*A部門入選作発表*


当季雑詠=全90投句(入選66句)

【特選】

一席
●桜蘂降る方程式を解くやうに=水音


◎秀、ラ、秋○や、清、雪、裕、茶、香△葱、資、ぶ、久、ス=26点
(秀:桜蘂がばらばらと散ってる様は、確かに方程式を解くようです。 ラ:「方程式を解くやうに」という比喩が斬新。 秋:方程式とは面白い表現です。どんな関数なのでしょうか。 や:難解なれどどこか美し。 清:恐らく雄蘂と雌蘂の連立方程式だろう。 裕:綺麗な、少し切ない光景です。 茶:「ぱらぱら」や「はらはら」などではなく、「方程式」をたとえにするという点が面白いと思いました。 香:こんなにポロポロ解けたらよかったのに、、。 葱:中下の12音はなかなか出てこない修辞だと思う。もしかして数学者か?? ぶ:きもちがいい。)


二席
●海鳴は海の口笛白鴨忌=葱男


◎水、五○秀、砂、ラ、喋△や、雪、ま、紅、ス、香=20点
(葱:2013年5月1日、白髪鴨さん、玄海に歿す。 五:白髪鴨さんが玄界灘にて夭折して5年が経過した。あっという間の5年であった。「忘られぬ道きっぱりと夾竹桃」白髪鴨掲句を声を出して読み、白髪鴨さんを思い出す。 水:海の底から何か話しかけられているような。 秀:「海鳴は海の口笛」という比喩が、友への心の籠った弔辞となりました。 ラ:故人への追慕の念が伝わってきます。 や:大きな男ここに眠れる。 雪:もう五年。2月10日、砂太先生、五六二三斎さんと四人で海を眺めながら過ごした光景が今もより鮮明に浮かびます。 ま:海の口笛、素敵な表現ですね。 紅:あたかも白髪鴨さんが吹いているように感じられるのでしょうね。 香:海の口笛 彼が歌っているような。)


三席
●腹出して起立秩父のチューリップ=資料官


◎砂、ぼ○や、五△十、村、ラ=13点
(や:その存在の憎くからずあり。 ぼ:兜太へのオマージュ。故人もあちらでニッコリでしょう。 五:金子兜太氏への追悼の句。秩父にチューリップ園があるのだろうか? 十:兜太追悼句として戴きました。 村:村:兜太追悼句でしょうか。 ラ:金子兜太さんへの追悼句ですね。しみじみ。)


【入選】

●宙よりの伝言ゲーム藤の房=喋九厘
◎十、清○裕、五△や、久=12点
(十:「宙よりの伝言ゲーム」の発想が秀逸です。 清:宙から垂れ下がっているように見える藤の房のそれぞれが伝言ゲームを競い合っている様だとの比喩の佳句。 裕:藤の房を伝言ゲームに例えるのが面白い。 五:藤の房を宇宙からの伝言ゲームと捉えた面白い視点である。 や:末端全て違う言の葉。)

●昭和の日二円切手の秋田犬=資料官
◎茶○子△葱、十、秀、ラ、五、ぼ=11点
(葱:今、秋田犬ブームが世界的に来てるのでしょうか? 十:私の手元には「兎」の二円切手がだいぶ余っています(笑) 秀:物でしっかり押さえました。 ラ:現在の二円切手は兎ですが、確かに昔は秋田犬でした! 茶:今、衆目の的の「秋田犬」。切手ではたった二円ですが、今や何万倍もの価値ある伝統種です。「昭和の日」の季語にもピッタリの題材ですね。 五:秋田犬はザギトワ効果で人気急上昇??その秋田犬か二円切手にあるの? ぼ:おお、懐かしや。)

●あたたかや石を撫でゆく水の音=ぼくる
◎し○修、ラ、紅△十=10点
(し:なんとも穏やかな美しい情景ですね。優しい水の音が聞こえます。 修:ほんと気持ちの安らぐ感じです。 ラ:「流るる」ではなく、「撫でゆく」と表現したところが巧い。 紅:春先ののどかな景が浮かびました。 十:「撫でゆく」の表現が巧みです。)

