*A部門入選作発表*


当季雑詠=全80投句(入選55句)

【特選】

一席
●くしやくしやの信濃日報桃届く=紅椿


◎や、五、ま、香、弧、久○葱、砂、ラ、雪△ぼ=27点
(や:オラガ処の桃は日本一、信濃日報にもきっとそう書いてある。 五:くしやくしやの表現いいですね。信濃日報から涼しさが伝わってくるし、郷里の父母の皺みたいにも思える新聞紙。 久:足が地についたような句でとてもいいです。 葱:「信濃日報」という具体性がとても効いていますね。 ラ:信濃日報に包んであったのでしょう。省略の技法が上手いです。 雪:地方新聞の包みで桃の産地がわかりました。 ぼ:故郷からであろう。くしゃくしゃを広げて拾い読みも。))


ニ席
●描きかけのままの絵日記蝉の声=ラスカル


◎子、資、雪○淳、秋△や=14点
(資:夏休みの宿題は進まないけどセミの声はどんどん変わり夏の移ろいを感じる。懐かしい夏の風景です。 雪:今でも絵日記の宿題ってあるんでしょうかね〜。大昔の自分をみているような・・。 秋:夏休み真っ盛り! や:夏休みの宿題は完成させた試しがない、分かる。)


ニ席
●噴水のてつぺんにある重さかな=十志夫


◎ぼ○風、メ△白、葱、資、雪、秋、喋、久=14点
(ぼ:なるほど、納得です。俳句らしい発見。 風:俳句ならではの表現方法で面白いと思いますが「 噴水の頂の水落ちてこず  長谷川櫂 」を知っていたため若干類想感を感じて◎選ではとれず。 白:てっぺんが一番重い。 葱:そこから「落下」を始めるということは「重たい」という感覚を揺り起こしますね。 秋:水の描く放物線がうまく捉えられている。 久:ああ、無重力。)


【入選】

●心太すらすらすらと嘘をつく=まさこ
○五、紅、喋、弧、久△十、メ=12点
(五:なかなか諧謔大好きの作者。風牙さんかな? 紅:「心太」に「嘘」をもってくるとは、心憎いですね。 久:押し出されて光る中に何かあるのでしょうか。 十:軽い嘘が大きな嘘に繋がることってありますね。罪のない嘘ならいいのですが。)

●帰省子のスマホで見せる通信簿=紅椿
◎砂○風△や、る、十、ラ、ま=10点
(や:現代っ子と時代遅れの爺婆と。 風:◎選の29同様リアリティと現代性での○選。俳句としての完成度はこちらの方が高いと思いますが特選句に比べるとやや類想感を感じます。 る:たぶん、親がその子(迎える側からすると孫)の通知表を、ということなのでしょう。その点がややわかり難かったのですが、現代的だと思います。 十:現代の景。 ラ:「現代」ですね〜!<苦笑>)

●釈迦釈迦と蝉の鳴くなり浄土院=子白
○や、秋、香△五、淳、水、メ=10点
(や:言われてみればそうかと膝を打った。 秋:擬声語が妙。 五:2週間の命の蝉。命の大切さが滲む。 水:釈迦釈迦なのですねぇ。浄土院でねぇ。ほぉ〜 へぇ〜。)

●半夏雨鏡に残る指の跡=まさこ
◎紅○砂、資、修△ラ=10点
(紅:しっとりとした、情緒のあるお句で、惹かれました。 資:長雨の兆し,鏡に残る指の跡はなんだろう? ラ:きちんと出来ている句ですが、類句がありそう。)

●屋上にボールの残る残暑かな=水音 
◎葱、十△風、メ=8点
(葱:映画のワンシーンのような映像です。いくつもの物語がその屋上に紡がれたことでしょう。 十:暑さの象徴としてのボール、おそらくオフィスビルの昼休み用のバレーボールでしょうけれど、高校の屋上に残る野球とかテニスの球と考えるとロマンがある。 風:この感覚はよくわかります。)

