*A部門入選作発表*


当季雑詠=全89投句(入選61句)

【特選】

一席
●花の冷ゆるりと動く聴診器=十志夫


◎資○清、ま、秋、入△や、水、メ、ス=15点
(資:何か気になることがあるのか,慎重な診察風景。花冷えが何かを暗示しているようだ。 清:花の冷えにひんやりとした聴診器取り合わせの妙。 ま:聴診器の冷たさが伝わってきます。や:一病友にけふも息災。 水:聴診器を手で温めてから使う心遣い。今日は正に花冷えの日。)


一席
●夕桜つくづく男やもめなる=ぼくる


◎秀、入○十、葱、ぶ、五△白=15点
(秀:理屈ではなく、胸に沁みました。 十:お気持ち察します<笑>。季語も決まっています。 葱:ひとり身の男のペーソスがつくづくと身に染みて愛おしい。 ぶ:(参りましたという感じ、そうそう作れる俳句ではないと思った。 白: 「つくづく」が効いている。)


三席
●クレヨンで書かれしメニュー花菜風=ラスカル


◎ま○水、メ△十、雪、裕、し、修、ス=13点
(ま:ランチに行きたいお店です、季語と合って明るい色のある句になっています。 水:クレヨンの掠れや柔らかさ、花菜風の心地よさ。イタリアンでしょうか。 十:手書きの柔らかさが伝わってきます。 雪:この一句から色んな春色を思い浮かべました。 裕:おしゃれでいいです。 し:メニューだけでもとても美味しそう。季語が効いていると思います)


【入選】

●しやぼん玉割れて青空新しく=秀子
◎砂、虹○ス△子、ぶ、五=11点
(虹:割れてお終いではなく、新しい空間ができる。 ぶ:言われてみると本当に新鮮な空が見えた。)

●大空や太古の頭して土筆=入鈴
◎水○葱、茶、喋△白=10点
(水:太古の頭ねぇ なるほど。 葱:朴訥で大らかで楽しい句。 茶:誓子の「つきぬけて天上の紺曼殊沙華」を想起させるような大きな世界観の御句だと思います。 白:土筆の姿がそんなふうに見えた。)

●買い替へし箸の軽さや囀れり=まさこ
○村、水、修△や、雪、茶、ぶ=10点
(村:日常の何気ないよろこび。 水:箸の軽さに心まで軽くなったような気分。聞こえてくる囀りのように。 や:背中の荷物軽き旅する。 雪:箸と囀りがよくマッチしている感じです。 茶:箸と嘴、重さと声の形状や質量、音といった様々な要素を軽く表現なされている点が見事だと思いました。 ぶ:春の朝の食卓風景が目に浮かぶ。)

●近道は草の細道花の雲=砂太
◎子○喋、資△十、葱、修=10点
(資:人知れず爛漫に咲く桜を思い浮かべた。道のリフレインが良い。 十:道のリフレインが心地よい。季語も効いています。 葱:道のリフレインと季語「花の雲」の気持ち良さ。)

●春夕焼叱られし日のナポリタン=まさこ
◎茶、紅△虹、資、五、ス=10点
(茶:叱られ飛び出して、お腹を空かせて帰ったころに、大好物のナポリタンをお母さんが作って待っていてくれた。そんな夕焼色の思い出。ぐっときました。 紅:子供の頃の思い出でしょうか?好物のナポリタンをお母さんが作ってくれたのでしょう。季語が優しいです。 虹:べそをかきながら愛情のこもったナポリタンをすする。 資:夕焼けも,泣いた目も,ナポリタンも皆赤い。)

●表なる産着の縫ひ目初桜=雪絵
◎秋○し、修△喋、水=9点
(し:産着の繊細さと初桜が産まれたての赤ちゃんに良く合っています。 水:ン十年振りに産着を見るとああこんなだったととても新鮮。)

●バスを待つ桜吹雪のロータリー=資料官
◎清○子、村、裕=9点
(清:今年は一足早い花吹雪情景が良く浮かぶ佳句。 村:晩春ののどけさ。 裕:ゆったりと時間が過ぎていくようです。)

●ひとりづつ一つのベンチ鳥雲に=雪絵
◎十○ま、五△葱、入=9点
(十:寂しさと長閑さが並存する俳句らしい俳句です。 ま:ひとりひとり、何を想っているのでしょう。。 葱:いい句だけど語順を変えるともっと分かりやすくなるような気がします。「鳥雲にベンチに人のひとりづつ」ではどうでしょう?)

