*A部門入選作発表*


当季雑詠=全70投句(入選49句)

【特選】

一席
●少女等に派閥それぞれ更衣=風牙


◎る、砂、葱、紅○十、水、ス△白、ぼ、雪、修、弧=23点
(る:そう、一見無邪気そうな少女たちも、本当はみんな大変なんですよ@遠い目。 葱:現代的な、諧謔のよく効いた句。 紅:確かにどこにでも派閥はありますね〜。着眼点に◎です。 十:派閥による仲間外れや苛めは、少女たちのほうが陰湿のような気がする。更衣もグループごと。 水:今どきの女の子たちは本当にややこしい。 白: 言われてみれば分かるような。 ぼ:なるほど今の子はそうなんだ。 雪:すでに少女時代からなんですね。ちょっとこわい。 修:心身ともにどんどん成長してゆくのがうまく表現されている。 弧:季語により派閥の有り様が浮き立って感じられます。)


ニ席
●この国のかたちで眠る裸の子=十志夫


◎雪、水、喋、英○砂、葱、弧△五、淳=20点
(雪:上五、中七までは構えて読んでいたのですが、「裸の子」で力が抜けて笑ってしまいました。 水:日本列島のように寝てるわけですね。 葱:面白い比喩! 弧:(「この国の形」とはつまり父母のことでしょうか。眠る赤子だけでなく、その親、ひいては祖先に対する眼差しを感じます。 五:上手い句だ。司馬遼太郎に成り代り、子供たちを激励する。))


三席
●新緑の光を弾く譜面台=ラスカル


◎久○ぼ、淳△る、香、英、メ、ス=12点
(久:ハジクが新鮮です。木漏れ日の情景を思い浮かべました。 ぼ:いい野外演奏会になりそう。 る:光が見えて気持ちの良い句ですね。)


三席
●千枚の植田育む波の音=水音


◎ぼ、ま○る、ラ△久、英=12点
(ぼ:堂々たる一句、文句無し! ま:視覚、聴覚に強く訴えかけられ、その場見ているような感じがします。 る:新潟あたり、もしくは琵琶湖周辺の風景でしょうか。スケールの大きさでいただきました。 ラ:「千枚の」というスケールの大きさに圧倒されます。 久:能登でしょうか。海端にある風景、ついでにお墓も思い出してしまいました。)


【入選】

●ででむしの負ふ一筋の強さかな=弧七
◎秋、メ○香△砂、ぼ、ま=11点
( ぼ:この愚直さに学ぶべき。)

●オカリナの音ほのぼのと青葉の夜=ぼくる
○五、修△久、砂、紅、香=8点
(五:O音の繰り返しが良い。 修:「ほのぼのと」の意味も響きもぴったりです。 久:オカリナが情景にマッチしていていいですね。 紅:風を感じる、癒し系のお句です。)

●ナフタリンの半月無月更衣=雪絵
◎資○る、紅△白=8点
(資:半年たてばナフタリンは昇華してしまうが,その形を月にたとえたのが面白い。 る:この見立ては新鮮で楽しいと思います。 紅:中七の措辞に感心致しました。 白:ナフタリンの減り具合。<夏物から冬物への移行の時に>)

●靴音に寄りくる猫や夜の新樹=紅椿
○ぼ、ラ、秋△風=7点
(ぼ:動物との交感、物語が始まる。 ラ:作者の帰りを待ち望んでいたのですね。可愛い。 風:良い雰囲気ですが季語が動いてしまうので△選。)

●捨て切れぬ昭和の背広修司の忌=ぼくる
○久、雪△十、秋、資=7点
(久:バブルの時のイタリアンブランドですかね。 十:我が家の箪笥にも数着あります。 雪:昭和の背広もですが、昭和の人間は少なからず捨てきれないものが多いです。季語がいいですね。 資:S音の響きが良い。)

