*A部門入選作発表*


当季雑詠=全69投句(入選54句)

【特選】

一席
●空のまま回る木馬や神無月=ぼくる


◎雪、メ○十、紅、子△五、葱、喋、ま、水、資、香=19点
(雪:なかなか空の木馬は見られませんね。でもすっと響くものがありました。 十:単なる寂しさを超えて、不気味さも感じる。木馬→トロイ→神 の関係性はやや即きすぎ。 紅:季語の斡旋がお上手です。 五:神無月には、遊園地も空っぽ?季語の取り合わせが逆に面白い。 葱:外国映画のワンシーンのような。 資:面白い神無月のとらえ方。)


二席
●つなぐ手の無くて小春の橋渡る=るな


◎ぼ○十、砂、喋、ま、雪、弧△紅=16点
(ぼ:ちょっと切ない。人生の哀感あり。 十:つなぐ手の主は、連れ添った伴侶か、恋人か。「小春」ゆえのせつなさ。 ま:切ないのですが、奥に小さな灯りを感じます。 雪:旨い表現ですね〜。人それぞれに繋ぐ手は違うでしょうが、小春の暖かさに救われます。 紅:小春ならひとりでも楽しめますね、きっと。)


三席
●差し色のからくれなゐや冬に入る=紅椿


◎る、久○喋△五、美、弧=11点
(る:作者の気概のようなものが感じられます。 久:具体的には何も語っていないが、想像を掻き立てますね。 五:手慣れた句であるが、これもエロティシズムの昇華と云えよう。)


【入選】

●客引きの視線流るる街みぞれ=十志夫
◎水○風、淳△葱、雪、久=10点
(水:寒空になかなか客がつかまらないのでしょうね。視線が「流るる」がいいですね。 風:「みぞれ」が良いか「時雨」が良いか読み手で別れるかもしれませんね。 葱:歳末の場末の雰囲気が映画的。 雪:少し危ない雰囲気の景ですね〜。季語がとても効いてます。 久:引き込まれないように注意注意。) 

●切れさうな十一月の肩の紐=葱男
○五、風、砂、紅△雪=9点
(五:葱男さんの俳句大学において初の一句観賞句。葱男さんの持つ独特の感性のエロティシズムが醸し出されています。 風:若干理屈が気になりますがなんとか韻文性を保っているかと思います。 紅:肩の紐が何なのかは記されていませんが、精神的なものかもしれません。「十一月」が効いていますね。あと少しです、頑張って。 雪:(「別れ」を肩の紐で表現。どっきり!です。)

●殺し文句はじいじ大好き小鳥来る=修一
◎や、十、砂=9点
(や:還暦を越えるとこんな句が殺し文<俳>句となる。 十:孫の戦略にやられますね。誰しもが実感の句。)

●オリオンやわれを貫く矢を放つ=水音
◎弧△や、葱、メ、子=7点
(や:喝を入れられた一瞬。 葱:冬の夜空、まっさきにその光を浴びる星座ですね。)

●寒星やシリアもパリもただひそか=弧七
◎ま○や、る=7点
(ま:ただただ静かに平和を祈りたいですね。寒星が効いています。 や:宇宙からみれば何と小さな存在どもが何をうろちょろしているのかと見えるだろう。 る:星に見守られ、ひそかであれかし、という思いでしょうか。そういう時事句の要素を除いても、この地名は効いているような気がします。)

●兄の手に父の面影冬燈=まさこ
○資、久△紅、秋=6点
(資:兄弟が年老いていくと親の面影を見ることが多々ある。そんな風景。久:寒いからその表情が見えたのでしょうね。 紅:親子だとどこかしら似てしまいますが、それが手だったのですね。改めて亡き父をしのぶ作者。)

●菊枯れて箒目深し神の庭=砂太
◎淳○美△子=6点
(淳:おごそかな感じが漂っています。)

●黒帯に少女もゐたり寒の梅=ぼくる
◎香○葱△風=6点
(葱:季語が効いています、早咲きで凛々しく、香り高い! 風:助詞「も」は焦点がぼやけるのであまり好まれませんが、この句の場合は的確ではないでしょうか。寒稽古の頃には梅も咲いているかも知れませんね。初冬の句ではないとは思いますが。)

●聖菓売る大黒様のやうな顔=ラスカル
○雪、ぼ△葱、美=6点
(雪:読めば読むほどいい句だな、と。  ぼ:ちょっと切ない。人生の哀感あり。 葱:サンタではなく、大黒様だ、というところがユーモア。)