●ガリバーにかき回されて蝌蚪の国=紅椿
◎雪○し△葱、十、村、水、香=10点
(雪:おたまじゃくしにとって人間はガリバーなんですね。 し:バケツにうようよとおたまじゃくしを採っている子供を見かけました。その子のことですね。(笑) 葱:オタマジャクシにとってみればまさに青天の霹靂、進撃の巨人現る、といったところでしょう。 十:蝌蚪にしてみれば、子供の足も巨大ですね。 村:村:ファンタジックだが残酷な面もある。 水:子どもでもガリバー。 香:ガリバーとはおもしろい!)

●霾るや陸奥が浜辺の忘れ舟=やんま
◎修、紅○ぶ△し、香=10点
(修:すぐフクシマを想像、和歌のしらべのよう。 紅:墨絵を見るようです。手練れの方の作品かと・・。中七の「が」にしびれました。 ぶ:どこがどういいのか私にはわからないんだけどたぶんすごい句だと思う。 し:忘れ舟が雰囲気だしています。 香:砂埃のつもった舟、中国やロシアからの黄砂も。)

●手に紙を繰らぬ読書や春惜しむ=ラスカル
◎ま○秋△村、砂、喋、久、メ=10点
(ま: 場面が二つ浮かんできました。今時のネットでの読書なのか、または別の理由か。季語と響き合いますね。 秋:でも私はやっぱり紙の本がいいな。 村:現代を詠んでいる、私はなじめぬ旧世代人なり。)

●連弾や朱夏へと向かう風のごと=秋波
◎葱、ス○紅△虹、メ=10点
(葱:爽やかなスピード感に惹かれました。 紅:どんな曲か気になります。中七から下五のリズムがいいですね。 虹:「健気」と「青」が呼応。 )

●ガリ刷りの学級新聞昭和の日=雪絵
◎香○資、秀、清=9点
(香:小学校のガリ切り思い出すなー。 資:平成ですらあと一年。さらに昔の昭和の懐かしい風景。 秀:「ガリ刷りの学級新聞」懐かしいです。 清:確かにガリ刷りは昭和の象徴。)

●軒下に吊るす自転車夏めきて=秀子
◎久○葱、ま△十=8点
(葱:夏休みや夏の旅を連想させてくれます。若者やバックパッカー相手のゲストハウスといったところでしょうか。 ま:軽くて素敵な自転車なのでしょうね。夏を待つ気分が伝わってきます。 十:類句がありそうですが、初夏の雰囲気が伝わってきます。)

●一瞬の目つき鋭くなる聞茶=虹魚
◎ぶ○雪△十=6点
(ぶ:一瞬をこれほど的確に切り取った俳句を読めて幸せ。 十:「聞き茶(嗅茶)」は新茶を選別する作業で、「利き茶」は銘柄当ての遊びだとか。この句は仕事師の目ですね。)

●しばらくは喃語の会話春の虹=水音
◎喋○虹△裕=6点
(虹::喃語で会話になるという可愛らしさ。 裕:すくすく育つ赤ん坊と春の虹の取合せがいいです)

●道化師は衣装を脱ぎて花は葉に=清一
○葱、資、水=6点
(葱:衣装を脱ぎ、化粧を落としたピエロに注目したところが秀逸! 水:祭りの季節は終わった。)

●逃水や麒麟の首のよく伸びる=清一
○砂、水、秋=6点
(水:逃水を見ているのか、故郷を思っているのか。 秋:麒麟とは参りました。取合せが秀逸と思いました。)

●二の腕に走る血管夏隣=ぶせふ
◎淳△紅、茶、メ=6点
(紅:半袖から見えるたくましい腕、筋トレでもされているのでしょうか、 茶:「夏」 に走る!といったイメージが衣更えした服装にもかなっていると思いました。)

●花吹雪あつといふ間に家が建つ=まさこ
◎虹○十△五=6点
(虹:カパーフィールドのマジックの如し。 十:最近のプレハブ住宅は、ほぼ工場で仕上げるので組み立てるだけですね。口語的リズムがいい。 五:時間の経過を表しているのだろうか?花が咲こうとしている頃に棟上げして、散るころには完成?)

