*A部門入選作発表*


当季雑詠=全76投句(入選52句)

【特選】

一席
●数へ日のするりと指を抜け落つる=雪絵


◎久、清、ラ、砂、資、メ○ま、紅=22点
(久:年をとると実感です。 清:数え日が余りにも早く過ぎ去るので数える指の抜け落ちる感覚の面白い秀句。 ラ:「数へ日」が指を抜け落ちるという感覚が斬新です。 ま:するりと、が雰囲気が良く出ていて数え日を強調していますね。 紅: まさに「数へ日」の感じです。)


二席
●光年と言ふさざ波を冬銀河=やんま


◎雪○入、喋、香、資△白、メ=13点
(雪:銀河にさざ波を見た、そのスケールの大きさに感銘です。 香:宇宙の壮大さを感じます。 白: 銀河からの光を、時のさざ波と感じた。)


三席
●凍空や前あし太き野良の猫=入鈴


◎修○秀、砂、雪△葱、ラ、メ=12点
(修:きびしー、って感じ。 秀:たしかに猫って前足が大きいですね。 雪:たくましく生きる野良猫に頑張れ! 葱:野良のいかつい面構えが浮かびます。 ラ:野良猫はなべて逞しいです。「前あし太き」がリアル。)

三席
●砂時計逆さに流る冬銀河=まさこ


◎ぼ○清、ぶ、入、白△十=12点
(ぼ:一瞬一瞬そして永劫。おみごと! 清:膨張宇宙が逆さに流れる砂時計に寄って何故か収縮に向かうような錯覚を覚える。 ぶ:宇宙創造を垣間見てきたか? 白:砂時計を逆さにした瞬間。 十:時間の切り取り方が巧みです。)


【入選】

●美しき喪服の人や冬木立=ぼくる
◎子○裕、喋、淳△十、香=11点
(裕:風が吹けば折れてしまいそうな女性でしょうか。 十:季語とも相俟って凛とした姿が浮かびます。「美しき」は言い過ぎ、「佇める」くらいに止めたほうが。 香:冬木立で、スラッとした様子がわかります。)

●逝く年や回転寿司の皿の山=清一
◎十、秀○ぼ△ラ、紅=10点
(十:昔の年越しは蕎麦屋が相場だったが、今は回転寿司という現代の景として納得。 秀:「逝く年」という極めて観念的な季語に回転寿司の皿を持ってこられるなんて、知能犯! ぼ:おかしくもあり、ちょっぴり苦味も。 ラ:皿の山の向うに、明るい新年が見えるような感じがします。 紅:去年、経験しました、すごい人でごった返していました。注文が間に合わず、シャリが温かかったです。)

●丹精の冬菜畑より今朝の富士=ぼくる
◎ぶ○ラ、資△久、修、茶=10点
(ぶ:地に足をつけて暮らす人に与えられる恩寵を見る。 ラ:その富士は、さぞかし美しく見えたことでしょう。 資:富士山か良く見える季節,納得感。 修:ことさら富士は美しく見えます。 茶:冬でも汗をかくほどの畑仕事。富士の景に癒されます。)

●うつし世の闇深ければ冬の雷=清一
◎や、白○ぶ△久=9点
(や:おっかなびっくりこの世を生きる。 白: 雷よ、強い光で照らしておくれ。 ぶ:季語が効いている。切り裂くような光)

●雪原を一輌の良き津軽かな=入鈴
○や、五、淳△十、葱、白=9点
(や:この世でもあり別の世でもある。 五:津軽には、1輌列車が似合う。 十:白い雪の中を走る原色のローカル線の景が浮かびます。「良き」とまでは言わずに「行く」くらいに止めたほうがいいような。 葱:中七、座五の省略がきまって「津軽」の風景が広がりました。 白: 静かな情景です。)

●またひとつ歳を洗ひて年用意=メゴチ
◎裕〇香、茶△紅、入=9点
(裕:齢を洗い という表現に魅かれました。 香:歳を洗ひて、が気を引き締めます。 茶:「歳を洗ふ」の措辞でいただきました。 紅:「歳を洗ひて」で、いただきました。)

