*A部門入選作発表*


当季雑詠=全90投句(入選67句)

【特選】

一席
●走り根のくの字くの字や冬日影=雪絵


◎メ○葱、清、水、裕、秋、資△ス、や=17点
(葱:くの字くの字が上手い! 清:走り根は俳句で木の根が土の上を這っている光景。くの字くの字のリフレインが効いている。 裕:冬に備える巨木のようです。 秋:鞍馬の山道を思い出しました。や:影の屈折もみな斜めに。 水:はしり根の形や色の精悍で硬い感じが見える。)


二席
●骨一本折れたる傘や片時雨=裕


◎や○子、茶、玻、資△雪、ぼ=13点
(や:何かこの頃上手く行かない心の屈折。 茶:「片時雨」の季語が効いていて「一本」につながっているなと。資:(傘の人も半分濡れている。片時雨が効いている。 雪:いざ傘を差そうとして、折れていた時の気分の落ち込みよう。経験あります。 ぼ:失恋を思わせるペーソスあり。)


三席
●小春日や行脚の僧はスニーカー=秋波


○清、裕、修、香△ス、虹、ラ、し=12点
(清:若い修行僧の草鞋でなくスニーカーが面白い。 裕:あるかなあ?と思いつつ、ありそうな光景ですね。 虹:爽やかなお坊さん。 ラ:ミスマッチが面白いです。 し:面白いです?? 修:わらじは不経済?忘れちゃった?)


【入選】

●冬の虹映して牛の目は濡れて=秀子
◎ぶ、し、香△メ、玻=11点
(ぶ:的確な描写と詩情があふれているなぁ。 し:非常にオリジナルなイメージで惹かれました。)

●雨だれの音を集める花八手=五六二三斎
○ス、ま、ぼ、メ△喋、裕=10点
(ま:とても巧く表現されていて素敵な感性ですね。 ぼ:いかにも地味な花八手らしい。 裕:大きな葉っぱが音を集めているんですね。)

●一切を蔵して黙の枯木山=十五
◎子、秋〇茶△虹、裕=10点
(秋:正に山眠る、ですね。 茶:「一切を蔵」しながら黙す。老兵の域ですね。 虹:蔵す、が新鮮。 裕:深い山なんですね。)

●月光を掬ふには手が小さくて=秀子
◎ま○ぶ、メ△清、虹、し=10点
(ま: 煌々と溢れる月あかり、確かに掬いきれませんね。 ぶ:メルヘンだなぁ〜? 清:月光を掬いたい一心で手を差し伸べる心境に共感する。 虹:こういう遊び心がいい。 し:ロマンチックで好きです。)

●「どん底」の幕間に食らふ石焼き芋=しゃが
○ラ、村、ま、茶△葱、秋=10点
(ラ:「どん底」と「石焼き芋」が照応しています。 村:意外な取り合わせが印象的。 ま: 思わず笑ってしまいました、すごくいい匂いが漂ったでしょうね、劇場中に。 茶:「どん底」に「石焼き芋」を持ってくるところが憎いなと思いました。 葱:「どん底」と焼き芋がよく響き合っていると思う。)

●枯葉踏み枯葉色して猫来たり=玻璃
◎資○葱、砂△秀、十=9点
(資:枯葉枯葉そして猫,その色合いが面白い。 葱:中七の「枯葉色して」がいい! 俳句はつい「枯葉色した」と言い切りがちだが、それではこの猫の老いぼれた風情が活きて来ない。野良猫の強さと孤独と老いを生きとし生けるものの哀感が伝わってくる。 秀:「枯葉色の猫」はいいと思ったけど、FBですでに見ているので鮮度が落ちてしまい、とても残念でした。 十:落葉に溶け込むような猫の様子が浮かぶ。)

●寒林を支へたる影ぎざぎざと=虹魚
○久、喋、し△ラ、紅、五=9点
(久:林を分厚く見せてるのを支えたると表現したのがいい。 し:寒林を支える影というイメージがいいですね。 ラ:「ぎざぎざと」がリアル。 紅:影が寒林を支えるという 逆転の発想が面白いですね。)

●冬苺こぶしをしやぶる赤んぼう=まさこ
◎虹、修△葱、ぶ=8点
(虹:ちょうど同じくらいの大きさ。巧い。 修:赤ん坊の命のかがやき!「愛」。 葱:上手い取り合わせ、可愛いし、ほっこりします。 ぶ:かわいい・おいしさう。)

●カーテンを開けても暗し石蕗の花=水音
◎淳○雪△修、資=7点
(淳:暗い中に咲く花がイメージできます。 雪:早起きするとまさにこの感じです。 修:この花の強さが力になってくれそう。 資:昔帰省した実家で実感した。)

●着ぶくれて忘れ物したやうな顔=水音
◎秀、雪△葱=7点
(秀:「着ぶくれ」って、自分に引き付けて、読みやすい季語ですが「忘れ物したやうな」は初めて見ました。 雪:色んな顔を想像して笑えました! 葱:ユーモアのある句。)

