*A部門入選作発表*


当季雑詠=全93投句(入選70句)

【特選】

一席
●梧桐や部員二人のチューニング=雪絵


◎智、裕○十、ま、秋、香、朱△葱、ラ、茶、修=20点
(智:梧桐が青春してます。 裕:梧桐の下の日陰で音合わせしているブラスバンドかな?梧桐が涼し気。 香:梧桐の大きな木陰、気持ちよさそう。 朱:のびのびとした若々しい初夏の光景が見えます。 秋:おそらく三密を避けての自主練習。景の切りとり方が上手いと思いました。 ま:梧桐の大木と二人の対比がいろいろと物語を思い起こさせてくれます、さわやかで切なく。 十:密がダメとはいえ、二人だけの練習とは哀しい。 葱:軽音楽倶楽部かな? 茶:紋様の形状と涼しげな葉陰が、若いデュオにぴったりです。 ラ:「二人」がリアルです。もっと部員が増えますように! 修:こんな昔もありました。)


二席
●折紙のぶきつちよ兜風薫る=茶輪子


◎や、久、雪○メ、朱△砂、水=15点
(や:我が身につまされる。 雪:ぶきっちょという表現で、どんな兜か想像できました。私が折ったのと同じです(笑)  朱:中七が効いてますね、季語良い。 水:可愛らしいお孫さんかと。)

<BR> 三席
●あふまがときのてんたうむしをふまぬやう=朱河


◎秀、香○清、雪△や、葱、し=13点
(秀:なぜ「てんたうむし」なのか、ちょっと疑問も感じていますがすべてをひらがなにしたところなど、柔らかくて好きな句です。 香:逢魔が時、怖いですね。 雪:ひやっとした瞬間、ありますね。 清:全部ひらがなで書かれているので逢魔時でも柔らかい印象を与える。 や:昼から夜へ時間軸がずれてゆく。天道虫のお休みタイム。 葱:全十七音の平仮名表記が句の内容にマッチして成功していると思う。 し:面白い情景ですね。全部ひらがなにした意図が知りたいです。)  


【入選】

●家系図を閉じて家解く麦の秋=雪絵
◎資○久、秋、水、朱△喋=12点
(資:実家の解体と家系図を結び付けた面白さ、何か麦秋に救いを感じた。 水:爽やかな季節なのに寂しさがこみ上げる。 朱:金色の麦の景と閉じる家系図の取合せは上手いなあと思いました。 秋:これも時代の流れでしょうか。麦秋という季語が、田舎の風景や新旧の入替りを一抹の感慨をもって眺める心境をよく伝えていると思います。)

●上流に父母の墓あり河鹿鳴く=清一
◎五○秀、ラ、香、遊△葱=12点
(秀:父母への追慕と河鹿の鳴き声はよく似合っています。 香:川縁のちょっと険しい山道が浮かびます。 葱:「上流」が暗喩する作者の心の内を感じた。 遊:切っても切れない肉親への思いが季語で最高潮。 ラ:ご両親に対する敬意の念が感じられます。)

●湧き止まぬ雲はメレンゲ聖五月=水音
○智、紅、入△十、資、ぼ、朱、五=11点
(智:上五中七が素敵。 紅:とても楽しいお句です。 ぼ:聖五月で決まり! 朱:白い雲の若々しい勢いを感じます。)

●オカリナはキスするやうに南風=葱男
◎十、紅○し△秀、遊=10点
(十:中7がオシャレ。季語も清々しい。 紅:オカリナを吹いた事はありませんが、「へぇ〜そうなんだ!」と思わされました。一度聞いたら、忘れないお句です。 し:そうなんだ、それがコツなんですね!! 秀:やや類想感があるんですが、季語の付け方がいいと思います。 遊:確かにあの曲線にはキスしたいかも)

