*A部門入選作発表*


当季雑詠=全75投句(入選句)

【特選】

一席
●取り出せぬ君のやさしさラムネ玉=清一


◎茶、喋○メ、香、久、ぶ、砂、ス、入△五、葱、資=23点
(茶:ちょっと邪魔な時もあるけど、なくてはならない、そんなおせっかいな人柄は好もしいと思います。 香:もどかしさが素敵に表現されています。 久:ラムネ玉の効果と人生をダブらせてるのがいいですね。 ぶ:ラムネのビー玉を取り出せないのをやさしさと捉えた作者のやさしさに感動 五:恋はなかなか手に出来ないラムネ 玉のようなものだろう。 葱:財津和夫の曲みたいな優しさと品の良さ。 資:取り出せないラムネ玉への優しいまなざし。)


二席
●草刈の音のしばらくして匂ふ=ぶせふ


◎子○ぼ、水、ラ、白、秀△葱、十、風、メ、ス=18点
(ぼ:視覚、聴覚、嗅覚そして時間の経過、おみごと。 水:確かに匂いは遅れてやってきますね。 ラ:草刈に専念している時は、匂いなど気がつかないものですね。 白:その匂いが好きです。 秀:わずかな時間差が目のつけどころ。 葱:音と匂いの時間差が「気づき」です。 十:実感のある句です。句意は異なりますが、多佳子の「菊の香の菊を離れしとき匂ふ」の句が想起されました。 風:中七の「の」に説明の匂いがして○選以上では取れず。)


三席
●改札をするりと抜けて夏つばめ=資料官


◎裕、香、ス、清○メ△雪、喋、ぼ=17点
(裕:巣立った燕が改札を我が物顔にすり抜ける光景爽やかです。 香:おもしろい景ですね。夏なんだけど涼しさを感じます。 清:若者が勢いよく改札口を通り抜けるような清々しい句で共感が持てる。 ぼ:青田風吹く単線の駅。)


【入選】

●レコードの傷の土砂降り巴里祭=秀子
◎十、砂、葱○資△ス、茶、入=14点
(十:「傷の土砂降り」という譬えが上手い。季語とも呼応している。 葱:「兼題の部」に出句されていたらどんな結果だったでしょう? 資:SPレコードの雑音?懐かしい音 茶:「土砂降り」の比喩でいただきました。)

●火脹れは梯梧の花に触れてより=秀子
◎水 ○雪、香 △ス、茶、ぼ、ラ、葱=12点
(水:咲く地域も見た目も暑い花ですが、火脹れの発想がスゴイ。 雪:真っ赤な火の色の梯梧が浮かびます。 香:恋に落ちてしまったんですね。 茶:「島唄」「沖縄」の熱気のようなものが伝わってきました。 ぼ: 何か深い意味がありそう。 ラ:「梯梧の花」に、触れないように気をつけます<笑> 葱:「島唄」、なんどもカラオケで歌いました。)

●縁側に座敷わらしの夏帽子=ラスカル
◎ぼ○ま△水、メ、裕、喋、葱、清一=11点
(ぼ:座敷わらしが外へ飛び出して行ったという見立てが面白い。ま:縁側には、本当にありそうですね。裕:熱中症などどこ吹く風の元気な子供が遊びに出た感じ 葱:その「夏帽子」を座敷童子のものだと強引に「断定」してしまうのが俳句の心。清:民話に出て来る座敷わらしの夏帽子きっと風変わりなものだろう。)

●水甕の小さき岸辺に水すまし=十志夫
◎入○裕、茶 △雪、五、砂、資=11点
(裕:水すましが爽やかそうです。 茶:水馬にとっては決して小さくはない世界が「岸辺」に表れていると思いました。 雪:岸辺が何ともいえませんね〜。 五:水甕にいる水すまし!池で泳がせてあげたい! 茶:水馬にとっては決して小さくはない世界が「岸辺」に表れていると思いました。 資:小さな世界の描写がうまい。)

●夏蜜柑剥きたる皮の小舟めく=ラスカル
◎ま ○五 △十、白、葱、子、久=10点
(ま:確かにそうですね!小さな発見が楽しいです。 五:上手い!鋭い観察眼! 十:比喩が巧みでなるほどと思わせる。 白:きれいに剥けましたね。 葱:俳句初心者にはお手本のような句。 久:皮が分厚いので指の力のこもった舟形になるのでしょうね。)

●新樹光反り返り泣くあかんぼう=まさこ
○裕、秀、資、葱=8点
(裕:すやすや寝ていた赤ん坊が目を覚ましたのでしょうか? 秀:命と新樹が輝きあって。資:中七の3動詞が効いている。 葱:中七、なんとも新鮮な生命エネルギーを感じます。)

夕暮に段差ありけり薔薇の風=十志夫
◎メ○喋、葱△水=8点
(葱:座五の「薔薇の風」が意外!)

