*A部門入選作発表*


当季雑詠=全82投句(入選58句)

【特選】

一席
●うつし世の闇を吸ひたる雪明り=清一


◎ラ、ぼ、メ○し、紅、久、智、雪、入、裕△十、喋=25点
(ラ:とても巧い句です。巧過ぎるかも<苦笑>。 ぼ:春遠からじ。句柄が大きく深みあり。 し:幻想的な美しさに惹かれました。 紅:格調高く詠まれています。智:世の中の嫌な事全部帳消しにするような懐深い雪の白さを感じます。 雪:闇を吸ふ、という表現がいいですね〜。また闇の増えそうな一年のようですが。 裕:闇を吸う が面白い。 十:闇を「吸ふ」が詩的。)


一席
●クレヨンの小箱へ春の近づき来=ラスカル


◎秀、砂、紅、雪、香〇水△し、葱、ぶ、ぼ、ま、茶、ス、メ=25点
(秀:クレヨンと春を待つ気持ちは合ってますよね。 雪:クレヨンには何故か春が似合いますね!それが近づくという発想、素敵です。 香:この言い回しがおもしろいです。クレヨンの明るい色が見えます。 水:クレヨンの箱のイメージは黄色。春の色ですね。 紅:とても繊細で、この方ならではのお句です。この発想は出てきません。 し:クレヨンが不思議とパステルの色を連想させ春と合っていると思いました。 葱:中七と座五の修辞が上手い! ぶ:子供を持つ親か祖父母の作品だと思うが、童心そのものでもある。 ぼ:小箱がやさしい。 ま:いかにも春らしいです。 茶:「クレヨン」と「春」は定番のようにも思いましたが、「小箱へ近づき」がそよ風のようでいただきました。)


三席
●寒北斗連れてトンネル出でにけり=ぶせふ


○十、砂、五、喋△葱、ま、ス、入=12点
(十:消えた星とトンネルを出たところで再び遭遇する瞬間をとらえている。 五:トンネルと来ると雪国を思い出す。 葱:トンネルを抜けると夜空に輝く北斗星、ずっと付いてきているような錯覚に陥ります。 ま:いろいろの想いを馳せて、夜行列車から眺めておられるのでしょうね。)


【入選】

●水仙や死にゆく母を見つくして=秀子
◎し、ぶ、入△十、久=11点
(し:とても心に響く句でした。水仙が美しい。 ぶ:壮絶な愛の記録。深い優しさと冷徹な目を感じる。 十:すでに亡くなられたのでしょう。「見つくして」が切ない。)

●夕月の紙のごと透く三日かな=秀子
○砂、紅、茶、ス、裕△雪=11点
(紅:まだ残っている青空。 情緒のあるお句で憧れます。 茶:「紙のごと」の微妙さというか、絶妙さに。 裕:夕月の紙ってどんな感じ? 雪:季語の「三日」が少し気になりましたが、「紙のごと透く」に魅せられました。)

●野良猫の硬き眠りや春遠し=水音
◎清○智、ス、白△雪=10点
(清:いつも身構えて行動せざるを得ない野良猫。硬き眠りの措辞の中に野良猫の様子が詰まっている秀句。 智:暖かい部屋で思いっきり弛緩して眠る家猫。一方、硬き眠りに野良猫の厳しい環境が象徴されています。春が待ち遠しいですね。 白: 中七が前後を引き締めていますね。)

●寒月や泣く子の口に乳ぼうろ=秋波
◎水○茶、修△葱、香=9点
(水:寒月の象徴する厳しさが、口の中に崩れていくぼうろの柔らかさ暖かさに救われる。 茶:「乳ぼうろ」がレトロな感じでもあり、冬の夜分に子をあやす苦労がせつなくもあり。 修:乳ぼうろは老人にもやさしいのです。 葱:「乳ぼうろ」の味を忘れてしまいました、もう一度食べてみたいな。 香:乳ぼうろ、お月さんを連想させます。)

●裸木の歯向かつてゐる空の青=雪絵
◎淳〇メ△秀、砂、ラ、智=9点
(淳:裸木の向こうに青い空が広がっています。 秀:「歯向かふ」で頂きました。 ラ:「歯向かつてゐる」という表現が面白いです。 智:裸木の枝から透けている青い空、力強く清々しい句です。)

●お年玉肩叩く手に渡りけり=砂太
◎久〇資、雪△葱=8点
(久:能動的でない表現がいいです。 資:ぬくもりがあって微笑ましい。それでいて現実的。 雪:かわいい光景です! 葱:孫には歯が立ちませんね。)

