「少し昭和」と感じとった色とかデザインとか乗客の様子なり乗務員の様子等の理由をそのまま描写していただければ文句無しの◎選でした。又、上五の言い切りの「春浅し」の切れが僕には強過ぎて「春浅く」くらいに留めてあれば自然に読めて○選だったと思います。 久:紀州鉄道なんかそうじゃないかな。)

●浮かれ猫溝に嵌りて浮かぬ顔=白馬
◎淳○久=5点
(淳:情景が浮かびますね。 久:人間の思いと猫の気持ちのギャップが感じられて面白い。猫は好きで嵌まって恍惚なんだ。)

●喰らふこと哀し白魚箸の先=砂太
○子、白△る=5点
(白:小さな透明の命を将に絶たんとする我がエゴ。 る:言い尽くしてしまっている感もありますが、共感できます。)

●たびら雪降り積む漂流郵便局=葱男
○ま、ス△喋=5点
(葱:「漂流郵便局」<旧粟島郵便局>は、瀬戸内にある小さな島、「粟島」のちょうどおへその部分にあります。届け先のわからない<あるいは存在しない>手紙を受け付ける郵便局であり、「漂流郵便局留め」という形で、いつか宛先不明(あるいは故人宛)の存在に届くまで私書箱に預かります。「漂流郵便局」はアート作品であり、「日本郵便」との関連はありません。)

●猫の恋吾輩の屋根どきたまへ=やんま
◎白○弧=5点
(白:この堂々たる態度。漱石も顔負け。)

●蜂の巣と土星について考察す=風牙
○秋、白△十=5点
(秋:取合せが面白い。 白: 関係無さそうだが、学者の考察。論文を読みたい。 十:「蜂の巣」と「土星」を繋ぐ強引さがすごい。)

●暗き日も明るき日にも猫柳=弧七
○五△砂、ま=4点
(五:猫柳の明るさに嬉しくなりますよね。 ま:猫柳ってそういう存在ですね!)

●春浅き水神様に鳥の糞=やんま
◎久△淳=4点
(久:下五は「ふん」と読みたい。大胆なところがいい。)

●陽だまりの座布団母の雛の寿司=水音
  ◎子△英=4点

●房総の春琺瑯のボンカレー=十志夫
  ○久、や=4点
(久:懐かしい。表面が汚れていないのがいいですね。 や:房総の万屋にはこんなのが残っている。)   

●ポケットの匂ひ袋や風光る=まさこ
○メ△葱、香=4点
(葱:女性的な視点。)

●燈明のかすかな揺れや大試験=紅椿
◎修=3点
(修:絶妙な取り合わせ。かすかな揺れが巧い。)

●春の夢金と銀との鞍がない=ぼくる
◎紅=3点
(紅:思わず♪月の砂漠を歌ってしまいました。ユーモアとペーソスがあって堪りません。)

●ビルエバンスを知つた日の夜の猫の恋=弧七
○秋△葱=3点
(葱:ビルエバンスが新しい。)

●水に沿ふ光と影や春の夕=るな
○英△淳=3点

●藍色の空の桜の莟かな=修一
△英、葱=2点
(葱:桜の蕾から空にパーンする視点が新鮮。)


●木もわれも肩からほどける雨水かな=秋波
△喋、メ=2点

●結願を寿ぎまつる花仏=英心
○喋=2点

●十七で逝きし風あり卒業歌=葱男
○ま=2点
(ま:身近に居ます。卒業式のたびに想います。)

●早春の芽ぶきの中の仏かな=英心
△葱、修=2点
(葱:ものの芽の中に仏がある、万物に神が宿っています。 修:生命と無常。)

●ため息が白煙のごと消え去りぬ=淳一
○子=2点
(葱:「白い息」の新しい遣いかたがアイデアですが、「冬」に詠んでほしかった。)

●鳥の声空に突き刺す余寒かな=雪絵
○淳=2点
(淳:「空に突き刺す」って言う表現がグーですね。)

●地球儀のどこに安らぎヒヤシンス=資料官
△砂、ス=2点

●未読メール斜め読みして二月尽=資料官
○十=2点
(十: B群の「未〇〇」というの句と比べても一番実感のある句。)

●畦道で背比べ中は土筆かな=喋九厘
△香=1点

●襟巻きで口をふさぎて帰る路=淳一
△英=1点

●楽興の時より浅き春の音=五六二三斎
△葱=1点
(葱:「楽興の時」という具体性のある曲のイメージが膨らんできます。)

●寒風に身を縮ませて桜花=英心
△淳=1点

●雲間には星のざわめき余寒かな=秋波
△風=1点
(風:中七で切っての句末の「かな」は詠嘆が効かず字数合わせの感じを持ってしまいます。僕にはわざわざ中七で切った理由を読み切れませんでした。普通に「ざわめく」だったら○選だったのですが....。)

●春光や踊りだしたるバーコード=水音
△久=1点
(久:髪の毛を思い出してしまいました。)

  ●白梅や後ろ姿に隙のなし=風牙
△弧=1点

●永き日の電車のなかの目覚めかな=修一
△弧=1点

●涅槃西風天目指すビルまたひとつ=るな
△葱=1点
(葱:季語が近代文明への皮肉にもなっている。)

●初めての母の遠出や鳥雲に=紅椿
△ま=1点

●ひたひたと犬の足音春朧=まさこ
△子=1点


A部門入選作〈back number〉

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