*A部門入選作発表*


当季雑詠=全79投句(入選56句)

【特選】

一席
●青空の少し歪んでしやぼん玉=ラスカル


◎砂、や、秀、雪、メ△る、淳=17点
(や:空はシャボン玉同様完全な円ではない。 秀:しゃぼん玉に映る青空が歪んでいるのでしょうか、はっきりわかる景ですが、ポエム。 雪:空の歪みと捉えたところが面白いです。る:なるほどの句ですね。)


二席
●下萌や轆轤しづかに回り出す=ラスカル


○葱、る、雪、紅、香、修△水、資、裕=15点
(修:季語がきいてます。 葱:「轆轤」という漢字を初めて知りました。「回りだす」と「主体=作者」を消しているのが俳句。 紅:春の鼓動が聞こえてきます。 雪:季節もゆっくりと移り変わってます。 る:春の初めの感じがとてもよく出ていると思います。 水:春が動き出している感じが良く出ていると思います。「しづかに」で実感がこもりました。 香:春の初めの雰囲気がよく感じられます。 裕:春の胎動という感じです。)


三席
●直線を引かぬガウディ月日貝=葱男


◎ぶ○十、子、秀、風、資△清=14点
(ぶ:ガウディの今なお建築のすすむ教会の威容と月日貝の取り合わせの妙が、人間と神との営みをも感じさせる。 十:「寒卵どの曲線もかへりくる」は加藤楸邨。貝の丸味もこれに通ずる取り合わせ。 秀:ガウディの建物は、曲線だらけ。おおらかで、楽しくてちょっと不気味。季語も意外と似合ってます。 資:確かにガウディは曲線美。たまたまBSのガウディの遺言という番組を見ていたので  風:良いとは思うのですがベテランの旨さが目立ってなんか「俳句」という感じで◎では取れませんでした。 清:殻を貝細工に使う月見貝、その形には確かに直線はない。面白い取り合わせ。)


【入選】

●空箱の重なってゆく春愁ひ=雪絵
◎葱、白○水、ラ△清、メ=12点
(白:訳の分からない愁がそれぞれの空箱に。 葱:これまでの日々、自分はいったい何を生きてきたのだろうか?という漠とした愁いは誰にでもあるのでしょうが、「空箱」という比喩がその徒労感を一言でよく言い表していますね。 水:この気持ち、本当によくわかります。 ラ:「重ねてゆく」ではなく「重なってゆく」なのですね。空箱が自ら動いて、重なってゆくような感じがします。 清:ふと愁いが過ぎる気持ちが空箱を重ねる行為と合っている。)

●文机に輪ゴム並べてあたたかし=十志夫
◎茶、修、久○五△秋=12点
(茶:並べちゃうんですね。春だから。ナンセンスな感じがいいと思います。 修:輪ゴムに目を留めたことが素晴らしい。 五:掲句もかなりの詠み手に見える。お茶目な句。ゴム跳びのことが想像される。)

●流木へ潮満ち来るや春の月=ぼくる
◎る、入、秋○久△修=12点
(る:こういう景は大好きです。 入:潮満ち来るやで切って、お見事。 修:春の月のやさしい光。)

●太陽より大きく描かれチューリップ=ラスカル
◎紅○ま、秋△る、砂、や、風=11点
(る:ありますよね、こういう子どもの絵。や:きっと見たとおりに描いている。ま:うまく捉えられていて、この句もまた可愛い!ぎゅっと抱きしめたくなります。紅:類想はありそうですが、子供らしさを表していて、好感が持てます。風:可愛らしくて好きな句なんですが連用中止法で切った句はどうにも苦手なので△選 秋:チューリップの勢いと存在感!)

●ふつくらと椎茸もどす雨水かな=秀子
◎水○茶、修△入、五、紅、ぶ=11点
(水:「ふっくら」が、冬が解けて春になっていく雨水の様をよく表していると思います。 入:きっと九州の温かい一昼夜のことでしょう?関東以北はそうはいかないです。 茶:水や食材の恵みを大切に扱う細やかな心遣いを感じました。作者のお人柄を思わせる句でもあると。 修:物のいのちが見えてくる。 ぶ:二十四節季のひとつ雨水を巧みに読み込み、干し椎茸をもどし料理する楽しみを描き切っている。 五:椎茸に水が戻される。雪溶けも間近だ。 紅:季語が効いています。もどし汁も使って、何かおいしいものが出来そうですね。)