●変わりなしと妻のメールや寒椿=裕
◎十〇ま、久△淳=8点
(十:単身赴任なのだろうか。ホンワカとした物語性にあふれた一句。 ま:きりりとした奥さまを思い浮かべました。)

●校長の作りし汁粉鏡割=スライトリ・マッド
◎葱△秀、資、香、裕、白=8点
(葱:そんな校長なら親しみやすくて子供たちからも人気ありそうですね。 秀:物でしっかり押さえてあります。 資:田舎の小さな学校。弁当代わりの昼食かな。 香:校長先生が作ってくれるんですね。子供たちが喜びそう。沢山作って美味しいのでしょうね。 裕:校長先生の奮闘ぶりが見えます。 白: 小学校の風景ですね。微笑ましい。)

●猫のゆく方がすなはち恵方道=ラスカル
◎資○香△葱、久、入=8点
(資:なるほど猫好きはそのように割り切るのですね。 香:おおらかでユーモアたっぷりです。 葱:これも言い回しで取らされました。)

●冬萌や細道分けて曾良の墓=五六二三斎
◎修○香△葱、ぶ、白=8点
(修:曾良への親近感を感じます。 香:"細道"を使って曾良さんに繋げたんですね。何だかほんわかして、いい句ですね。葱:記念号に相応しいかも。 ぶ:冬ざれの道を風雅の人が訪ねる曾良の墓が目に浮かぶ。 白: 跡を辿って行かれたのでしょうか?)

●冴え返る鉄の門扉の軋む朝=まさこ
◎ス〇メ△清、裕=7点
(清:鉄の門扉の軋む音に冴え返る初春の景が見える。 裕:いかにも冬です。)

●波立てて三寒四温がやって来る=メゴチ
◎喋○淳、水=7点
(水:「波立てて」やってくるというのに納得。)

●クラリネット窓越しに聞く春隣=雪絵
○ま△秀、清、ス=5点
(ま:クラリネットの音色、春にふさわしいのですね。 秀:ややぶつぶつ切れてるのが惜しい。 清:クラリネットの音色は春の訪れを思わせる。すぐ窓際まで春が来ている。)

●焦点をあわす眩暈や寒昴=ぶせふ
○十△五、裕、白=5点
(十:「焦点」と「眩暈」という相反する言葉で結んだところが新鮮。 五:スバルを見た記憶が蘇る。 裕:昴にピントが合いにくいですよね。 白:老眼を持つ者として、共感です。)

●角の先撫ぜて小鬼は春を待つ=葱男
◎白○ぼ=5点
(白:可愛い句です。 ぼ:鬼さんこちらへと言いたくなる。)

●陽射し受け星座のごとく浮寝鳥=秋波
○ラ△資、水、入=5点
(ラ:「星座のごとく」という比喩が素敵です。 資:鳥たちを星に見た着眼点が面白い。 水:星座のごとくがいいですね。)

●蓮根の香り残れる雑煮かな=入鈴
◎子○淳=5点

●150号を重ねて春隣=喋九厘
○葱△ラ、ぼ、紅=5点
(葱:挨拶句として頂きました。 ラ:お祝いの挨拶句ということで、頂きます! ぼ:あなめでたやな。 紅:挨拶句って感じがいいですね。見習わなくては・・。)

●鬼すべや鬼待つ人のえびす顔=雪絵
○資△葱、清=4点
(資:めでたさがあふれていて心地良い。 葱:「鬼すべ」と「えびす顔」が呼応していて、中七の鬼のリフレインも効いています。朗詠すると気持ち良い句です。 清:太宰府天満宮の鬼すべの様子が伺える。災難・火除けの神事に皆えびす顔。)

●子と叩く音の大小初詣=砂太
◎茶△智=4点
(茶:何を叩いたのかがいろいろと想像できるのと、その結果の大小にも想像性を感じることができました。 智:小さな手を合わせて一心に祈る姿が目に浮かびます。)

●冴ゆる夜の白米の白ことさらに=まさこ
◎五△智=4点
(五:最近のお米は本当に白い。 智:寒い澄み切った夜に白米は一層白く浮かび上がって見えるのでしょうね。)

●久女の忌「株式会社・女」です=葱男
○清△砂、喋=4点
(清:終始誰かと恋せずにはおられなかった情熱家の杉田久女。その情熱家を株式会社に喩えた面白い発想の句。)

●冬空や枝に残れる黒き柿=修一
◎裕△淳=4点
(裕:寒々として淋しくて冬です。)

●星の空雪のから松林かな=ぼくる
○子、修=4点
(修:美しい信州の冬かな。)

●過去の街三十年後の月冴ゆる=入鈴
◎智=3点
(智:三十年前の街に戻ってみたい。月の冴え冴えとした晩はそんなノスタルジーに浸ってしまいます。)

