*A部門入選作発表*


当季雑詠=全81投句(入選65句)

【特選】

一席
●カーテンになりきつている青葉風=水音


◎十、し、砂、雪、葱○喋、ス△秀、ぼ、メ、久、裕、紅、五=26点
(十:カーテンをなびかせる風をカーテンそのものと置き換える中7の修辞が巧み。 し:情景もよく見え、発想が素晴らしいと思います。 葱:気持ちの良い季節、窓を開け放して風がカーテンに踊るのを見ているのも爽やかな季節です。  秀:面白い発想。大きな「つ」だったら「い」は「ゐ」だと思います。 ぼ:さわやかで気持ちのよい句。 裕:風の精が乗り移っているんですね。 五:カーテンと青葉風が一体化?)


二席
●脱ぎつぷり良きマネキンの更衣=清一


◎ぼ、水○し、裕、紅△十、ラ、喋、雪、葱、白=18点
(ぼ:一読呵々大笑。読みっぷりがいいね。 水:脱ぎっぷりのいいのがマネキンで、それが更衣に帰結するとは。 し:つい先日マネキンの服を脱がせて試着しました。店の人が大胆に服を脱がすからドキッとしますよね。 裕:マネキンも更衣と言うのですね。 十:俳諧味がある。 ラ:あはは☆ 思わず笑っちゃいました! 葱:あはは)^o^(  白:マネキンは自ら脱いでいるわけではない。)


三席
●たましひの軌跡を描く蛍かな=葱男


◎メ、秋〇子、五△清、智、し、玻、紅、白=16点
(五:蛍の飛び方は正しくそんな感じだ! 清:螢を見ると人は亡くなった人を思い出す。その霊魂が彷徨っているのだろうか。 智:幼い頃、そんな風に蛍を見ていました。 し:幻想的な光を想像させます。 白: 一筋の淡い蛍の飛ぶ光。「たましひの軌跡」の措辞が佳い。)


【入選】

●十薬や母の手紙を束ねたり=資料官
○ス、雪、白、秋、△や、秀、メ、葱、香=13点
(白:ご母堂が逝かれた。遺品整理のとき、ふと十薬の匂いが。 や:母が煎じた熱さましの十薬を思い出した。 秀:十薬という地味で個性的な花との取り合わせ。 葱:麻紐で十字に束ねて思い出の小箱に仕舞います。)

●哀しみを吸ふては吐いて蛍袋=玻璃
◎智、し、喋、○ぼ=11点
(智:空気の代わりに哀しみを呼吸する蛍袋‥切ないです。 し:季語が効いています。そして中七の表現にとても魅かれました。 ぼ:なるほど、だから俯いているのか。これは詩だ。)

●黒揚羽ひと巡りせり能舞台=ぼくる
○ラ、資、五、葱△や、智、香=11点
(ラ:「黒揚羽」と「能舞台」の、取り合わせの妙が感じられます。 資:黒揚羽の晴れ舞台。面白い。 五:屋外の能舞台か?黒揚羽の飛び入り参加か? 葱:取り合わせの妙! や:この主役(シテ)の演目妖艶なり。 智:黒揚羽は唐織の能衣装のように煌びやかですね。 香:不気味な情景です。)

●いくつかの死語かたりあふ子供の日=ラスカル
◎久、五〇秋△ス、茶=10点
(五:老人となった夫婦が子供の日に昔使っていた言葉を思い出している。不思議な設定と思う。 茶:自分たちの子ども時代と現代の子供の日を「言語」で比較する知的な御句だと思います。人だけでなく言葉の行く末も慮られるところです。)

●卯浪寄す島にひつそりマリア像=ぼくる
◎や○五、葱△し、ス、秋=10点
(や:波頭千里洋々と世の隅々へ行き渡る信仰。 五:五島列島の隠れキリシタンか? し:卯浪寄す島に惹かれます。 葱:何年か前に瀬戸内の隠れキリシタンの島に渡ったことがあります。「鶴島」という、今では無人島になっていますが、廃墟と化した礼拝堂のそばに一尺にも満たないマリア像が残っていてとても美しかった思い出があります。「一尺に満たぬマリアや夏の月」、某俳句雑誌でどなたかが秀逸にとってくださいました。)

