*A部門入選作発表*


当季雑詠=全82投句(入選63句)

【特選】

一席
●青空へ潮引いてゆく浜の秋=砂太


◎子、ま○や、紅△秀、葱、久、白、メ、弧=16点
(ま:上五、中七に、とても魅かれました。秋の海の景が爽やかに浮かんできます。 や:今はもう秋、寄せては返す潮は時の流れの形。 紅:気持ちの良いお句です。上五がいいですね。 秀:だれもいない秋の浜辺は空も大きくて、潮は青空へ引いていくようです。 葱:海へではなく、青空へ波が引く、という表現に惹かれました。 白: 情景が見えるようです。)


一席
●癌告ぐるメールに絵文字秋の蝉=十志夫


◎村○虹、紅、淳、秋△葱、久、白、し、香=16点
(村:告知・絵文字が当たり前の現代性と季語の切ない取り合わせ。 虹:本人は意外に冷静なもの。 紅:明るい絵文字なんでしょうね。気遣いが感じられて、 せつないです。 秋:送り手受けて双方の複雑な思いが伝わります。 葱:世相とも言えますかね、高齢化社会の一断片を切り取って諧謔が効いています。 白: グッとくる句です。 し:深刻なメールに絵文字でちょっと救われますね。 香:優しさをちゃんと受け止めているのですね。)


三席
●さみしさは引力である小鳥来る=ぶせふ


◎清、ス○村、入、ま△秀、葱、十=15点
(清:人は淋しいときに何気なく小鳥の命の営みを見ると癒やされる。 村:自分からさみしさに身を置きたくなるような気分かも。 入:なよなよしてないさみしさのごとある。 ま: 引力である、と言い切った強さに脱帽です。そして、下五でほっとしました。  秀:「ある」「来る」でリズムが生まれたと思います。 葱:さみしいから皆、引かれ合うのですね。)


【入選】

●鶏頭や一人で漕げる三輪車=やんま
◎資、裕○虹、砂△入、喋=12点
(資:目の高さに鶏頭がある。頭同士が向かい合って面白い。 裕:三輪車に乗れた子供の喜びと鶏頭の対比が良い。 虹:かくかくと動く首から思い出したんですね。 入:成長を言祝ぐ聖火のイメージがします。)

●豊年や白磁に灘の生一本=茶輪子
◎砂○ラ、ぶ、し△や、ま、弧=12点
(ラ:「豊年」という季語に、嬉しい気持ちがこもっています。 ぶ:言い切りの良さに飲みたくなった。 し:お酒がめちゃくちゃ美味しそう! や:灘の生一本に一票。 ま:さぞや美味しいお酒でしょう! 弧:私はお酒を飲みませんが、西宮育ちとして。言葉のリズムの良さも好きです。)

●七輪に横一文字の秋刀魚かな=十志夫
◎ぼ○白△虹、資、喋、秋、五=10点
(ぼ:おお、みごとな一刀彫りの句。 白:中七の表現が佳いですね。 虹:横一文字が絶妙。 資:高くて小さな今年の秋刀魚。それでもいつもの秋の風景。)

●師の影をまた踏んでゐる運動会=ラスカル
◎紅、雪、香△淳=10点
(紅:好天の下での楽しい運動会が想像されます。クスッと笑える句で、好きです。 雪:運動会をこの角度でとらえるとは、さすがです。 香:明治時代だと、大変なことに、、、。滑稽な発想です。)

●機関区の跡地きちきちばった飛ぶ=資料官
△や、虹、葱、雪、入、ま、茶、裕、ス=9点
(や: 古城を偲ぶに似たり。 虹:祖父が保線区長で、そんなこともあったかも。 葱:音韻のリズムと廃線の枯れた情景に惹かれました。 雪:廃線になった機関区。音の響きがおもしろい。 入:汽車関係の原っぱにはキチキチバッタがぴったりでしょう。 ま:人気のない草ぼうぼうの跡地、切ないですね。 茶:「きちきちばった」は現在では「精霊ばったもどき」と呼ぶそうです。でも「きちきち」が跡地の語感にしっくりきますね。 裕:きちきち が面白い。)

●露草の青に潜みし宇宙人=久郎兎
◎メ、秋○砂△村=9点
(秋:宇宙人とは何者か?色々想像出来て表現の面白さでとりました。 村:取り合わせの意外性。)

●にびいろの淡海広がる彼岸花=修一
◎や、白○裕△紅=9点
(や:人はただ立ち尽くすのみ。 白:佳い景ですね。表現が見事です。 裕:色のコントラストがいいです。 紅:広さを感じられる句、色の対比も鮮やかです。)

