*A部門入選作発表*
当季雑詠=全79投句(入選57句)
【特選】
一席
●恐竜の骨のボルトや冴返る=雪絵
◎ス○十、秀、ぶ、や、茶、水△ラ=16点
(十:トリビアルな視点がいい。季語も合っている。 秀:背骨の一つ一つをボルトと譬えれば、冴返るという季語にぴったりですね。 ぶ:観察の行き届いた句だなぁと思った。季語もいい。 や:骨になってまでも安らかに眠れぬ恐竜よ。 茶:骨にとどまらず、ボルトまで焦点を絞っている点でいただきました。 水:雪深い恐竜博物館で、凍り付いたように永遠に眠る恐竜の化石を想像しました。 ラ:ボルトとは! とても細やかな観察眼。)
二席
●ペン先より生るる音符や風光る=雪絵
◎清、ラ○ま、茶、ぼ、砂△メ=15点
(清:楽譜を描いている詠者のペン先が春の陽光に輝く。 ラ:作曲中でしょうか。素敵な曲が生まれそう! ま:楽しい曲が聴こえてきます。 茶:ワルツが聞こえてきそうで、明るく陽気な気分になりました。 ぼ:気持の良い句。いい音楽も聞こえそう。)
三席
●春暁や夜汽車の刻む四拍子=裕
○ラ、雪、資△十、ぶ、清、し、ぼ、智、メ=13点
(ラ:「四拍子」に、作者独自の発見があります。 雪:夜汽車自体がもう懐かしいものになりました。一度だけ乗ったことのある夜汽車をふと、思い出しました。 十:ゴトゴトとした音が聞こえてくるよう。「春暁」と「夜汽車」の組合わせにやや違和感。 資:四拍子が良いですね。もう夜汽車のこういう音はなかなか聞けなくなりました。 ぶ:読んでいるだけで旅心地になった。 清:この四拍子は汽笛であろうか昭和の蒸気機関車の姿が浮かぶ。 し:夜汽車がノスタルジック。四拍子なんですね! ぼ:旅心またぞろ疼く。 智:ガタンゴトンガタンゴトン夜汽車のリズムが聞こえて来るようです。)
三席
●春光のかけら啄む白き鳩=ラスカル
◎裕、香〇し、メ△ま、久、水=13点
(裕:春の晴れた日の靖国神社のようです。 香:そのように見えますね。でもその発想がなかなかできない。鳩は光って白く見えたのでしょうか。 し:何気ない光景が美しい詩になっていて素敵です。 ま:ちらちらとした春の陽射しと白い鳩が美しい景です。 水:たしかにそこここに春光の欠片が。鳩がついばんでいたのはそれだったとは。)
【入選】
●淡雪に触れてあの夜の火の記憶=葱男
◎ぼ、砂、五△清、久=11点
(ぼ:ドラマあり、火は何の象徴か。想像刺激される。 五:艶めかしい夜である。 清:淡雪の降る夜にとある日の情念の火が燃える。)
●うららけしさざ波の背に夕日乗る=しゃが
◎メ○裕、淳△ぶ、や、智=10点
(裕:さざ波の背に夕日乗る 光景が素敵です。 ぶ:春の海を詠った名句を思い出すが、夕日乗るには参った。 や:大きな景に春の気分が満ちてゆく。 智:三角の鱗の様な夕日の帯が真っ直ぐ伸びている様が目に浮かびます。)
●思ひ出のごとくぬるくて春炬燵=秀子
○紅、久、香△葱、ま、淳、ぼ=10点
(紅:とても共感できました。 香:思ひ出との取り合わせがぴったりです。 葱:なんだか甘えてしまい、其処から出たくないのよねえー、「思ひ出」もそうなんですよねー。 ま:思い出もそう、ぬるくなっていきますね。 ぼ:ちょっとシニカルな句。味あり。)
●鯛の身の薄くれなゐや春浅し=茶輪子
○葱、十、秀△紅、砂、資=9点
(葱:春が来る喜びと鯛の薄くれなゐ、なんというマッチング、さすがです。 十:淡いピンク色にただよう春の予感。 秀:とても綺麗な景が見えます。 紅: お刺身でしょうか。確かに鯛の身はこんな色です。 資:(薄くれなゐと言い切って,春浅しとくるところが良いですね。)
●能登の海春打ち寄せてうちよせて=水音
◎ま、子△茶、雪=8点
(ま: リフレインが効いていると思います。春が近づいて来る、期待感が高まっていく感じがよく出ています。 茶:波ではなく「春打ち寄せ」の措辞と反復がお上手だなと思いました。 雪:希望も込められている感じです。)
●ぶらんこや羽化する時を待つ気分=秀子
◎し○葱△ラ、資、ス=8点
(し:不思議とこの気分が分かる気がします。 葱:一番振り幅の大きいところで、フワッと羽化しそうな感覚がありますよね、いいなあー、スカートの女の子の、まだ大人になる前のブランコ^ ^。 ラ:感覚的ですが、共感出来ます!)
