*A部門入選作発表*


当季雑詠=全75投句(入選句)

【特選】

一席
●ノーベル賞取ると言ふ子や芋煮会=ラスカル


◎紅 〇修、裕、雪、△葱、水、香、茶、ぶ、砂=15点
(紅:季語で、その子の環境が見えてきます。将来に希望が持てますね。修:芋煮会でみんな元気になりそうだ 裕:ノーベル賞と芋煮会の組合せが面白いです 雪:頑張れ! 葱:まわりの大人たちの笑い声が聞こえてきます。茶:頼もしき宣言!ごった煮の中からぜひ抜け出してほしいですね。ぶ:芋煮会が活きているなとおもう。子供の元気が伝わる)


二席
●無花果を食む少年の喉仏=清一


◎雪、砂 〇淳、や、秀 △ス、ま=14点
(雪:少年の初々しさと無花果の取り合わせがいいですね。や; 少年の夢胃袋に満つ。秀:下句を「喉仏」と物で押さえられたから、俳句になったと思います。)


二席
●木守柿老母を叱るつまのこゑ=ぶせふ


◎や、秋 〇久、メ、十 △資、ぼ=14点
(や:時来りなばおなし道ゆく。久:いやはや痛い光景です。十:「つま」は「妻」とすべき。老母が姑だと嫌な景。願わくば妻の実母であってほしい。家を守ってきた女たちの一生を「木守柿」が象徴している。 ぼ:身につまされます。)


【入選】

●どんぐりを載せて仏のたなごころ==紅椿
◎葱 〇香、や、砂 △水、修、五、十=13点
(葱:どんぐりがなんのぐうぜんか、野仏の手のひらに乗っかているのです、子供が乗せたのかもしれません。や:天地の様の身一つに在り。修:もちろん子どもにもやさしいんだ 五:どんぐりをお供え物に見立てたのか?面白い。十:賽銭替わりに置いていったものかも。)

●飴色に紅玉を煮る十三夜=修一
◎秀 〇水、ぼ、香、茶 △ラ=12点
(秀: 付き物の豆、栗を少し外して、林檎を弱火でゆっくり煮ている作者 ぼ:豊かな時が、静かに流れる十三夜。茶:月の形と林檎の形状が飴色の夜に溶け出している。幻想的だなと思いました。ラ:「飴色に」と「十三夜」が、よく響き合っています。香:紅玉リンゴは少なくなりました。酸味が強いけど素朴な味わいなんですよ)

11●円柱は裸身のごとし冬の月=秀子
◎修、十 〇葱 △ぼ、清、や=11点
(修:収容所を想像、裸身そのものが見えてくる 十:余分なものをすべて削ぎ落とした究極の造形美である円柱を裸身とみる感性に脱帽。冷たい月の光に照らされた唐招提寺のエンタシスかも。 葱:丸みにエロスを感じる、石のほの明るい「薔薇色」が想像され、月に照らされて冷たく内側から光っている人肌のように思えました。ぼ:こういうエロティシズムもあったのか。清:裸身のオブジェとしての円柱と冬の月との微妙な関係が面白い。や:きっと天女の化身であろう。)



●貝殻に残る香りや秋深し=裕
〇水、ま △葱、紅、淳、ス、メ、清、砂=11点
(ま:海岸なのか、それともどこかで食べようとしたとき感じたのでしょうか、秋の深まりを。葱:かすかに残っている貝の香りに物寂しい風情がある。紅:浜辺に落ちている貝殻だと思いました。うまく言えませんが、好きなお句です。清:貝殻も冬になると固く閉じて仕舞う。晩秋の香りを閉じ込めて眠る。)

●月光の胎児まばゆく眠りたる=水音
◎ぶ 〇ス、十 △喋、裕、香、秀=11点
(ぶ:生命の神秘に触れた気がする 十:まるで、かぐや姫のやう。裕:羊水の中の新しい命を感じます 秀:「まばゆく」と言ってしまわないほうが、もっといいと思うんですが。)

