*A部門入選作発表*


当季雑詠=全71投句(入選48句)

【特選】

一席
●からすうり一つ一つにある光=五六ニ三斎


◎ま○白、紅、メ、弧△葱、修、水、雪=15点
(ま:一つ一つが効いていて、秋の景が鮮やかに見え魅かれました。あまり見かけなくなりましたがからすうり大好きです。 白:それぞれの位置によって光り方が少しづつ違うのですね。 紅:青い空とつやつやの赤いからすうりが見えてきました。 葱:内側から発光しているとの見立て。 修:烏瓜みな異なれる色模様<拙句>と較べるとこの句は見えた実物の感じではなく、内面化し、詩的にのべている。そんな感じ。 水:からすうりのそれぞれの色の深さに秋がいよいよ深まる感じがします。 雪:実物の烏瓜を見て、実感!)


一席
●小春日や母の遺せし端切れ箱=十志夫


◎資○白、紅、久、水、美△葱、ぼ=15点
(資:はははの音感がいいですね。 白:陽の当たる縁側でしみじみと亡き母を想う。 紅:どこのお母さんも端切れを取っておられるのですね。小春日の縁側で箱を開けている作者、小物でも作られるのでしょうか。 久:情景がとても好きです。思い出の1ページでしょうね。 水:どんな端切れが詰まっているのか。母を思い出して心が暖かくなる。 葱:思い出が、哀しみと優しさを両方とも含みます。 ぼ:母上のお人柄が偲ばれます。)


三席
●有明の月やゆらゆら絹豆腐=紅椿


◎修○子、喋、入、水△砂、葱、秋=14点
(修:「ゆらゆら」で動きが出て現実感がある。明け方の雰囲気がよく出ている。物と物との絶妙な構成。 水:早朝の豆腐屋さん。月光も豆腐も柔らかにゆらゆらと、、。 葱:楽しくなりました。)


三席
●かりがねや予後あたらしき散歩道=葱男


◎水○十、資、久、五、雪△弧=14点
(水:「予後」に「あたらしい」散歩道とは人生の新たな局面ということ。希望がありますね。 十:病癒えて自宅療養に。晴れ晴れとした気分を北から渡ってきた雁に重ねている。 資:あたらしき散歩道に何か希望が満ちているよう。 久:寿命が確定したあとの人生ですね。あたらしき、としたところが新鮮です。 五:新しき散歩道が良いですね。自分を変えようとしているのでしょう。一からの出発ですね。 雪:季語で決まり!)


【入選】

●秋祭まづ狛犬の洗はれて=ラスカル
◎る、風○葱、ぼ△十、五、雪=13点
(る:狛犬も、夏の疲れを落としてもらっているような。 風:第三の句型の句を特選で取ることはまずないのですが異例中の異例、言い差しが気になりませんでした。秋祭は収穫への感謝がその本意ですのでさもありなんというリアリティが効いてます。平句でさらっと詠むのも「秋祭」らしいのかもしれません。 葱:ものごとには順序がありますからね、そこからだんだんと気持ちが高まっていくのでしょう。 ぼ:これからの盛り上がりが込められている。 十:いよいよ祭、という雰囲気をさりげなく表現している。 五:狛犬は神社のシンボルなんでしょう。 雪:秋祭の視点が新鮮でした。)

●こすもすや首を左に傾ぐ癖=まさこ
◎久、雪○十△紅、ラ、資、弧、淳=13点
(久:コスモスの茎の柔らかさというか芯の無さを表現されていていいですね。また韓国人が「あきれた」と左に首を傾ぐ癖を思い出しました。 雪:具体的に見事に表現されてますね。 十:10代の少女が浮かんでくる。青春の頃のほろ苦い記憶かも。 紅:うちの家族にもこの癖の人がいます。 ラ:幼い女の子でしょうか。とても可愛らしいです。)

●図書館の消しゴムの音秋深む=十志夫
○砂、修、淳、風△葱、資、美=11点
(修:大→小へ。鉛筆の音でなく消しゴムの音(秋にはかすかな音もよく聞こえる)何を消して何を書くのか。 風:深まり行く秋の感じが良く出ていると思います。但し、歳時記の「秋深し」の傍題に「秋深む」載ってますし例句もあるのですが「深む」に自動詞は無いので文法うるさ型の人は認めない人も多いので外に出す時は「秋深し」或いは「秋闌くる」が無難かもしれません。 葱:静けさに熱い知識欲が内包されています。)