●をみなよりをんな流るる雪解川=葱男
◎智〇砂、五△紅=8点
(智:冬から春になるように少女から女性になる。雪が溶け豊かな水となるように時も流れて行くんですね。 五:上手い表現だ。 紅:ちょっと演歌ぽくて、藤あやこさんに似合いそうです。)
●暁に浮かぶ影絵やうかれ猫=智雪
○清、紅、久△茶=7点
(清:障子に浮かれ猫の影が写っている微笑ましい景が浮かぶ。 紅:恋猫の朝帰りですね。影を詠んだのが巧みだと思います。 茶:黒猫ですね。情景がぱっと浮かんできました。)
●薄氷に歪みし貌を踏みゐたり=清一
○智、水、ス△秀=7点
(智:己の歪んだものも踏んで打ち消してしまいたいと思う今日この頃‥。 水:子どもの頃よくやりましたが、この場合鬱屈した大人を感じます。 秀:やや因果が出過ぎたかもしれません。)
●紬着て坂道多き雛の町=紅椿
○ぶ、ぼ、香△五=7点
(ぶ:最近古雛を飾って町おこしするところが多いが、坂道で俄然臨場感が盛り上がった、紬なんかも着ておられるし。 ぼ:日本画の世界、旅情あり。 香:着物でおでかけですね、素敵。 五:雛の町というと日田のことが浮かぶ。)
●惑星の水の胎動蝌蚪生るる=清一
◎や、紅△裕=7点
(や:水の有る惑星に命が宿る。例えばお玉じゃくし。 紅:大きな惑星の水の胎動とちいさな蝌蚪との対比がお見事です。 裕:蝌蚪 という言葉初めて知りました。下六がちょっと気になりました。 葱:裕さん、「生るる=あるる」。)
●空缶に煙る吸殻鳥の恋=紅椿
◎秀、修=6点
(秀:6年前まではヘビースモーカーだったので、そんな気分はよくわかります。大昔、ミレイユ・ダルクという女優さんがいて、行儀悪くて、アンニュイな演技が得意でした。 修:実感できる<空間と時間も保障>ものとの不思議な取り合わせです。)
●いい顔で君逝きしとふ梅の朝=ぼくる
○ま、し△ス=5点
(ま:季語が効いていますね。お気持ちお察しします。 し:悲しいけれど心に響く美しい句だと思います。)
●いつまでも見送る母や雪残る=ぶせふ
○五△や、淳、香=5点
(五:母との別れである。今生の別れになったのかもしれない。 や: 冬が去り春を迎える頃巣立ちの季節が訪れる。残雪が眩しい。 香:去りがたいですね。)
●朧夜や電子辞書より声のして=秀子
◎十△雪、水=5点
(十:何とも言えないモヤっとした雰囲気が伝わってくる。 雪:朧の夜はそんな錯覚もあるのかも知れません。 水:辞書にない声が聞こえてきそう。)
●草青む大道芸の触れ太鼓=雪絵
◎淳○修=5点
(淳:大道芸の季節となりますね。 修:どきどき感が伝わってきます。)
●黒板の傘形の傷春浅し=茶輪子
◎久〇資=5点
(久:青春ですね。簡潔でいい。 資:きれいに消えていない黒板,古傷も癒えてきたのでしょうか。)
●しゅんかんやここにわたしのゐるふしぎ=ぶせふ
◎茶△葱、子=5点
(茶:島流しのまま老いて頭が思うように働かなくなってしまった俊寛。その心情をひらがなのみでズバリと柔らかく表現できているなと思いました。 葱:「しゅんかん」を「春寒」としても良いし、茶輪子さんのように無季の歴史ものとして詠むことも可、たまに平仮名の「音」だけの句も雰囲気あります。)
●ピカソの女の顔して花粉症=清一
◎雪△水、五=5点
(雪:ピカソの時代にはなかった花粉症。俳句ならではの結びつきですね! 水:リズムが整えば◎だと思います。 五:破調なれど17音に収まる。)
●居眠りのよだれ拭うや涅槃西風=裕
○や、修=4点
(や:そのように無心で時を忘れて眠りたし。 修:これこそ極楽、きっといい夢なんでしょう。)
●嘴の飛び出しさうな春列車=スライトリ・マッド
△十、裕、資、修=4点
(十:最新型の新幹線ですね。 裕:どんな列車でしょうか? 資:新幹線は皆くちばし列車ですね。 修:しーじーの映画のようで楽しい。)
●事務室に受くる卒業証書かな=紅椿
◎葱△雪=4点
(葱::なんだかジーンとくる情景ですね。どんな事情があったのかは分かりませんが、きっと、校長からではなく、担任から祝いの言葉を添えて手渡されたのでしょう。先生の目にも涙が、、。 雪:何かドラマがありそうですね。それとも単なる病欠?)