●黄落期ひとつずつ過去捨てにけり=十志夫
◎清、ス 〇久、子 △香=11点
(清:落葉が舞うごとに過去は忘却の彼方へと過ぎ去る。詠者もそれに倣い過去を捨て去るとの秀句。久:自分は何割くらい落とせたかと、いやまだまだですね。)

●栗の実のはじけて空は遥かなり=秋波
◎ぼ、淳 〇ぶ △雪=9点
(ぼ:なべて神のみ業とや。格調高し。淳:「はじけて」と「空は遥かなり」が妙にマッチしていますね ぶ:何か仏教的な広がるを感じる )

●ざらつきは胸さわぎとも梨を剥く=雪絵
◎久、資 △喋、メ、秀=9点
(久:梨のざらつきに係っているのかな、不安な様子がわかります。秀:普段は瑞々しく感じる梨も心配事がある時は「肌理の粗さ」を感じてしまう。)

●櫨紅葉「けしけし山」の麓まで=五六二三斎
〇葱、ス、資、雪 △ぶ=9点
(葱:「けしけし山」の響きに惹かれました。雪:「けしけし山」調べました。響きのいい言葉ですね。ぶ:童謡を聴いているような楽しい気分。山の彩が鮮やか)

●ただ寂しそんな日もある衣被=秋波
◎ま 〇紅、茶 △修=8点
(ま:大げさな言い回しをしていなにのに、本質をついていると思います。衣被が効いていますね。紅:とても共感できました。茶:「衣被」の季語選択が妙だと思いました。寂しさも旨味となるように。修:衣被があたたかい)

●月天心山々の声谷の声=ぼくる
〇五、ラ、秋 △資、ま=8点
(五:飯田龍太の句を思い出した。ラ:それらの声を聞きとることが出来るのは、作者の心が清らかな証拠。)

●風の尾か龍の尾なのか芒原=秀子
◎ラ 〇メ △ス、や=7点
(ラ:幻想の世界へ引きずり込まれるような感じがします。や:しばし忘我の境地楽しむ。)

●餃子の皮破れ釣瓶落としかな=香久夜
◎茶 〇ぶ、清=7点
(茶:慌たゞしい日常の中、日の暮れるのが早くなり、夕飯の用意が上手くいかない、もどかしさ。御句は上手です。ぶ:生活をうまくとらえているなと思う、美味しそう 清:手作りの餃子の皮に水を付けて包むとき確かに破れることがある。そんな時いつの間にか日が暮れているのに気が付く。)

●上風(うわかぜ)に遅れしたがふ尾花かな=十志夫
◎水 〇喋 △紅=6点
(紅:ちょとした時間差を発見した所が手柄だと思います。)

●壁越しの歌声やまぬ夜長かな=裕
〇淳、清 △ラ、や=6点
(清:隣人がカラオケでもやっているのだろうか。確かに始まったら長く続く。ラ:ご自分も一緒に歌いたいと思っているのですね♪ や:孤独の我に遠き空間。)

●焼香や闇の深さのかねたたき=まさこ
〇子、砂 △雪=5点

●等伯の屏風閑や暮れの秋=水音
◎子 △葱、修=5点
(葱:松の霞がかかっているような絵を想起しました。 修:お猿さんの絵は知ってるけど。図書館で見てきます。)

●どの恋が本当で嘘で猫じゃらし=やんま
〇紅、ぼ △十=5点
(紅:恋の達人?それとも恋に恋するタイプ?季語が効いていますね。ぼ:面白い、猫じゃらしが効いてます。十:万太郎の「時計屋の時計春の夜どれがほんと」が頭をよぎる。恋の本質なんて自分でもわからない(笑))

●絹雲や地球の裏の空模様=資料官
〇喋、秀=4点
(秀:雲を見ていて、ふっと、地球の裏側に思いを馳せる作者の想像力)

●鳥獣も尾花担ぎて鬼ごっこ=香久夜
◎喋 △五=4点
(五:現在、九州国立博物館に鳥獣戯画が来ている。ということは、福岡在住の方の句か?)