●絵具溶く間に紫陽花の色変はる=ラスカル
◎久○紅△資、葱=7点
(久:紫陽花の移り気がよくわかる句です 。紅:誇張かもしれませんが、「紫陽花」ならありそうです。 資:紫陽花の色変わりを絵の具。 葱:話を作った感がありますけど、それもまた想像力のポエジーの範囲ですね、何も正確な写生だけが俳句、というわけではないと思います。)

●朽ちかけし丸太の句碑やえごの花=雪絵
◎ラ○弧△裕、ぶ=7点
(ラ:朽ちかけた丸太に、えごの花びらが優しく降りかかるような感じがします。 裕:ちょっとひなびた山登り道でしょうか。 ぶ:えごの花は名から想像できない控えめな花。朽ちかけの句碑にふさわしい。) ●たつぷりの水に膨らみ梅雨の月=紅椿
○喋△弧、メ、砂、秀、入=7点
(秀:「たつぷり」と言わずに現せたらもっとよかった。)



●薔薇の香や白きシーツの翻る=水音
○十、ぶ、子△ま=7点
(十:「薔薇の香」と「白いシーツ」という嗅覚、視覚の組合せで初夏の明るさを上手に表現している。 ぶ:清潔かつ豪華なお句で、旅行気分に浸れた。 ま:嗅覚、視覚、聴覚に訴え、気持ち良く、作者は日常のふとした幸せを感じとっていらっしゃいますね。)

●我が窓はゆりの樹の花咲く高さ=秀子
◎雪○風、茶=7点
(雪:植物園でしか見たことのないゆりの樹の花、こんな窓が欲しいな。 風:一読即景の句は良いですね。ゆりの樹の花もしっかり仕事していて家主の人物像も見えてくる気がします。 茶:樹の高さではなく、花咲く高さが好いと思いました。)

●軽鴨の子やるなてふ湖の豊かなる=入鈴
◎弧○ス、ま=6点
(ま:豊かでいらっしゃいましたね。)

●噴水のてつぺんいつも無表情=清一
○ラ△紅、五、砂、秀=6点
(ラ:てっぺんまで行ったら、その後は落ちるだけですから。 紅:機会がなくて、上から見た事がないのですが、「無表情」なんですね。ぜひ見てみたいです。 五:噴水の天辺は動きか止まる。それを無表情とは!秀:「無表情」が面白かった。)

●真相ノ解カラヌママニ蛇ノ衣=十志夫
◎白○ぼ=5点
(白:犯人(蛇)はどこに行ってしまったか? ぼ:ハテサテ、ドンナ事件カ。)

●蛸ほたてガルシアワイン月の海=ぼくる
◎ぶ△葱、子=5点
(ぶ:なんだか外国で贅沢をさせてもらった気分になったので。 葱:う、う、うらやましい〜〜!)

●老いらくの恋やSNSの夏=風牙
◎五△久=4点
(五:現代風な仕上がりに脱帽です。久:紫陽花の移り気がよくわかる句です。)

●しまうまの尻尾の自在蠅払ふ=雪絵
○子△茶、ぶ=4点
(茶:「尻尾の自在」の中七が効いてます。自在に蝿が払えたらなぁ<笑> ぶ:観察の行き届いていて、ユーモアたっぷり。)

●晴れ晴れと夏の陽射しの中に老ゆ=葱男
○十△ラ、久=4点
(十:若さの特権のような「夏の陽射し」の中で、自らの「老い」を意識するという感覚はよくわかります。 ラ:下五のどんでん返しに、びっくりです! 久:気持ち晴れ晴れだから老いることはプラスと考えていいですよね。)

