*A部門入選作発表*
当季雑詠=全84投句(入選62句)
【特選】
一席
●来るたびに迷子の心地して花野=秀子
◎葱、砂、白、紅○資、香、ぼ△修、雪=20点
(葱:まだよく知らない世界に対する子供の恐怖心を上手く表現していると思います。誰しも幼い頃、一度は迷子になった経験があるのではないでしょうか? 白:確かにそんな心地ですね。 紅:とても共感できます。着地の仕方も素敵です。 香:コスモス畑でしょうか、そんな気持ちになるんですね。 ぼ:そう、花野なればこそ。)
二席
●背を丸めさがる噺家暮の秋=十五
◎十、や、茶、修△葱、清、虹=15点
(十:景鮮明。「暮の秋」もつかず離れず。 や:主役から日常へと暗転してゆく。葱:季語が動きそうだが、観察力、写生力が素晴らしい。 茶:落語そのものより、退場する場面に着眼されている点と取り合わせでいただきました。 修:消え入る感じが季語にぴったり。 葱:季語が動きそうだが、観察力、写生力が素晴らしい。 清:人情話などを終えて下がる噺家の背にふと暮の秋の寂しさがこみ上げる。 虹:情景が浮かぶ。)
二席
●目覚めれば君のかたちの菊枕=虹魚
◎久〇五、ぶ、紅、喋、香、し=15点
(ぶ:巧い句だ。ほんの少しのエロスもいい。 五:何となく雰囲気の良い句である。 紅:こういう句が詠める若さに嫉妬します。 香:本当に菊枕を?君のかたちって、優しい表現ですね。 し:幸せな朝ですね〜。)
【入選】
●月の雨黒鍵だけのピアノ曲=まさこ
◎し、ぼ○淳、ス△玻、十、葱、五=14点
(し:黒鍵だけのピアノ曲とはどんな曲なのかしら。ちょっと寂しそうな気がします。 ぼ:不思議な曲が聞こえてきそう。 十:調べてみたら、「月の雨」から受ける予想と違って「サッポロ一番味噌ラーメンCM」「蛍の光」「まんが日本昔ばなし」「笑点のテーマ」とありました<笑>。 葱:調べてみたら「月の雨」は「雨月」の傍題でした、知りませんでした。上手い取り合わせですね、浪漫を感じます。 五:黒鍵だけのエチュードのことか?月の雨とは、月の光の雨ということだろうか?)
●トクホンの微かに匂ふ月の客=ラスカル
○秀、ぶ、茶、修△十、葱、久、紅=12点
(秀:俳味たっぷり。 茶:滑稽味のある句姿。庶民的でいいと思います。 修:現実感あり。十:「トクホン」という固有名詞が少し気になるが、「月」との意外な組み合わせが面白い。 ぶ:風流を楽しむ生きた現実。 葱:トクホンは貼り薬ですが、サロンパスでは俳句になりませんね、トクホンを遣うのが上級者、心憎い演出です。 紅:俳諧味があっていいですね。)
●遊覧の水脈 (みお) 錦秋を真つ二つ=十志夫
◎虹、五○葱、砂△ぶ、紅=12点
(虹:「真つ二つ」が巧い。 五:錦秋の湖。十和田湖を思い浮かべる。遊覧船の水脈が錦秋を真っ二つに割る。 葱:座五の「真っ二つ」がなんとも心地良い! ぶ:この潔さは捨てられなかったw 紅:目に浮かびます。)
●留守電に残る沈黙秋深し=裕
◎秀○十、虹△資、ラ、ま、し=11点
(秀:意味シンですね。どんな沈黙? 十:切ない恋の句でしょうね。キュンとします。 虹:「沈黙」にドラマ。 ラ:現代世相を反映しているような感じがします。 し:何か気になりますよね。)
●帰り道紅い茸に呼ばれけり=修一
◎喋、ス○子、白=10点
(白:妖しい毒茸-----。)
●爪を研ぐ猫の真顔や文化の日=ラスカル
◎裕○砂△や、資、雪、ま、し=10点
(裕:猫の顔が浮かびます。 や:人様の輝きには我関せずと。 し:真剣に爪を研ぐ猫がいいですね。)
●小鳥来る尊徳像の薪の上=ラスカル
○虹、子△十、葱、や、雪、ぶ=9点
(虹:「薪の上」がいい。 十:長閑な景。尊徳像、めっきり見なくなりましたね。 葱:モノ俳句のお手本。 や:昭和が今も固定されている。 ぶ:郷愁を誘われる。)