●星冴ゆるそこはトトロの通り道=水音
◎ラ○葱△秋=6点
(ラ:メルヘンチックな雰囲気が好きです。 葱:やや甘い感じもするが、トトロファンなのでどうしても肩入れしたくなります。 秋:ロマンですね。はやぶさのニュースもあってタイムリー。)

●焼芋で仲直りしよ日暮坂=秋波
◎喋○ぼ△葱=6点
(ぼ:いいね、西岸良平の世界。 葱:ほっこりとしました、「日暮坂」がいいですね。)

●夜明け前甘きかをりの落葉道=修一
○ラ、メ△風、淳=6点
(風:中七「甘きかをり」を特定して貰えれば○選以上だったと思います。曖昧な表現はぼやかして詩的にしようとしてると思ってしまうんですよね。 ラ:作者の、心の余裕が感じられます。)

●綿虫の消えしあたりの風の声=るな
◎秋△砂、資、メ=6点

●漢(をとこ)ひとり自給自足の葱を抜く=ぼくる
◎葱○水△秋=6点
(葱:いよお! 渋い! 葱も入ってるし。^^; 水:「抜く」葱は葉葱ですね。根深だと掘らないといけないですもんね。充実した生活がみえます。)

●海中に神の道あり鴨の声=砂太
○る、ま△香=5点
(る:ka音の頭韻が響いて、冬らしい感じですね。)

●山頂に経読む人や帰り花=雪絵
◎五○ま=5点
(五:経読むのは、山伏?いや、一般人にしたい。信心深い人の祈り?因みに、私は摩訶般若波羅蜜多心経を暗よう出来ます。 ま:あまり見かけたことはありませんが、祈りを捧げるのにふさわしい場所です ね。)

●繋ぐ手の冷たさ詫びる落葉道=久郎兎
◎紅△る、資=5点
(紅:映画の一場面を見るようです。優しさがいいですね〜! る:素直な句ですね。 資:「つなぐ手の無くて小春の橋渡る」と迷ったが、二人の関係を色々想像できて面白かったので。)

●同姓同名ネットに溢れゐる寒夜=十志夫
○水、香△ラ=5点
(水:「寒夜」からすると、同姓同名の人の中には好ましくない人々もいるのでしょうね。 ラ:しんしんとした寒さが伝わってきます。)

●海峡も泣き笑ひ泣き雪便り=喋九厘
○秋△弧=3点
(秋:波が荒れたり凪いだりを繰り返しながら冬になる。)

●感嘆符飛び交ふ冬の紅葉かな=紅椿
○美△雪=3点
(雪:もみじの一枚一枚が感嘆符、なんですね!)

●寒林やもくもく歩む散歩道=資料官
◎風=3点
(風:枯」を冠した季語の句は死や終焉をイメージした殺伐とした句になりがちですが現実の枯野、枯園、寒林は冬芽をはじめ翌春を胎動しています。芭蕉さんが最後に自己の再生を託したのが枯野ですから。中七「もくもく」にそんな雰囲気が感じとれます。)    

●共産党事務所へ蜜柑届けたり=風牙
△葱、久、ぼ=3点
(葱:具体性が面白い。共産党、なぜその党名を変えないのか不思議?みかんもまた冬のマンネリ果物とも言える。 久:ミカンが何を意味しているのか分からないが面白そう。 ぼ:よきかな、変わらぬ反体制派。)

●欠礼の葉書幾重に竜の玉=雪絵
◎資=3点
(資:積み重なった喪中はがきをうまくとらえている。共感。)

●時雨やみ雲間に冴える遠き月=秋波
○メ△淳=3点

●霜月や火の無き部屋にラジオつけ=るな
△や、淳、香=3点
(や:神田川の四畳半の孤独な青春。)

●たつぷりと落ち葉で親子笑ひけり=五六二三斎
◎美=3点

●積む読の山となりしや文化の日=メゴチ
○香△弧=3点

●また一葉スローモーション銀杏落つ=秋波
◎子=3点

●弓なりに小春の空へ摩天楼=五六二三斎
○弧△葱=3点
(葱:都会の摩天楼を見上げた一瞬の景、初めて東京都庁を見上げたとき、スカイツリーを見上げたとき、六本木ヒルズを見上げたとき、など。)

