*A部門入選作発表*


当季雑詠=全81投句(入選57句)

【特選】

一席
●朝顔の色とりどりに深呼吸=白馬


◎メ、裕、資○葱、五、修、し△虹=18点
(裕:色とりどりに深呼吸がいい。 資:朝顔の息づかいを感じたところが良い。 葱:「深呼吸」が効いていますね。 五:朝の清々しさが良い。 修:花が深呼吸しているように見えるのは発見。新鮮です。 し:清々しい様子がいいですね。 虹:「深呼吸」という言葉が分かりやすく響いてくる。)


二席
●大小の甚平の行く肩車=十志夫


○五、メ、ぶ、喋、雪、淳△虹、香、砂、ぼ=16点
(五:ユーモアある句。 虹:自分と父にもそんな時があったかもしれない。 ぶ:親子の風景がいつまでも目の裏に焼き付いた。 雪:どこかのお祭りに行く途中でしょうか。きっとお揃いの甚平ですね。 香:ほほえましい後ろ姿。 ぼ:微笑ましい景。)


二席
●ひぐらしや今日の余りのやうな風=ラスカル


◎葱、茶、玻、し○砂、秋=16点
(葱:中七、座五の感性に詩性を感じます! 茶:晩夏から初秋への季節のわたりの景を上手に捉えた句だと思います。 し:今日の余りのやうな風…素晴らしい表現ですね。)


【入選】

●黙祷に地軸かたむく原爆忌=十志夫
◎虹、白、ぼ○雪、資△五、砂=15点
(虹:黙祷の重々しさが、「地軸かたむく」で見事に表現されている。 白: 中七に強い思いが。 ぼ:中七に万感の思いが込められている。 雪:平和であることがどんなに大変なことか、この頃しみじみ思います。 資:黙祷は平和を祈る力,ひしひしと感じる。 五:祈りよ!地球を動かせ!)

●馬で行くブータンの谷秋高し=ぼくる
◎修、子○秀、香、裕△ラ=13点
(修:ブータンの印象がいいせいか、気持のいい句。ブータンノタニアキタカシの押韻が快い。 秀:今回「ネパール・ブータンの旅」シリーズの句がいくつかありました。多分、作者は同じ方のような。その中でも、この句が一番好きでした。谷を馬で行くのですね。砂粒のような人間の自分一人を頼む強さみたいなものを感じました。 香:ブータンの谷を馬で行くなんて、秋が一番似合いそうです。 裕:ブータンに行ってみたいと思う句です。 ラ:僕も一緒に、ブータンの谷を訪れてみたくなりました。)

●「大」の字のはらひに火が来如意ヶ岳=葱男
◎十、紅、ス○虹、資=13点
(十:中7の「はらひに火が来」が秀逸。 紅:京都の「大文字」の写生でしょうが、「はらひ」に目をつけた事によりとても臨場感が出たと思います。 虹:習字で「大志」と書いた時のことを思い出した。 資:送り火をはらいと捉えてところが巧み。書道の心ある方。)

●父母の座布団加へ今日の月=秀子
◎喋○村、砂、ラ△ぼ、ま=11点
(村:久しぶりの父母との一夜を迎える幸せ。 ラ:ご両親に対する、敬意の念が感じられます。 ぼ:古風で情あり。 ま:ご家族へのやさしい気持ちにあふれたお月見ですね。)

●ハチ公に跨つてゐる夜の秋=十志夫
◎秀、清○裕、し△メ=11点
(秀:これは、子供ではなく、「いい大人」です。子供のようなことをしたくなるおじさんのペーソス。 清:忠犬ハチ公に跨がっている飼い主の姿が浮かぶ佳句である。 裕:ハチ公に跨るが面白いです。 し:跨っているというのがいいですね。ハチ公にというのがオリジナル。)

