*A部門入選作発表*


当季雑詠=全69投句(入選53句)

【特選】

一席
●美しく箸を使ふてかぶら蒸し=まさこ


◎英、砂、水、資、香△葱、雪、久、遼、ス=20点
(英:とても綺麗です。 水:素敵な人だと想像します。かぶら蒸しもとても美味しいことでしょう。 資:箸の動きに着目したところが良い。美しい人なんだろうな。 葱:この句はめずらしく「美しい」の修飾が成功している。 雪:見習いたいものです。 久:手間をかけた一品だからこそ箸の使い方にも気を配りたいと言うことでしょうね。)


二席
●錠剤の溝の一の字鎌いたち=十志夫


◎葱、紅、ワ○資、ま、香△信、修=17点
(葱:よくぞそこに! 発見と季語の斡旋力。 紅:まず句材の中七に感心しました。小さな錠剤のこの一の字が命を左右すると言って過言ではないのですよね。そしてまた季語の斡旋がお見事です。 資:Z音の上五・中七のあとの鎌いたちの組み合わせが良い。 ま:なんのお薬でしょう、季語が心身の奥に痛みを覚えるように不思議に響き合っています。 修:白い大きな錠剤、目の付け処に驚きました。でも「一の字」がストンとこないというか。)


三席
●葱提げてピアノ奏者の帰りけり=ラスカル


◎ぼ○五、紅、砂、ま、ワ△葱、水=15点
(ぼ:このギャップ、人間らしくていいですねえ。 五:この物語性に◯。 葱:意外性の演出。 ま:芸術家にも日々の生活がありますね、なんとも温かい気持ちになりました。 水:黒のドレスをジーンズに着替えて、、、)


【入選】

●ペンギンの背(せな)一列の小春かな=雪絵
◎ラ○葱、ス△紅、ぼ、ワ=10点
(ラ:可愛いです〜♪ 「小春」も、ばっちり決まっています! 葱:隊列を組んで歩く様子が目に浮かびます。南極にも「小春」ってあるのかな?いや、ペンギン自体が「小春的存在」ですね。一句「コンビニのレジの娘の掌の小春かな」。 ぼ:何とも微笑ましい。)

●かの人の死は告げずおく初しぐれ=紅椿
○十、雪△子、葱、ぼ、修、ワ=9点
(十:「かの人」が誰なのかは不明だが、それは読み手に委ねられている。ドラマチックな一句。 雪:こういう場合もあるんですね〜。 葱:いろいろな場面が想像されますが、このような選択が是となることもありますね。 ぼ:微妙な人間関係の綾。 修:同感。「初しぐれ」の位置がいいかどうか?)

●しまひ湯のひば油香りて冬に入る=スライトリ・マッド
○ラ、資△子、五、水、メ=8点
(ラ:「ひば油」という具体性がよいと思います。 資:仕舞い湯のリラックスした雰囲気が良く出ている。 五:檜風呂に入っておられるのでしょうか?暖か味のある句になりました。 水:香りに癒されて温まります。)

●まだ誰も測れぬ星に鯨哭く=葱男
◎ス○ぼ、ワ△遼=8点
(ぼ:鯨は他の方から転生してきたという説あり。)

●冬の朝大工大きくひとり言=まさこ
○水、修△五、十、久、雪=8点
(水:気合を入れているんでしょうかね。 五:近くで新築工事が進んでいます。おそらく、この新築も完成まであと1歩なあのでしょう。 修:大工さんの斡旋がうまい!読者も目撃しているよう。 十:「あ〜寒いなぁ」or「まったく、遅いなぁ」いろいろな言葉が浮かびます。いかにもありそうな景。 久:)「の」が多いと思われますが、発想が面白いです。 雪:自分を奮い立たせているのでしょうか。寒い朝のひとこまですね。)

●犬小屋に一声掛くる朝の霜=紅椿
◎子、雪△十=7点
(十:今やペットは家族と同じ。「今日も寒いねぇ、行ってきます」と言って出かける飼い主の様子が目に浮かびます。 雪:作者の心の優しさ!)