●手順よく働く便器聖五月=紅椿
◎十○風△水、喋=7点
(十:近づけば蓋が開き、離れれば水が流れるといった具合に昨今の便器は良くできている。季語も微妙に合っている。 風:「聖五月」の強い詩情に引っ張られずかつ季語が効果的に働いていると思います。◎選迷いました。 水:便器の俳句を初めて見ました。)

●青葉潮積木のやうな荷の過ぐる=雪絵
◎風△砂、ラ、紅=6点
(風:口語旧仮名の「やうな」が文語の「如き」よりも柔らかくこの句の景に効果的だと思います。 ラ:「積木のやうな荷」とは、どのような荷物なのだろうかと、色々想像出来る点がいいと思います。 紅:何を運んでいるのでしょう?中七からいろいろ想像できますね。)

●朝蝉や練乳缶に穴二つ=ラスカル
○雪△る、葱、水、喋=6点
(雪:この練乳、昔は苺にかけてよく食べていました。「朝蝉」という言葉が新鮮でした。 る:避暑地か牧場のような、爽やかな感じです。 葱:苺ミルクを食べたくなりました、季語が効いている。 水:トーストに練乳をかけながら、缶の穴を見ていると蝉の穴のことを考えてしまうのですね、きっと。)

●新緑や石積みの路地子らの声=香久夜
◎子○淳△ラ=6点
(ラ:情景はとても好きです。三段切れになってしまったのが惜しいです。)

●ペディキュアのあゆみ大きく夏に入る=まさこ
○砂、紅△十、雪=6点
(紅:若々しく、気持ちの良いお句です。 十:颯爽とした迫力。三鬼句<おそるべき君等の乳房夏来る>を想起する。 雪:開放感のある夏は若者のもの。うん十年前の話です。)

●もう読めぬ詩人の墓標羽蟻とぶ=るな
○白、弧△五、葱=6点
(白:色々な思いも何時しか消えていく。 五:実景句か?題材が良い。 葱:季語が上手い!)

●緑陰や鳥と口笛鳴き交わす=香久夜
○子、修、ス=6点
(修:気持のよい句です。)

●卯の花腐し何もない秘境駅=資料官
◎白△水、ス=5点
(白:雨の中降り立った山奥の駅。破調が効果的ですね。 水:あるのは、旺盛な緑の木々と雨だけ。)

●大夕焼頬染めし娘の瞳かな=白馬
◎修○喋=5点
(修:瞳の中の大夕焼けに吸い込まれそうです。)

●垣間見の人の思ひや紅牡丹=前鰤
◎五○秋=5点
(五:心情俳句の典型と言える。紅牡丹だから、女性のことを思いやる男性が主人公?いずれにしても、イマージネーションが膨らむ。)

●田水張る待合室は静からし=秋波
○資、メ△弧=5点
(資:誰もいない無人駅,線路の周りで農作業。そろそろ列車が来る時間。良い風景ですね。)

●薔薇二輪紫と薄紫と=風牙
◎弧○十=5点
(弧:同じように見えてよく見ると微妙に違う。よく似た2人の姉妹の姿を投影しているのでしょうか。句またがりのリズムが心地よく感じられます。 十:普通なら「薔薇二輪薄紫と紫と」とすべきところを敢て逆にしたギクシャク感が功を奏している。)

●瓶入りのコーヒー牛乳新樹光=スライトリ・マッド
◎ラ△十、雪=5点
(ラ:瓶入りのコーヒー牛乳、なんとも懐かしいです。子供の頃、銭湯に行った時によく飲みました。 十:銭湯で飲むと実にうまいもの。季語からすると露天湯のついたスーパー銭湯か? 雪:これも昭和な感じ!)