●新涼や指をこぼるる湖の青=清一
◎ぶ○ス△香、白、紅、ま、秋=10点
(ぶ:映像と言葉と感覚のシンフォニー。 香:きれいな湖なんでしょうね。 白:湖の透明な青い水を掬い取った。秋だなぁ。 紅:青空を映した湖の水をすくっているのでしょうか。とても詩的な表現で、惹かれました。 ま:ひんやりした水の青さに秋を堪能している姿が浮かびます。)

●断崖にラマの僧院鳥渡る=ぼくる
○紅、子△秀、虹、裕、雪、し、ス=10点
(紅:写真で見た事はありますが、作者は実際に見られたのでしょうね。大きな景で素敵です。 秀:これも「馬で行くブータンの谷秋高し」と同じ方かな?ものすごく寂しい景色。でも、人の強さが感じられます。 虹:見たことがなくても情景が伝わってくる不思議な句。 裕:断崖の僧院と鳥渡るの組み合わせが秋を感じます。 雪:広大な景ですね!「鳥渡る」がぴったりです。 し:私もこの光景をぜひ見たい!)

●赤とんぼ舞ふヒマラヤへ続く空=ぼくる
◎香○村△白、ラ、秋=8点
(香:旅の後でしょうか、思い出の地まで空が繋がっているという、大きな句。 村:雄大なスケールと取り合わせの妙。 葱:蝶がダッタン海峡を越えるなら、トンボはヒマラヤへ! 白:雄大な発想ですね。 ヒマラヤにも赤とんぼがいるのでしょうか? ラ:スケールの大きい発想が魅力的です。

●無花果や柱時計のねじ二つ=まさこ
◎五○清、喋△茶=8点
(五:無花果と柱時計の取り合わせの妙。 清:ねじ穴がふたつあり一つは針を進める、他は時報を打つためのもの。無花果との相性が良い。 茶:自分の中では無花果はレトロ感のある果実なので、柱時計がしっくりきました。)

●つんつんと台風つつく予報官=ラスカル
◎ま○紅△村、喋、し=8点
(ま:よく見る光景ですね。つんつんがおもしろく実感があります。 紅:一大事の台風ですが、俳諧味が魅力です。 村:季語として効いているのか?だが実景が見えてユーモラス。 し:最近の台風は動きが鈍いですよね。)

●ひょっとして妻を好きかも秋茄子=ぶせふ
◎砂○秀、ぼ△茶=8点
(秀:この句も「ハチ公に跨つてゐる夜の秋」と同じくらい好きでした。後藤比奈夫の句みたい!「ひょっとして」がよく効いています。 ぼ:古風で情あり。 茶:「茄子」は「なすび」とした方が、素っ頓狂な感じでいいかも。食わしたい嫁ってことですかね。)

●海行きのバスに乗り込む残暑かな=五六二三斎
○十△葱、ぼ、メ、喋、雪=7点
(十:さりげない表現ですが、「海行きのバス」がいい。 葱:上五がいい! ぼ:自然体で、好感度大。 雪:残り少ない夏休みを楽しむためでしょうか。福岡に限れば、ほんとに暑い夏でした。)

●足跡に水溜めて去る秋時雨=砂太
◎淳○虹△し=6点
(淳:足跡に水が溜まるってこともありますよね。 虹:「水溜めて去る」に時雨の雰囲気が良く出ている。 し:何気ないことも絵になりますね。)

●地獄にも階級ありて猴酒(ましらざけ)=しゃが
○ぼ、秋△十、葱=6点
(ぼ:理屈抜きで面白い。 十:等活地獄〜阿鼻地獄までカテゴリーは8つあるとか。「猿(ましら)の酒」を置いたところが絶妙。 以前「ましら酒この先道はゆきどまり」という句を偉い先生に褒められたことがありました。「猿酒」にはそんな「迷路」のような世界観がありますね。)

●駐在の息子の帰省片ピアス=紅椿
◎雪○茶△玻=6点
(雪:おまわりさんの子というだけで世間の見る目が違うんですよね。良くないんだけど、なぜか。 茶:「代議士」より切ないかな。父親としてはどう受け止めたのでしょう。)

