*A部門入選作発表*


当季雑詠=全80投句(入選52句)

【特選】

一席
●仏像の胎に仏像山眠る=葱男


◎秀、ラ、五、ス○砂、雪、水、香△十、紅=22点
(秀:いい句ですねえ。 ラ:「山眠る」という季語が、ぴたりと決まりました。 水:山眠るが効いていると思います。 香:山眠るの季語が生きてますね。 十:最近はエックス線撮影で謎が解明できるようになりましたね。 紅:TVで見た事があります。季語の斡旋がお上手です。)


二席
●一つ思ひ一つ忘れて日向ぼこ=やんま


◎久、資、メ○砂、入△水=14点
(資:H音が心地良く,まあそんなものかと実感。 水:この心地がよくわかる年になりました。)


三席
●さんずいのやうに弾ける波の花=十志夫


◎水○清、秀、紅△ラ、ま、村、香=13点
(水:さんずいのやうにでいただきました。 清:確かに波の花はさんずいのようでもある。  秀:「さんずいのように」の比喩がいい。ただ、「さんずい」は漢字のほうがわかりやすいのでは? 紅:実際に波の花を見た事はないのですが、上五が魅力的でした。 ラ:「さんずいのやうな」という比喩がユニーク。 ま:比喩がぴったり、と心に飛び込んできました。 村:比喩がユニーク。 香:さんずいのよう というのが面白いです。)


三席
●棟梁のまづは落葉を掃きにけり=紅椿


◎ぼ○十、葱、資△や、虹、砂、ま=13点
(ぼ:実直で、風格のある、親方像が鮮明に浮かんで来る。 十:伝統俳句の形に忠実な秀句。 葱:仕事に立ち向かう前の心構えが感じられる。 資:仕事の段取りが見事。 や:気も爽やかに佳き仕事をなさむ。 ま:丁寧な仕事をしてくれるであろう姿が浮かんできます。)


三席
●むささびになつて眠りのなかを飛ぶ=虹魚


◎葱、砂○ぼ、ス△入、玻、茶=13点
(葱:多分に詩的な表現で、詠みたいことの意味が少しぼやけているかもしれないが、それゆえにポエムとして魅力的な17音となったのではないか? ぼ:私もそうありたい。 入:これは初夢にとっておかれた方がよかったですね。夢句というジャンルにふさわしい。 茶: 夜行性ですから寝ずに飛んでいることに。24時間戦えますね。)


【入選】

●紙袋ごと鯛焼にあつたまり=茶輪子
◎淳○や、雪△十、ぼ、虹、葱、香=12点
(淳:紙袋のあったかさが伝わってきますね。 や:あと焼藷かしら。 雪:何だかほっこり。 十:冬の日常景を巧に切り取っている。 ぼ:庶民派のささやかな幸せ感が伝わって来る。 葱:座五の「あつたまり」の口語の是非が問題になりますが、詠者の意図としては「鯛焼」という言葉の庶民性に呼応する、確信犯的な犯行だと思います。 香:早く食べたい!)

●ごぶごぶと鳴る排水や冬の夜=茶輪子
◎や○虹、村、ス△葱、水、五=12点
(や:残り湯は亭主が入る。 虹:音が聞こえる。 村:音のリアリティ。 葱:「ごぶごぶ」がありきたりのようでいて、それゆえにリアリティを持つオノマトペとして成功していると思う。 水:音にやるせなさを感じる冬の夜。)

●蜘蛛の囲の風に疲れて冬となる=砂太
◎秋○虹、久、秀△メ、入=11点
(秋:主にうち捨てられて風に晒されている蜘蛛の巣。風邪に疲れてとい表現がいい。 秀:中7で頂きます。 入:、蜘蛛にとってはいらんお節介かもしれんが、我が身の冬も似たり寄ったりです。)

●大根の端にちよろんとダリの髭=ラスカル
◎清、ま、雪△十、茶=11点
(清:大根と云う馴染みのものにダリの髭との措辞が面白い佳句。 ま:正に言い得ていますね。楽しい発見です。 雪:ダリの髭、とはよく言い当ててますね! 十:大根とダリとは、意外な取り合わせ。 茶:あるあるですね。大根に非権威主義のダリを持ってきた点にいただきました。)