●傾いた陽射しに溶けゆく秋の蝶=秋波
◎メ、淳〇玻=8点
(淳:傾いた陽射しってどんな感じですかね。)
●怪優と呼ばれし系譜ましらざけ=葱男
○清、ラ、ま△秀=7点
(清:変わった容姿や演技が魅力とされる怪優に猿酒がよく似合う。 ラ:「怪優」と「ましらざけ」が、よく響き合っています。 秀:季語がよく働いている。)
●決断の友よ青檸檬したたる=まさこ
◎ぶ○ス△白、香=7点
(ぶ:私にはでいない芸当。友達を心底思う熱いものを感じた。 白:情感と季語が響きあっています。 香:告白する決断?凛々しい青年がうかびます。)
●擦り傷の訳を聞かずに今年酒=裕
◎雪○十△喋、ス=7点
(十:「今年酒」なので男同士を想像させて、男女間のように甘くならないのがいい。)
●すり寄りし猫の瞳や鰯雲=裕
◎清○メ△子、淳=7点
(清:猫の瞳に好物の鰯ではなく雲が写ると言ったささやかなユーモアのある秀句。)
●入口にポニー繋がれ大花野=紅椿
◎ラ○玻△や=6点
(ラ:童話の世界への入口かもしれません。 や: この花野のどこまでポニーは連れて行ってくれるのか。)
●大花野少年突如走りだす=やんま
○葱、紅△五、修=6点
(葱:子供の頃のあの、どれだけ動き回っても疲れない体が懐かしい〜! 紅:よく分かります。 五:少年は中学生だと思う。小学生では只の句になるかも。)
●今日ひと日何か失ひ秋の雲=やんま
◎村△虹、ぶ、喋=6点
(村:達観?焦燥感?季語からそれでもいいやと思っているような。 虹:何か忘れているような気持ち、よく分かる。 ぶ:谷川俊太郎の詩を思い出した。)
●初孫に大きめの服冬隣=久郎兎
○清、雪△十、ぼ=6点
(清:すくすくと成長する孫にあたたかい大きめの服を着せてやる祖父母の思いやり。 十:長く着られるように気遣うのは昔の人の知恵♪ ぼ:素直な幸せ感表明。)
●ふる里の少し遠のく吾亦紅=雪絵
◎資△秀、茶、ス=6点
(資:福岡の実家には誰もおらず,こんな感じ。 秀:母を送って、11か月、よくわかります。 茶:寂しげな花姿との取り合わせ。「遠のく」の距離感がいいと思いました。)
●約束を果たしに出向く野分なか=葱男
◎玻〇ぼ△ま=6点
(玻:詠者の人に対する真摯さが爽やかです。出向くと云う措辞が強い意志を感じました。この句は「野分なか」でなければ成立はなく約束と云うよく使う言葉が、特別な意味を持つように浮き上がって来ます。 ぼ:男気あり、いいね、この緊迫感。)
●旅先の淡き出逢ひや秋夕焼=ぼくる
○白△虹、メ、紅=5点
(白:中七がとても佳い感じです。 虹:異性かな? 紅:一期一会の美しさ。)
●ラヂオより浪曲ながれ秋刀魚の日=十志夫
○や、裕△茶=5点
(や:大根をおろしながら〜清水港の名物は〜。 裕:昭和の居酒屋ですね。 茶:今日は秋刀魚だな。確かに浪曲を聞くとそんな気分に。)
●螻蛄鳴くやゴッホの耳の痛々し=清一
○や△白、ぼ=4点
(や:ゴッホと自画像と自分を繋ぐ痛み。 白:螻蛄の形と千切られた耳の連想でしょうか? ぼ:陰々たる風情。)
●切手の絵のクレヨン五本冬隣=雪絵
◎ま△ラ=4点
(ラ:一読して、ほのぼのとした気持ちになりました。)
●撓垂れる生八ッ橋や月を待つ=しゃが
○ラ△葱、ぼ=4点
(ラ:「月を待つ」という期待感がぴったり照合しています。 葱:上五の措辞に惹かれます。 ぼ:なんだか色っぽくていいね。)
●長き夜や寝顔を照らす読書灯=資料官
○五、雪=4点
(五:読書をしていて眠ってしまった。自分のことを詠んでいるなら、目覚めた後に読書灯が点いていたということか?客観的描写で面白い。)
●秋雨を来しひと声も濡れをりぬ=虹魚
○秀△葱=3点
(秀:「ひと」は漢字のほうがいいように思いました。 葱:「声も濡れをりぬ」がなんとも色っぽい!)
