*A部門入選作発表*


当季雑詠=全72投句(入選51句)

【特選】

一席
●操舵室の小さき神棚雁渡し=雪絵


◎ま、紅、風○葱、や、水△弧、十、ラ、る、ぼ=20点
(ま:海と空の青さの中に自然の厳しさを感じとらせてくれる素敵な句です。 紅:操舵室を見た事はありませんが、自然を相手の仕事ですから、小さいながらも立派な神棚があるのでしょう。季語が大きいので、いろいろな情景が想像でき、秀逸だと思います。 風:中七を体現(神棚)で切って座に季語(雁渡し)を置く発句体が成功。体現と季語が直接ぶつかる事によって作者の意図した句意とは関係のない景がいくつも立ち上ります。これが本来の景と重なり合って複雑な景を作り出しています。 葱:季語を十二分に効かせたシチュエーションですね、おみごと! 水:小さな漁船が小さな港に係留されていて波は静か。そこに老漁師がいて、、。 や:日本の舟に必ず祀られるが、外国船では??? 十:リアルな描写。 ラ:きちんと出来ているのですが、類句がありそうです。 る:季節のうつろいと、人間の素朴な営みの対比に、好感が持てる。 ぼ:素朴な信仰と生活。)


ニ席
●校庭は白の優勢曼珠沙華=資料官


◎る、香○雪、久、五=12点
(る:一読、彼岸花の色のことかと思ったが、校庭ということは、きっと運動会なのだろう。そんな多重構造(?)が面白い。 香:曼珠沙華の赤に運動会の白組をもってきたところが上手いですね。 雪:曼珠沙華が校庭にある風景!しかも白。少し驚きでした。 久:運動会が行われているのかと思いましたが、曼珠沙華にも白があるようで。)


三席
●要らぬもの仕舞ふ空箱秋の暮=十志夫


◎久、淳○メ△葱、紅、香=11点
(久:空き箱も要らぬものかと。断捨離は難しいですね。 葱:「要らぬ」のに捨てずに「仕舞ふ」のですね、秋の暮れですかあ〜。 紅:要らないのだけど、捨てきらないで箱にしまう。よく分かります。)


三席
●鬼城忌の待合室に聴くバッハ=るな


◎水、子△ラ、砂、雪、ま、五=11点
(水:眼科の待合室を想像してしまいました。 ラ:和と洋のミスマッチが面白いです。 雪:バッハを流す待合室ってどんなところでしょうか。)


【入選】

●きゆつきゆつと磨く革靴小鳥来る=ラスカル
◎雪○ま、喋△や、十、紅=10点
(雪:今にも音が聞こえそう! ま:きゆつきゆつと季語が響き合っていてとても気持ちの良い句です。 や:今日はご機嫌ピクニックなど。 十:オノマトぺが効いています。 紅:気持ちの良いお句です。)

●コスモスの揺れて端役の出番待ち=ラスカル
◎ぼ○水△や、雪、風、子=9点
(ぼ:ペーソスあり、コスモスがやさしい。 水:幼稚園の発表会かな。コスモスが可愛い。 や:主役はずっと舞台だからなあ。 雪:「端役」が何ともいい。 風:確かにコスモスって端役感ありますよね。)

●スーツケース転がす音や金木犀=資料官
◎ラ○修、風△水、香=9点
(ラ:転がす音の「聴覚」と、金木犀の香りの「嗅覚」の融合によって、立体感のある句になったように感じられます。 修:住宅街を行く外国旅行の大きなスーツケースが音と匂いでリアルに、その興奮までも感じられる。 風:◎候補。(金)木犀(嗅覚)に音楽(聴覚)をあわせるのは常套手段ですが音楽ではなく生活音をあわせたのは新鮮。金木犀のある道は高級住宅街を想像させますので少し日常から離れたスーツケースがよく響きあっていると思います。 水:夜により強く香りを感じるので、夜の風景だと感じました。)