●寿司皿の聳ゆ勤労感謝の日=十志夫
○ぼ、ラ、紅△雪、五、茶=9点
(ぼ:健康的で、俳味あり。好みです。 ラ:寿司皿が聳えるほど、沢山食べたのですね!(笑) 紅:季語に9音を使うという難しい事を成功させています。 茶:たしかな勤勉にささやかなご褒美。これが子どもからの招待なら一入ですね。)

●生と死の囁き合へり寒の月=清一
◎子、玻○メ△資=9点
(玻:寒の月という凄まじい季語を斡旋しながらも、敢えてその生死のせめぎ合いを「囁き合へり」と措辞したところに作者の美意識の高さがうかがえる佳句である。闘病というのは壮絶なものである。それも生死の狭間を彷徨うような闘病には杞憂がつきものであり、当人にしかわからない心の浮き沈みや葛藤を少なからず伴うものだ。その全てを「寒の月」に集約し、中七でビブラートしたものを引き締めてている。作者の人間性が如実に現れながらも美的表現を損なわず詠っている姿に共振を起こさざるを得なかった。迷わず特選に頂きました。 資:S音の静けさが寒の月につながる。)

●より深き闇へ分け入る冬の星=水音
◎虹○清、秋△淳、玻=9点
(虹:果てしないスケール感。 清:冬の星は闇の中で煌々と輝いている、その様子を上手く表現。 秋:澄んで冴えきった空気感が伝わります。)

●寒林や言葉ではなき言葉持つ=水音
◎入○ま、資△村=8点
(ま: 確かに木々と対話できるような気がしてしまいます。 村:深い林への想像力あり。)

●ひよいひよいと懐手にて友来たる=虹魚
◎村○淳△ま、秋=7点
(村:軽くてユーモアと現実感在り。 ま:ひょいひよいがとても効いています、長いよい友人関係なのでしょうね。 秋:澄んで冴えきった空気感が伝わります。)

●物陰に一人遊ぶ子石蕗の花=ぼくる
○や、ラ、子△資=7点
(や:一人っ子も増えた遊び相手はどうなのか。 ラ:一人で遊ぶ子の寂しさを、石蕗の花の黄の明るさが救っています。 資:石蕗の花が効いている。)

●懸崖の潮風を抱き鶴來(きた)る=葱男
◎香△ぼ、子、五=6点
(香:大きな景色、まるでドローンで見ているよう。 ぼ:丈高く堂々たる句。敢えて言えば、出来過ぎかなあ。)

●室咲の花はぶつきらぼうに散る=十志夫
○ま、五△紅、入=6点
(ま: 花によりますが、ぶつきらぼうな花ありますね。言い切ったところが気持ち良い。 紅:ちょっと散文ぽいかな?とも思いましたが、「ぶつきらぼう」が新鮮でした。 入:室内では自然のものは盆栽生花以外は、散らばるという処理ですよね、鋭い一瞬の句ではっとしました。)

●目覚めればまだ生きている寒さかな=子白
○水△葱、久、雪、メ=6点
(水:ちょっと滑稽な感じがしますね。 葱:70近くなると実感する日常の哲学的悟性。)

●枝打の枝造作なく堆く=十五
◎十○五=5点
(十:庭木の手入れの経過が鮮明に浮かぶ。)

●スピーチの枕詞に石蕗の花=五六二三斎
○茶△葱、砂、水=5点
(茶:「石蕗」を取り合せたことからどんな枕詞かイメージがくっきりします。 葱:祝辞を頼まれるのはなかなか厄介なものだが、季節に合わせた季語の話なんぞを挨拶の冒頭に持ってくるアイデアは使えそう!)

●冬晴を丸ごと喰らふ散歩道=喋九厘
○入△清、紅、メ=5点
(清:気持ちの良い小春日和の散歩道、歩いてみたくなる。 紅:気持ちがいい。中七に工夫が見られます。)

●冬日向趣味仰雲の友とゐる=やんま
◎茶△久、入=5点
(茶:「仰雲の友」いいですね。お仲間に入りたいと思いました。  入:クラシーク!粋なお句です。こういう友人は大切にせんといかんですよ。)

●ホットワイン森の香りの湯気たてて=秀子
○玻△砂、ラ、雪=5点
(ラ:美味しそう♪)

●綿虫をはつしと睨み太極拳=やんま
◎紅△葱、入=5点
(紅:すぐに 景が立ち上がりました。白い息も見えそうです。 葱:早朝の河原に太極拳のルーティーンで健康管理している老人の、まさに目の前に浮遊する綿虫。一瞬の気づきに心を奪われる人の俗性が妙に可笑しい。 入:俳諧味抜群!ユーモラス。好きな句です。)