●秋の声切り絵のやうに街の暮れ=まさこ
○葱、メ、秋△ラ、ぼ=8点
(葱:なぜかキリコの絵の中の街を思い浮かべました。 秋:絵画的。 ラ:「切り絵のやうに」という比喩が素敵です。 ぼ:何処にも詩になる時間帯あり。)

●スエードの真っ赤なヒール月の宴=しゃが
○ス、五、十△白、紅=8点
(白:月の宴に相応しいか? 面白いです。 紅:西洋風の豪華な月の宴なのでしょうね。)

●螳螂の仁王立ちせる草の門=葱男
○ぼ、香△清、ぶ、資、雪=8点
(ぼ:小さきものにも、生命の威厳あり。 香:草の門なので小さな寺の?仁王像の代わりでしょうか、おもしろいです。 清:蟷螂の大袈裟なポーズを良く表している。 ぶ:カマキリの姿に時空が緊張する。 雪:確かに仁王立ちのような構えをしますね。「草の門」がいい!)

●エンターキー押して試案や夜半の秋=十五
○雪△清、秀、茶、裕、秋=7点
(雪:押してしまったあと、また考え込む。よくわかります。 清:何かの試案を打っているうちにいつの間にやら夜半になっていた秋の日の一日。 秀: 「思案」でもよかったのでは? 茶:押す前は当然ながら、押してからやはりと思案する点が季語にぴたりときました。 裕:試案?思案? 秋:共感!)

●螻蛄鳴くや落款著き水墨画=十五
◎ぶ○清、修=7点
(ぶ:季語が効いている。水墨画が見えてくる。 清:自筆の署名がはっきりしている水墨画おけらの低い声が聞こえるようだ。 修:鳴き声も地味な虫の斡旋がいいと思います。)

●露草の瑠璃より瑠璃へ登校す=入鈴
◎葱○喋、弧=7点
(葱:登校の途中に露草に道草、可愛いなあー! 弧:明るく美しい景で、青春の儚さも伝わります。)

●海苔巻きの切り口揃ふ在祭=秀子
◎十○資△ラ、雪=7点
(資:中の具が良く見えて,祭り気分が高まる。 ラ:「揃ふ」に清々しさが感じられます。 雪:切り口はどんな図柄に?)

●踊りだすカンタオールや月煌煌=しゃが
◎ラ○ぼ△清=6点
(ラ:単なる月ではなく、「月煌煌」と表現したところが秀逸。 ぼ:ジプシーの宴たけなわ。オーレ!! 清:フラメンコの歌い手が月光の中で踊り出す。)

●汽車来たり目線を走る秋茜=久郎兎
○子、雪、喋=6点
(雪:「目線を走る」が汽車のようでもあり、懐かしい風景です。)

●教会に熟るる柘榴や罪新た=ぼくる
○白、香、弧=6点
(白: 柘榴は罪の元。 香:柘榴ということで、エロティックな予感がします。 弧:季語が効いて、非常に内省的な句に感じます。)

●紫煙の輪どこで崩れて虫の声=白馬
◎喋○ラ△久=6点
(ラ:秋思の兆しかもしれません。)

●どんぐりを拾ふ天守閣への道=修一
○や△葱、ラ、村=6点
(や:戦無き平和とはかくの如き。 葱:破調が情景とうまくマッチしていると思います。 ラ:小さな物と大きな物の対比ですね。 村:大小の対比と城の周囲の様子が見える。)

●ひたひたと胸の奥まで初月夜=清一
◎入△虹、子、メ=6点
(入:そう言えばそうかもしれません。 虹:胃の腑に染み渡る熱燗が浮かびました。)

●身に入むや十字架触るる肋骨=葱男
◎弧○久△し=6点
(弧:祈る人の心の静謐さが伝わります。 し:美しい宗教画を想像しました。)

●露の世のスマートフォンの重さかな=ラスカル
◎秀○ま=5点
(秀: 納得。「スマートフォン」とちゃんと言われたのが、美しい。 ま:たかがスマホ、されどスマホですね。ずっしりです。)

●ビニル傘野分のあとの形なる=雪絵
◎久△入、茶=5点
(入:面白い観察やなあと。 茶:「あとの形」にあてられたスポットが使い捨てやゴミに光を与えているように思います。)

●星飛ぶや生前葬のデスマスク=清一
○入、五△村=5点
(入:どういう取り合せなのか、強い意志を感じます。 村:現代風俗の切り取り鮮やか。)

●赤のままあのねあのねの糸電話=やんま
○メ△砂、裕=4点
(裕:季語がないですが、ほのぼのとした感じがいいです。[赤のまま=赤まんま=季語]。)

●扇置く花街端のラーメン店=茶輪子
○久、ス=4点

●秋光をきらりと釣りて無一物=砂太
◎し△修=4点
(し:秋光を釣るというイメージがとても好きです。 修:秋を釣る。風流です。)