●亀鳴くや閉店のわけ聞かずおく=清一
○や△葱、十、水、風、雪、ぶ、香、久=10点
(や:長い付き合いで店の家庭事情は万端承知である。 十:飲み屋でしょうか。常連客としての心遣い。葱:「亀鳴く」の曖昧さ、朧が句の内容とよくマッチしています。 水:「亀鳴く」とは「順調に事が運ばなかったときの気持ちのズレを表現する季語」とあります。このように使うといいのですね。 ぶ:むつかしいけどユーモラスな季語を、粋な計らいの措辞でさらっと流したセンスがいいと思います。) 風:「亀鳴く」でも良いとは思いますが意図的に情緒を誘っている感じで具体の季語のほうが下十二音がより生きる気がして△選。 雪:何時の間にお店が変わっていることもあります。小さな思いやり。香:世話になった店の閉店はお互いつらいです。)

●春泥や転校生の馴れぬ道=清一
◎資○入、淳、香△久=10点
(入:頑張れと昔の自分に声を掛けているようで新鮮。 資:きっと三学期からの転校生。見つめる優しさを感じた。 香:なかなか積極的になれない気持ちを春泥にからめたところがいいですね。)

●出世とは縁なき夫よ鰆焼く=ぼくる
○水、清、茶△砂、白、風=9点
(水:長いこと家族のために働いている夫へのやさしさがあふれています。「鰆焼く」で落ち着いた日常を感じます。 清:まるで自分のことを詠まれているようで身につまされた。「夫よ」との詠嘆に共感。 茶:自分も出世とは縁なき方ですが、鰆を焼けちゃう方が余程偉大だと思う今日この頃です。風:中七「よ」で良いのかな?と気になってしまって△選。個人的な好みの問題ですが中七で切らない方が句末の終止形の詠嘆が響くような気がします。馬:これでいいのだ。)

●淡雪や壁の時計の無表情=ぶせふ
◎淳○や、ラ△十=8点
(や:デジタルなら殊更に。 十:黙々と文句も言わずに時を刻む時計。季語は「料峭」とか「春寒し」が合うような? ラ:壁時計もまた、「春愁」なのかもしれません。淳:時計が無表情という擬人化がいいですね。)

●朝霧に梅の香溶ける瀬戸の海=喋九厘
◎子○裕、メ=7点
(裕:盛り沢山ですが、瀬戸内海が浮かびます。)

●紅梅に身を薄く立つ女かな=るな
○砂、裕△子、ぼ、久=7点
(ぼ:夢二の絵ような、はかない風情がいい。 裕:身を薄く立つ女ってどんな感じでしょうか、竹久夢二の感じでしょうか。)

●冴返る赤いほっぺが駆けてゆく=白馬
◎喋○ま、淳=7点
(ま:とにかく可愛い!元気そうで何よりです。)

●ひと山の母の着物や山笑ふ=水音
○葱、十△入、五、メ=7点
(十:亡母の着物の整理だろうか。積まれた色彩りどりの着物が「山の芽吹き」のように見えている。 葱:昔の女性はきものを大切にしまっていたものですが、あまり着る機会もなかったのでしょう。感謝も憐憫も、娘の母に対する複雑な思いが読み取れます。 五:山をリフレインさせて、小さい着物の山と大きな本当の山を対照させた句。ユーモアがあり、かなりのテクニックある句だ。)

●ラフマニノフと共鳴したる猫の恋=裕
◎ぼ、ラ△秀=7点
(ラ:「ラフマニノフと共鳴」がお見事!「猫の恋」の句として、類句は一切無いでしょう。 秀:うるさいような、切ないような。 ぼ:ラフマニノフとは大仰な、面白い!)

●英字新聞に包まれ花ミモザ=まさこ
○風、ぶ、資=6点
(資:英字新聞が妙にマッチしている。 風:「英字新聞」と「ミモザ」で○選。句の内容と句跨がりの破調が合ってないような気がして◎選では取れず。それと「花ミモザ」の五音にするために俳句でしか使わない用語はあまり好きではないのと中七の連用中止法も効果が無い気がします。 ぶ:オシャレ〜なお句です。花ミモザが活きますねぇ。)

●紙袋いつぱいにして春の月=茶輪子
◎裕○清△喋=6点
(裕:待ちきれない、はち切れそうな春を感じます。 清:潤んだ印象の春の月を紙袋の柔らかい包み込みもので表現したところが面白い。)