●心臓のみ動く蜥蜴の空見上ぐ=しゃが
◎ぶ、裕〇水△ぼ、葱=10点
(ぶ:爬虫類のもつエネルギーが俳句を飛び出していると思う。静寂と宇宙を感じる。 裕:この光景を切り取ったところがすごい。 水:無音の空間とちょっとの緊張感。空はあくまで青い。 ぼ:写生を抜けて、蜥蜴の哀しみみたいなものを感じさせる。 葱:観察がよく効いていると感心しました。)

●友の忌にCAMELを吹かす聖五月=葱男
◎秀、ラ○玻△茶、雪=10点
(秀:句意に共鳴していただきます。「忌」と「聖五月」の取り合わせには、 かなり引っかかってはいるんですが。  ラ:「CAMEL」という具象性。万感の思いが、切々と胸に迫ってきます。 茶:自分とは好みの違う銘柄をあえて追悼の意を込め味わう。ニヒルでかっこいいです。)

●薙刀の稽古袴や風薫る=秋波
◎香○十△ぶ、子、水、雪=9点
(香:袴に風を感じたのですね。 十:一読句意鮮明。凛とした袴の女性が浮かんできます。 ぶ:おそらく女学生の部活の風景なのかとおもった。爽やか過ぎて頂きます。 水:薙刀の稽古を見ていると冬は寒そう、夏は暑そう、風薫る季節が最高です。)

●ポケットからよれたメモ書き茄子の花=秋波
◎修○ラ、資、久=9点
(修:そうそう茄子の花ってそんな感じ。 ラ:どんな事が書かれてあったのか、想像が膨らみます。 資:メモ書きには大切なことが書かれていたのでしょう。地味な茄子の花が効いている。)

●愛と死の男女の舞や火取虫=しゃが
◎紅、白△十、裕=8点
(紅:俳句名人、梅沢さんの若い頃の舞台を思い出します。曲名は森進一さんの「それは恋」。 白: 外灯に群れる蛾に異次元を感じた。  十:誘蛾灯に蝟集する虫を男女の愛憎の姿ととらえたユニークさ。 裕:火取虫は子孫を残すのに必死です。)

●水瓶の底の十円硬貨夏=まさこ
◎ス○ぶ、修△砂=8点
(ぶ:なんだかユーモラスで、いとおしい^^  修:土間のある薄暗い台所が浮かびました。)

●鳥語聴く博士の丸きサングラス=やんま
◎清○し△秀、葱=7点
(清:鳥を見るバードウオッチングでなく、鳥語を聴くゆえのサングラス、面白い取り合わせの秀句。 し:その博士のちょっと変わった雰囲気がよく伝わってきます。会ってみたい! 秀:「丸眼鏡」だったら、普通だけど「サングラス」なので。 葱:オシャレ??)

●野菜ゼリー匙にくずるるスロージャズ=まさこ
○裕、水、白△ラ=7点
(裕:野菜ゼリーとスロージャズの組合せがアンバランスで面白いです。 水:季語がないけど、青葉の頃の季節感があると思う。 白:スロージャズと上五・中七が呼応して佳いですね。 ラ:下五の展開に意外性があります。)

●善人に秘密のありしサクランボ=葱男
○や、ぼ、香=6点
(や:サクランボ程の小さな秘密、気になる。 ぼ:どんな秘密か気をひく。たぶん微笑みを誘うような秘密だ。 香:サクランボのようなかわいい秘密があってもいいですよね。)

●ピンヒール絡めるタンゴ蜘蛛の糸=しゃが
○十、智△玻、紅=6点
(十:烈しく妖し気に踊る一瞬をとらえた一句。蜘蛛の囲がおどろおどろしい。 智:ターンを繰り返すピンヒールに絡みつく蜘蛛の糸は、断ち切れぬ男女の情念でしょうか。)

●藍染の匠五代目夏来たる=砂太
○香△ま、葱、秋=5点
(香:イョ!五代目、カッコイイ! ま:藍染と夏がすっきり響き合い、また五代目の重みを感じます。 葱:夏空に丁寧な藍染めの作業がいかにも美しい!)