●耳の奥の海誘い出す灼けた石=葱男
◎ラ○砂、ス、朱=9点
(ラ:「海誘い出す」というレトリックが巧み。 朱:詩情がありますね。)

●鬱然と自粛酒酌む緑夜かな=ぼくる
◎砂○資、始△十=8点
(十:寂しい独酌。そんなコロナの中でも季節はめぐるという対比。 資:新緑時期なのに何か切ない。)

●SLに生気再び新樹光=香久夜
◎修○茶△智、ぼ、水=8点
(修:希望が湧いてくる。 茶:新緑に機関車の蒸気の白が映えています。「蒸気」ではなく「生気」とした点もいいと思います。 智:若葉の中を走るSLが見えました。 ぼ:白い煙を吐きながら新緑を行く,復活したSL。 水:光の中で生きているように黒光りしている。)

●カミュ描く疫病の町海霧深し=しゃが
◎清、始○葱=8点
(清:カミュの作品「ペスト」をモデルにアルジェリアの港町オラレを舞台に海霧(じり)を季語にした佳句。 葱:先日テレビでカミュの「ベスト」を特集した番組をみました。日常は隠れていて見えないさまざまな人間の内面を、ひとつの疫病の流行によって掘り起こされ、暴き出される現実が描かれ、深く考えさせられるものがありました。)

●丸文字の届けば父の日なりけり=十志夫
○茶、ぼ△や、子、雪、入=8点
(茶:メールではなく、手紙のメッセージ。このご時世、何よりの贈り物ですね。 ぼ:嬉しさを噛みしめている。実は期待していた。(笑) や:四角四面の父への贈り物。)

●飛び魚や夜が朝へと変わるとき=遊歩
◎ま○ス△十、喋=7点
(ま:夜明けの海の美しい景が見えます。境の表現が秀逸です。 十:いつになったら朝が来るのやら。季語が効いている。)

●寝転びて棒グラフみる団扇かな=十志夫
◎茶、入△久=7点
(茶:団扇の骨と棒グラフ!発見ですね。「 〜て〜みる」に変化を持たせたらもっとよいと思いました。)

●若葉風ざぶざぶ鍬を洗いたり=裕
○入、修△葱、ラ、香=7点
(修:生き生きとした営み! 葱:この時期、気持ちの良い農作業! ラ:気持ちのよい句。心まで洗われるような感じがします。 香:ざぶざぶ、が汗も洗い落とすように涼しそう。)

●青空を十字に裂きて親燕=香久夜
◎し○裕△メ=6点
(し:十字に裂きてがすごくいいです。斬新で、情景もよく分かります。 裕:この時期子燕の訓練をしている光景を見かけます。)

●新月の髭の手触り蛙鳴く=遊歩
◎ぼ○メ△茶=6点
(ぼ:何ともいい味のある句。着地もお見事です。 茶:ざらざらとした触感と「蛙」の低い鳴き声との取り合せの妙に。)

●聖五月川の底まで日の届き=秀子
   ○や、子△清、ス=6点
(や:輝く季節の到来だ。 清:川底までキリストの愛の光が届く。)   

●梅雨寒の古書を開くや煙草の香=朱河
◎メ○清△紅=6点
(清:古書を手に取ったとき愛煙家だった持ち主の香を感じるときがある。 紅:お父さまの愛読書だったのかもしれません。)

●螢のひいふうみいよあと満天=やんま
◎遊○資△入=6点
(遊:ひらがなで数え上げて漢字で爆発したw 資:ひらがなが良い。)

●山法師静かに揺れて太極拳=資料官
○久、智△ま、遊=6点
(智:山法師と太極拳のゆったりした動きが似つかわしい。 ま:太極拳の柔らかな動きと山法師が巧く合って穏やかな時間が感じられます。 遊:絵にも音楽にもなってる。)

●まつすぐに西方めざす蟻の列=ラスカル
◎秋○雪△ス=6点
(秋:景がしっかりしている。それが西方という言葉で宗教的な色彩も帯び秀逸。)