●大花野まんまんなかの哺乳瓶=ラスカル
◎砂、葱△喋、入、修、水=10点
(葱:最後の「哺乳瓶」が最高! 笑ってしまうほど可愛い! 修:「まんまんなかの」で哺乳瓶が巨大に!赤ちゃんは王様。 水:赤ちゃんを連れて大花野へ。赤ちゃんも機嫌が良いことでしょう。)

●どんぐりを降らせ樹根の歩きだす=葱男
◎紅、入○五=8点
(紅:来年への一歩が始まっているのですね。「根」に焦点を持って行ったところが巧みです。  五:樹根の歩き出す。どんぐりもみんな落ちれば身軽でしょうね。)

●人の世の無為嗤いをる鶏頭花=白馬
◎子、秋△メ、久=8点
(秋:原発をはじめ何やらきな臭い昨今。思わず考えさせられる句でした。 久:花も茎も暗くて赤い鶏頭花に無常を感じたのでしょうか。)

●水差しの両手に重し名残の茶=水音
○子、る、ま△入、修=8点
(る:茶道についてはよく知らないのですが、この季節の感じが出ているのでは。 ま:遠のいて忘れていましたが、今丁度時期でしたね。何とも潤いのある季語の斡旋ですね。お姿を想像しています。 修:茶道に疎ければ、名残の茶なるもの知らず。ひね茶頂く最後の茶会、一年の想いは様々。なんと品の良いこと。)

●こすもすや王墓に風の古代より=雪絵
◎白○葱△る、入=7点
(白:静かな風に揺れるコスモス。古代の王の風格が偲ばれる。 葱:格調が高い。 る:「王墓の」ではないかと思うのですが、どんなところなのか想像したくなります。)

●水底の速き流れや初紅葉=美遥
◎ぼ○る△五、風=7点
(ぼ:うーむ、これぞ日本。丈高く、品あり。 る:冷たそうな川<ですよね?>の感じがよく見えます。 五:水底は「みなそこ」と読むのか?初紅葉が良かったかどうか? 風:水鏡を言わずに水鏡が良いですよね。「水澄む」の複合感も良し。「初」が字数合わせのような感じなのが残念。)

●空あふげば松ぼつくりに躓きぬ=雪絵
◎弧○美△久=6点
(久:公園でありがちな光景、松の根ではなく松ぼっくりなので乗っちゃたのかな。)

●宙に浮く生死不明の秋の蜘蛛=白馬
◎ラ、淳=6点
(ラ:「祇園精舎の鐘の声」が聞こえてきそうです。)

●団栗の小道ぽたぽてぽとコツン=資料官
○喋、秋、ぼ=6点
(秋:団栗の落ちるさまを捉えて妙。リズムがいい。 ぼ:なるほど、よく聞き止めましたね。)

●プライドを犬に食わせて秋の空=子白
◎メ△葱、白、十=6点
(葱:気持ちよさが痛快!ですね。 白:そんな気分になる時もありますね。 十:犬に食わせるほどのちっぽけなプライド。所詮プライドなんてそんなもの。)

●新走り島の酒屋の待ち時間=砂太
◎美△葱、雪=5点
(葱:能古島かな? 雪:島時間、でしょうか。)

●小鳥来る長き病棟端の窓=るな
○ま、ラ△白=5点
(ま:沈みがちな心、ほっとしますね。ご快癒をお祈りします。 ラ:入院している方々の、ご快癒を祈りつつ。 白:大きな病院なのか、長患いなのか。秋もそろそろ。)

●崑崙の嶺白々と秋の蝶=ぼくる
○砂△子、白、ま=5点
(白:大きな病院なのか、長患いなのか。秋もそろそろ。 ま:写真で見ただけなのですが、この遥かな景色と秋の蝶が合っていると感じまし た。)

●秋刀魚焼けウーロンハイの芒色=るな
○雪△紅、喋、ラ=5点
(雪:芒色がとてもいい。いただきます! 紅:秋のささやかな幸せ感プラス少しの淋しさを感じるよいお句だと思います。 ラ:「ウーロンハイの芒色」というフレーズが魅力的です。)

