*A部門入選作発表*


当季雑詠=全80投句(入選59句)

【特選】

一席
●梟や目玉の中へ闇を吸ふ=清一


◎メ○や、裕、紅、香△ラ、茶、し、ス=15点
(や:わが魂も吸われそう。 裕:「闇を吸う」が面白いです。 ラ:梟なればこそ。 紅:発想が斬新です。 茶:中七の措辞が梟の神秘性を表していると思います。 し:目玉の中へ闇を吸ふという表現いいですね!)


二席
●院長の手元から鳩クリスマス=紅椿


◎秀、水、雪○ス△葱、資、村=14点
(秀:老人のあるいは子供の病院でしょうか。読み手に安心感を与える詠みっぷりですが、その分、やや既視感。 水:入院中の方々へのクリスマス会 笑顔がたくさん。 雪:クリスマスを病院で過ごす人達の、つかの間の笑顔が想像できます。 葱:心優しい院長さんですね、患者さんの信頼もきっと厚いことでしょう。 資:(病院のクリスマスパーティのほんのりとした風景。  村:どんな院か院長か楽しい想像をかき立てられる。)


三席
●瀬戸内の朝日の匂ふみかんかな=紅椿


○雪、ま、ぼ△葱、十、秀、淳、し、修=12点
(雪:中七がとてもさわやかです。 ま:瀬戸内海の美しい景、いかにもおいしそうなみかんにとても魅かれます。 ぼ:瀬戸内育ちとしては、とらないわけには。ほのぼのします。 葱:「蜜柑」を平仮名にしたところで、穏やかな瀬戸内の風景がより活きてきたように思います。 十:視覚を嗅覚に置き換えた共感覚「シナスタジア」の巧みさ。 秀: 瀬戸内が必要だったかな・・・? し:みかんからこのような情景が浮かぶなんて素敵ですね。 修:風景が見えてきます。)


三席
●ふところの猫の温みも聖夜かな=ラスカル


◎入○清、砂、ぼ、修△子=12点
(清:猫の温みを感じて幸せな気分に浸る。 ぼ:こういう聖夜もありますねえ。愛があります。 修:猫も主人公もかけがえのなきもの。)


【入選】

●猿山のボスの眼に寒夕焼=やんま
◎裕○子、虹△葱、村、ま、し=11点
(裕:ボス猿は頂点故の孤独を感じます。 虹:孤高のボスの哀愁をしみじみと。 葱:ボスにもいろんな悩みや老いに向かう哀しみもあるのかもしれません。 村:孤独感が猿にも作者にもありそう。 ま:ボス猿の孤独が寒夕焼で払拭されるような。 し:猿山のボスは夕日をみて何を思うのかな?)

●笑点のテーマソングや大根炊く=紅椿
◎資○十、ラ、村△葱、茶=11点
(資:日曜の夕方おなじみのテーマソングが聞こえてくる。大根炊くが効いている。 十:あの独特のリズムと季語とが相まって年末感がうまく出ている。 ラ:日本の年末の、正しい風景です!<笑> 村:作者の日常性がゆったりと伝わる。 葱:ちょうど晩御飯の支度をしている時間帯に「笑点」が放送されています。長寿番組だから、そのテーマソングと夕方の時間がいまや体の中でリンクしてしまっているのでしょう。包丁さばきも軽やかに、調理がすすみそうですね。 茶:大根の庶民性に笑点を持ってきた点に<笑>いただきました。)

●冬帽子に小さきハートのやうな穴=ラスカル
○十、資、茶、入△葱、雪、修=11点
(十:微細な視点。比喩が楽しい。 資:さりげないハートのマークが暖かい。 茶:他の形に見えるかもしれない穴をハートと見た心持ちに共鳴しました。 入:誰が開けたのかな? 葱:多分彼の句だろうな、と作者を同定できるような独特の世界観、感性のある句です。やっぱり! 修:ハートが温かいです。)