●ヨカナーンの首より重く薔薇一輪=秀子
  ◎葱○し△清=6点
(葱:皿の上に大きな真赤な薔薇一輪! というカッコいいテーブルコーディネートでしょうか? し:ヨカナーンの首!すごい取り合わせで面白い。でもそれがよく分かります。立派なずっしりした薔薇でいつも下を向いてしまう薔薇がうちにもあります。 清:洗礼者ヨハネの首と薔薇との対比どちらも重い。)  

●自治会の訃報の掲示柿若葉=裕
○ラ△資、雪、朱=5点
(ラ:訃報は悲しいことですが、柿若葉で少し救われます。 朱:柿若葉の季語が成功してると思いました。 資:訃報を掲示する昭和な風景。)

●竹落葉来世に会はむ人のあり=清一
◎子○紅=5点
(紅:静かな哀悼のお句で、惹かれました。)

●大口やマスク要らずの鯉のぼり=メゴチ
◎喋△始=4点

●ストレートフックアッパー青嵐=水音
○十△葱、ラ=4点
(十:面白い。季語もあっている。パンチの流れからいうと、私なら★ジャブフックときどきアッパー青嵐(笑) 葱:ご存知! 裕ちゃんこと、石原裕次郎! ラ:ひらがなが一字も無い句、初めて見ました!)

●昼酒のとめどなくなり山法師=智雪
○修△秀、五=4点
(修:山法師の清らかさが救っている。 秀:季語の「山法師」が少し疑問ですが。)

●街薄暑手作りマスクの百面相=秋波
△清、資、し、修=4点
(清:川柳ぽいが今時のユーモアのある句。 資:個性的な手作りのマスクが生きている。暑い時に、アベノマスクなんか使えない! し:今ならではの句ですね。手作りマスクを作る日がくるとは思ってもいませんでしたね。 修:新しいファッション?)

●ママちやりの籠に桑の実黒々と=修一
○五△や、秋=4点
(や:ママは我が家のスーパーマンなり。)

●枝と葉と画面いつぱい夏欅=スライトリ・マッド
○喋△入=3点

●こども祭じやぐじやぐ食らふポテトチップ=葱男
○朱△ス=3点
(朱:ポテトチップにこういうオノマトペとは面白いです。)

●ゴンドラの窓迫りくる大雪渓=香久夜
○遊△秀=3点
(遊:臨場感たっぷりの涼味。 秀:臨場感がありますね。もしかしたら、「窓」はいらないかも。)

●時疫来て雨降り止まず七変化=智雪
○始△修=3点
(修:まさに七変化季語がぴったり。)

●自販機の並ぶ茶店や花樗=資料官
△茶、裕、修=3点
(茶:取り合せがよく分かりませんが、素朴な写生、実景にいただきました。 裕:多分庭園の茶店、自販機はちょっと淋しいけど時代かな。 修:樗は逞しい木だから。)

●出入りのたびの消毒街薄暑=紅椿
○五△十=3点
(十:実感です。いつまで続くのやら。)

●夏空やほったらかしの眉太し=しゃが
△葱、雪、秋=3点
(葱:女性の句だと思うけど、中七に作者の女の気風を感じた。 秋:中七が無造作感を出していて妙。眉がすぐ濃くなるのも健康的な証。季語と呼応してあっけらかんとした感触がいい。)

●母の日の定型文に一語入れ=久郎兎
△十、智、メ=3点
(十:受け取るほうも、その一語が嬉しいですね。 智:男の子でしょうか。)

●薔薇崩れ眠れぬ夜のなまぬるき=朱河
○秀△葱=3点
(秀:眠れない夜の闇の奥で、小さな音を立てて薔薇が崩れたというイメージはありそうだと思いましたが、その闇を「なまぬるき」と言ったのが、その人の発想。 葱:気分がうまく出ている。)

●はるかなる戦後よ父母よ麦の秋=ぼくる
○砂△久=3点

●ほととぎす忘れ去られたラブソング=子白
◎水=3点
(水:忘れない時鳥と忘れ去られたラブソング)

●麦浪の平野潤す風の色=喋九厘
◎ス=3点

●葭切やファインダーで追ふ少年=秋波
○裕△香=3点
(裕:野鳥クラブかな、ひたむきな少年が見えます。 香:かつての少年でしょうか?)