●雨宿り旅人らしき国訛り=久郎兎
◎淳△子、葱=5点
(葱:つい耳を傾けて、ほくそ笑む。)

●風薫るふた子の座る乳母車=雪絵
○清、淳△葱=5点
(葱:双子用の乳母車をら見たことがあるけどメチャかわゆい! 清:元気そうな双子の赤ん坊、その子らの笑みに風が薫る。)

●自転車に油を注して更衣=ラスカル
○紅△裕、喋、修=5点
(裕:新しい油が衣なんだ。 修:自転車が更衣?そう思ってもおもしろい。初夏の山河へ出発!)

●声援の首のタオルや夏来たる=紅椿
○雪△や、淳、修=5点
(や:いざ甲子園わが郷土の青春に栄光を! 修:夏といえば汗とタオルと甲子園。)

●手網でとる実梅の熟れや雨あがり=まさこ
◎茶○久=5点
(茶:「梅」「熟れ」の韻と中七が効いていて、雨上がりに匂い立つ梅の香が漂ってくるようです。)

●母笑ふ日傘の作る影の中=智雪
◎資△メ、修=5点
(資:日傘の顔は影の中という発見が新鮮。 修:しあわせを感じる一瞬ですね。)

●泉への心もとなき手書き地図=秀子
〇や△ぶ、資=4点
(や:自分で書いても心細いのにまして人から渡されたのだから。 ぶ:なんというシンプルで、奥深い句なんだろうと思った。泉を直接詠ってないのにそれ以上の効果。 資:泉を訪ねての散歩会でしょうか。)

●四国まで見ゆる館や鯖づくし=紅椿
○秀、し=4点
(秀:淡路島ですか?景色のいいところに泊まって、美味しものを食べて。 し:海を越えて四国が見える館、どこかと想像しています。鯖づくし、がとても美味しそうです。)

●茅花流し蛇籠の石のなまめいて=修一
○秀、清=4点
(秀:「石のなまめいて」で頂きました。 清:蛇籠(じゃかご)に焦点を当てた所が新鮮。)

●南天の花や雨粒匂ひそむ=紅椿
○修△十、喋=4点
(修:地味な黄色みがかった花。なんだか豊かな気持ちになる感じ。 十:視覚から嗅覚への五感の移ろひが詠まれている。)

●夕立や傘さす女(ひと)とささぬ男(ひと)=やんま
◎玻△淳=4点

●若葉から言霊宿る便り有り=喋九厘
○メ、茶=4点
(茶:自然の囁きを感じとる敏感さとそれを表現することの両者が備わった御句だと思いました。)

●吸殻の彷徨つてゐる夜の噴水=ラスカル
○し△砂=3点
(し:映像が何かを語っているようですごいと思いました。)

●旅に居て神輿を担ぐ夢見たり=裕
〇砂△し=3点
(し:とても縁起が良さそうな夢でいいですね。)

●飛魚や羽を伸ばして命継ぐ=メゴチ
〇砂△清=3点
(清:飛ぶとき相当のエネルギーを使う、羽が飛魚の命だろう。)

●紐緩め犬と見上げる初夏の月=白馬
◎子=3点

●湯の窓に鳥の声あり新樹光=やんま
○メ△清=3点
(清:山の温泉であろうか、鳥が新樹に群がる光景。)