●遠足の列に我が子を探す母=五六二三斎
◎子○淳=5点

●石楠花に触れし指もて愛の文=砂太
○メ△子、虹、紅=5点
(虹:なんと清楚な。 紅:なんとロマンティックな・・。)

●チューリップ腹が立つても真つ直ぐに=清一
◎村△資、喋=5点
(村:自分の心理とチューリップの立ち姿が哀しく素直に詠まれている。 資:真っ直ぐな姿勢がチューリップらしい。)

●盲導犬じつと見上ぐる藤の花=十志夫 
◎裕○淳=5点
(裕:主人の足元でじっとしている盲導犬の様子が浮かびます。)

●山葵生う水一点の穢れ無し=白馬
◎秋○虹=5点
(秋:山葵は清流でしか育たない。初夏の清々しさが伝わります。 虹:そのまま飲めるほど清らか。)

●青葉満ち空北角に残るのみ=久郎兎
○香△五、し=4点
(香:空北門に残るのみ この発想がしゃれてる。 五:北の方角だけは空が広がるという実景だろうか? し:山歩きをしてふと見上げるとよくこのような空をみて感動します。)

●朝の日に口笛ひよと夏が来た=砂太
○茶、ス=4点
(茶:「ひゅうと」ではなく「ひよと」の擬音でいただきました。)

●引退の盲導犬や春深し=紅椿
○久△水、ス=4点
(水:もの悲し気な目の犬は何をおもっているのか。)

●春の月真珠抱かぬ真珠貝=水音
○ま△葱、秀=4点
(ま:真珠貝になった気持ちで想像してみて、魅かれました。春の月の朧な感じと合っています。 葱:季語の斡旋にやや疑問符が残りましたが、、。 秀:ぽかんとした不在感、どこか春の月に響いていると思いました。)

●春の星指笛鳴らす羊飼ひ=葱男
◎や△ま=4点
(や:夢と現に浪漫漂う。 ま:羊のいる広大な平野に降り注ぐ星々、春草の匂いとともにせまってきます。)

●藤棚や四人であやす産着の子=十志夫
△資、雪、ラ、ぼ=4点
(資:手のかかる子を藤の花が優しく見守る。春らしい風景。 ラ:母親と父親、そして祖母と祖父の四人でしょうか。 ぼ:よきかな、日本らしい、この景。)

●男手が瓶を開けたり忘れ霜=虹魚
○ぶ△裕=3点
(裕:よくある光景と忘れ霜が面白い。 ぶ:男とは実にかようなものなのであります。)

●蛙鳴き鳥鳴きときにチャイム鳴る=修一
△子、喋、茶=3点
(茶:自分は小学校近くの田舎住まいなのですが、まさにこの状況です。語調もリズミカルでよいと思いました。)

●住宅街にパン屋の車日永し=修一
○十△淳=3点
(十:時々見かけます。季語が即かず離れずでいいですね。)

●春天や黒髪写す水鏡=しゃが
○子△修=3点
(修:情念というかエロスというか怪しさを感じます。)

●疎に密に鴨の遊ぶよ春の川=砂太
△十、紅、茶=3点
(十:一読してやや硬く思えた上5ですが、鴨の様子を上手に伝えています。 紅:景がはっきり浮かびます。季重なりは気になりません。 茶:「疎に密に」自由奔放な川泳ぎは愛嬌もあり、羨ましくもあり。)

●特急の通過待つ駅山笑う=香久夜
△葱、ま、ぼ=3点
(葱:山村の無人駅でしょうか? 都会とは違う、ゆったりとした時間の流れを感じさせてくれます。 ま:ちょっと寂れたホームから見える山が美しいのでしょうね。 ぼ:狭い日本、何急ぐ、山と一緒に笑いましょう。)

●春疾風今度は誰が攫はるる=秀子
◎メ=3点

●春病みて水切り石の届かざり=やんま
◎資=3点
(資:春なのに,届かざりが何かせつない。)