●僕たちは集ふ銀河の真ん中に=虹魚
◎ラ○ス△秀=6点
(ラ:「銀河の真ん中に」が、何とも素敵です。  秀:銀河の真ん中、それも「丘ふみ」という句会に集っていることを大切にしたいですね。)

●木の香る渡り廊下や涼新た=雪絵
△秀、葱、村、白、秋=5点
(秀: とても気分のいい句。「涼新た」ですね。 葱:新学期の始まりを想起させます。 村:新しい設えか、その中を通って別館の温泉へと楽しい。 白: 学校の渡り廊下が新しくなった。夏も過ぎた。)

●月孤月腹に抱ふる瘤あり=玻璃
◎秋△葱、茶=5点
(葱:「月孤=カッターナイフ」という意味を思うとき造語?であってもリアリティが立ち上がる、「瘤:しひね」にとても重たいものを感じます。 茶:瘤も孤独、それを抱える自分も、そして見上げる月も。一幅の水墨画のような景にいただきました。)

●落ち蝉や死んだふりしてひと休み=資料官
◎村△淳=4点
(村:ユーモアの中に人生の暗示を感じる。)

●かなかなや闇のうごめく獣道=清一
○修△五、裕=4点
(修:無意識のことばになっていないものが、「かなかな」に反応するんだ! 五:かなかなと獣を重ねたことでワイルドな自然が醸し出された。 裕:かなかなと闇のうごめくの対比が面白いです。) ●教会の更地となりて秋の風=紅椿
○ラ△村、清=4点
(ラ:「秋の風」という季語が、ぴたりと決まっています。 村:教会の意外性とあとで建て替えられるのかとやや不安な感じ。 清:教会が更地になることはめったにない、秋風の為せる技かも知れない。)

●新米を収め農協のプラッシー=葱男
○ぶ△雪、ス=4点
(ぶ:字余りかと見せて収まってるテクニック。 雪:プラッシー!なつかしい!今もあるんですね。)

●墓参りせずに動画の母と会ふ=淳一
△十、葱、五、修=4点
(十:こういう形の弔い方もいいですね。 葱:時代ですね、面白い視点。 五:在りし日の母を偲ぶ。 修:写真は動かないが動画は生きているように動く。不可思議な世界を提起している。)

●ゆつくりとめくるアルバム盆の月=紅椿
○香、メ=4点
(香:我が家のルーツとも言える、戦前の父母のアルバムには、私や孫、甥が(?)何人も登場して笑ってしまう。)

●稲の花生まれ変はりの男の子=五六二三斎
○ま△喋=3点
(ま:稲の花が生きています。男の子への優しい、希望に満ちた眼差しが感じられます。 葱:「稲妻」はもともと稲が実る瞬間=「神の射精」という意味から付けられたそうですね。)

●うらはらな言葉のうらや梨を剥く=雪絵
○清△葱=3点
(清:梨の皮の裏側とうらはらな言葉との対比が面白い。 葱:「うら」のリフレインが面白い。)

●送り火を乗せし小舟の海静か=メゴチ
○子△ぶ=3点
(ぶ:見送る人々の影も見える。)

●蜉蝣やジャコメッティの立像群=しゃが
○ま△ラ=3点
(ま:弱弱しいようでいて存在感のあるジャコメッティの彫刻(私も好きです)と季語がとても響き合っています。 ラ:立像群が、眼前に迫ってくるような感じがします。 葱:うまい「取り合わせ」。)

●仕舞はれぬホースのうねり秋めけり=茶輪子
○玻△資=3点

●ちちははの魂去り難き大文字=清一
○白△ぶ=3点
(白: ちちははは、生前毎年必ず見ていました-----。 ぶ:日本の歴史・風習に生きる今の人影。)

●法師蝉今日を限りのごとく鳴く=香久夜
△修、メ、子=3点
(修:改めてつきつけられる思い。)