●けふもまた枕うばひに雪をんな=弧七
◎喋○清、水△ぼ=8点
(清:詠者と雪をんなとの関係を考えさせられるミステリアスな一句。 水:大雪の夜に布団に入っていても芯から凍えそう。 ぼ:艶なるかな。いいね。)

●頬杖の背の丸みや石蕗の花=まさこ
◎水○秀△十、五、資=8点
(水:背の丸みにしみじみ年齢を思うとき、石蕗の花に温か味に癒される。 秀:優しい句だと思いました。季語もよく合っています。 十:「背中の丸み」に焦点をあてたことで哀愁が漂う。冬の希少な色彩花の石蕗とも合っている。 五:石蕗の花のことをよく観察している。)

●母呼べば万両の実の見え隠れ=秀子
○五△や、ま、子、裕、喋、茶=8点
(五:母が万両の実を伐ってきてと呼んでいる。昔、懐かしい光景。 や:日一日と成長めでたし。 裕:作者は庭にいるのでしょうか。 茶:「見え隠れ」にささやかな冬の一景が見えました。)

●水餅や遊び疲れて眠るやう=秀子
○十、葱、ラ、修=8点
(十:黴防止で寒の水に浸けられている水餅は、確かに正月休みで「眠るやう」だ。 葱:中七の措辞が上手い! ラ:「遊び疲れて」に、作者の心の余裕が感じられます。 修:そういえばこどもの感じ。)

●枯野原凪いでいのちの白さかな=弧七
◎葱○白△秀、入=7点
(葱:モノクロの風景が眼前に浮かび、自分の命さえもが白く純粋なものに同化してゆく感じる、その感性に共鳴しました。 白:一斉に白い絨毯の形になった芒。吾が命も純白であって欲しい。 秀:枯野原が凪いでいるという表現がステキです。ただ「いのちの白さ」というのが、ややあいまいかな。)

●手の大き小さき音して初詣=入鈴
◎茶○裕、雪=7点
(茶:子や孫と一緒に家族そろってのお参り。ほのぼのです。 裕:親子連れの微笑ましい初詣ですね。 雪:家族で初詣の様子が見えてきます。)

●わが文字のこんがらがつてゐて師走=紅椿
◎入△ラ、ま、白、メ=7点
(ラ:あるある〜♪(笑) 「師走」という季語が利いていますね。 ま:いかにも師走らしい、こんがらがつてが楽しいですね。 白:年賀状?筆納? 面白いです。)

●木枯や膝を取り合ふ子が三人=ぼくる
◎紅△清、水、茶=6点
(紅:幸せな景で、読む方も心温まりました。 清:幼子らが木枯らしに怯えて詠者の膝に取り付く様子が良く見える。 水:外は木枯しなのに家の暖かさ。家族の暖かさ。 茶:木の葉の舞うさまの形容がよいと思いました。)

●冬の薔薇昔密かに師を愛す=やんま
◎五〇葱△ぼ=6点
(五:ストーリーのある句。実話の告白であるなら、素晴らしい。葱:兼題の部に「笹鳴くや昔密かに師を愛す」があり、同じ作者だと分かりましたが、こちらをいただきました。 ぼ:冬の薔薇は、健気でもあり、危うくもあり。)

●灯台に背を向け揺れる野水仙=資料官
◎淳△裕、香=5点
(裕:人工的なものを拒絶しているようなたくましい野水仙です。 香:灯台の足下を照らしているよう。)

●あと三年あと三年とおでん酒=裕
○久△喋、資=4点
(資:あと三年の繰り返しが身に染みてくる。)

●いのちてふ言葉の重さ冬満月=ラスカル
◎香△砂=4点
(香:大きな月が、想像を豊かにさせます。)

●枝先の撫づる水面や浮寝鳥=紅椿
○ま△水、喋=4点
(ま:水紋の美しい景が冷たい空気感のなかで感じられます。 水:陽がたっぷりあたる水面を思う。)

●呼気吸気動脈静脈去年今年=葱男
○ぼ△修、香=4点
(ぼ:生命の有り様を、オール漢字でリズミカルに。 修:生命そのものがググッと迫ってきます。 香:お遊びのような句ですが、こういうことを意識するようになった。実感あります。)

