*A部門入選作発表*
当季雑詠=全90投句(入選61句)
【特選】
一席
●己が影抱へて歩む蜥蜴かな=十志夫
◎ぼ、香○久、水、メ△虹、清、葱=15点
(ぼ:的確な描写で、蜥蜴の存在感がぐんと。 香:影を抱へて、と発想の転換がおもしろいです。 水:蜥蜴の地面との距離は近い。 虹::自分の影を確かめるように少しずつちょろちょろと。 清:影を抱えて歩むと云う措辞が良い。 葱:蜥蜴はなぜか灼熱の直射日光がよく似合いますね。)
二席
●黒南風や端から焦ぐる目玉焼=十志夫
◎や、秀○虹、清、砂△紅、茶=14点
(や:この感性が瑞々しい。 秀:虹:風と焦げの取り合わせがいい。 清:黒南風と目玉焼きが端から焦げるとの言の葉が上手く繋がっている。 紅:今日も焦がしてしまいました、実感です。 茶:「端」への着眼に。)
三席
●菓子箱に丸窓のあり若葉風=葱男
◎水○虹、村、茶△十、ラ、紅、喋=13点
(水:爽やかな風が菓子箱の窓から吹いてきそう。きっとおいしいお菓子だ。虹:懐かしさに溢れる。 村:中に何が入っているのか楽しそう。 茶:「丸窓」の発見に。 十:丸窓の存在は、ひとつの発見。季語も効いている。 ラ:禅寺のような菓子箱ですね。 紅:涼し気なお菓子が見えてきました。)
【入選】
●天国は晴れて広々麦の秋=秀子
◎五◯葱、香、修、喋△虹=12点
(葱:「天」と「天国」ではイメージの広がり方が全然違いますね。 香:天国と表現するほどきれいな金の麦畑。 虹:広大で優しい風に包まれて。)
●バトンパスのやうにバナナを渡しけり=ラスカル
◎虹○秀、ま、葱△十、水、し=12点
(虹:確かにその通り。 葱:どこかで見たような気がしますが面白いものは面白い、好きなものは好き。秀:バトンパスとは!実感として受け止めました。 バトンパスが良いですね、軽やかな明るい景がみえます。 十:言い得て妙。 水:どういう場面なのか?面白い子どもたち、あるいはおじさんたち? し:ピクニック、トレッキング?楽しい光景がうかびます。)
●薫風を背中にそらすあくび猫=水音
◎清、裕、ま○メ=11点
(清:気持ちの良い風を背中に受けて思わず欠伸する猫の仕草が良い。佳句である。 裕:気持ちよく寝ていたんでしょうね。 ま:何やらユーモラスであり、また爽やかで気持ち良い。)
●仕舞ひまで嘘つき通す心太=清一
◎し○ぼ、白△や、秀、裕、ま=11点
(し:かっこいい!ドラマチック。こうありたい。こう詠みたい。季語のあっせん最高! ぼ:心太と持って来られると、何だかおかしくて憎めない。 や:人には墓場まで持つてゆく事がある。 秀:嘘はその覚悟でついてください。 裕:心太がうまいです。 ま:巷に溢れていますね。苦しくないのでしょうか。)
●噴水や子の国となる青き空=弧七
◎十、砂、茶=9点
(十:中7の「子の国」という表現によって歓声を上げる子供の姿がくっきりと浮かんできます。 茶:中七の「国」への期待で。)
●レモンスカッシュ白黒写真の空の色=まさこ
◎ラ○水、資、白=9点
(ラ:若かりし頃の恋を思い出しているのかも。 水:白黒写真の中にレモンスカッシュの薄い黄色と空の青が鮮やかに浮かび上がる。 資:S音が心地良く響く。)
●カルメ焼の膨らんでくる祭笛=ラスカル
○や、修△十、ぼ、白=7点
(や:郷愁さそうふる里の音。 十:祭の屋台で見かけた懐かしい景です。祭の笛が膨らませているかのよう。ぼ:郷愁しきり。)
●潮騒や砂糖に青き梅埋め=まさこ
◎喋○十、ラ=7点
(十:氷砂糖を使った恒例の梅酒造りでしょうか? 「潮騒」は海辺の町の実景か、それとも瓶から聴こえてくるのか? ラ:砂糖が海で、青梅が岩礁のような感じがします。)
●ただ白きハンケチ母は無口なる=十五
◎紅○十、裕=7点
(紅:荘厳で、静かで、哀しい句。多くを語っていない所がお上手だと思います。
十:白いハンカチが何を象徴しているのか。「死」をイメージさせる何かモノ哀し気な句です。 裕:どんな場面か、いろいろと想像できます。)
●花みかん岬まで行く島のバス=五六二三斎
○や、ま△紅、修、し=7点
(や: 旅に遊びて孤独紛らす。 はっきり景がみえます、こういう島に行ってみたい。 紅:色がきれい。海の匂いがします。 し:花みかんと岬がいい景色だなと思いました。)