●長き夜や喪中はがきのあて名書く=資料官
〇裕 △清、子=4点
(裕:この時期の実感句です 清:私もこのような経験がある。文字通り故人を思いながらの長き夜となった。)

●窓際に檸檬をひとつ置いてみる=メゴチ
〇ま △ぶ、秀=4点
(ま: 私も同じようにしますが、それはなぜなのでしょうね。ぶ:文学の伝統を感じる。檸檬の色が印象的 秀:檸檬の存在感。散文的でなかったら、もっとよいと思いました。)

●稲刈りを窓からのぞく乗馬ウマ=子白
△喋、ぼ、秋=3点
(ぼ:オレの出番じゃないと。とぼけた味あり。)

●お地蔵は独りがお好き小鳥来る=やんま
◎香=3点
(香:そういう捉え方があるんですね。季語で生きてきます。)

●地球儀のソビエトたどる秋の夜=まさこ
◎裕=3点
(裕:小さい頃貰った地球儀は「ソビエト」でした)

●汝が呉れし玻璃の酒杯や十三夜=ぼくる
△茶、ラ、砂=3点
(茶:呑兵衛は取らざるを得ないでしょう。玻璃と十三夜の取り合わせでいただきました。ラ:思い入れの深さが伝わってきます。)

●晩秋の運指頼もし禰宜の宿=茶輪子
△久、メ、秋=3点
(久:盤石な感じがします。)

●真っ青な空を転がる秋の風=淳一
◎メ=3点


●もどかしき想いや栗を剥いてをり=まさこ
〇秋 △水=3点


●森の香を水の香に溶くもみぢかな=葱男
◎五=3点
(五:紅葉川か?綺麗な句である。)

●秋深し信越本線行き止まり=資料官
△久、裕=2点
(久:眼前迫る軽井沢の山塊でしょうか。裕:新幹線で旅の情緒が薄れた残念さが感じられます)

●雲流れ葉叢に光る夜露かな=秋波
〇資=2点

●芒原とは人つ子一人いない駅=秀子
〇ラ=2点
(ラ:「とは」が少し気になりますが、「駅」と置いたところが魅力的です。)

●黄昏て侘しき風ぞ暮の秋=メゴチ
△淳、子=2点

●ハロウィンや舟にあまたの楽器積み=ラスカル
〇修=2点
(修:もう季語かも。楽しみが舟いっぱい)

●ふはふはとメリーポピンズ大花野=ラスカル
〇五=2点
(五:明るくてふはふは感が良い!)

●鵙日和スマホで写す己が影=修一
△紅、十=2点
(紅:雲ひとつないお天気で、長い影が足元にあるのでしょうね。十:横たわる冬の長い影。だれしもが一度は経験したことのあるやうな。)

●柔らかき人集まりし新松子=清一
△久、十=2点
(久:頭の柔らかいと言うことでしょうか。十:園庭のような景だから吟行だろうか。人間が柔らかいのではなく冬の日差しが柔らかいので人が皆柔らかく見えるのだ。)

●秋蝶や風も退く影のあり=ぶせふ
△淳=1点

●金木犀白杖の道曲がり角=久郎兎
△裕=1点
(裕:目の不自由な方も、金木犀のいい香りを感じていらっしゃるのでしょうね。)

●梢より桜紅葉のたけなはに=五六二三斎
△資=1点


●渾身のキャラ弁当や栗爆ぜて=十志夫
△雪=1点

●作業着を脱ぎ秋冷のシンデレラ=葱男
△秋=1点

●三山の揃ひ踏みなる天高し=紅椿
△五=1点
(五:景が大きい。三山というと、出羽三山が浮かんだが、福岡市近郊なら、若杉山、三郡山、宝満山か?)

●爽籟やニュージーランドに行く話=水音
△ま=1点

●連なれる列車のやうに秋の雲=雪絵
△子=1点

●ボブ・ディラン貧しき庭に万年青の実=白馬
△茶=1点
(茶:清貧の万年青年ボブ・ディランが実る訳ですね。)


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