*A部門入選作発表*
当季雑詠=全66投句(入選47句)
【特選】
一席
●大昼寝背負ふ地球の重さかな=十志夫
◎五○雪、喋、淳、香△葱、資、ラ、紅、白、水、ス=18点
(五:スケールの大きさに◎。 雪:そういわれれば、背負ってますね〜。大の字に寝ている様子が浮かびます。 香:大きな発想で面白いです。 葱:寝すぎで体が重たそう。 ラ:スケールの大きな発想が魅力的です。 紅:大の字に寝ているのでしょうね。大仰さがいいです。 白:寝ることは地球を背負うこと。成程。 水:大げさすぎるところが面白いですね。)
一席
●軽々と生きてをるなり水馬=ぼくる
◎や、砂、ま○雪、水△葱、十、子、紅、弧=18点
(や:なるほど軽い、羨望する。 ま: 軽々と見えるように生きたいものです。季語がとても効いていますね。 雪:人もこんな風に生きられたらいいかな。 水:軽々と生きているように見えて、ほんとは一生懸命なのかもね。 葱:水の上を歩くもんね! 十:「軽々と」がこの句のすべて。羨ましいと感じている作者。 紅:軽々に見えて、実は陰で努力しているのかもしれませんね。)
三席
●刈る人へ束ねる人へ風薫る=ぼくる
◎香○葱、る、ま、弧△十、淳、ス=14点
(葱:「束ねる人」への目線が優しい。 る:ちょっと季語が遅いのですが、リズムが良くて気持ちの良い句ですね。 ま:爽やかな景が気持ち良く伝わってきます。農作業ご苦労様です。 十:時期的に麦刈りだろうか。何気ない景だが爽やかな一句。 )
三席
●ところてん余生のごとく啜りけり=ラスカル
◎ぼ○資、白、喋、水△葱、る、五=14点
(ぼ:うーむ。どう解すべきか。しかし、文句なく面白い。 資:余生と啜るが妙に合っていて面白い。 白:細く長く不安定で甘酸っぱい余生。 水:どんな余生なんだろ。 葱:情けなさにペーソスがあります。 る:言われてみれば納得なのですが、もう少しポジティヴでも良いかも。 五:物悲しい雰囲気をところてんが伝えている。)
【入選】
●捨てし子の嫁ぐ日となる茅の輪かな=風牙
◎十、白、喋○五、ス=13点
(十:「捨てし子」とは尋常ならざる言葉だが、離婚して相手方が引き取った子供だろうか。そんな子の神前での結婚式。ドラマがある。 白:式には出られず、遠くから我が子の幸せを願って-----。切ない。 五:ストーリーのある句。季語がいい。)
●肩ぬらす青きしずくや七変化=水音
◎メ○る、十、子△資、ま、ぼ=12点
(る:たぶん雨滴だろうと思いますが、それを青と感じて季語と対比されている点が面白いと思います。 十:肩にかかる雨の雫があぢさゐの花の色を映してい輝いている。やや非現実だが、これくらいの誇張はあっていい。 資:傘もささずに紫陽花見物。しっとりして美しい。 ま: ともすると鬱陶しい梅雨の光景が一変、豊かなみずみずしい景が感じられま
す。 ぼ:しっとりとした情感あり。)
●梔子のねじれをほどく雨待ちぬ=香久夜
◎雪、前○メ△葱、喋=10点
(雪:とてもきれいな句ですね。しっかりした観察眼。下五が好きです。 葱:類想はありそうです。)
●燐寸棒何度も擦りし半夏雨=雪絵
◎資△葱、る、十、五、メ、白、前=10点
(資:今どきマッチ自体がもう古い。梅雨の時期なかなかつかないマッチに共感する。 葱:これは季語が上手い! る:今はこんなこともあまりしなくなりましたが、よくわかります。 十:句意は異なるが、一読して寺山修司の<燐寸擦るつかのま海に霧ふかし身捨つるほどの祖国はありや>を髣髴させる。 五:半夏雨にぴったりなシーン。 白:本当に湿っぽいなぁ。今時マッチですか?)