●佐保姫や森に消え去る黒執事=ぶせふ
◎清○五△秀=6点
(清:佐保姫なる春の女神が現れて黒執事なる冬の悪魔を退散させるところが如何にもアニメの世界のようで面白い。五:佐保姫の魔法にかかったように外に飛び出した黒執事。果たしてその運命やいかに!まるで紙芝居を見るかに思えた。 秀:春の森と、執事という言葉はどこかで、響き会ってると思いました。)

●薄氷に映る笑顔の泣いており=白馬
○雪△ぼ、清、裕=5点
(雪:きっと複雑な形に凍ってるんでしょうね。 ぼ:どうしたの?見過ごせない句。 裕:複雑な気持ちが出ていると思います。 清:泣き笑いのように映るところに共感が持てる。)

●梅の香に蘊蓄止まぬ御庭番=久郎兎
○喋△香、裕、修=5点
(修:梅が自慢なんだ。 裕:微笑ましいおじさんという感じです。)

●セーラー服並んで入る梅見茶屋=雪絵
△十、や、白、風、修=5点
(十:長閑な景ですね。や:群れたがるのが、めだか、すずめに女学生。 風:一読即景は好きなんです。 修:いいなあ! 白:華やいだ楽しい風景。)

●初蝶や匙一杯の幸福論=清一
○秀△紅、茶、秋=5点
(秀:「幸福論」と纏めてしまわないで、具体的なものが欲しかったとも思いましたが、「匙一杯」と言えば砂糖とかハチミツとかクリームとか、やっぱり、幸せなものを想像してしまうので、これでよかったのかも。紅:こういう句は自分には読めないので、とても憧れます。 茶:匙一杯、一口の食べ物では空腹を満 たすことはできません。しかし、ささやかなことやものこそ幸福の近道かもしれないのですね。)

●春浅し舌にころがす五色豆=紅椿
◎十△清、茶=5点
(十:視覚、味覚、触覚からくる季節感。実感あります。 茶:五色豆をころがすが早春にぴったりだなと思います。大きな動きのない状況も。 清:早春の頃の五色豆の味は仄かな香りがして楽しめる共感の味の句だ。)

●春景色をんなの似合ふ港です=水音
○ぼ、風△砂=5点
(風:◎候補。上五の体現での切れだと弱く下十二音が上五の説明風なのが残念。切れ字を使って強引に切って欲しかった気がします。 ぼ:こういう演歌調、好みです。)

●封筒がことりとバレンタインの日=裕
○砂、紅△ぶ=5点
(紅:封筒の中身は何でしょう? ちょっとミステリアスで、肩に力が入ってない所に惹かれました。 ぶ:おそらく、息子に届いたValentineデーのチョコの包みを、微笑ましくも複雑な心境で見守る母親の気持ちではないだろうか?)

●淡雪や赤帽を呼ぶアナウンス=資料官
○喋△ま、ラ=4点
(ま:東京駅に赤帽さんはいるそうですね。クラシックな建物と赤い帽子と淡雪と。 視覚的にも美しいですね。 ラ:これから、ドラマが始まりそうな予感。)

●色淡き野菜のクレヨン囀れり=まさこ
△水、喋、茶、資=4点
(資:目と耳でしっかり春をとらえている。 茶:「野菜のクレヨン」でいただきました。「囀」の擬人も春らしくていいと思います。 水:野菜由来の色素のクレヨンは、素朴だけれど心弾む色でもあります。囀りとよく響き合っていると思います。)

●野を焼くや雨意の兆せる西の空=るな
◎五△淳=4点
(五:野焼きに西より雨が近付く。火と水の格闘劇が待っている。)

●梅園や村にひとつの信号機=紅椿
◎ま△雪=4点
(ま:静かな村に梅の花の咲き満ちている景が浮かんできます。穏やかで、ちょっと切なく。雪:人が来ることも少ない梅園。でも梅は律儀に咲き続けます。)

●笛を吹く指のおどるや春日影=ぶせふ
△葱、秀、喋、修=4点
(葱:河原か公園の木の陰で、フルートかなにかの練習をしている風景でしょう。まわりの人の迷惑にならないように、少し隠れるようにして練習している姿がいいですね。楽しそうにリコーダーを吹いている子供を想像しました。 修:指が見えてきます。)

●もう髪は染めぬと云ふ母薄紅梅=秋波
○久△白、ラ=4点
(ラ:作者の哀しい感情が、切々と伝わってきます。 白:おしゃれな母だったが。)

●千羽鶴折る手の細さ春浅し=裕
○子△紅=3点
(紅:入院中でしょうか?春もそこまできています。頑張っていただきたいですね。)