●少しだけ枯野の匂ひわが袂=秀子
◎ぶ○砂、喋△葱、水、入=10点
(ぶ:平易に見えて、奥の深い作品だと味わいました。 葱:感性の句、ただ、「枯野の匂い」はあまり美しいイメージはないですよね、それがリアルなのかもしれませんが。 水:なんとなく郷愁。 入:袂が良いですね。和服を着なれている方でしょう。芭蕉はどうだったのかしらねとか、色々想像したくなります。)

●冬銀河老いてこそ追ふ夢もあり=ぼくる
◎や○し、修△紅、淳、入=10点
(や:間に合うか間に合わせよう。 し:こんな人生を歩んでいきたいです。 修:みんな今を生きている。 紅:見習わなければいけません。 入:冬銀河ってもしかしたら、天文台4D2UJ?を一緒に体感した友の句やろか?)

●極月の酒場昭和の男たち=ぼくる
◎砂、修○淳△清=9点
(修:しっかりと極月の感じです。 清:懐かしい昭和の酒場の風景。)

●呼び鈴の一度だけ鳴りしづり雪=秀子
◎茶○ぶ△十、清、裕、入=9点
(茶:「しづり」の語感が「鈴」とつながり、季語がぴたりと決まってます。 ぶ:巧い!こういう俳句が詠みたいです。 十:不可思議な面白さ。 清:垂り雪が呼び鈴を鳴らしたのか、一度だけしか鳴らなかった。 裕:静寂を感じます。 入:しづり雪って、ミステイーク。)

●飾り無き樹々に聖なるしじまかな=葱男
◎子○雪、ま△香=8点
(雪:一瞬、季語は?と思いました。より神聖さを感じます。 ま:季無しですが、聖なるで季節、情景がはっきりうかんできます。)

●クリスマス刺し子布巾の赤き糸=水音
◎ス○茶△ラ、修、香=8点
(茶:取り合せが日本的でよいと思いました。 ラ:洋と和のミスマッチが面白いです。 修:ふきんがシンデレラ姫のよう。)

●鷹の目の地球に沿うて滑りけり=十志夫
◎清○裕、ス△メ=8点
(清:スキーをしている詠者が鷹の眼で描く実感句。共感の一句。 裕:雄大な景です。)

●段ボール紙の馬小屋聖夜劇=ラスカル
○秀△葱、子、十、水、雪=7点
(秀:「段ボール紙」がよく効いてます。 葱:カソリック系の幼稚園かなんかの劇のような。私らのころは幼稚園でも小学校でも演劇をさせられました。私は結構、主役級に抜擢され、親指姫の燕役や、キリスト生誕の東方三博士の役を演じたことがあります。 十:子供の劇か?舞台の様子が浮かぶ。 水:幼稚園を思います。幼い子供たちがつたないセットの前で一生懸命台詞を言う姿が可愛いです。)

●冬の暮東京タワーにまだ日差=資料官
○久、ラ、水△秀=7点
(秀:淋しい景色ですね。 ラ:ノスタルジーが感じられます。 水:その通りですね、冬は高いところに日差しが残ってますね。)

●冬のバスすずめ笑いの女子高生=子白
◎村○や△裕、入=7点
(村:軽い句意だがすずめ笑いという造語?が秀逸。 や:あの頃は箸が転がっても可笑しかった。 裕:「すずめ笑い」がいいです。 入:ちゅんちゅん笑いか、ジュクジュク喋りなのか、どんな女学生達だったのでしょう?音圧のJKって迷惑だが、雀さんならOK。)

●鳥の巣の一つ残して冬木かな=裕
○香△や、メ、淳、ス=6点
(や:裸木を木枯らしが吹き抜ける。)

●福耳も千切れんばかり冬の朝=虹魚
◎淳○村△茶=6点
(淳:おもしろい句ですね。 村:ユーモア的措辞で寒さの強さを強調。 茶:福耳のプラスと厳冬のマイナスとのマッチングがよいと思います。)