●足踏みて鳴らすオルガン冬夕焼=雪絵
○村△秀、入=4点
(村:懐かしい昭和の田舎の小学校の感じ。 秀:ノスタルジックなオルガンに季語がよくついている。 入:寒さを忘れ、足踏むオルガンは冬夕焼けにぴったり。)

●熱燗や星影揺らぐ日本海=清一
○メ△虹、淳=4点

●葛湯吹くわが息少し頼りなく=秀子
○秋△久、ス=4点
(秋:なんか共感。)

●オリオンのぴっと肩上ぐ藍の空=入鈴
△ぼ、秀、葱=3点
(ぼ:中七がいいですね。清新なイメージが広がる。 秀:牡牛を狙う肩がピッとあがってるという発想。 牡牛を狙う肩がピッとあがってるという発想。 葱:惹かれる句ですが「藍」にはやや違和感もありました。)

●兜町のビル跨ぎ来る冬将軍=ラスカル
△秀、秋、ス=3点
(秀: ややパターンの感じもしますが。)

●白露や猫を探せば山羊の声=入鈴
○十△秋=3点
(十:猫と山羊が共存する田舎暮らし。長閑な一句。)

●掃く音に生まるるリズム鵙の声=五六二三斎
○茶△清=3点
(茶:日常の家事の音にリズムをつけるという感性がよいと思いました。 清:自然豊かな所で住まいしている好きな光景。)

●火山性地震百回片時雨=水音
△資、香=2点
(香:漢字だけで俳句に。)

●千枚田一枚ごとに黄落す=メゴチ
△や、ス=2点
(や:それそれの田にしれぞれの立ち位置が。)

●旅の宿加賀大根を頬張りぬ=メゴチ
○香=2点
(香:旅先で、ご当地のものをいただくのが楽しいですね。)

●ちんまりと八百屋のレジの聖樹かな=紅椿
△葱、ラ=2点
(葱:八百屋が商売にあまりにもキリスト教色を出すのも変なので、「ちんまり」と世情に同化するぐらいが程よいのかもしれない。 ラ:八百屋と聖樹のミスマッチが面白い。)

●裸木と聖樹の枝の触れ合へる=ラスカル
○虹=2点
(虹:支え合う温かさ。)

●初霜や猫犬までも引き籠り=喋九厘
○淳=2点

●響くのは玉砂利ばかり秋の蝶=秋波
○玻=2点

●冬色の鋏の滑り落つるかな=玻璃
○久=2点

●歩道履く掃除婦の背に舞ふ枯葉=淳一
○子=2点

●ワンコールカット睫毛の冴ゆるやうである=玻璃
○葱=2点
(葱:いわゆる「ワンギリ」というやつだろう。人間社会を渡り歩けばがそれなりに気にかかる奴もできるだろう。 いい意味でも悪い意味でも。 「ん? 誰だろう? あいつかも?」 と想像してしまう自分が妙にざわつく。)

●雨もよい炬燵は私の安定剤=秋波
△葱=1点
(葱:鬱陶しい冬の雨だが、炬燵のぬくもりには故郷に帰ってきたような安心感がある。)

●狐火や身内にほのと灯るもの=まさこ
△入=1点
(入:狐火というものを一度見たいものだと思いますが、ほのとしてないかも?)

●草枯れし野良猫の走る速さかな=子白
△淳=1点

●黒猫の尿する猫の墓小春=まさこ
△清=1点
(清:尿でテレトリーを拡げる猫それが猫の墓である場所が面白い。)

●参道のかなたこなたにお茶の花=修一
△子=1点

●背をまるめ祈る嫗や冬紅葉=ぼくる
△十=1点
(十:信心深い嫗が祈るのは、夫の快癒か、孫の受験か。)

●毘沙門堂知る人ぞ知る紅葉道=香久夜
△子=1点

●ビル風の攫つてゆける木の葉かな=紅椿
△入=1点
(入:葉っぱの方に寄り添ってない気がしますが、ビル風の季節風として季語に 挙げてもよいくらいの描写やと。)

●冬の運河コンビナートの火は消えず=資料官
△や=1点
(や:何故かコンビナートには運河が流れる。)

●吾に来る冬の鴉よ来て笑へ=砂太
△玻=1点


A部門入選作〈back number〉

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