●秋うらら指先細きタイ仏陀=しゃが ○ス=2点 (葱:タイの仏像は金ぴかでちょっとマネキンみたいですね。)

●稲妻や十指残らず指輪嵌め=秀子
△葱、修=2点
(葱:いるいる、そんな女性! 修:風刺が効いています。)

●くの一のしなやかに来る秋燈=やんま
○白=2点
(白:どんな美女が何処へ何しに来たのか。想像します。)

●苔庭に蝉の骸の二三四五=子白
○茶=2点
(茶:「二、三あり」とかではなく、下五のようにフレ切る感覚がよいと思いました。)

●この度の無口は長し秋愁い=白馬
△ぶ、雪=2点
(ぶ:夫婦喧嘩か、身に迫る秋。 雪:私は悪いことばかり考えてしまうかな。まさに秋愁い。)

●白壁に闘牛士の衣ロルカの忌=葱男
△秀、し=2点
(葱:1936年8月19日、詩人のフェデリコ・ガルーシア・ロルカ銃殺さる。 秀:詩人ロルカのことが前書きで少しわかりますが、上中で、彼の人生が波乱万丈だったことがわかります。「ロルカの忌」が、いつか季語として受け入れられますように。 し:ロルカファンとして取らないわけにはいきません!)

●長崎忌セピア色した天主堂=資料官
△清、子=2点
(清:原爆投下直後の大浦天主堂の写真を見ているようだ。)

●夏空や竜宮城の亀もゐて=秋波
△紅、子=2点
(紅:雲の事を言っているのでしょうが、単なる亀ではなく「竜宮城の亀」とした所が手柄です。)

●ふらり入る地元のバーの〆秋刀魚=まさこ
○十=2点
(十:ドラマを感じる秀句。小澤昭一の「煮凝を出すスナックのママの過去」がふと頭をかすめた。)

●ベランダで花火を見詰め鬱も消え=淳一
○玻=2点

●鬼灯のぐいと大気に滲み赤=玻璃
△葱、砂=2点
(葱:「ぐいと」が効いています。)

●待宵や葉巻煙草の香りふと=秀子
△十、紅=2点
(十:「待宵(月)」の季語に人待ちの意味が重なって感じられる妙。 紅:少し昔の情緒が伝わってきます。)

●身を隠し何を語るや法師蝉=メゴチ
○淳=2点

●ワインもう一杯と言ふ生身魂=ラスカル
△ま、玻=2点
(ま:言い放たれるところが良いですね。お元気でお幸せで微笑ましい。 葱:共感します。)

●秋虹や通りすがりの容人=虹魚
△葱=1点
(葱:「容人(かたちびと)」=容姿の整って美しいひと、とありました。景としては平凡ですがこう書かれると作者の煩悩が見えず、世離れして感じられます。それが「俳:虚に居て実を詠む」ことかも。)

●カナリアの唄思い出す星月夜=やんま
△資=1点

●小鳥来る移動パン屋のカレーパン=まさこ
△十=1点
(十:たびたび詠まれる句材ですが、秋には「カレーパン」がぴたり合う。)

●鷺草の樫原湿原風の中=砂太
△香=1点
(香:鷺草の湿原、見てみたい。)

●差し伸べる手を触れ合ふて薄紅葉=ぶせふ
△裕=1点
(裕:秋を感じます。)

●田んぼアート眺め燕の帰りけり=資料官
△葱=1点
(葱:今どきの田舎の風景にありそうですね、がんばれ!若い農民たち!)

●掌に余る有の実とどきけり=十五
△資=1点
(資:余る有の実のA音が心地良い。)

●日曜の朝の静けさ法師蝉=五六二三斎
△淳=1点

●昼は蝉夜は鈴虫風の中=子白
△玻=1点

●待ちびとの声高らかに秋簾=虹魚
△清=1点
(清:秋風とともに簾越しに聞こえて来る待人の声,爽やかな一句。)


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