●絮飛んでたんぽぽ組の頃の恋=秀子
○ぼ△葱=3点
(ぼ:何だか、ほのぼのして来る。 葱:幼稚園児も恋してる。)

●観能の居眠りをする単衣かな=裕
  △修、し=2点
(修:能を見なれてる人で、その場の空気も感じられます。 し:素敵なお着物でも能の眠気には勝てませんね。)

●五月雨の甘き雫に背伸びせり=久郎兎
○メ=2点

●シャボン玉ひとつひとつに子らの声=メゴチ
○水=2点
(水:シャボン玉に子どもの声がまとわりついている愉快。)

●捕らわれて上目遣ひの寄居虫(ごうな)かな=しゃが
○ぼ=2点
(ぼ:ヤドカリでなくゴウナだから、いい。面白い。)

●何もかも丸まつてゐる春疾風=紅椿
○ス=2点

●猫の目も三日月になる鰹節=子白
△清、秋=2点
(清:大好物の鰹節三日月になる比喩が面白い。 秋:たしかにおねだりしてミャアとなく時は三日月型。その観察と表現が活きてます。)

●ネモフィラの逃水となる今日の風=入鈴
○し=2点
(し:みはらしの丘かしら?ネモフィラの逃水なんて、一度見てみたいです。)

●花馬酔木不良名乗りし人の逝く=茶輪子
△雪、ぶ=2点
(ぶ:愛された人なんだなってわかった。)

●花は実に読んでは破る日記帳=まさこ
○村=2点
(村:過去に毅然とけりを付けているのかも。)

●蘖の健気に伸びて空青し=白馬
△清、虹=2点
(清:蘖の様子そのものをリアルに表した句。 虹:「健気」と「青」が呼応。)

●南から順に橋の名花菜風=葱男
○村=2点
(村:堤を河口から上流へ橋の名をたどり、季語が気持ちよさを。)

●涅槃図は媚薬の匂ひ放ちたる=ラスカル
△十、久=2点
(十:媚薬の匂ひに納得。)

●黙祷の球場空に鯉のぼり=五六二三斎
△修、砂=2点
(修:静けさが身に沁みます。)

●行く春のものみな片方だけとなり=十志夫
○修=2点
(修:無常の風吹きて。)

●龍となる飛行機雲や春夕焼=やんま
△秀、ま=2点
(秀:「龍となる飛行機雲」この展開にはびっくりしました。「やられた!」と思いました。 ま:赤く染まった空に龍が見えたら元気を貰えますね、美しい。)

●会話なき食卓に出る茗荷竹=ぶせふ
△修=1点
(修:きっといい香りだねとか言いそうです。)

●隠れたい時もありけり葦の角=虹魚
△淳=1点

●駆ける児の一歩一歩やたんぽぽぽ=入鈴
△砂=1点

●紙風船破れ阿鼻旨に燃え尽きぬ=しゃが
△裕=1点
(裕:紙風船と阿鼻旨の取合せが面白い。)

●ギター弾く人に寄り来て春惜しむ=雪絵
△や=1点
(や:同し空間気配共有。)

●出自なら薊は自虐針地獄=久郎兎
△秋=1点
(秋:たしかに針地獄。薊にとっては防衛手段。)

●遠き日の告げざる恋やさくら貝=ぼくる
△修=1点
(修:同窓会のとき浦島太郎になった気がしたことを思い出しました。)

●夏近し交わす言葉に熱こもる=メゴチ
△淳=1点

●花韮に溢れゆれをり真昼星=入鈴
△し=1点
(し:花韮の花は星のようですね。真昼星がいいですね!)

●春愁ひとえ瞼になりにけり=白馬
△ぶ=1点
(ぶ:漢字とひらがなの配分が絶妙。)

●約束はすべて忘れて春は逝く=ぶせふ
△清=1点
(清:約束なんか徒に覚えていると夏に移らないのでしょうね。)

●若草を食む音高しヌートリア=修一
△子=1点

●私ゆえ仕方のないというミモザ=茶輪子
△ぶ=1点
(ぶ:どうしても捨てるわけに行かないと思ったw)


A部門入選作〈back number〉

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