●捨て舟にさざ波寄する日永かな=ぼくる
○ラ△葱、修=4点
(ラ:捨て舟が、さざ波に慰められているような。 葱:「捨て舟」が上手すぎー! 修:既視感あれど季語決まりたる。)
●静寂といふ音を聴く冬の夜=淳一
○メ△ま、し=4点
(ま:冬の句ですが。冬の夜の心情がよく表れています。 し:私も夜中に聞くことがあります。)
●手鏡に笑ひかけたる朧月=まさこ
○清、子=4点
(清:詠者の笑顔に朧月も笑顔を返しているようでもある。)
●美術室よりニスの香や鳥の恋=ラスカル
○雪△秀、修=4点
(秀:美術室でなにかを作っているんですね。とても、明るい。 雪:美術室って独特の雰囲気がありました。ニスの香も懐かしい響きです。 修:「空缶に〜」の句と発想近し。嗅覚にうったえてうまい。中学生高校生の恋も想像しました。)
●雪降るや子の歩幅とは狭きもの=弧七
○淳△や、久=4点
(や:雪の中を一緒に歩いて実感する。愛しや。)
●梅日和組紐の色変えてみる=裕
○ス△ラ=3点
(ラ:きっと、明るい色にしたくなったのでしょう!)
●堅雪も笑う陽だまり靴の跡=智雪
◎資=3点
(資:緩くなった堅雪を笑うと捉えたところがうまい。)
●春の旅アリバイ工作ままならず=やんま
◎水=3点
(水:松本清張の映画を最近見たので、その世界を想像しました。)
●春の雪幻住庵へ下る径=修一
◎ぶ=3点
(ぶ:うまいなぁと感心した・・作者も見えるような…)
●寒き朝風に吹かれし葉一葉=淳一
○子=2点
●周辺は中心となり木の芽かな=ぶせふ
△十、秀=2点
(十:芽吹きの形状を面白く表現している。 秀:上と中が観念的なのかもしれません。)
●純白は汚れ易きよ辛夷の芽=やんま
△紅、砂=2点
(紅:汚れ易いから惹かれるのでしょうね。)
●大宰府や人妻の春美しく=砂太
○ぼ=2点
(ぼ:祈る姿か。梅の花も見えてくる。)
●強気です宣伝部長春一番=メゴチ
△葱、香=2点
(葱:面白い! 宣伝部長はそうでなくちゃ?? 香:元気が出ます!)
●迷い入る尾道の猫日向ぼこ=香久夜
△ぶ、裕=2点
(ぶ:尾道がすごく効いている句だと思った。季語の選定も決まっている。 裕:いかにも尾道の光景ですね。)
●リリカルな風を纏ひて初蝶来=ラスカル
○智=2点
(智:中七下五の格調の高さと対比してリリカルの語調が楽しい。)
●アネモネや恋の終りは紫に=砂太
△し=1点
(し:咲いている時が鮮やかな分、終わりが寂しい。恋も同じですね。)
●一見で祇園巡りて川光る=久郎兎
△智=1点
(智:光っているのは白河でしょうか。暖かい風に誘われて花街をそぞろ歩きする様子が目に浮かびます。)
●梅が香に日増しの光り子等の声=久郎兎
△メ=1点
●加齢なる女系家族の雛の宴=資料官
△香=1点
(香:うちも集まればそんな感じです。)
●罌粟の花大きな傘を傾けて=修一
△雪=1点
(雪:風に揺れるけしの花がまさにこのようです。)
●涅槃会や子犬も寝間に横たわり=子白
△茶=1点
(茶: 罪のない子犬の寝顔こそ悟りの境地なのかもしれませんね。)
●野火のごと初めて父に褒められし=葱男
△修=1点
(修:あたまぐらぐらしたけど、野火が色々想像される。)
●春風や花は愛され花になる=喋九厘
△子=1点
●春時雨濡れて行くにはまだ早し=メゴチ
△淳=1点
●春の鴨雌雄ほどよき距離にあり=ぼくる
△砂=1点
●春待ちて人は愛され人になる=喋九厘
△子=1点
●美術館の真白き壁や春愁=水音
△修=1点
(修:とても品がよいです。)
●古き写真のおかつぱ頭けしの花=修一
△ス=1点
●ふる里に土管公園犬ふぐり=やんま
△五=1点
(五:土管公園とは懐かしい。)
●窓のある絵本窓の形にかげろへる=水音
△清=1点
(清:絵本の中に織り込まれている窓、その窓がゆらゆら揺れる。)
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