●太刀魚や市のオモニの眉細し=風牙
◎修△十、ラ、砂、雪、る、紅=9点
(修:鋭い眉、まなざしの年配の朝鮮人女性。 十:いかにも、という納得の句です。 ラ:よく観察されています。ただ、太刀魚が細いものなので、句としては「眉太し」の方がよいような気がします。 雪:季語がよく合ってますね。 る:太刀魚も細いという点がやや気になるが、市の喧騒の様子が伝わる。 紅:韓国の市場の景なんですね。「太刀魚」が秋の季語とは知りませんで、学ばせていただきました。)

●釈迦牟尼は美男供物の桃香る=砂太
◎白、五△久、資=8点
(白:聖と俗との取り合わせが良いですね。 久:上品な色気の極みでしょうね。 資:鎌倉の大仏さんか。美男に桃の組み合わせが妙。)

●口紅は決まり車窓の曼珠沙華=五六二三斎
◎資○弧、砂=7点
(資:車窓に写る顔,その向こうに曼珠沙華。そんな風景を想像。)

●ジョーカーのまた戻り来る夜霧かな=紅椿
◎十○る△葱、久=7点
(十:婆抜き。夜霧との取り合わせの意外性が面白い。 る:やや既視感はあるものの、晩秋の夜長の感じが出ていると思う。 葱:なんだか我が「懐古趣味」を満たしてくれるフレーズです。 久:悪運が霧の中を廻りますね。人生のようでもあります。)

●燕帰る噴火警戒すり抜けて=資料官
○弧、雪、香△水=7点
(雪:渡り鳥にとっても受難ですね。着眼がおもしろい!阿蘇もまだまだ噴火が続いてます。 水:桜島だの阿蘇だの燕も大変。)

●幸運に出会ふ力や鰯雲=水音
○葱、資、メ=6点
(葱:確かに「鰯雲」に出会うと少し幸せな気分になります、朝焼けにもそんな力があるように思います、あと、海とか聳え立つ山とか。)

●満月と出かけて家に連れ帰る=修一
◎砂○紅△白=6点
(紅:発想がおもしろいです。子供の頃、どこまでも月が付いてくるのが不思議でした。 白:一杯飲んでもまだ満月。)

●鰯雲空を水族館にして=五六二三斎
◎葱△喋、メ=5点
(葱:まるで大きな水槽の中を鰯の大群が泳いでいるようです、「見立て」が成功していると思います。)

●大いなるタクラマカンの月夜かな=ぼくる
◎や△香、子=5点
(や:地表を漂ひ遊ぶ友なり、顔が目に浮かぶ。)

●十三夜ヨーガダンスで螺旋描き=子白
◎喋○ラ=5点
(ラ:「螺旋描き」という具体性がよいと思います。)

●蓮の実飛ぶ小声で恋の話など=十志夫
○ま、ぼ△修=5点
(ま:季語がとても良く、弾んだ心がつたわってきます。 ぼ:なになに? 修:小声で、が巧い。季語の斡旋が最高。)

●姥の押すカートあふるる新生姜=まさこ
○る△弧、喋=4点
(る:買ってきたのか、採ってきたのか。いずれにせよ、季語のもつ生命感のようなものが感じられて好き。)

●絵唐津の絵付け体験小鳥くる=雪絵
○資△水、五=4点
(水:唐津焼は色とか質感とか秋に合う感じがする。小鳥がきて軽やかな絵が描けそう。)

●口説きたき菊人形の武者の目に=美遥
○五、淳=4点


●強面の表彰さるる菊日和=ラスカル
○十、風=4点
(十::「菊」の取り合わせからすると警察官の永年勤続表彰かな? 眉間に皺寄せた照れくさい表情が浮かびます。 風:リアリティと小さな発見が好きです。)

●月あかり宙を舞ひゐる田中泯=まさこ
○紅△葱、雪=4点
(紅:「まれ」の時とは全然違う田中泯さんも素敵ですね。 葱:個人的に田中泯さんの大ファンなので、、、。 雪:田中泯の独特の踊り!月あかりが似合ってます。)