●振り返る吾に枯野の囁ける=砂太
◎ラ△十、ぶ、雪=6点
(ラ:何を囁いたでしょう。読者の想像が広がります。 十:枯野に象徴される「人生」の軌跡からの囁きかも。 ぶ:芭蕉がささやいたのに違いないと思います。)

●極寒の屋台にアイラ島の酒=葱男
○し△秀、清、ぼ=5点
(し:アイラ島はスコッチウイスキーの聖地とありました。アイラ島を知らなくても極寒の屋台と不思議と合っていると思います。 秀:アイラ島がすぐに伝われば、もう、ぴったりの内容ですね。 清:極寒の地にはアイラ島の強い酒が程よい。 ぼ:へえ、洒落た屋台があるもんだ。)

●七三に分けて天皇誕生日=裕
◎紅△葱、資=5点
(紅:うまく鑑賞できないのですが、一読とても気になるお句でした。俳諧味もあるような。 葱:とぼけた味わいのある句。「軽み」というのでしょうか? 資:三代続きの七三分,よく見ているなあ。)

●シャッターの上がらぬもあり街師走=ぼくる
◎久△メ、し=5点
(久:寂しい気持ちが伝わります。 し:賑やかであるはずの師走の街がシャッター街になってしまっている現実が寂しい。)

●ドラムスのバチ狂ほしき寒夜かな=雪絵
◎十△や、水=5点
(十:熱気と寒夜の組み合わせがいい。 や:寒さも心のうさも吹き飛ばせ。 水:外が寒ければ寒いほどドラムの熱気が際立つ。)

●水鳥の頭上げ下げ去年今年=香久夜
◎ぼ△十、入=5点
(ぼ:実感、リアリティあり。句のリズムもいい。 十:写生の効いた句。季語の取り合わせも上手。 入:水鳥は和歌にも古典画にも取り上げられる題材で、俳句にこんな風に現れると新鮮です。)

●湯煙を乳房に纏ひ山眠る=しゃが
○メ△ぶ、や、資=5点
(ぶ:美人の作品と確信して頂きます。 や:ついつい長湯となるも熱燗が待っている。 資:秘湯の混浴の露天風呂を思い描いた。)

●極月の喉ぴりりと生姜飯=まさこ
◎喋△久=4点

●遠ざかる列車の灯り白手套=十志夫
○資、紅=4点
(資:赤いテールランプに白の手袋。まさに鐵道の原風景です。 紅:思わず「ぽっぽや」を思いました。◎にしたかったのですが、季語がちょっと弱いかな?と。)

●冬の月天文台は遥か下=メゴチ
◎虹△ぶ=4点
(虹:こういう写真を見たことがあります。いい感じです。 ぶ:俳句を自由を満喫しました。)

●雪女生身の女よりはいい=ぶせふ
◎葱△ぼ=4点
(葱:誰の句か分かっているのですがそれでも面白い!! ひとが真似できない表現世界を持っていらっしゃる。 ぼ:むむむ、なぬなぬ。何だかおかしい。)

●湯豆腐を今夜二人でつつこうか=メゴチ
◎し△虹=4点
(し:幸せな気分になる句ですね。つつきたい! 虹:やがて子が巣立って、もう一度二人きりに。)

●吾に来よ冬のてふてふ来て止まれ=砂太
○葱△子、入=4点
(葱:人間が人間として生きていること自体が持っている「他者の命」に対する愛おしさ、そして「命の哀しみ」が溢れている句だと思います。作者の心の中に棲みついている「詩性」を感じます。 入:私の冬に沖縄へ行きたくなる理由の一つです。)

●熱燗にすべてを溶かし眠りたり=白馬
○メ△久=3点

●寒暁に淋しがりやの百羽ほど=虹魚
△砂、喋、ス=3点

●牛乳パックより氷海の吠ゆる音=水音
○清△喋=3点
(清:奇想天外の句で面白い。)

