*A部門入選作発表*


当季雑詠=全84投句(入選句)

【特選】

一席
●堕落論読みつつ目刺うら返す=清一


◎ぶ、秀、紅 ○砂、久、水 △や=16点
(ぶ:私は読んだことはないが坂口安吾の堕落論を読みながら、目刺を焼いて裏返す作者の日常と思索が只者ではない!感じがする 秀:まさしく俳句!この落差が面白い!や:自分の事は自分のみ知る。紅:ギャップがいいですね〜!少し前の時代を思い浮かべました。久:堕落の下、本をめくる横、目刺の回転と動きがあって面白いです。水:昔の青年、今も青年。)


二席
●渾身の太鼓の一打春動く=ぶせふ


◎清 ○や、ま、五、喋、香 △葱=14点
(清:長い冬が過ぎて太鼓一打で春めくと言う気持ちの良い句だ。や:力強い太鼓の音がどんどんと響いてくる。ま:気持ち良く力強く、季語がぴったりですね。香:元気のよさ、躍動感が響きます。五:太鼓の一打にて春が動く。景が大きい。歓びの一打だ。 葱:渾身の一打で動かす春、男意気、ここに極まれり。)


二席
●春愁の口をすぼめるピエロかな=清一


◎葱、裕 ○秀、や、入、五=14点
(葱:泣き顔メイクのピエロが口をすぼめるとますます哀愁が漂いますね、名前が出てこないけど、パントマイムの名優の顔が浮かびます。この句は、自分が詠みい分野の句柄で、先を越された悔しさも感じました。 秀:「口をすぼめる」で頂きました。や:ピエロは一体楽しいのか悲しいのか。入:春愁にピエロというのが、意味深いのかな?五:ピエロも好きでこの仕事やっている訳ではない。お客さんが居れば元気出るのに、人も疎ら。ついつい顔に出てしまう。)


【入選】

●飴色に光る象牙や涅槃西風=ラスカル
◎る、五 ○裕、雪 △秀 風=12点
(る:象牙とこの季語とは絶妙の組み合わせだと思います。しかも、こっくりとした飴色の味わい、良いですね!五:象牙の何が光るのか?は分からないが、おそらく仏像のようなものを想像した。そこに涅槃西風が吹いてくる。秀:象がこの世に置いていった「象牙」、時間がたつごとに、飴色が深くなります。雪:涅槃西風の季語が効いてます。風:いわゆる出来ている俳句というのでしょうか。中七「光る」の表現が安易で既視感を生んでしまうのが残念)

●亀鳴くや僅かばかりの利子ついて=ラスカル
◎香 ○る、久 △秀、砂、裕=10点
(香:季語がのどかでユーモラス。僅かな利子も笑うしかないですね。る:この季語には、こういう俳諧味のある事柄がよく合うと思います。久:普通預金は利率が一桁下がりましたね。亀も鳴かんばかりの実感です。秀:ちょっと、クスリ。)

●青島に坂道多し浅蜊売=裕
◎子 ○秀、水 △紅、修=9点
(秀:青島に坂道が多いのか、なんの知識もないのですが、純粋に、言葉の響きだけで 頂きました。紅:浅利売りの他にも色んな露天商が坂道に並んでいるのでしょうね。雑多な感じがうかがえ、声が聞こえてきそうです。水:チンタオの異国情緒でいただきました。修:チンタオにも日本と同じような生活があると実感)

●緩衝材の気泡つぶしてゐる日永=ラスカル
◎久 ○ぶ △雪、修、メ、水=9点
(久:プチプチって使えないのでしょうね。日永がヒマなイメージを連想させますね。ぶ:いわゆるプチプチを潰し始めるとやまらないのである。w日永の過ごし方ではあるかもしれない 雪:時間とストレスをつぶしているような。水:春ののんびりした日永ですね。修:徒然なるままに無意味なこと?を愉しむ。いいですね )

●朧夜のシネマの中の昭和かな=紅椿
◎ぼ ○メ △秀、ラ、雪=8点 (ぼ:朧、シネマ、昭和とバッチリ決まってます。共感しきり。秀:上5をしっかり、切った方がいいのでは? ラ:お膳立てが揃い過ぎているような気もしますが、やはり心惹かれます。雪:昭和の面影はもう画像の中にしかないのかも。)