●わが猫は狐の提灯放さずよ=やんま
○秋△喋=3点

●祈り凍つクマリの中の赤い海=葱男
○五=2点
(五:クマリとは何か知りませんでした。とにかく神秘的な出来栄えです。)

●寒鴉ああああああとご出勤=やんま
△る、喋=2点
(る:「出勤」なのかな?と思ったり、ポーの「大鴉」を想起したり。)

●北国のおーいおーいと巡る冬=喋九厘
△ラ、ぼ=2点
(ラ:童謡の「北風小僧の寒太郎」を思い出しました。 ぼ:おーい、風の又三郎やーい。)

●黄落や甘露の水をこくこくと=やんま
○久=2点
(久:マイナスにプラスするかのようでいいですね。)

●山頂で淹れし珈琲霧流る=修一
△ラ、紅=2点
(ラ:山頂に到達したという達成感。珈琲が美味しい! 紅:達成感の中で飲むコーヒーは美味しい事でしょう。)

●七五三玉砂利鳴らす草履かな=香久夜
○資=2点
(資:七五三の音ですね。音感が冴えている。)

●天袋のレコードを出す聖夜かな=ラスカル
△十、ま=2点
(十:喧噪をよそに今年はホワイトクリスマスか。気持ち伝わります。 ま:我が家のことのようです。)

●東京の夜明け冬晴れ動き出す=五六二三斎
△砂、美=2点

●冬晴れや結ぶ力士の博多帯=雪絵
○や=2点
(や:粋だねえ。)

●ポスターの乳首に☆や初時雨=風牙
△砂、ぼ=2点
(ぼ:ははは、楽しや、居酒屋放浪記。)

●頬かむり鐘撞堂の落葉掃く=白馬 ○子=2点

●路を掃く箒の音の冴ゆるかな=まさこ
○ラ=2点
(ラ:箒の音が冴ゆるという、鋭敏な感覚に惹かれます。)

●玄孫なる不確かなもの帰り花=十志夫
△や、久=2点
(や:そう何と近くて遠き存在よ。 久:何かの例えなのかな?)

●古の神恋ひをれば小鳥来る=砂太
△メ=1点

●落ち葉はく老婆の肩に舞ふ枯れ葉=淳一 △子=1点

●しぐるゝや生理用品染むる青=風牙
△葱=1点
(葱:「生理用品」を詠んだ句は初めてのような、北大路翼にあったかな?まづはその勇気に感服、そして句の本意が下品<げぼん>に堕していないところに注目。CM映像が思い浮かびます。あまりリアルにならないための青い液体がなんとも陳腐で悲しい。そこに掬い上げるほどの哀愁があるか、<しぐるるや>、山頭火にうかがってみたい。)

●するすると皇帝ダリア冬に入る=資料官
△五=1点
(五:皇帝ダリアが季語になっていないことを踏まえた句。もしも、将来皇帝ダリアが季語として認められた時には、歳時記に残る句にはなりませんね。)

●朝刊のバイク寒中闇擘く=久郎兎
△る=1点
(る:着眼点は良いのですが、表現がちょっと窮屈でしょうか。)

●天寿てふ喪中はがきや小六月=資料官
△水=1点
(水:天寿と小六月が呼応していいですね。)

●バスタブに頭を預け朴落葉=まさこ
△淳=1点

●妣宛のDM今日も初しぐれ=紅椿
△十=1点
(十:亡くなった母が今なお生存している現世のそぞろ寒。「今日も」は一考の余地あり。)   

●雪蛍手の平に浮く軽さかな=白馬
△水=1点

●呼ぶ声に耳を傾け冬の滝=メゴチ
△十=1点
(十:冬滝を前に耳にとどく声は、おそらく死者のもの。「耳傾ける冬の滝」のほうがリズムがいいような。) 

●幼稚園の小さき祠や神迎え=水音
△風=1点
(風:一読即景とリアリティでの△選。)


※勘違いして「談話室」に投句されていた美遥さんの作品鑑賞です。

●三冬や子規の書簡の硝子箱
◯葱:品格があります。三冬がゆったりとした文学時間を保証してくれています。
●小雪ふるあいつをかばひ肩を抱く
◯葱:あいつ、がいいですね石原裕次郎のダンディズムを思います。
●おん毒見といいまずは酌む雪見酒
△葱:私が言いそう。

※ラスカルさんの句が一句、漏れていました、ラスカルさん、申し訳ありません。

●枯野ゆく真紅の色のスニーカー
葱:色の対照があざやかです。


A部門入選作〈back number〉

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