●十二月八日木彫りの象の牙の折れ=まさこ
○ぶ△ラ=3点
(ぶ:忘れたはならない開戦日・平和を希求する名句。 ラ:「折れ」の一語が胸に迫ってきます。)

●水仙の雨滴を朝の光かな=十五
○子△ま=3点
(ま: とても美しい景ですがすがしいです。)

●短日の獏黙々と歩きけり=やんま
○秀△し=3点
(秀:とても不思議な感じの句。 し:獏黙々という情景が好きです)

●冬枯れて土中に潜む虫むしよ=喋九厘
◎香=3点

●冬銀河屋根に屈折望遠鏡=資料官
◎ま=3点
(ま:何も語っていないのに、いろいろと想像が膨らんでいきます。とても星の好きな方なのですね。)

●床を蹴るバッシュの音や冬の虹=雪絵
○葱△ま=3点
(葱:「バッシュ」が上手い! バスケットシューズの床を擦る音がそのようにも聞こえるようです。取り合わせの「冬の虹」の距離感が抜群です! ま:練習か試合か頑張っている靴音が聞こえます。ふと窓から見たら虹、が良いですね。)

●うつし世の闇を切り取る冬の雷=清一
○水=2点
(水:この世のものとも思えない一瞬です。)

●元旦にセンターライン暫し闊歩=久郎兎
○入=2点

●女子校へマフラーの列はしゃぎけり=十五
△葱、虹=2点
(葱:いつの世にも素直で明るく、楽しそうな若者を見るととても気持ちが良いですね、心も穏やかになります。 虹:延々とキャーキャー言ってんですよね。)

●白黒のつかぬ諍ひ懐手=十志夫
○喋=2点 

●立ち止まる夜陰に踏みし大落葉=五六二三斎
〇淳=2点

●裸木の曲がりくねりのオブジェかな=雪絵
○虹=2点
(虹:「曲がりくねりのオブジェ」…芸術ですね。)

●飛行機雲凍てて南北区切りけり=白馬
△葱、砂=2点
(葱:「南北を区切る」という発想はとても良いと思います。ただ、「雲」は本来凍ててもいるのかもしれませんが、動きがあるのでややひっかかりました。)

●桃色に手のひら染めぬ冬椿=しゃが
○久=2点
(久:椿のいさぎよさですね。)

●やぶ砂場まつや更科晦日蕎麦=資料官
△十、入=2点
(十:老舗蕎麦屋を並べた面白さ。 入:よく十七音にまとめられたと感心。音も面白いし、作者謎解きもできそう。)

●ゆく年や夢から醒めて夢と知る=ぶせふ
△十、虹=2点
(十:実際の夢なのか、それとも現実の出来事の喩えなのか。 虹:一抹の悲しみ。)

●あの中に犯人潜む冬銀河=水音
△久=1点

●息白し紫煙と競い合う如く=白馬
△紅=1点
(紅:寒い日に街中の喫煙場所で吸っている方、いますね。)

●風花やガラシャの墓の傷癒ゆる=葱男
△ぶ=1点
(ぶ:少なからず明智家との縁を感じる私には外せません。)

●霜の夜の恋の毒消しほろほろと=やんま
△喋=1点

●日記果つとりあえずまだ生きている=裕
△ぼ=1点
(ぼ:シニカルでもあり、悟っているようでもあり。)

●誉められず叱られもせず去年今年=秀子
△紅=1点
(紅:詰まる所、良い年なのでしょうね。)

●闇黒に聖樹華やぐ宇宙船=清一
△裕=1点
(裕:聖樹と宇宙船の取り合わせが面白い。)

●我が家では冬 犬は内猫は外=子白
△砂=1点

●途方なき百段雁木息白し=五六二三斎
△ぶ=1点
(ぶ:幾ら、息が切れても時間は守りませう〜原さんw)


A部門入選作〈back number〉

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