●妻ならばもうそろそろか秋簾=ぼくる
◎弧△淳=4点

●父母の姿なき家すがれ虫=修一
◎メ△資=4点

●レンズ越し土手一面に彼岸花=香久夜
○修△資、淳=4点
(修:精巧な人工物を通すことで逆にリアルに感じられる。)

●をなご衆の首筋白し風の盆=やんま
○砂△白、ぼ=4点
(白:風趣が綺麗ですね。 ぼ:いいなあ、ほのかなお色気。)

●外輪山下りて釣瓶落しかな=雪絵
○久△葱=3点
(久:下れば山蔭で急に日暮れて寂しいですね。 葱:雄大な風景がイメージされます、大噴火しないでいてほしいものですが、人間の力は自然の前では無力ですね。)

●木の間より覗く白波秋遍路=紅椿
○ぼ△ま=3点
(ぼ:映画のシーンみたい。)

●銭湯や釣瓶落の金盥=白馬
○子△久=3点
(久:銭湯のその状況を思い浮かべ得ないのですが、面白そう。)

●バケツには残念賞の鯊の群れ=久郎兎
○ラ△風=3点
(ラ:「残念賞」という言葉を使った句は、初見です! 風:「鯊釣り」ではなく本命が別な釣りでの外道としての「鯊」にもう一つ共感できず△選以上では取れず。)

●赤とんぼ遍路道にてたわむれり=英心
△風、子=2点
(風:秋らしい気持ちの良い秋遍路の句だと思います。)

●秋彼岸線香並べ反省す=メゴチ
○白=2点
(白: 皆がこの様な心境を持てば、平和は訪れる筈。)

●かりものの傘のあわいろ秋の薔薇=風牙
△弧、メ=2点

●島原の母娘(ははこ)太夫の秋座敷=喋九厘
○や=2点
(や:歴史にずっしり深さと重み。)

●秋麗や金目銀目の白き猫=るな
○十=2点
(十:左右の瞳の色が違う猫はOdd Eye<日本では金目銀目>と呼ばれて縁起ものだとか。金銀白と錦秋が加わり色彩豊かです。)

●長月や背表紙にある銀の文字=るな
○子=2点

●彼岸花街道沿ひに列をなす=メゴチ
○淳=2点

●彼岸花極楽道中真っ盛り=英心
○喋=2点

●虫の音がリルリルリルと響きおり=淳一
○香=2点
(香:そのままを詠んだ句ですが、リルリルリルという擬音は初めてで面白いです。)

●陸奥の地蔵の笑みや赤のまま=やんま
△砂、喋=2点

●桃を剥くほろほろ愛を滴らせ=砂太
○白=2点
(白:何となくエロティック。ほろほろが良いですね。)

70●隣屋の般若心経秋深し=子白
△五、淳=2点
(葱:子白さん、失礼しました、誤記でした。「隣室」ではなく「隣屋」がご本人が清記された言葉でした。)

●あの世でも元気に暮らせと彼岸花=喋九厘
△や=1点
(や:会者定離とは知っていながら。)

●雨垂れの絶え間なく秋薔薇かな=美遥
△ま=1点

●駅弁の新製品や秋麗=水音
△修=1点
(修:秋が新鮮に感じられます。)

●父と子のラリーの続く鰯雲=紅椿
△白=1点
(白:仲良し親子の微笑ましいテニス風景。)

●月白や嘘をつかないインデアン=葱男
△修=1点
(修:信頼して待っていていいんだ。)

●姫置かれ菊人形の恋実る=美遥
△る=1点
(る:菊人形を擬人化した句には、哀れを感じさせるものが多いが、これはハッピーエンドで良かった。)

●歩道橋影の並んで小望月=香久夜
△メ=1点

●曼珠沙華三百万本染まりけり=香久夜
△ぼ=1点
(ぼ:こりゃまた豪勢な!)


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