●草なぎの剣はねむり梅早し=ぶせふ
○秀△修=3点
(秀:三種の神器と早梅はどこか響きあっている。 修:なんとなく不安な感じ。)

●地吹雪やパンドラの箱開いたのか=秀子
○清△水=3点
(清:パンドラの箱を開けてしまったトランプ大統領。世界は混沌の闇の中に入る。 水:状況がつかめぬまま展開していく恐怖映画のよう。開いたのでしょうか。)

●どんどの火果てて青空人と風=砂太
○ぶ△資=3点
(ぶ:少なくなっていく風習を今に伝えている人々と、自然の織り成す幸せ。)

●冬ぼたん五重塔の空青し=資料官
○五△子=3点
(五:冬ぼたんの咲く寺どこだろう?)

●ブルカ越し彫りの深さや冬の薔薇=裕
◎ま=3点
(ま:季語がぴったりですね。秘めた強さが感じられます。)

●分骨の墓に虚子の字久女の忌=五六二三斎
○葱△紅=3点
(葱:虚子も優しい男やったんや。 紅:久女も浮かばれますね。)

●行き生きて碁盤の街や息白し=智雪
△葱、ぶ、メ=3点
( 葱:入部の時の挨拶句でしたね。 ぶ:古都に根を張り生活する人の背筋を伸ばした姿が見える。)

●雪の絵の切腹の間や山眠る=しゃが
○ぶ△喋=3点
(ぶ:歴史が今に息づいている。そして、俳句が哀しみを光にかえている。)

●湯けむりの合間見つけし寒北斗=しゃが
△五、子、メ=3点
(五:温泉から見る寒北斗!いいなあ!)

●愛犬の逝きて八年日向ぼこ=白馬
△し、淳=2点
(し:穏やかに愛犬を思い出している心情が伝わります。)

●銀杏枯る学徒動員ありし道=ぼくる
△し、水=2点
(し:歴史を見ている銀杏ですね。 水:心象的にも寒々とした風景ですね。)

●風花や国境の壁高く積む=清一
○秀=2点
(秀:ベルリン?メキシコ?)

●声上ぐるデモ行進や寒きびし=しゃが
○ラ=2点
(ラ:トランプ大統領への抗議でしょう。タイムリーな句。)

●砂漠這う猟犬の目の鋭さよ=裕
○白=2点
(白:砂漠の獲物は何か?気にかかります。)

●ナレーターはあの大女優淑気満つ=水音
△十、ぼ=2点
(十:吉永小百合さん? 「あの」で詠み手にすべてを委ねるところが巧み。 ぼ:声にも風格が。)

●初旅や十八きつぷの二人連れ=資料官
○し=2点
(し:のんびり初旅を楽しむ情景が可愛らしい。)

●パノラマの光る稜線雪信濃=久郎兎
○子=2点

●ピラカンサス寒禽を呼ぶ魔法かな=五六二三斎
△葱、修=2点
(葱:鳥が集まってくる呪文のような名前ですね。 修:ピラカンサは呪文みたい。)

●冬の薔薇昔密かにひと愛す=やんま
△香、修=2点
(香:誰にも言ってない恋? 修:不可思議な手塚治虫の世界のよう)

●マラソンの掛け声遠く山眠る=秋波
△ラ、雪=2点
(ラ:「遠く」と「眠る」が呼応しています。)

●焼葱や一升瓶がからつぽに=まさこ
○ぼ=2点
(ぼ:いいね!葱男さんなら、さもあらん。)

●山路越え母待つ里の木守柿=智雪
○喋=2点

●雪しずり子役十五に為らんとす=葱男
△五、茶=2点
(五:ストーリーのある句だ。 茶:「雪しずり」の季語が子役の成長にピタッとはまりました。)

●あたふたと乗り込む窓に初日の出=香久夜
△茶=1点
(茶:渋滞の車中に日が昇ってしまったことがあり、そんな昔を懐かしく思い出しました。)

●凍蝶や次のルフラン声に出ず=茶輪子
△葱=1点
(葱:哀しくも美しい。)

●風花やお城の石に残る家紋=資料官
△ま=1点
(ま:季語と家紋が響き合って美しい景です。)

●悴める手にぬくもりや七等星=茶輪子
△入=1点

●純愛は移ろひ易すき冬の雲=やんま
△久=1点

●土竜打えばりんぼうの大統領=スライトリ・マッド
△紅=1点
(紅:絵本を見るようで、中七が楽しいです。でも、実際は困りものですね!)

●山深し黒白緋色寒の鯉=修一
△子=1点


A部門入選作〈back number〉

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