●柔らかき雨に色増す五月かな=砂太
◎メ、し△葱=7点
(し:詩情あふれる表現で素敵です。 葱:類想は避けられないが、それを承知の上でのストレートな自然礼讃が逆に気持ち良い。)
●A列車万緑の旅始まりぬ=香久夜
◎葱◯ラ△秀=6点
(葱:軽快なジャズピアノに乗せて旅の始まり! ラ:「A列車で行こう」を口ずさみつつ♪ 秀:「A列車で行こう」ですか?これはもうみんなのフレーズになってるとは思うんですが、そこが賛否のわかれるところかもしれません。)
●教室にペン音満つる風薫る=茶輪子
◎淳○村△久=6点
(村:中七が少し窮屈ですが学生の姿が見えます。 淳:静寂の中にペン音だけが聞こえています。)
●島に嫁ぎ潮騒を聞く金魚かな=葱男
◎白○久△清=6点
(清:金魚を擬人化した面白さがある。)
●寅さんの昼寝のベンチ汽車がゆく=資料官
○紅、入△清、水=6点
(紅:のんびりとして昭和の景が浮かんできました。 清:寝過ごして仕舞った寅さんの慌て振りが良く出ている。 水:田舎の古い駅舎なのでしょう。)
●便箋の過日は遠き麦の秋=久郎兎
◎資○五△砂=6点
(資:麦秋の黄金色はふと昔のことを思い出させる。遠き麦の秋が良い。)
●ピンポン台立夏立夏と弾む音=メゴチ
◎入△葱、ラ、茶=6点
(葱:オノマトペに「立夏」の文字を当てたところが愉快! この搦め手は俳壇で通用するのか? ラ:季語の使い方がやや反則気味ですが、面白いです。 茶:中七のユニークな起用に。)
●麦の秋まつすぐ走る大牟田線=資料官
○裕△十、葱、ぼ、五=6点
(裕:筑後平野を南下中? 十:麦畑を疾走するローカル列車。広々として長閑な景色が浮かびます。 葱:実景を想像させ、思い起こさせる具体性としての「大牟田線」がいい。 ぼ:ローカルでのどかなな景が浮かぶ。)
●瑠璃色の木漏れ日拾ふ聖五月=やんま
○ぼ、し△ 淳、入、メ=6点
(ぼ:詩的できれい。聖五月がいい。 し:木漏れ日に色をもってきたところがいいと思いました。聖五月にも合いますね。)
●かくれんぼ茂りの中に鬼を置く=清一
○し、ぶ△や=5点
(し:鬼が隠れそうですね。 ぶ:童心と計算された緊張感のハーモニー。 や:創意工夫で智恵の発育。)
●筍を湯掻くや夜の割烹着=秋波
◎久○ぶ=5点
(ぶ:(馴染みの居酒屋で飲んでみたくなりました。真砂女さんのお店とかで。)
●万緑や膝に抱きし父の骨=ぶせふ
△裕、ま、香、修、白=5点
(裕:万緑と遺骨の組合せがいい。 ま:の斡旋がお見事。緑と白の対比も鮮やかです。 香:万緑の季節に救いがあるように見えます。)
●マカロンの転がるやうに若葉風=水音
○清、茶△資=5点
(清:マカロンが若葉風で転がって行く心象風景。 茶:マカロンの色と甘さと若葉風、に。)
●お太鼓のぴたりと決まり初夏の風=紅椿
○淳△砂、ぶ=4点
(ぶ:和服姿の美人の残り香が・・・。)
●潮騒や砂糖に青き梅埋め=まさこ
◎喋○十、ラ=7点
(十:氷砂糖を使った恒例の梅酒造りでしょうか? 「潮騒」は海辺の町の実景か、それとも瓶から聴こえてくるのか? ラ:砂糖が海で、青梅が岩礁のような感じがします。)
●答案の返却ゆらり夏の昼=茶輪子
◎修△久=4点
(修:教室のそのときの空気がリアルに伝わってきます。)
●呆けぶりを笑ひ合ひつつ宿浴衣=ぼくる
△葱、修、し、ぶ=4点
(葱:仲の良い学友たちの集まりでしょう。おおらか! し:長い友情を育んできた様子が伝わります。 ぶ:笑声が聞こえてくる。女の人の^^)
●約束の蛍となりて現れたまふ=ぼくる
△村、久、紅、ぶ=4点
(村:観念的だが気持ちが分かる。 紅:特別な蛍の夜となりましたね。「現れ」は「生れ」でしょうか? ぶ:どんなに愛し合っていたんだろう〜。)
●ありのままそのまま泰山木の花=ぶせふ
○香△資=3点
(香:自然の偉大さを思わせる大輪の花です。)
●音楽も苺も二人分けあつて=秀子
○五△ぼ=3点
(ぼ:はい、ご馳走さま。そんな時代もありました。)
●「かわせみやませみ」木(もく)を香らせ梅雨に入る=香久夜
○喋△葱=3点
(葱:童話、童謡の世界!)