●水馬瞬間移動す二寸ほど=秋波
○や=2点
(や:瞬きとどちらが早いか。)

●海遥か卯月の野辺に酌むワイン=砂太
○ま=2点
(ま:いつもの年なら、人々とにぎやかに酌むところでしょうが、今年は一人静かに味わって、それもまたよし、でしょう。)

●弟を亡くした話薔薇ひらく=秀子 
○朱=2点
(朱:気持ちの重なる一句でした。)     

●オリーブの葉のさやさやと五月の庭=まさこ
△子、始=2点

●介護する父のおねだり燕の子=茶輪子
○ぼ=2点
(ぼ:おねだりは同じだが、滅びゆく生命と誕生した生命を対比。)

●サイダーに気合を託しわが身体=始祖鳥
△十、喋=2点
(十:面白い把握ですね。「託し」は「託す」とほうがいいような。)

●島の子の見はてぬ夢や卯波立つ=ぼくる
△紅、朱=2点
(紅:ドラマを感じます。 朱:中七が少し甘いなとは思いますが島の子の立ち位置が見えて佳句かなと。)

●梅雨冷やひねもすマリオの電子音=十志夫 
△ま、紅=2点
(ま:自粛中の姿ですね、マリオがまた流行っているとか。 紅:あの音楽が聞こえてきそうです。)    

●麦秋に一陣の風渡る波=久郎兎
△メ、遊=2点
(遊:月並みだけど気持ちいい。)

●髭面の吾とわが婿こどもの日=茶輪子
○水=2点
(水:自粛で髭面の人多いですよね。)

●日盛りの不思議の国へ迷ひ込む=スライトリ・マッド
○子=2点

●藤の花深呼吸して遡る=裕
○喋=2点

●まだ届かぬマスク卯の花腐しかな=資料官
△ぼ、水=2点
(ぼ:季語の斡旋、ドンピシャですねえ。 水:ずっとこのまま届かないんじゃないかと、、、)

●鎮魂曲のしづかに流れ夕立あと=ラスカル
△清、葱=2点
(清:コロナ死に対する鎮魂歌。 葱:映画のワンシーンのような。)

●青梅雨の涙活といふ癒しかな=まさこ
△五=1点

●青葉風きつとファクターXを=五六二三斎
△香=1点
(香:きっと何かを持ってると思います。)

●うず潮に幻見ゆる芙美子忌か=始祖鳥
△砂=1点

●裏木戸の開いて卯の花の腐たしかな=やんま
△砂=1点

●快速で毛虫に突進する毛虫=修一
△し=1点
(し:どんな状況だったのか見てみたい。)

●過去未来みんな幻し新樹光=やんま
△子=1点

●記念日や40回目の薔薇の花=メゴチ
△ま=1点
(ま:ずっと続いていることが素敵です。)

●蜘蛛の囲の散々となる悲哀かな=清一
△久=1点

●スマホ鳴って友の死を知る夜の新樹=雪絵
△秋=1点

●誰もゐない湘南の海若布干す=まさこ
△裕=1点
(裕:今は湘南にも人が戻ったようです。)

●夏めくや木陰辿りて散歩道=メゴチ
△智=1点

●日曜の水澄む夕べ蚊喰鳥=砂太
△始=1点

●抜衿の夢二のをんな黒揚羽=智雪
△裕=1点
(裕:黒揚羽って、こういうイメージが付きまとう気がします。)


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