●騒がしきフードコートに涼みおり=淳一
◎風、修△る=7点
(風:上五「騒がしき」に説明の匂いを感じ○選とも思いましたがオリジナリティ、リアリティ、現代性で◎選。 る:これも現代的。都会人の孤独のようなものも感じられます。)

●七月のリュックの並ぶ二番線=雪絵
○五、水△葱、十、資=7点
(五:二番線はおそらくローカル線の乗り場。いい山行を! 水:「七月のリュック」という言い方がうまいと思います。 葱:数字をうまく組み合わせて、それぞれが特別な何かを語っています。 十:何処の駅でしょう? 小学生の遠足の景とも、山登りの人たちのそれとも取れますね。 資:山行きの電車が出るホームの風景。立川駅の二番線などなど,夏を感じさせる。)

●炎天へ金子兜太の文字掲ぐ=ラスカル
○る、ぼ△葱、水=6点
(る:時事句なのですが、もしもあの内容が忘れられてしまったとしても、兜太の文字というのは炎天によく合うのでは。 ぼ:見ました、見ました。兜太の力強い怒りの書。 葱:兜太にヒロシマの句があったように思いますが出てきません、どちらにしても、世代的にも句柄にしても彼の句と、熱い炎天の敗戦は呼応しています。 水:私も掲げたかった。知らなかったのよ。)

●遠雷のフラッシュ地球を写しけり=白馬
◎水○香△久=6点
(水:宇宙から見た大きな景が鮮やか。 久:発想がいいですね。)

●風の道濠に有りけり糸蜻蛉=砂太
◎秋○修△風=6点
(秋:端の道路はとてつもなく暑いのに水の上だけ涼がある。 風:類想感はあるのですが「涼しさ」を感じる一句。「けり」の使い方も的確で効果を上げていると思います。)

●休漁のトロ箱乾く土用東風=雪絵
○や、喋△ぼ、風=6点
(や:何かの事情で休業、暮らしは貧しく慎ましい。 ぼ:いかにも手練れの句。隙のなさが少し気になります。 風:上五「休漁の」に説明の匂いを感じるのが残念な一句。)

●ところてん空と宇宙は違ふもの=水音
  ○白、葱、資=6点
(白:ところてんを啜りながら、友人と哲学的な話をしている。 葱:これが「諧謔」」という味か?)

● アイヌ滅びカムイの瀧の落ち続く=ぼくる
◎白△る、葱=5点
(白:滅びの哀切と、それをじっと見つめてきた自然。中七の響きが佳い。 る:哀しいけれども諸行無常。調べも良いと思います。 葱:日本の瀧は「神の瀧」、アイヌにとっては「カムイの瀧」なんですね。)

●大鯉のゆらり近づく大暑かな=風牙
◎メ△紅、修=5点
(紅:大暑ならではでしょうか。)

●桑の実を冷やし固めて口涼し=英心
◎喋○白=5点
(白:冷やしたのを、手の平で丸くして、口に放り込む。ひやっとする。)

●長梅雨の長台詞かなトタン屋根=葱男
◎淳△喋、久=5点
(久:セリフがいいですね。)

●夏雲や機関車トーマス橋渡る=資料官
○ラ△ぼ、秋、入=5点
(ラ:機関車トーマスが颯爽と! 元気を貰える句です。 ぼ:好きですねね、こういう遊びの句も。 秋:子供たちの歓声が聞こえてきそう。)

●夏の日のくもであそんでから帰る=弧七
○る、十△雪=5点
(る:いろいろと深読みをしたくなる句ですが、素直に取っても十分面白いと思います。 十:「くもで」の「で」は独特な用法。 雪:この気持ち、よく解ります!)