●赤ワイングラスに揺れる夏の月=五六二三斎
○子=2点

●古えを超えよあの日の初蛍=智雪
○玻=2点

●五月晴れシーツ裏返り青に入る=久郎兎
○淳=2点

●空見上げ立ち尽くすまま五月晴れ=淳一
○喋=2点

●淡然と白鷺立てる水田かな=ぼくる
△久、香=2点
(香::白鷺は、キリリとしてます。)

●鉢選ぶ友に初孫千団子=智雪
△資、砂=2点
(資:三井寺の縁日でしょうか。鉢に初孫のごろあわせが良い。)

●馬鈴薯の花怯ゆるや薔薇の陰=玻璃
○智=2点
(智:馬鈴薯の花は身を取る為の花なれど可憐で美しい‥美しく咲く為に生まれた薔薇とは比ぶべくも無い‥薔薇も季語なんでしょうが、馬鈴薯の花が愛しい。)

●ひともとを妻に捧げり母の日に=白馬
○茶=2点
(茶:自分の母ではないけれども、子どもの母としての日ごろに感謝をしめすさりげなさが「ひともと」の措辞に集約されていると思います。)

●ぶんぶんの一撃喰らふ木偶坊=清一
△葱、白=2点
(葱:自分のことかな?(^ ^)  白: とても面白い瞬間ですね。 )

●ポケットに小さき秘めごと捩花=清一
△ぶ、水=2点
(ぶ:なんだかユーモラスで、いとおしい^^ 水:捩花の繊細さと小さい秘め事がマッチ。)

●明けやすし小鳥の声とイチ ニ サン=香久夜
△資=1点
(資:お年寄りの朝のラジオ体操を想像。)

●朝涼やペダルは軽し通勤路=茶輪子
△ラ=1点
(ラ:「ペダルは」の「は」が気になりますが、清々しい気分が伝わってきます。)

●泉の名囁くやうに告げられて=秀子
△ス=1点

●お品書きは異国の文字やアマリリス=雪絵
△ま=1点
(ま:外国人のお店が増えてきました、日本語と二本立てなのでしょうか。)

●義太夫に傾ぐ頭や夏近し=秋波
△五=1点
(五:歌舞伎の演目?夏らしいのは?)

●黄ビタキの虫くわえ来てけたたまし=香久夜
△秋=1点

●紺絣染めて手洗ふ五月の水=砂太
△葱=1点
(葱:五月の水、がいいですね!)

●自転車の荷乗せや鉢の薔薇揺るる=雪絵
△ぶ=1点
(ぶ:(リアル感が迫ってくる。薔薇の匂いや気品も高まる。)

●聖五月白い花咲く保育園=資料官
△子=1点

●空と海溶けてプールはコバルトに=五六二三斎
△玻=1点

●発つ鳥や食べ尽くしたか桜の実=香久夜
△し=1点
(し:どこか面白みがあって好きです。)

●夏立つや黄砂にけぶる日本海=裕
△水=1点
(水:我が家から山が見えなくなる。日本海の視界はいかに。)

●薔薇の門騒ぐ子犬と潜りけり=白馬
△ぼ=1点
(ぼ:幸せな景。素直さがいい。)

●米兵も見たり箱庭の呉=修一
△久=1点

●僕の番早く代わって浮いてこい=五六二三斎
△葱=1点
(葱:なんだかそんな小市民的な気持ち、よく分かります。)

●蛍見よう気もそぞろなる初デート=子白
△淳=1点

●ぽつねんとひゅうひゅうひゅるりと姫女苑=玻璃
△智=1点
(智:群れて咲いていても姫女苑は孤独に風に吹かれているのですね。)

●ワイシャツに孕みし風や雨呼びぬ=久郎兎
△茶=1点
(茶:「夏シャツ」「白シャツ」にして季語をはっきりした方がよいようにも思いましたが、情景は目にはっきり浮かびました。)

●をさな子の玉虫拾ひきたりけり=修一
△し=1点
(し:とにかく可愛い!きらきらした目で,見せに来たのですね。)


A部門入選作〈back number〉

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