●風船のふやけて歪む世界地図=清一
◎や、メ △十、ま=8点 (や:地球の形には歪まぬものなり。十:地球儀のような風船。空気が抜けて歪む様子が現代を象徴しているようにも。ま:このゆがんだ感じと、今の世界のゆがみとが響き合っていると感じます。)

●卒業歌カーテン白き保健室=紅椿
◎修、砂 △ラ、香=8点
(修:最後にみんなで歌うことで全て浄化されてゆく感じ。保健室という特別な空間、マリア様のイメージ ラ:カーテンの白さが鮮明です。)

●食パンは八枚切や朝桜=水音
○茶、修 △ぼ、ま、資=7点
(茶:お花見に持参するサンドイッチを準備する場面がよく浮かび上がってきました。修:なんで8枚?パ、ハ、アと韻?ちなみに我が家は六枚です ぼ: 優雅な朝食ですね。ま:何気無い日常の一こま、季語が良いですね。どんな方で、どういう風に暮らしていらっしゃるのかと想像しています。資:関西には八枚切は売っていないそうですね。こだわりと朝桜のさわやかの組み合わせが面白い。)

●柳絮降るもう働く日なき吾に=るな
◎ラ △入、葱、ぼ、ぶ=7点
(ラ:作者の感慨が、ひしひしと伝わってきます。入:柳絮に降ってほしいな、私だったら。ぼ: リタイアした時の感慨、男なればこそ。ぶ:おそらく働きづめの人生だったと思う。仕事から解放された安堵と寂しさがよく表現されたお句だと思った。 葱:季語が効いてきますね。)

●うたふごとカンパを募る花の午後=まさこ
○十、紅、葱=6点 (十:人の集まる場所でよく見かけます。中には目的のはっきりしないものもありますね。紅:何のカンパでしょうか?上五が明るくて、カンパもたくさん集まりそうです。 葱:何のカンパでしょう? きっと、周りには花見の宴の輪が広がっているのでしょう。いい具合に酔いもまわり、そこで愛らしい女性にうたふごと募られたらカンパしてしまいますよね。)

●草青む線路の先の先へ行く=葱男
◎喋 ○ぼ △ラ=6点
(ぼ: 心の弾みが伝わって来ます。ラ:リフレインが効果的。)

●石炭のにほふ窓辺に山桜=香久夜
◎淳 ○喋 △メ=6点

●人体模型その脇腹の春の闇=秀子
◎ま ○葱 △十=6点
(葱:人体模型が孕んでいる「闇」とは、すごい感性! や:面白い視点。やや作り過ぎという感じもありますが。)

●たんぽぽや一人ぼつちの子にエール=秀子
◎雪○資△葱=6点
(雪:作者のやさしい目線を感じます。 資:たんぽぽの優しさをうまく表現したところに共感。 葱:こんな句を詠める人、敬愛します。)

●レジ袋提ぐる警官あたたかし=十志夫
○淳、砂 △茶、風=6点
(茶:レジ袋の庶民性と町のおまわりさんとのマッチがほのぼのと感じられました。風:本来的な時候の季語としての「暖か」より心象としての「暖か」がやや強いような気がします。)

●イスラムの祈り葉牡丹茎立てる=風牙
◎茶 ○ま=5点
(茶: 葉牡丹は「葉」の部分が大きく目立ち、目につくのですが、それを支える細い茎が「祈り」のささやかさにリンクしていて、見事な取り合わせの御句に思いました。ま:季語が生きていますね。祈りが届きますように。)

●落ち椿少し落ち目の露店商=資料官
○子 △喋、淳、清=5点
(清:落椿に落ち目何か駄洒落が効いているようだが深刻。

●饒舌な卒寿の乙女桃の花=十志夫
○清、裕 △香=5点
(清:九十歳になっても乙女心を持つ人は桃の花のようで可愛い。香:母も卒寿です。昔のことをよく覚えてるなーと感心します。よくしゃべります。)

●雛白し奥鎌倉の昼下り=入鈴
◎風 ○修=5点
(風:下五の表現が若干安易で○選とも思いましたが好みなので◎選。修:貴い方の末裔がひっそり暮らしているような。「昼下り」でなにか滞っているような、想像を誘われます )