●万緑や鳥の親子の水尾つれて=紅椿
◎秀△ま=4点
秀:分かりやすくて深くて明るい。 ま: とても美しく、また可愛い景がくっきり浮かびます。下五が巧く表現されていますね。)

●紫陽花や鏡の前のナルシスト=五六二三斎
○清△子、ぼ=4点
(清:紫陽花は七変化するが詠者も鏡の前で変化する自分に見とれている光景が浮かぶ。ぼ: 紫陽花が案外合っている。)

●梅雨出水大型家電の箱ひそり=茶輪子
○久、入=4点
(久:箱が思いもよらぬ場所まで動くほど浸水したのでしょうね。)

●西行の瞬きの音木下闇=ぶせふ
○五△香=3点
(五:西行と同化している。作者!)

●白肌に乳房の黒子額の花=清一
○白△喋=3点
(白:額の花が乳房に見えてきた。)

●生理中と言はれ枇杷剥く男かな=風牙
◎紅=3点
(紅:とてもリアルで、ペーソスがあって・・。枇杷が動かないと思います。)

●梅雨晴間ラツシヨンペンは滲みをり=茶輪子
◎資=3点
(資:中七のカタカナが良い。水性ペンは滲みますね。)

●トンネルを抜けてトンネルさみだるる=ぶせふ
○弧△秀=3点
(秀:トンネルの繰り返しが効いてると思いました。)

●目線ふと百獣の王青嵐=雪絵
○砂△葱=3点
(葱:そのあとの展開が気になりますね。)

●曾良眠る島に届きし御柱=五六二三斎
△香、ぶ、葱=3点
(葱:由緒正しき俳句です。)

●青梅の銀光放つ水の中=水音
○雪=2点
(雪:確かに銀色の光ですね!)

●朝が来る阿蘇にいつもの夏の朝=喋九厘
○ま=2点
(ま:季節は何もなかったように巡ってきますね。さらっと表現されていますが、上五が強く心に響きます。)

●油虫不動のままにのがれたり=弧七
○清=2点
(清:死んだふりして危機を脱出、人間の姿を見るようでもあり面白い句だ。)

●蝙蝠の真さかさまへもとびにけり=弧七
△葱、清=2点
(葱:あの、思いがけない方向転換には驚きます。 清:真逆さまにとぶこうもりまるでサーカスのようだ。)

●涼しさやハーブオイルの淡緑=まさこ
△雪、葱=2点
(葱:カルッテットの小品の曲のような心地よさ。)

●遠巻きの一升瓶の蝮かな=水音
○紅=2点
紅:怖いもの見たさでしょうか。情景が浮かびます。)

●虹色の海月や夜の水族館=まさこ
△十、清=2点
(十:照明を浴びた海月。幻想的ですね。 清:海月が輝いている夜の水族館幻想的だ。)

●物乞をせぬ浮浪者や蝸牛=風牙
△白、葱=2点
(白:浮浪者のプライドか?葱:アイロニーとペーソス。)

●緑陰やふたりの時間濃く淡く=ぼくる
△紅、ラ=2点
(紅:恋人、それとも老夫婦でしょうか。時間の経過がうまく描かれていると思います。 ラ:お惚気でしょうか。ごちそうさまです<笑>)

●夏灯し岩波文庫の昆虫記=資料官 △入=1点

●鮎跳ねて心も躍る竿の先=メゴチ
△香=1点
(香:鮎の釣果に1票。)

●御下がりのメロンを抱へ孫帰る=香久夜
△弧=1点
(弧:せっかくのメロン、お孫さんと一緒に食べたかったですね。)

●黴の雨そのまま匂ふ弐番館=葱男
△弧=1点

●梅雨明けぬ合鍵返す手は白し=茶輪子
△白=1点
(白:雨が止んだら-----♪)

●長き径紫陽花の玉ぽんと打つ=久郎兎
△裕=1点
(裕:たまあじさいのことですか?)

●菩提樹の花に酒肉を禁ずる碑=砂太
△風=1点
(風:中七の「に」が気になります。)

●水木咲きニュータウン団地ここより朝=入鈴
△風=1点
(風:ニュータウンだと「水木の花」というより「花水木」の感じがしますが。)

●さようなら六月星を散りばめて=五六二三斎
△紅=1点
(紅:ロマンがあって素敵です。)


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