●狐火に音叉の響き吸ひ込まる=ラスカル
○葱、メ△子、資、ス=7点
(葱:イメージの繊細さが光ります。 資:狐火と音叉の組合せも意外であるが何か不思議な風景。)

●口パクで窓越しさよなら冬銀河=秋波
○喋、ぼ△葱、久=6点
(ぼ:ペイネの絵を見るような。 葱:中七がややもたついている感がありますが、モチーフがいい。 久:新幹線車内からの様子でしょうか。言っても聞こえないし大声で言うと恥ずかしいし。銀河は空の、または以前の急行銀河の、かも知れませんね。)

●さざんかはまだ咲かんとね息浅し=紅椿
◎信○遼△ラ=6点
(遼:口語でまさに声が聞こえてくるようです。お好きな花を今年も見られますように。 ラ:病状の重い方なのでしょう。どうか、快復されますように!)

●神童のその後の涯の日向ぼこ=ぼくる
◎遼△白、砂、ワ=6点
(遼:凡人には知り得ぬ生涯ののち日向が世に残り、また願わくば神童その人も日向 にあることを。 白: 何だか分かるような気がする。)

●初冬や巫女は見えないものを見る=水音
○子、白△ぼ、遼=6点
(白:透明な寒気の中に何をみているのでしょうか? ぼ:霊感が研ぎ澄まされる冬入り。 遼:初冬が少し弱いでしょうか。)

●風船屋サンタクロースが窓いつぱい=まさこ
○水、ス△葱、信=6点
(水:こんな窓見てみたい。 葱:聖夜を待って、暖かい風景ですね、神戸の異人館通りを思いました。)

●桃色に染まる枯木や恋みくじ=雪絵
◎メ○五△砂=6点
(五:ピンクのみくじで枯木がピンクに!)

●がらんどうの飼育小屋より冬めきぬ=雪絵
◎久△葱、香=5点
(久:上五が「がらんどの」または「がらんどう」だけ、"の"削除ではダメでしょうか。がらんどう→寂しい→冬、としたところがいいですね。 葱:飼育小屋に飼育するべき動物のいない寂しさ。)

●健さんの俤ふつと冬の海=ぼくる
△葱、紅、砂、ラ、雪=5点
(葱:一句は健さん追悼の句をとりたかった。 ラ:「冬の海」が、健さんの面影を優しく包んでくれるような気がします。 雪:門司港に行ったら健さんに会えるかも。)

●潮吹きて鯨一頭空を飛ぶ=スライトリ・マッド
◎ま○英=5点
(ま:雄大な景、飛んでいるように見えるほどにジャンプ、一度見てみたいです。 英:スケールの大きさに圧倒されます。)

●底冷の川原に放つ発気揚々(ハッキヨイ)=葱男
○喋、香△ま=5点
(ま:景がはっきり目に浮かびます。河原で珍しい?でしょうか。)

●冬の雨フランス映画見る如し=五六二三斎
◎修△葱、ラ=5点
(修:ふ」の音が心地よい。しみじみとした感じ、またそれを愉しむ心の余裕。 葱:イタリア映画ではない、「雨」はフランス。 ラ:邦画でなく、「フランス映画」というところに説得性があります。)

●真直ぐな銀杏ちる道よういどん=修一
◎喋○雪=5点
(雪:真っ直ぐな道を見ると走りたくなる気持ち、わかります。増してや落葉の銀杏並木であれば!)

●カップ酒あけて挿したる帰り花=水音
○ラ、久=4点
(ラ:ミスマッチが面白いです。 久:何か深刻なことがあって思いがけないことを願ってるのかな。)

●神殿の廊下拭きゐる冬の蠅=修一
◎五△紅=4点
(五:この俳味素晴らしいです。)

●ラーメンの背脂勤労感謝の日=十志夫
△葱、紅、水、ま=4点 
(葱:たまにはカロリーやら血圧やら中性脂肪やら気にせずにぎとぎとの豚骨ラーメン食いたいでしょ! 水:日頃の労働は一杯のラーメンで報われる。背脂たっぷりだとなおうれしい。 ま:毎日頑張って仕事に励んでいる日本の男性の姿が、よく表れています。)