●家灯り映る真田に雨の紋=子白
◎淳○メ、前△葱=8点
(葱:真田は地名? 田んぼのことをそう言うのでしょうか? 季感はあると思います。)
●すててことなりて一献島の宿=ぼくる
○や、風△葱、る、ラ、淳=8点
(や:けふは沖縄から琉球へと流離う。 風:上12音が好きで○選。下五にもっと良いものがありそうです。 葱:いいなあ〜! る:無礼講か、一人なのか。たぶん後者だろうと思うのですが、「島の宿」はよくあるかなと。 ラ:「すててことなりて一献」は、似たような句がありそうですが、「島の宿」で、類句から一歩抜け出していると思います。)
●半生は母でありたりほととぎす=るな
○砂、ま△葱、喋、香、ぼ=8点
(ま:実感がこもっていますね、よくわかります。 葱:「母」と「女」、随分ちがうんですかねえ〜? ぼ:さて、鳴き声のせわしさ・忙しさか、血を吐くような苦労か。)
●木漏れ日の水玉模様苔の花=紅椿
○資、子△葱、水、ま=7点
(資:水玉模様が生きている。 葱:「水玉模様」が目に浮かびます。 水:お疲れ様でした。疲れた時には糖分を。 ま:水玉模様と、上手にとらえられていて美しい景ですね。)
●水中花人は魚の進化形=まさこ
◎水○葱、紅=7点
(水:人が芸術品のように思える。 葱:季語が効いていて、着想も面白い。 紅:水中花の中で泳いでいる人形姫の姿が想像できました。)
●右上がりの先生の文字合歓の花=雪絵
◎葱○や△砂、風=7点
(葱:中学の美術の先生と高校の倫理の先生がそんな感じでした、おふたりともいわゆる「変人」でしたが、好きでしたね。 や:癖のある先生の面影が一生付きまとう。 風:合歓の花が効果的で女性の英語教室を連想させてくれます。)
●玉葱の皮翔び蝶となりにけり=白馬
◎子○砂△久=6点
(久:茶色の蝶でしょうか。蝶の発想は収集家でないと出てこないと思います。)
●梅雨空に豪打一発傘開く=メゴチ
○白、前△五、雪=6点
(白:思い切った句ですね。ヤクルトファン! 五:先日、ヤクルト対ソフトバンクの交流戦を見ました。傘による応援をみた。その時に畠山がホームランを打ちました。 雪:ワンタッチの傘の開き方はまさにこんな感じ!)
●噴水の精一杯を尽しけり=やんま
◎紅○十△砂=6点
(紅:古い噴水かもしれません。中七下五が人生にも通じそうです。 十:噴水がその役割を精一杯果たそうと噴いている。擬人化に成功。)
●五月闇さじ一杯の豆を煎る=弧七
◎ス△葱、風、香=6点
(葱:「さじ一杯」にそこはかとなく哀感が。 風:感覚の句なので句評は難しいです。こんな感じ共感できるなというところでしょうか。)
●青鷺の濠に身構ふ裁判所=雪絵
○ラ、香△メ=5点
(ラ:「青鷺」と「裁判所」のミスマッチが面白いです。)
●さつきからコップに半分のビール=るな
◎風○ぼ=5点
(風:夏の季感としての「ビール」ではありませんがその辺は拘りません。即物的で17音に書かれていないことの方が大きな比重を占める句。なんにも言ってないことが返って雄弁に景の膨らむ句だと思います。793の破調で読むと中九のバタバタ感が宴で話しが弾んでコップに手を出さないと読めて効果的。 ぼ:気になる風景。機微を巧みに捉え、想像を刺激する。)
●白々と紫陽花あかり友を待つ=まさこ
◎る○久=5点
(る:清楚で明るい白い紫陽花と、友を待つ気持ちとがよく合っていると思います。 久:時刻がいつか、わからないのですが、幻想的です。)
●見え隠れしたる珊瑚や祭髪=紅椿
△葱、る、雪、風、前=5点