●まつさらの手帳の中で大朝寝=資料官
◎雪、久○入△秋=9点
(雪:これは作者の願望?それとも現実でしょうか。三月に退職し、四月からまさにこの句通りの友人がいます。大朝寝してるのかなぁ。)

●有り余る男の時間荷風の忌=十五
○十、秀△砂、雪、久、ま=8点
(十:着流しの荷風の風貌とピタリです。 秀:荷風って、そんな感じですよね。 雪:いかにも男性の句ですね! ま:実感であるようなないような。男の時間が効いています。)

●赤信号を突っ切ってゆく恋の猫=裕
◎白△十、砂、久、し=7点
(白:恋は盲目轢かれぬように。 十:恋は盲目ですから、赤も青も関係ないのでしょう。とぼけた必死さがいいい。 し:走り出した恋は止められませんね!)

●朝ざくら紅一点の剣道部=紅椿
○葱、や△十、香=6点
(葱:季語の斡旋が見事! や:凛とした声が耳に突き刺さる。 十:青春の一コマでしょうか。 香:朝ざくらがキリッとした空気を表しています。)

●お日さまの大きく熟れて夕霞=ぶせふ
◎喋、メ=6点

●車椅子押す腕の皺夕ざくら=弧七
○裕△茶、村、メ、香=6点
(裕:厳しい老々介護に一抹の光を感じるようです。 茶:「皺」という人生の日暮れの象徴が「夕ざくら」とうまく取り合わされていると思います。 村:「皺」の物語性をあれこれ。 香:夕ざくらがぴったりです。)

●春眠や顔の無い絵に引き込まれ=しゃが
○村、メ△十、秀=6点
(村:寝ぼけ?ぞくっとする恐さ。 十:夢って、いつも不条理ですよね。 秀:怖い〜〜。)

●知らぬ顔しつつまことの桜人=虹魚
◎ぶ、五=6点
(ぶ:このような人に私もなりたい。)

●ものの芽の怪獣に似て天を指す=白馬
◎修○し△秋=6点
(し:怪獣がいいですね。面白い。)

●幼ならはプロレスごつこ父を焼く=修一
○香△十、ま、葱=5点
(香:斎場では、子供たちがはしゃぐ光景がよくあります。それに救われることも。「な」はいらないですね。 十:無季ですが、とても切ない句です。 ま:季無しの句。お寂しくなりましたね、子どもにとってはどんな時間なのでしょうね。 葱:山頭火の抱え持つ悲哀と自虐に通じるものを感じました。)

●狛犬の阿吽を過ぎる落花かな=ぼくる
○久、秋△葱=5点
(葱:阿吽と落花がとても良く響き合っているとおもいます。)

●囀りや平安京の空広ぐ=清一
○茶、香△水=5点
(茶:「広く」ではなく「広ぐ」の措辞でいただきました。 水:全方向から囀りが聞こえそう。 香:「広ぐ」と、動詞を使うと迫力がうまれますね。)

●探せどもひとつ足りない春北斗=白馬
○秀、資△秋=5点
(秀:北斗七星の1個が見つけられないのは春ならではのことで、納得できる。)

●四月馬鹿もやし発芽をとこしへに=十志夫 
◎や△秀、喋=5点
(や:人目憚り愚直なままに。 秀:ブツブツ感が、残念!)

●春の月過る機影のアンダンテ=入鈴
◎ス△葱、虹=5点
(葱:絵になりますね、ロマンチック! 虹:飛行機のスピードを音楽の速さで示した面白さ。)

●凍返る母と触れたる父の顔=修一
○白△裕、紅=4点
(白:寒いわねと腕を組みにきた。吃驚した。 裕:「北の桜守」を思い出しました。 紅:無季の2句も同じ作者だと思うのですが、とても心にしみるお句でした。ご冥福をお祈りいたします。)

●占ひの当たりさうなり春の月=水音
○砂、や=4点
(や:自分探しは東への旅。)

●小走りのサラリーマンや葱坊主=裕
○ぶ△清、久=4点
(ぶ:なんともユーモラスで切実な風景。 清:新入社員の遅刻を仕舞いとの必至の小走り。)

●西行の硯の水の桜かな=ぶせふ
◎葱△子=4点
(葱:いかにもそれらしく、格調高く、無常感がある。)

●日直の腕章ま白チューリップ=紅椿
◎裕△ま=4点
(裕:新入生の初々しさを感じます。 ま:そういえばありましたね、日直の腕章白でした。)