●競売の五坪の更地冬に入る=十志夫
○ラ△清、久、村、水、茶=7点
(ラ:更地のまま、年を越しそうな気配。 清:たった五坪の土地の競売が面白い。立冬の季語と合っている。 久:以前は都市の農地だったかも。5坪でも売れるまで税金がかかってしまいますね。 村:五坪とはいえここまで至った苦労が窺える。 茶:たった五坪でもいやだからか競売にかかる。冬の時代ですね。)

●銀杏のうす皮をむく忌なりけり=まさこ
◎十〇喋、五=7点
(十:忌日に故人の好きだった茶碗蒸しでも作るのだろう。)

●境内に仮設の高座冬紅葉=雪絵
○村、水△十、香、資=7点
(村:前後に村芝居もあるのかと楽しい。 水:冬紅葉の色からも高座からもぬくぬくとした温かみが伝わる。 十:寒そう<笑>。 資:冬紅葉がこの風景の中で効いている。)

●黄昏を乗せて冬濤遥かより=ぼくる
◎清、紅△や=7点
(清:人生の黄昏を迎えて冬濤が彼方より打ち寄せて来る所が良い。共感の一句。 紅:波が黄昏を連れてくるって、何て素敵な発想でしょう。「濤」の字を使った事も成功していますね。大きな景が浮かびます。 や:黄昏のビギンを唄おう。)

●刻まるる石より絵かきうた小春=雪絵
◎五○虹△玻=6点
(虹:ほのぼのとした句。)

●しぐるるやきりなく雨の輪のはじけ=ぶせふ
◎玻○や△し=6点
(や:傘の中ついつい下を向いてあるけば雨の輪っか。。 し:小さいところに着目して表現が素晴らしいと思います。)

●小さき目の知恵の限りや鳥渡る=入鈴
◎茶△砂、葱、メ=6点
(茶:どんなに小さな存在、小さな命でも精一杯生きている。そんな懸命さへの共感を覚えました。葱:鳥の渡りの過酷さを上手く表現していると思う。鳥の智恵とは個々の鳥の智恵ではなく、群としての鳥の「大智」のことだと思う。)

●飛石を小春日和と擦れ違ふ=清一
◎水○砂△葱=6点
(水:「小春日」の句はほとんどが平凡と書いていたのは辻桃子さんだったか。こ の句はそうじゃない。 葱:動きがよく見えるところに作者の技がある。賀茂川の植物園西の飛石を思いました。)

●化けて出て猫とならむや紅葉の夜=砂太
◎村○十△ま=6点
(村:端的にズバッと言い切った潔さで季語のきれよい。 十:裸木に自らの老いを投影させているのでしょう。読み手にいろいろ想像させる手法。 ま:季語とうまく響き合っています、言い切っていることで情感が溢れます。)

●失せ物のこんな所に隙間風=紅椿
○雪、水△喋=5点
(雪:「こんな所に」が隙間風にも掛かっているようで面白い。 水:自分自身にも隙間風とかね。)

●整備士の顔の油や冬の鳥=裕
◎久△淳、茶=5点
(久:「の」が多いけど、飛行機と鳥、わかります。 茶:冬の鳥の薄汚れてしまっている状況と整備士の顔との取り合わせでいただきました。)

●玉掴む龍のかぎづめ空也の忌=葱男
◎ラ△村、茶=5点
(ラ:「かぎづめ」に焦点を絞った点が秀逸。 村:上五中七のリアリティ。 茶:かぎづめへの焦点が上手いなと思いました。)

●ビスケットにあまたの小穴笹子鳴く=ラスカル
○紅△秀、ま、修=5点
(紅:作者を知っているので、選が辛くなったかもしれません。小さな発見と季語の斡旋の見事さ、いつもながらすごいと思います。 秀:ビスケットの穴は発見ですよね。ただ、季語はもっといいのがありそうな。「小穴」もややこなれてないような。 ま:懐かしいような想いと季語がうまく合っていると思います。 修:ラスカルさんの「音符」で出会ったような。)

●ほろほろと豆富崩れて燗の酒=しゃが
◎砂○子=5点

●朝練の桜落葉を踏みゆけり=紅椿
〇修△や、淳=4点
(修:さわやかな朝の空気が感じられます。 や:吐く息も白く大地も赤く燃えている。)

●キャバレーへ焼き芋買って行きし日も=しゃが
◎裕△ぼ=4点
(裕:そうなんですか? ぼ:そんな時代もあったとか。砂太先生?)