●目印はミモザの大樹古本屋=まさこ
○入、雪 △や=5点
(入:力強いし、パリの古本屋かと思ったりもして、古本頑張れ!雪:黄色の大木、すぐわかる目印です。や:花時が過ぎても感覚が覚えている。)

●黄水仙凛と佇む通院路=メゴチ
○資△子、裕=4点
(資:病院通いの励ましの黄色い花が嬉しい句。)

●祖父の背に刀傷あり落椿=五六二三斎
○清、香=4点
(香:戦争で?いや、もっと前?見るのは怖そうです。清:詠者は祖父の背中を見てそこに意外にも刀傷があった、そこで思考がポトリと止まったかのようだ。)

●引鴨の川は平らに流れをり=雪絵
◎資△水=4点
(資:静かになった川面の風情をうまく現している。 水:川が「平らに」でいただきました。)

●三日目に便秘解消ホーホケキョ=子白
○風、ぼ=4点
(風:上12音にぴったりな下五。ぼ: ははは、いとおかし!)

●酌むほどにつのる面影花の雨=ぼくる
○ラ △五=3点
(ラ:心情的に、とても共感出来る句です。五:つのる面影と云えば女性だろう。花の雨の別れは辛い。)

●公明党支持のスナックシクラメン=風牙
△紅、砂、葱=3点
(紅:面白いです。お店に候補者のポスターなんか貼ってあるのでしょうね。「公明党」が動かないと思います。 葱:公明党支持のスナック、というだけで面白い。)


●囀りやごろた石もて鎌を研ぎ=秀子
○風 △る=3点
(風:一読即景の句。具体性も十分。一行縦書きで見たら◎選もあったかもしれません。 る:草刈りでしょうか。こういうちょっとワイルドな景にも、この季語は合うと思います。)

●春泥やセーラー服のひだの波=入鈴
△修、ぶ、五=3点
(修:春だからかエロスを感じさせる句散見 ぶ:セーラー服はおそらく着古したものとおもう。活発な少女の様が浮かぶ 五:学校には舗装をされていないところが多い。雨が降れば春泥となる。そこにセーラー服の女子高生が恐る恐る歩く。)

●二寸ほど猫を動かし春夜眠る=るな
○淳 △久=3点
(久:どかせる、もいいかなと思いましたが、動かすのほうが品があるかも知れませんね。「二」は音の数を調整するとき便利ですね。)

●春疾風バスを乗り継ぎ海になる=茶輪子
○十 △久=3点
(十:瞬間を詠む俳句では珍しく時間経過のある句。ぱっと開ける景があざやか。久:足摺岬を思いだしました。)

●春眠し相席の顔入れ替はり=久郎兎
◎十=3点
(十:ウトウトして気づけば、喫茶店or列車(?)の相席の人が入れ替わっていたという面白い句。)

●春ゆふべ吾は誰ともなくにゐる=葱男
◎入=3点
(入:春愁いとは違いますが、こういうことなのかなと落としどころを探ってみたくなります。)

●緑立つ国うむ神話いまここに=ぶせふ
◎水=3点
(水:新緑が湧きたつようなこの季節に「国産む神話」の取り合わせが素晴らし い。)

●木蓮や月はゆっくり天空へ=秋波
○る △ま=3点
(る:当たり前の景ではあるのですが、改めてこう表現されてみると、美しいというか見事というか。ま:季重なりですが、白蓮の真白と月の幻想的な景が美しく好きです。

●出雲には縁結ぶ神桜道=喋九厘
○紅=2点 (紅:出雲には一度だけ行きましたけど、その時の事を思い出しました。下五が好きです。)

●裏山にミモザ縺るる西東忌=るな
○茶=2点
(茶: 三鬼の句や人物を自分はそれほど知りませんが、彼の孤高が裏山のミモザに転写されているように感じ入りました。)

●かげろふや撮影禁止の写真展=十志夫
△喋、清=2点
(清:撮影禁止と書かれていて急に展示されている写真が揺らいで見えたようだ。)

●黄水仙湖畔に添ひ寝空青し=茶輪子
○メ=2点

●啓蟄や土竜の鼻が覗きをり=白馬
△ぼ、香=2点
(ぼ: ユーモラスでかわいい。)