●目が覚めてまだ恋猫になりきれず=ラスカル
○砂、紅=4点
(紅:猫を飼っていないとこの感覚はわからないです。)

●「イマジン」歌ふ路上ライブや鳥雲に=ラスカル
△秀、や、裕=3点
(秀:「イマジン」の手柄。 や:永久の平和を心に誓う。 裕:「イマジン」と「鳥雲に」の取合せが面白い。)

●大雪の去りて張りたる月の弦=白馬
◎香=3点
(香:月が出たことを「弦を張る」と表現しているところが好きです。)

●奥のおくその奥のおく春満月=ぶせふ
◎村=3点
(村:「おく」のリフレインが宇宙をしっかり捉えているよう。)

●漉餡を舐め春愁の終ひたる=虹魚
○雪△ま=3点
(雪:案外そんなものかとも思ったり<笑> ま:上質のあんこだったのでしょう、気持ちがなごんで良かった。)

●菜の花忌カーナビの道途切れたり=十志夫
○久△村=3点
(村:導かれてきたがこれからは自力でと決意したか。)

●春疾風玄界灘に心の帆=砂太
○雪△香=3点
(雪:玄界灘で亡くなった友が、まさに「心の帆」として、私の中でも生き続けることでしょう。 香:風、玄界灘、帆と、白髪鴨さんが偲ばれます。)

●憂うつな靴春泥をひた歩む=清一
◎し=3点
(し:春は明るい気持ちばかりではありませんね。)

●朧夜の恋の媚薬を少し増す=やんま
○清=2点
(清:朧夜に恋心を増す媚薬を放つ佳句。)

●革命と恋に目覚めし桜かな=葱男
○白=2点
(白: 大学一年生か、二年生か。)

●子らのこゑ薺の花のかぎりなし=葱男
○虹=2点
(虹:薺を中心に情景と音が広がる。)

●さくらさくら遠き昔のよく透けて=秀子
△葱、雪=2点
(葱:満開の桜の花の隙間から遠い風景の記憶が立ち上がるようです。 雪:芭蕉の句「さまざまのこと〜」をふと。)

●さまよへる星とならばや花の夜は=ぼくる
○紅=2点
(紅:花の夜ならではですね〜)

●春宵やキュビズムに崩(く)ゆ古代面=しゃが
△葱、茶=2点
(葱:古代面が崩れてゆく様をキュビズムと捉える感性が新鮮です。 茶:中七がシュールで古代面に「崩ゆ」の古語のマッチングもよいと思います。)

●送別の日にやはらかき双葉かな=茶輪子
○子=2点

●散り初めし桜一輪髪飾り=子白
○虹=2点
(虹:ひらひらと舞い落ちて髪にふわっと乗ったんですね。)

●花筏果ては黄泉へと流れつく=葱男
△清、紅=2点
(清:花筏が黄泉の国に流れていくというファンタジーの世界。 紅:言い切った所がいいですね。)

●春の風足裏にやはらかき息吹=まさこ
△メ、五=2点

●飛花落花体内とほる微電流=水音
  △修、ス=2点

●病床に春連れ集ふ子らの声=メゴチ
△し、入=2点
(し:子供達の声だけで気持ちが明るくなりますね。)

●満開の花に万才すべり台=五六二三斎
△虹、資=2点
(虹:すべり台のてっぺんに登ると桜に手が届きそうになる。 資:バンザイして滑り落ちたら真上に桜が。)

●青空へ帰りたいなと椿落つ=砂太
△喋=1点

●アラビアの歯形の小瓶蛇出づる=しゃが
△ぶ=1点
(ぶ:よくわからないけど、蛇使いがゐそう〜。)

●風光る窓辺に寄する車椅子=香久夜
△清=1点
(清:春光を浴びたしと車椅子を窓辺に寄せる詠者。)

●三味線に囀り混じる先斗町=清一
△子=1点

●段丘をとんと河原へ水草生ふ=十五
△紅=1点
(紅:動きが見えます。)

●入学の日にぽくぽくと木魚かな=茶輪子
△白=1点
(白: このアンバランスが何となく可笑しい。)

●春暮るる太宰好みの跨線橋=資料官
△入=1点

●寄り添へる夫婦の句碑や花こぶし=雪絵
△砂=1点

●ワーキングメモリいづこや春暖炉=茶輪子
△資=1点
(資:老いと春暖炉を並べた面白さ。)


A部門入選作〈back number〉

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