(葱:いいですねえ〜! る:素直な句で、祭の雰囲気も伝わります。 雪:珊瑚が夏らしくていい。 風:一読即景○選迷いました。)
●蕊の中埋没したる蟻二匹=白馬
◎ラ△久=4点
(ラ:観察眼の鋭さが感じられます。 久:一匹ではなく二匹なのが物語ですね。)
●はぐれ蛍ひとり今宵の長きこと=前鰤
△葱、や、子、香=4点
(葱:出張かな? それとも家で家族から相手されないの? や:悶々と悩むのは夜の長さの為ばかりではない。)
●一筋の川の分れや桜桃忌=砂太
○紅△葱、資=4点
(紅:「川の分れ」は人生の岐路ともとれて、季語が効いていると思います。 葱:付き過ぎかもですが。)
●山法師もしも時間が戻るなら=五六ニ三斎
○弧△メ、ス=4点
●流木のやうに海原泳ぎたし=るな
◎弧△葱=4点
(葱:「流木のように」に作者の現在の心境が現れています。)
●朝涼や卵滑らす皿の上に=十志夫
◎久=3点
(久:目玉焼きをフライパンから移す瞬間に上手く皿のセンターにとどまったのでしょう。感動の瞬間が伝わってきます。)
●点々と田んぼに波紋芒種かな=メゴチ
○ラ△風=3点
(ラ:何気ない景色ですが、「芒種」に説得力があります。 風:中七の体言止めによる切れで句末の「かな」がもう一つ働かず。)
●トロ箱に向日葵の影届きけり=ラスカル
△葱、風、弧=3点
(葱:魚市場の近くの景でしょうか? 風:切れ字「けり」が本来の「気付き」としての役割をしていて気付くことによって詠嘆が生まれていると思います。俳句は切れ字がしっかり仕事すると五割増しくらいになる気がします。)
●フラココを漕ぐや高まる児の野生=砂太
○ス△や=3点
(や:今どきの子の外の遊びは全てが冒険。 葱:佳句ですが、フラココが「春」の季語なので、迷いました。)
●あぢさゐの顔の行き交ふ私鉄線=資料官
○五=2点
(五:紫陽花は本当に人の顔くらい大きい。私鉄線は江ノ電?)
16●菊挿して紅茶に添ふる角砂糖=風牙
△紅、水=2点
(紅:秋にはきれいな菊が見られる事でしょう。ささやかな幸せ感が伝わります。 水:お疲れ様でした。疲れた時には糖分を。)
●喫茶去の声や嬉しき梅雨の月=メゴチ
△砂、前=2点
●捨てられず鉢に差したる早苗かな=風牙
○淳=2点
●夏の夜の更けラプソディ・イン・ブルー=まさこ
○ぼ△葱=2点
(ぼ:おしゃれな恋句、いいね。 葱:ロマンチックー!)
●左より右巻き多し捩り花=水音
△白、ぼ=2点
(白:観察による新発見。 ぼ:観察力に脱帽。)
●枇杷の実や窓をあければ夜気迫る=秋波
○久=2点
(久:長崎とかの南国の風情がありますね。)
●紫陽花の道に少女のピンク咲く=香久夜
△子=1点
●父の忌やはるかとほくの雲の峰=資料官
△ラ=1点
(ラ:「はるかとほく」に、作者の心情がよく表れています。)
●茶の町に住みゐる人のひね茶かな=弧七
△久=1点
(久:当然と言えば当然かも知れませが始末もちゃんとしていて重厚さがあります。)
●通夜祭に親族集ひ夏も来ぬ=喋九厘
△淳=1点
●梅雨寒やデジタルといふ隠れ部屋=十志夫
△ま=1点
(ま:あ〜、確かに。閉じこもりたくなるこがとあります。)
●蓮庭に群雲破る月明かり=子白
△葱=1点
(葱:時代劇が始まりそう。)
●広がりぬ句友の裾野月見草=五六ニ三斎
△弧=1点
●森の上に朝の月あり豆の花=砂太
△や=1点
(や:地道な生活がふっと幻想に入れ替わる。)
●指相撲の爪赤くなる祭の夜=ラスカル
△雪=1点
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