●新涼の空鉢巻を締め直す=秋波
○ぶ、十=4点
(ぶ:運動会か。勇ましい子供の姿が浮かび上がる。)

●復旧を待つ無人駅竹の春=資料官
◎五△ぶ=4点
(ぶ:切実な日常が風景になっている。)

●べい独楽や画鋲に留まる妻の指示=十五
△ぶ、修=4点
(ぶ:身につまされる。 修:独楽も妻の指示も痛そおです。)

●無言なる通学の列山に霧=弧七
○子、資=4点
(資:黙って歩く子等,霧が不気味かも。)

●むばたまの闇に揺れゐる芒原=清一
◎虹△修=4点
(虹:揺れる芒にだけ注目した珠玉の一句。 修:揺れゐるーがいいです。)

●群れ立ちて妹達の曼殊沙華=砂太
○葱△弧、五=4点
(葱:自分より先に、若くして亡くなった妹たちを詠んだもの、と解釈しました。 弧:妹さん達への悲歌でしょうか。胸にささる景です。)

●夕されば川音やさし彼岸花=ぼくる
○し△子、メ=4点
(し:夕さればというのがいいですね。)

●男気(をとこぎ)に生きて悔いなし秋夕焼=ぼくる
◎淳△砂=4点

●犬の散歩ふらりふらりと萩の道=子白
◎修=3点
(修:老人なのかな?萩の花がいい。)

●姥捨の山まで三里女郎花=五六二三斎
△ぼ、喋、香=3点
(ぼ:女郎花は見ていた、今も昔も。 香:映画の一場面に出てくるような。)

●草野球白露飛ばして子らの足=入鈴
◎茶=3点
(茶:「子らの足」へフォーカスした点がよいと思います。秀逸でした。)

●そのあとの二人を包む秋の声=虹魚
○裕△ぼ=3点
(裕:なんとなく意味深で面白い。 ぼ:いいなあ、余情たっぷり。)

●鳥渡る頃か鑢の目を立てて=秀子
○修△秋=3点
(修:緊張感神経の張りが感じられる。)

●猫じやらし既読スルーのごとく揺れ=ラスカル
○茶△十=3点
(茶:つれない感じと現代の日常風刺がよいと思いました。)

●ポケットのスマホ震へる月の夜=まさこ
○秀△淳=3点
(秀:こちらは「スマホ」ですが、「ポケット」を活かすなら、略さないとしかたがないですよね。)

●蜉蝣の群れて投網の如くなり=虹魚
△資、ス=2点

●かりがねや森田童子に地平線=葱男
○秀=2点
(秀: 知らなかったので、調べたら、とても好みのタイプのアーティスト。「地平線」とはいい言葉をみつけられましたね。でも「に」でいいのかな。)

●白露踏む黒猫のせな迫上ぐる=入鈴
○清=2点
(清:猫の背なの迫り上がる様子が白露を踏むときの動作として上手く表されている。)

●酔芙蓉夢見しままに刈られをり=五六二三斎
△子、し=2点
(し:酔芙蓉の可憐さがより悲しいですね。)

●ため息と懸賞パズルの菊日和=秋波
○茶=2点
(茶:秋にパズル、はまるとつい時間を忘れて。「ため息」と「パズル」、「懸賞」と「菊」の重層性がそれこそパズルのようでいただきました。)

●トンネルを抜けてトンネル龍淵に=秀子
△紅、ス=2点
(紅:難しい季語を教えて頂きました。)

●長雨にバス待ちの列クラクション=久郎兎
○淳=2点

●野分去る物産展の最終日=紅椿
○村=2点
(村:物産展に限らずご同慶の至り。)

●彼岸花咲きて愁いの手を合わす=メゴチ
△砂、入=2点
(入:咲きては無くても?)

●面接の練習済みて小望月=茶輪子
△入、十=2点
(入:小望月がぴったりの心境だったのでしょうか?)

●五十鈴川に両手浸せば秋の声=雪絵
△五=1点

●顔照らすスマホの灯り十七夜=雪絵
△淳=1点

●県道をふさぐ流木秋遍路=紅椿
△香=1点
(香:大雨の傷跡が、、、昔はもっと大変だったでしょうね。)

●身に入むや俯きて弾くビルエバンス=しゃが △ま=1点 (ま:久しぶりに聴きなおしました。やはり身にしみますね。)

●実むらさき野外保育の帽子の子=資料官
△修=1点
(修:すばらしいぴったりのたとえです。)

●やうやつと過ぎし雨かぜ秋の蝉=紅椿
△や=1点
(や:秋の長雨も過ぎてしみじみと残った蝉を聴く。)

●夕暮の撓み始むる虫の秋=十志夫
△葱=1点
(葱:騒ぎ出す虫の声で空間の平衡感覚が少し狂うような気がします。)


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