●駅前に命の起源冬の雨=弧七
○白△喋=3点
(白:中七の意味が推測できず、不思議な句です。)

●暮れゆくも紅葉の下なほ明かく=香久夜
○修△喋=3点
(修:紅葉の色だけが見えてくる印象深い。)

●小春日はオーガニックのグラノーラ=水音
○信△英=3点
(英:音の響きが洒落てますねぇ。)

●供へ物分かつ野猿や冬の霧=弧七
◎白=3点
(白:お地蔵さんの供へ物でしょう。光景と下五が呼応してジンときます。)

●日傾き紅葉はらはら小止みなし=秋波
○久△英=3点
(英:秋の終わりこんな風に読めばいいんですね。)

●冬薔薇都電近づく警報機=資料官
◎十=3点
(十:都電の線路際には、よく薔薇が植えられている。此の句は警報機と冬薔薇を重ねることで一種独特な「不安感」を表現している。)

●綿虫や十字架仰ぐ旅の空=ぼくる
△喋、資、ま=3点
(ま:日常を離れて、ゆったりとなさっている様子が心地佳いです。)

●小春日や機械じかけの象に乗り=スライトリ・マッド
△英、久、メ=3点
(英:小さなお子さんの笑顔が浮かびます。 久:ファンタスティックな世界のようですね。)

●焚火して語る女や観世音=砂太
○遼△葱=3点
(葱:女は何を語ったのか?)

●叡山が近くに見ゆる暮の秋=秋波
△香、ス=2点

●小春日や車洗ひて顔に汗=メゴチ
○信=2点

●垂れこめる雲間に光る翼かな=英心
○子=2点

●詰襟の校章光る枯木立=ラスカル
△五、雪=2点
(五:高校三年生の歌声が聞こえてきそう。 雪:近頃、詰襟って少なくなりましたね。きりっとした学生服姿、いいですね〜。)

●冬紅葉陰と陽のせめぎ合い=メゴチ
○英=2点
(英:上手いなぁ。)

●夜寒し明治の小説床で読む=白馬
○十=2点
(十:「ゆか」と読むか「とこ」と読むかで鑑賞が変ってきます。「ゆか」で頂いた。しかも三和土のような冷たい「ゆか」が明治の小説には似合う。)

●傘寿てふ明るさ暗さ実南天=砂太
△五、資=2点
(五:砂太先生句とは分かるが、加えない訳には行かない佳句。実南天との取り合わせが良い。 資:明暗と難を転ずる南天の組み合わせが旨いなあと思った。)

●木の葉髪引かれるやうな別れかな=五六二三斎
△白=1点
(白:上五に惹かれました。)

●左遷さる失意の人に降る時雨=淳一
△白=1点
(白:あまりに寂しい-----。)

●寒空に赤が可愛いや地蔵尊=英心
△香=1点

●亡き母に似た掃除婦の背が寒し=淳一
△葱=1点
(葱:誰しも男なら弱い「母もの」ですが、「掃除婦」が哀れを誘いますねえ〜。)

●敗者より見るべき歴史花八手=五六二三斎
△メ=1点

●人の旅出雲路橋にしぐれけり=葱男
△五=1点
(五:神在月の出雲を暗に秘める句。)

●冬めく日レースのカーテン新調す=メゴチ
△葱=1点
(葱:気持ちのよい句ですね。)

●豊後富士盆地一面冬芒=資料官
△十=1点
(十:十年前に訪れた豊後富士(由布岳)は小振りですが形のいい山でした。一面の芒原、金鱗湖の朝霧の様子を思い出しました。)

●満開の孔雀サボテン冬真近=英心
△修=1点
(修:真は間?ー強力な存在感。恋?)

●ラブソング聞いて小犬の昼寝かな=子白
△葱=1点
(葱:「昼寝」は夏の季語ですが、老人も小犬も小春日の昼寝が似合います。)

●凛として白鷺水に立ちにけり=子白
△信=1点

●手斧(ちょん)掛けの山から冬へ雲起る=喋九厘
△メ=1点


A部門入選作〈back number〉

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