●子らのこゑ吸うてしづかな雪のこゑ=葱男
○香△雪、ぶ=4点
(葱:「吸ふて」はウ音便の間違いでした。 雪:子のはしゃぐ声も雪の日は何故か静かに聞こえるような。そんな錯覚を覚えるような雪の日になかなか出会えません。 ぶ:文部省唱歌が聴こえてきそふ。)

●冬銀河億光年へ鈴響く=やんま
◎ぼ△砂=4点
(ぼ:いと小さきものが宇宙とつながる不思議。)

●三島忌の記憶を刻む砂時計=清一
○五△雪、砂=4点
(雪:確か高3の、衝撃的な事件でした。その時の砂時計ですか。)

●紅葉散る十円玉に平等院=ラスカル
◎葱△五=4点
(葱:展開の妙、緊張の後の緩和、何故か枝雀さんの顔が浮かびました。)

●雪降れば牛は柔らかな暗闇=秀子
○ス、ぶ=4点
(ぶ:牛舎の奥に牛の声が聞こえ、白い息が見えてくる。)

●をみなごの耳朶の血潮や冬もみぢ=茶輪子
○久△メ、資=4点
(久:みんな赤に染まって行ってなんだか恥ずかしい心地。)

●秋空やハルカスは北斎の青=香久夜
◎ス=3点

●遠景に海近景に石蕗の花=十志夫
○紅△香=3点
(紅:景が鮮明です。色の対比もいいですね。 香:香:写真家さんの句ですね。)

●神渡し千は千尋にもどりけり=葱男
◎喋=3点

●絶えず湧く冬の泉の神さびる=清一
○や△し=3点
(や:水は天地を巡り再びこの泉に還る。 し:神さびるがとても効いていると思います。)

●河豚刺を梳けば白磁の色づきぬ=十志夫
○し△清=3点
(し:器もきっと上等なものでしょう。 清:てっさを摘まむとその白磁の器の方が色づくと言う面白い表現。)

●冬薔薇ぼんやり見える程の良さ=白馬
○淳△ま=3点
(ま:くっきりした冬薔薇が良く詠まれますが、こういう良さもありますね、視点が新鮮です。)

●榾くべて山の男の車座に=やんま
〇ぼ△五=3点
(ぼ:酒が回り、やがて歌も出る。)

●リーゼントびしっと決めて着ぶくれり=裕
○秀△葱=3点
(秀:面白すぎるくらい。 葱:面白い(^∇^)!)

●風花の見つめないでと云ふがごと=虹魚
○玻=2点

●風花や古書肆の額に謂はれあり=茶輪子
△水、秋=2点
(秋: 鄙びた風情。)

●小春日に黙して立てる楡の木々=香久夜
○淳=2点

●小春日やきらきら光る試験管=五六二三斎
△秀、ス=2点
(秀:なんの実験でしょうか。「きらきら」がちょっと安易だったかなあ。)

●時雨るるやサドルを覆うポリ袋=白馬
○十=2点
(十:さりげない景の切り取りです。)

●消防車逃げだしたのは雪豹です=水音
△葱、秋=2点
(葱:最後に「雪豹」が出てきて驚いた!動物園から逃げ出したのか?実話なのか?分からないし季語もあやふやなような気もするが、消防車は「火事」を、雪豹は「雪」を内包しているのでこれで良いと思う。 秋:取合せが面白い。)

●しゅんしゅんとお湯湧く音やストーブに=ぶせふ
○虹=2点
(虹:擬音の妙。)

●空仰ぐ時は胸張りかいつむり=やんま
△裕、秋=2点
(裕:かいつむりが胸を張るというのが面白いです。 秋:自分の姿勢や視線を意識させられます。)

●竹林の明るき小春日和かな=修一
○秀=2点
(秀:景色がはっきり見えますし、清潔な感じがしました。)

●習ひ事減らす冬日や母子像=茶輪子
△淳、玻=2点

●冬の薔薇特別な日のアイライン=まさこ
△紅、ぼ=2点
(紅:誕生日でしょうか?特別な日は大事ですよね。 ぼ:これからドラマが始まる。)

●何処より来たる名もなき大落葉=五六二三斎
△ラ=1点
(ラ:何の落葉なのか、想像をかきたてられます。)

●学問を離れ白髪の文化の日=砂太
△村=1点
(村:きっと学問成就の穏やかな日々か。)

●期限切れしたるカイロのほのぼのと=紅椿
△久=1点
(久:ゆったりしてますね。)

●小春日のテニスコートに影二つ=メゴチ
△子=1点

●山茶花やおはようただいまありがとう=ぼくる
△子=1点

●遠き山冬めく空にそそり立つ=淳一
△子=1点

●土鍋のこと父に聞きたし冬の星=入鈴
△久=1点
(久:土鍋と冬の星、だぶっているのがきになりますが、父→星、いい句です。)

●冬梅やいい奴はみな先に逝き=ぼくる
△紅=1点
(紅:共感しました。季語が効いていると思います。)

●冬銀河吐息大きく帰りけり=十五
△虹=1点
(虹:程よいスケール感。)

●冬蝶は黄色が宜し日の表=砂太
△ぶ=1点
(ぶ:原さんが蝶が好きだからもしかしてと思ったw)

●便所より筑波の見えて寒日和=資料官
△十=1点
(十:面白い視点。「便所」は直截的過ぎるので「厠(かわや)」のほうがいいかも<笑>。)

●クリスマスを言い訳にしてデートです=子白
△喋=1点


A部門入選作〈back number〉

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