●三匹の犬に引かれて息白し=裕
○子△紅、淳=4点
(紅:目に浮かびます。犬もそれぞれ息が白くて・・。)

●札納痛い所に付ける丸=白馬
○十△秀、雪4点
(十: 病院で書く初診の際の問診票でしょうか。一年の悪霊を納める季語(札納)との取り合わせもいい。 秀:きちんと景がみえます。)

●アルプスの末広がりに年の果=ぶせふ
△十、秀、五=3点
(十:山裾の広がりに「年の果」という時間軸を置いたところが巧み。テーマとしてやや既視感はある。 秀: ヨーロッパ?日本?目出度いですね。 五:アルプスの見える年の暮。景が大きい。)

●思い出に時を忘れる大掃除=前鰤
〇紅△裕=3点
(紅:大掃除で、思い出の品を見つけたのでしょうか。 裕:よくあります。)

●水中の豆腐ゆったりとして師走=砂太
◎ま=3点
(ま:師走の忙しさと豆腐との対比がとても良く表現されていると思います。)

●照らされて青き砂紋や冬の寺=雪絵
○ぶ、子、茶=3点
(ぶ:月明りだろうか?青き砂紋に積み重ねられてきた仏道の静寂がある。 茶:ライトアップなのか日に照らされているのか。いずれにせよ、冬の寺の厳粛さが「青き砂紋」に光っています。)

●穫りしあと戰さ場のごとブロッコリ=雪絵
○久△入=3点

●河豚喰ふてもう戦争はいりませぬ=砂太
△久、や、葱=3点
(や:この幸せを子孫に残そう。 葱:よくぞこの「季語」を持ってきたな、と感心しました。)

●学舎に燈はのこりをり冬の月=弧七
△ぶ、ま、ぼ=3点
(ぶ:学びの幸福を共有できた。 ぼ:仰げば尊し。)

●留守番の五匹の猫や年守る=水音
〇修△子=3点
(修:猫たちが人のよう。)

●薄暮れにネオン揺れ舞ふ冬の雨=淳一
○メ=2点

●過客なる聖夜ゆつくり明けにけり=葱男
○砂=2点

●鷹ひとつ風と光の波の中=ぶせふ
○メ=2点

●年の瀬や雲の流れの早きこと=五六二三斎
△清、淳=2点
(清:何となく慌ただしく過ぎる年の瀬、雲の流れも早くなったように見える。)

●泣くための体力実南天零れ=秀子
○水=2点
(水:泣くために必要な体力が実南天のように零れていく。)

●傍らにややこの寝むる聖歌かな=紅椿
△雪=1点

●雲の間に光漏れ降る冬の夕=淳一
△清=1点
(清:鉛色の冬空から一筋の光が漏れる。冬の夕の景が良く浮かぶ。)

●クリスマスケーキをふたつ買ひに行く=白馬
△砂=1点

●山茶花や明日砂漠へ旅立てり=裕
△淳=1点

●新幹線の絶え間なき音枯木山=修一
△水=1点
(水:乗っている間中騒音が気になり窓の外は枯木山が流れていく、そんな旅の記憶何度もあります。)

●戦争を知らぬ世相や寒紅梅=清一
△砂=1点

●谷筋を幾重にも見せ冬紅葉=五六二三斎
△ぶ=1点
(ぶ:絵に描いたような印象・紅葉が映える。)

●年越しのライブ会場黙の時=茶輪子
△五=1点
(五:さだまさしのライブ会場を思い出しました。)

●ほろ酔ひでピアフを歌ひクリスマス=修一
△資=1点
(資:紅白の大竹しのぶを彷彿させる。)

●窓越しに寂しげに見ゆ冬の山=淳一
△子=1点

●ヒーローの同じ世代と年歩む=葱男
△や=1点
(や:月光仮面未だ老いずと。)

●病む友へ紡ぐリースや実柊=まさこ
△修=1点
(修:赤い実で元気がでますね。)

●柚子湯してジェントルマンに変身す=五六二三斎
△雪=1点


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