●まいまいの一度に四つ動きけり=弧七
○子、久△風=5点
(久:一匹の角とかのパーツがバラバラに動いて前に進んでいる様子かな。 風:句末の切れ字「(気づきの)けり」が効果的。切れ字としての「けり」は「小さな発見」がそれまでの15音に充分に表現されていると詠嘆を生みます。)

●あめんぼう水の流れに抗ふて=スライトリ・マッド
◎淳△ま=4点

●青紅葉葉に葉の影を透かし見る=秋波
○風△葱、修=4点
(風:◎選迷った一句。◎選と殆ど差はないのですが、季語が動く可能性がほんの僅かにあるような気がしましたので○選。 葱:写生の確かさ。 修:若い紅葉の重なりが美しいんだ。 資:青楓とか若楓だったら採ったと思う。)

●金雀枝やマザーグースの原書本=ラスカル
○水△る、葱=4点
(水:金雀枝はイギリスでもたくさん見ました。金雀枝を見るとイギリスを思い出すくらいです。 る:この季語はやはり、こういう「洋モノ」に合うと思います。 葱:原書で「マザーグース」を読む子どもなんて、もしかしてハーフ?)

●薫風や離婚届の記入例=十志夫
△白、五、ぼ、香=4点
(白:爽やかな自然と人心の乱れの対立。 五:諧謔俳句である。まあ、離婚が悪いわけではない。薫風が吹くかも? ぼ:うまく出直せるか、薫風が応援。)     

●聖五月全身の水を入れ替へる=十志夫
○白、英=4点
(白:本当に出来ればそうしたい。) 

●太陽の塔に卍固めなり=風牙
○葱△久、ス=4点
(葱:面白い! 岡本太郎がアントニオ猪木にはがいじめされている図が頭を過ぎりました。 久:発想がユニーク。塔の曲線がさもありなんと思わせます。)

●日々草散りて花軸の仰向けに=白馬
○香△喋、資=4点

●はつなつや海の香まとふ鍵ひとつ=るな
○五、ま=4点
(五:小さい鍵に香りを与えた巧みさ! ま:鍵に想像がふくらみます。)

●青嵐弱き背中を叩きたる=修一
○メ△秋=3点

●一切の囚はれのなき聖五月=五六二三斎
○英△淳=3点

●えごの花眠りの国へソロダンス=修一
◎ス=3点

●自転車の後ろで船漕ぐ麦わら帽=秋波
△修、英、メ=3点
(修:かわいいけど、あぶないあぶない。)

●新緑や心全開窓全開=ぼくる
○喋△風=3点
(風:元気があって初夏の感じで好ましいです。)

●火の色の牡丹庭師のしゃがれ声=水音
○資△ま=3点
(資:目と耳で感じたものを対比させた構成が面白い。 ま:色鮮やかでしゃがれ声との対比が素敵。)

●老鶯の変幻に節まはしけり=紅椿
◎香=3点

●母の日のとりわけシャイな男の子=葱男
△子、淳=2点

●廃線の朽ちた枕木夏落葉=資料官
△秋、紅=2点
(紅:景が浮かびます。)

●紫陽花の受けし雨粒空に消ゆ=久郎兎
△メ=1点

●梅は実に磨きこまれし銀の匙=まさこ
△ラ=1点
(ラ:磨きこまれた銀匙が、きらきらと光っているのが見えます。)

●影涼し高層ビルの林立す=まさこ
△資=1点
(資:影涼しに実感。)

●風涼しお尻ふりふり歩く犬=子白
△風=1点
(風:一読即景で採りましたが季語は動いてしまうので△選。)

●たそかれの薔薇の紅濃し帰り道=修一
△子=1点

●ひと夏のやうに過ぎさる飛行機雲=葱男
△ま=1点

●頬染めし薔薇の失恋物語=五六二三斎
△子=1点

●目も見えぬ子(猫)を残し逝く端午かな=前鰤
△弧=1点

●冷蔵庫唸り目覚める梅雨の夜=久郎兎
△る=1点
(る:そんなことって、確かにありますよね。)


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