●酒勧めながらも気にす垂れ桜=淳一
○子=2点

●春宵やボタン押したる隣の手=修一
△風、十=2点
(風:なんのボタンなのか見えてくる表現があれば○選以上もあったと思います。中七の継続の助動詞「たる」で良いのかなとは思いますがまぁ完了の意味もあるので間違いではないですが「ぬる」「つる」と代えるだけで句意も変わるので一考されればと思います。十:バスの降車ボタンでしょうか。ユニークな視点です。)

●白木蓮今年は誰と別れたる=やんま
△雪、水=2点
(雪:私もこんなことを考えるようになりました。水:なんだか寂しいお句ですが、白木蓮のにぎやかさと対を成しているかも。)

●箱の蓋開けてはならぬ木の芽時=葱男
△ぶ、五=2点
(ぶ:開けてはならぬ箱というと、パンドラの箱。木の芽時は精神不安定になりがち。希望を手にするには時期があるやもw 五:箱の中には春の妖精が宿っているかも?)

●春の燈や一羽一羽と鶴を折る=裕
△茶、砂=2点
(茶: 震災の傷跡がなかなか癒えぬ東北へ、または長く闘病を続けられている方へのお見舞いでしょうか。一折りではなく一羽としたところが妙だと感じました。)

●ビル街めく大学校舎桜東風=雪絵
△紅、子=2点
(紅:大学も移転などで、様変わりしているのでしょう。季語が効いています。)

●古びたる都営団地や花辛夷=資料官
△や、葱=2点
(や:辛夷も古びてなを盛んなれど、修繕積立金はまだまだ不足で。 葱:高齢者ばかりが取り残されて住み着いているような団地に、花辛夷が逆に哀れを誘います。)

●待ちわびて待ちくたびれてしやぼん玉=まさこ
△る、裕=2点
(る:子どもだった頃の回想でしょうか。季語の力で暗くなりすぎてない点が好きです。)

●松山でガタガタガッタン春クロス=喋九厘
△子、資=2点
(資:「で」が気になるも,ブラタモリにも登場した松山のクロスに乾杯。)

●召されても悔ひなし花の雲の上=五六二三斎
○ぶ=2点
(ぶ:満開の桜を楽しむ春である。作者のこれまでの生き方と覚悟を伺うことのできる作品だと思う。西行の辞世の歌にも通ず)

●夕桜辺りは鳥の声ばかり=ぼくる
○ラ=2点
(ラ:アンニュイな気分。)



●在りし家の隣は花菜畑なり=入鈴
△メ=1点

●麗月や木星伴に北の旅=白馬
△喋=1点

●汽笛鳴く霞みて渡る大井川=香久夜
△淳=1点

●支援学校横に出でけり春の川=修一
△久=1点 (久:安堵というかゆったりとしたリズムを覚えます。)

●春昼の頬ふくらませカンロ飴=紅椿
△修=1点 (修:平和な世の健康なこどもの匂い。カンロ=甘露が効いています)

●水平線をなぞるタンカー春の海=雪絵
△る=1点 (る:春の海は、遠くまでよく見渡せますね。)

●花いまだ残り確かむ灯油缶=白馬
△茶=1点 (茶:寒の戻りがいつまでも続いたような今年の春を上手く表現されていると思います。自分も何度か灯油缶の重さをはかりました。)

●春雨に小振りの枝も威風あり=久郎兎
△淳=1点

●春と修羅男乳房を掻きむしる=やんま
△清=1点 (清:「春と修羅」と言えば宮沢賢治だが、男が乳房を掻きむしる所に春と修羅の本意がありそうだ。)

●笛の音は意外に太し街朧=水音
△修=1点 (修:横笛を吹く息の音が聞こえてきます。「街」で今の感じが出ています)

●浮浪者を追ひ出してより花を待つ=風牙
△入=1点 (入:私も上野公園で見たことがあります。施設に入るのがよほどいやなのかとか考えていたら、桜の季節でなくてよかったと思う自分がいました。)

●雪柳揺れてまちまち尻尾達=秋波 △資=1点 (資:なるほど、白い枝をしっぽと捉えたところが妙。) ●老母のぷくぷくうがいや水温む=メゴチ
△入=1点 (入:中七がふくらんでいるのも、老いた人のリズムでいいかなと取りました。)



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