●起重機てふガンダムの角(つの)灼けてをり=十志夫
○砂△秀=3点
(秀:「ガンダムの角」に飛んだところが、私は意表をつかれました。)
●大学の産科病棟聖五月=雪絵
○資△水=3点
(資:五月にお孫さんが生まれた方のお作でしょうか。おめでとう。 水:大学病院での出産とは何か問題があるのでしょうか、マリア様のご加護を。)
●母の日の小雨の午後となりにけり=紅椿
◎村=3点
(村:特別のことを何も言わずにしみじみと想いが出た。)
●べらんだに鳥とわれ浮く端居かな=入鈴
○秀△葱=3点
(秀:不思議な句ですよね。まずは、「ベランダの端居」がいいし、「浮いて」いるのがステキ! 葱:べらんだ、と平仮名にすることによって意味から音韻を際立たせ、「浮く」感覚を補完している。)
●幻の機影知覧の夏空に=ぼくる
△砂、香、五=3点
(香:飛び立っていった若い兵士の思いが、限りなく漂っているような。)
●熊楠の曼荼羅蔵す青嵐=入鈴
△香、喋=2点
(香:何か、暗く奥深い情景がうかびます。)
●薫風やルイボスティーの透ける紅=水音
△虹、ラ=2点
(虹:「透ける紅」が詩的。 ラ:ルイボスティーを飲んでみたくなりました。)
●薫風やどつぷり漬かる露天風呂=清一
○ 淳=2点
●さよならが言へぬ滝音うるさくて=秀子
○紅=2点
(紅:別れの言葉が言えないのを、滝の音のせいにする健気さがいいですね〜!)
●麦秋の低き山並み広き空=資料官
△十、 淳=2点
(十:景に縦横斜めの広がりと奥行きがある。)
●若葉山空の青さを深呼吸=五六二三斎
△メ、し=2点
(し:山の清々しさを体感しているようです!)
●朝練の清々しきや夏燕=茶輪子
△メ=1点
●風強しされど噴水たる飛沫=弧七
△ぶ=1点
(ぶ:巧い!この才能にあやかりたい。)
●悉く島の若葉や唐津沖=雪絵
△喋=1点
●ごめんねを明るく介す青簾=虹魚
△ま=1点
(ま:人間関係かくありたいです。季語が効いています。)
●店頭に新茶所望の百匁=久郎兎
△五=1点
●土手を漕ぐ赤銅色の裸かな=修一
△裕=1点
(裕:ボート部ですよね、かっこいいです。)
●とろうり光る桜の脂や聖五月=修一
△茶=1点
(茶:「とろうり」のオノマトペ?に。)
●泣き叫び両手あげたる丸裸=修一
△資=1点
(資:まさに赤ん坊そのもの。)
●夏の灯の照らす古仏の榧衣文=しゃが
△入=1点
●夏めきて化粧に慣れし吾が娘=裕
△白=1点
●麦秋に腰を降ろして青い空=喋九厘
△村=1点
(村:中七が作者の心地よさを出している。)
●ベラスケスの前を過ぎ行く梭゚香=しゃが
△葱=1点
(葱:サロン的で胡散臭い感じがいい!)
●方形の空一輪の薔薇ほの甘く=秋波
△ 淳=1点
●短夜のチヤツトは妻に背を向けて=虹魚
△や=1点
(や:ラインの縁でライン友達。)
●店先に並ぶぐい飲み花山椒=ラスカル
○入=1点
●もう噴かぬ噴水ふちに鳥遊ぶ=弧七
△入=1点
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