●深秋のワインボトルに挿す一輪=るな
○ラ△ま、淳、風=5点
(ラ:何の花を挿したのだろうかと、想像出来る楽しみがあります。 ま:ちょっとドラマティックで素敵です。薔薇の花でしょうか。 風:深秋らしいと思います。)

●剥がさるる衣菊人形匂ふ=風牙
◎十△砂、ぼ=5点
(十:ハトロン紙か何かで包まれて運ばれてきたのであろう。それを衣のごとく見立て瞬間の香をとらえた。 ぼ:最後まで見届けた。)

●菊日和光と影の交差点=秋波
○資、メ=4点
(資:日あたりのよい菊花展は光と影が交わり美しい。)

●登校の子らの声する霧の中=修一
△子、ま、ラ、淳=4点
(ま:霧を晴らすような明るい子供の声が聞こえてきます。 ラ:「夜学」という季語を、五七五で表現したようで面白いです。)

●満月が指の先まで満ち満ちて=まさこ
◎喋△美=4点

●忘れじの古きソファや蛇笏の忌=葱男
◎五△子=4点
(五:蛇笏に祖父が師事してもらっていたせいで、蛇笏の忌は外せません。)

●たつぷりの湯気を召しませ今年米=紅椿
○修△る=3点
(修:語り口で読み手を一つの場面に誘い込む。炊き上がった新米のごはんが見えるよう。 る:この季語で、「湯気」に着目された点が面白いと思います。)

●水青くくまなく青く天高し=秋波
○弧△葱=3点
(葱:音の調子が良い。)

●桔梗(きちかう)のゆれて見返り美人かな=十志夫
△喋、ぼ=2点
(ぼ:たしかに、たしかに。)

●首痛や整体帰りのそぞろ寒=メゴチ
○淳=2点

●鷹渡る沖日波の一日なる=砂太
○入=2点

●父の忌やうなじを過ぐる菊の風=まさこ
△紅、風=2点
(紅:きっと和服をお召しなのでしょう。上品なお句です。 風:上五の切れ字「や」が的確かと思います。)

●後の月天文学者の見る角度=水音
△葱、資=2点
(葱:中秋の名月を観察するときと角度が違うのは、何か、理由があるのでしょう、と、思わせる魅力。)

●燃え尽きしカンナ遥けき空と海=ぼくる
○秋=2点
(秋:遠い青春。湿っぽくなってないのがいい。)

●煉瓦道真中陣取る大蟷螂=久郎兎
○風=2点
(風:一読即景で、中七の真中陣取るが蟷螂らしかと思います。)

●サリサリと蔓ひくさきに烏瓜=入鈴
△メ、五=2点
(五:サリサリとが烏瓜を見た人の実感ですね。)

●野分あとシャンパン色の湖残す=入鈴
△葱、メ=2点
(葱:悲惨な状況なのにそんな風に思えてしまう自分に対する、ちょっとした自虐、諧謔がある。)

●秋暑し望東尼の残す憤の文字=砂太
△水=1点
(水:秋暑しと「憤」の文字とに望東尼の人生を思います。)

●秋雲の曇り空には無かりけり=風牙
△十=1点
(十:一読して当たり前な内容だが、そこには読み手の数だけ解釈があるシュールな句。)

●秋の日や心配無用達者だよ=五六ニ三斎
△弧=1点

●栗名月男は無口の方が良い=資料官
△砂=1点

●苔庭や落葉拾えばホトトギス=子白
△久=1点
(久:美しい情景が浮かびます。)

●シャコンヌに胸裂ける夜秋靜か=前鰤
△秋=1点

●何の日か10・21秋の暮=修一
△葱=1点
(葱:もう、みんな忘れてしまった「国際反戦デー」。)

●頬擦りをするかに迫る秋桜=五六ニ三斎
△る=1点 (る:擬人化なのですが、自分から近付いても良いわけですよね。)

●我が肌をずかずさと吸ふ秋薮蚊=美遥
△秋=1点
(秋:後のない蚊の図太さと必死さが「ずかずさ」に凝縮されている。それを観察する作者のおおらかさも見えてユーモラス。)

●冷まじやゲーム画面に人殺め=ラスカル
△美=1点


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