●ひまはりの幾千の目のこちら向く=雪絵
○淳△子、砂、香=5点

●あまりりすいそがず好きになりしこと=入鈴
○ま△風、喋=4点
(風:抽象的な下十二音ですが「あまりりす」にはそれも良いかなと思いました。)

●島唄やわらわら笑ふ夾竹桃=るな
○雪△五、水=4点
(雪:中七の表現がおもしろい! :五:わらわらわら!面白い! 水:「わらわら笑ふ」が、南の島の風を感じさせます。)

●精霊の僕は此処にと川の風=久郎兎
◎入△修=4点

●日盛や熊野の宮にわすれ水=弧七
○子、ま=4点

●湯に酒に木の香りけり夏夕べ=葱男
◎る△風=4点
(る:暑い一日も終わって、ホッとするひとときですね! 風:檜風呂に枡酒、これ以上ない夏夕べです。旅行でのワンシーンでしょうか言外の景も見えてきます。)

●ラベンダーこの子を連れて帰らうか=風牙
○弧△ま、香=4点

●飴玉のやうな石ころ水遊び=紅椿
△砂、ラ、修=3点 (ラ:水遊びをするのは子供ですから、何でもお菓子に見えたりして<笑>)

●おろおろと電子書籍に紙魚まどふ=水音  △白、資、風=3点
(白: 紙魚が行き所を間違えて。 資:たしかにシミは電子書籍には手が出せない。なるほど。 風:衣魚を実際に見たことはありませんがさもありなんと思います。)

●黒ネイル浴衣娘の心意気=秋波
△葱、淳、香=3点
(葱:仕事に恋に気合充分! 浴衣だから「恋」のほうか!)


●サングラスかけてキリリと若作り=メゴチ
○ぼ△子=3点
(ぼ:気合の入りぶりが、おかしくも微笑ましい。)

●生者の貌もて潜りたる茅の輪かな=るな
◎ラ=3点
(ラ:ということは、死者が潜ったということでしょうか。怖いです・・・。)

●亡き友の瞳のやうな時計草=修一
○入△子=3点

●何故かしら負けた気になる弱冷車=前鰤
○十△や=3点
(十:分かります、この感じ。 や:負けが込む我が人生、こんな所にも敗北感が。)    

●夏祭お久しぶりと別れけり=十志夫
○入△雪=3点
(雪:こんなことって、けっこうあります。)

●真白なる壁に貼りたる滝の音=十志夫
○メ△五=3点
(五:壁に音を貼る?出来ないことを表現する素晴らしさ!)

●記念碑の上や子らへの大夕焼け=五六ニ三斎
○久=2点
(久:思い出あります。)

●淋しさの果も淋しさ夏帽子=やんま
△白、紅=2点
(白: あの帽子で涙を隠した。 紅:「淋しさ」と「夏帽子」の取り合わせの意外さがいいです。)

●人鳥と書いてペンギン湯帷子=葱男
○紅=2点
(紅:不思議なお句ですね、下五にインパクトがあります。)

●夏霧の淡き光に海静か=前鰤
○水=2点
(水:海の静謐さは作者の心情なのでしょう。これが現場の過酷さをあぶりだしていますね。くれぐれもお気をつけて。 前:福島第一にて)

●風鈴や天国からの父母の声=五六ニ三斎
○子=2点

●飴色に光るうつせみ野分雲=修一
△ま=1点

●乙女らは浴衣袖振る祇園祭=子白
△淳=1点

●ゴキブリと戦う覚悟熱帯夜=秋波
△紅=1点
(紅:季重なりですが、あまり気になりません。私も奮闘しております。)

●酷暑くる多治見しまんと館林=資料官
△水=1点
(水:これだけ暑い地名を並べるとことさら暑い。)

●森林のやうな胸毛や海開き=ラスカル
△ぼ=1点
(ぼ:オーバーな比喩が面白い。)

● 孫悟空やって来さうな大夕焼=ぼくる
△葱=1点
(葱:茜雲の一片が美しい。)

●夏蝶や大寺抜くる通学路=るな
△弧=1点

●虹立つや人間ちょぼちょぼ口開けて=やんま
△弧=1点

●羽抜け鶏眼の強さ失はず=ぼくる
△入=1点

●晩涼や雲崩れつつ北方へ=白馬
△砂=1点

●まだまだと待たされし後蝉時雨=香久夜
△弧=1点

●松の葉に銀の珠つく雨上がり=子白
△入=1点

●水撒きて町家鰻の土間に風=久郎兎
△秋=1点
(秋:京の町屋でしょうか。一瞬の涼。)


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