●海境の弧は茫ぼうと暮の秋=砂太
○村△五=3点
(村:暮秋の沖波のスケールの大きな景が鮮やか。 五:海を見つめる老人。寂寥感が漂う。)
●胡桃割る何やらゆかし繰り言も=秋波
○久△茶=3点
(茶:腹を割ってという程でもないけど、多少苦めの託ち言がぽろぽろと。まさに胡桃割るですね。)
●極楽へ 鬼の子吊す糸一本 =清一
○ま△砂=3点
●台風の夜にシューマン詩人の恋=しゃが
◎子=3点
●散り乱るいろはにほへと暮の秋=茶輪子
○資△砂=3点
●天仰ぐ一輪だけの白桔梗=五六二三斎
△ぶ、淳、裕=3点
(ぶ:おそらく手入れの行き届いた庭だろう。一輪の桔梗が揺れている。 裕:凛としているようです。)
●天井に睨む龍あり萩そよぐ=香久夜
○茶△ス=3点
(茶:睨まれてついソワソワとしてしまう、またはザワザワと波打つ心持ちが「そよぐ」に表れていると思いました。)
●飛び立ちて浅黄斑蝶(アサギマダラ)の大宇宙=砂太
◎香=3点
(香:アサギマダラも美しいのですが、大宇宙に飛び立つという表現に、夢があります。)
●箸をおくその静けさの新走り=ぶせふ
○メ△砂=3点
●星流る見えぬ光の満つる宙=まさこ
○村△メ=3点
(村:天文学のロマン、季語を離しては?)
●木犀の路地に零せし金の星=紅椿
△十、葱、清=3点
(十:「金の星」の比喩は誓子句などにも散見するが、「路地に零せし」が秀逸。 葱:路地に零せし、で成功したと思います。 清:金木犀の花びらが路地一杯に香る。)
●秋雲に大蛇の這いし跡著き=しゃが
○淳=2点
●遠足か落穂をつつく雀たち=秋波
△淳、裕=2点
(裕:雀たちが楽しそう。)
●新蕎麦と電子タバコと新聞と=メゴチ
△十、子=2点
(十:電子タバコの意外性が奏功。)
●同級会五十年ぶり禿げ白髪=子白
○し=2点
(し:大笑いしました。五十年ぶりとはすごいですね。)
●蟷螂や死は求愛の最終形=葱男
△秀、し=2点
(秀:なんとまあ、ロマンティスト! し:壮絶ですね。)
●昼酒の下物(かぶつ)にしたり新豆腐=十五
○修=2点
(修:なかなかの通ですね。よくまわりそう。)
●藤の実の揺るるほどよき風の中=雪絵
△資、香=2点
●弁慶のごとき往生女郎花=五六二三斎
○裕=2点
(裕:仁王立ちの女郎花?)
●夕月や傍らに汝がゐる気配=ぼくる
△玻、修=2点
●いつの間に布団重ねし秋の夜=淳一
△久=1点
●末枯の地底流るるマグマかな=十志夫
△喋=1点
●海蝕の崖下にをとこ雁の列=十五
△久=1点
(淳:傾いた陽射しってどんな感じですかね。)
●子等の声いつしか絶えて色葉散る=白馬
△メ=1点
●秋霖の空の交番黒電話=修一
△清=1点
(清:秋の長雨の時期に交番の黒電話との取り合わせが何となく合う。)
●魂の夢幻飛行や銀河濃し=やんま
△裕=1点
(裕:都会ではこの雰囲気は味わえないですね。)
●鳥海の紅葉の山に牛も鳴く=子白
△村=1点
(村:紅葉山と牧場の牛の色の対比まで見える。)
●妻恋ふや野菊ひつそり咲く山路=ぼくる
△修=1点
●寝たきりの老人の部屋秋夕焼=修一
△白=1点
(白:この侘しさ-----。)
●更待ややつぱり声を盗まれて=秀子
△村=1点
(村:意味深な場面が想像され面白い。)
●ゐのこづち気づかれぬまま五十路来る=茶輪子
△玻=1点
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