●春浅し千の欠片に水は割れ=秀子
◎香=3点
(香:薄氷が割れる様子を水が割れるとしたのが初春らしい表現ですね。冬の季語を使わない工夫? )

●春浅し僧立ち去りて風の音=子白
○白△ラ=3点
(白:すっと一陣の風。 ラ:「諸行無常の響きあり」ですね。)

●飄々と暮らす父の背木瓜の花=秋波
○白△ぼ=3点
(白:この父が私を育ててくれた。 ぼ:良い句ですが、類句あるかも…。)

●風水に明るき地主梅の花=五六二三斎
○る△修=3点
(る:季語も良いし、何となく面白いなと。 修:そう言われれば梅はその場におさまって見える。)

●ぼんやりと若き母ゐる朝寝かな=紅椿
○入△ま=3点
(入:言葉なし。 ま:そのお母様はもしかすると、今の自分よりずっと若い頃のお姿でしょうか。)

●ままごとの母なるしぐさ待雪草=葱男
○秋△雪=3点
(秋:微笑ましい情景です。季語もいい。)

●あかんぼの湯浴み雨水の昼下がり=秀子
○ぼ=2点
(ぼ:雨水が絶妙です。)

●恋猫の誰のせいでもありませぬ=入鈴
△ぼ、秋=2点
(ぼ:ははは、ちげーねえ。秋:猫は本能で生きるのです。)

●残雪の山に入り行く単線路=久郎兎
△五、淳=2点
(五:山に入り行く単線路。旅の句はロマンがある。)

●飛梅の白さに光る日の白さ=香久夜
○メ=2点

●春一番小さき鍵穴通り抜け=水音
△入、資=2点
(入:何か突破口の比喩のようです。 資:うまい。その行く末は)

●春つげの無量光なり枝の先=茶輪子
○ぶ=2点
(ぶ:木の芽が立ち、春を告げている。無量光という言葉がとても奥深く宇宙の運行まで暗示しているよう。)

●足あとの砂に消えゆく春の風邪=雪絵
△葱=1点
(葱:「春の風」と思わせて「春の風邪」、読み下しと思いきや、二句一章。その仕掛けが面白い。)

●新しき名札貰いし梅の花=修一
△葱=1点
(葱:「梅の花」を校章にする学帽はよく絵本などで見かけますが、昔昔の、新入学のころの希望と不安に満ちた感情を懐かしく思い起こしました。)

●朧夜のスマホの光ほの青き=まさこ
△る=1点
(る:現代的な情景が、雰囲気のある季語とよく合っていると思います。)

●通い猫呼べど聞こえぬふりをして=白馬
△子=1点

●白梅は真心ひとつ花言葉=喋九厘
△子=1点

●ターレーの咥へ煙草や春の風=十志夫
△ま=1点 (ま:市場の活気が伝わり気持ち良いです。)

●春めくや大温室の寒暖計=資料官
△紅=1点 (紅:大温室の中は、お花でしょうか?しっかり管理されて、見事に咲いているのでしょうね。)

●半眼の野良猫すわる枯葉かな=修一
△や=1点 (や:半眼で眠れるのは猫の特技である。)

●豆グラス江戸びーどろの雛遊び=入鈴
△香=1点 (香:レトロな物が並び、楽しくなります。)

76●湯けむりをエッセーにして梅の枝=茶輪子 △メ=1点


A部門入選作〈back number〉

創刊号 2号 3号 4号 5号 6号 7号 8号 9号 10号 11号 12号 13号 14号 15号 16号 17号 18号 19号 20号 21号 22号 23号 24号 25号 26号 27号 28号 29号 30号 31号 32号 33号 34号 35号 36号 37号 38号 39号 40号 41号 42号 43号 44号 45号 46号 47号 48号 49号 50号 51号 52号 53号 54号 55号 56号 57号 58号 59号 60号 61号 62号 63号 64号 65号 66号 67号 68号 69号 70号 71号 72号 73号 74号 75号 76号 77号 78号 79号 80号 81号 82号 83号 84号 85号 86号 87号 88号 89号 90号 91号 92号 93号 94号 95号 96号 97号 98号 99号 100号 101号 102号 103号 104号 105号 106号 107号 108号 109号 110号 111号 112号 113号 114号 115号 116号 117号 118号 119号 120号 121号 122号 123号 124号 125号 126号 127号 128号 129号 130号 131号 132号 133号 134号 135号 136号 137号 138号