*A部門入選作発表*


当季雑詠=全84投句(入選60句)

【特選】

一席
●少年が兄となる日や草の絮=まさこ


◎十、清、ぼ○砂△ラ、久=13点
(十:5〜6歳の男の子。妹か弟が生まれるので、少しは兄貴らしくしないと。素直な一句。 清:甘えていた少年が兄となって、少し大人びたところを草の絮で表現する佳句。 ぼ:新しい命の誕生に、草の絮がよく呼応している。 ラ:類句があるかもしれませんが、やはり心惹かれます。)


二席
●アンテナを宇宙へ広げ曼珠沙華=しゃが


◎香、水○久△十、ぼ、秀、紅=12点
(香:アンテナという表現がおもしろく、空でなく宇宙というところが大きい。 十:まさに電波をからめとるアンテナのような花の形。 ぼ:見立てが新鮮で、現代的。 秀:曼殊沙華のとらえ方が、ステレオタイプでないところに好感。 紅:「曼珠沙華」と「宇宙」との取り合わせは新鮮です。)


二席
●郵便受に遺る父の名秋の虹=十志夫


◎砂、淳○茶△虹、秀、秋、香=12点
(茶:整理すべきものと、整理しきれぬもの、その狭間の整理しないで置くもの。できればそのままで。 秀:亡くなった父の名の表札だったら、もう、何度も見ましたが「郵便受」がユニーク。 香:虹をもってきたところが憎いです。遺しておきたいです。)


【入選】

●鷹渡る五島のすべて見下ろして=五六二三斎
◎虹○ぼ、紅△や、葱、砂=10点
(虹:何とも雄大な一句。 ぼ:何とも 気持のよい句。鷹の気分になった。 や:それを口を開けて見ている人間。 葱:気持ちの良い句ですね。)

●木洩日の濃く浅くして朝の秋=入鈴
◎メ○十、秋、香=9点
(十:「濃く薄く」でなく「濃く浅く」としたところが秀逸です。 秋:中七が言い得て妙。 香:木漏日の表現がとてもいいです。)

●釈迦牟尼は美男供物の桃ふたつ=砂太
○葱、紅、五、資△秀=9点
(葱:ありそうな句ですが、聖と俗のあわひに人間の心の襞を感じます。 紅:作者が鷹になった気分で詠んでいる、大きな景。 秀:お釈迦様が美男は定番だけど、桃ふたつで俄然おもしろい。)

●小さき嘘大きな嘘となる夜長=十志夫
◎ま○虹、砂△香=8点
(ま:夜長の心情がよく現れています。私にもよーくわかります。 虹:想像が膨らむ。 香:喋れば喋るほど、、、ということ?夜長をもってきたところがおもしろうです。)

●読書の灯消して始まる夜長かな=裕
◎資○雪△ぼ、淳、水=8点
(雪:眠れない夜はまさにこのような。 ぼ:余韻を楽しんでいると解します。豊かな時の流れ。)

●熊手して朝の目覚めの音を寄す=ぶせふ
◎茶○秋、し=7点
(茶:朝早くからの働き者さんですね。下五がよく働いています。 秋:朝の静かな空気感。音を寄すとは素敵な表現です。 し:朝の気持のいい音ですね。)

●後円の崩れし古墳曼珠沙華=水音
◎や○ぼ△裕、し=7点
(や:墓場には曼殊沙華が似合う。 ぼ:古墳とは。大きな墓と取り合わせましたね。 裕:さびれている感じがとても伝わってきます。 し:古墳と曼珠沙華とても合いますね。)

●墓洗ふ飛沫ぴしりと頬を打つ=ラスカル
○子、淳、資△茶=7点
(茶:修行感覚でしょうか。死者からの叱咤激励を受容する感覚に共感できました。)

●ふるさとは時の止まりし星月夜=裕 
◎子○虹△清、メ=7点
(虹:故郷は故郷のまま。 清:確かにふる里は永遠の思いでの中にあり、時が止まっているようだ。)

●ラジカセのテープの弛み運動会=紅椿
◎葱○メ△や、久=7点
(葱:上手い視点ですね、ユーモアがあり、ほのぼのとしています。 や:練習の日々を経ての本番である。)

●自づから秋風を呼ぶ馬上かな=ぼくる
◎五、し=6点
(し:颯爽と馬に乗る様子がカッコいい。)

●素通りの宅配便や敬老日=紅椿
○メ、五△ラ、砂=6点
(ラ:何か届くかと、期待して待っていたのですね(笑))

●唐黍食む水平線を巻き込んで=十志夫
◎久○茶△ま=6点
(茶:「水平線を巻き込」むという、シュールな点にいただきました。 ま:広々とした海に向かって大きな口を開けて、巻き込んでが良いですね。)

●ばんざいは寝落ちのサイン涼新た=雪絵
◎裕○十△し=6点
(裕:腹を上にして万歳しているのは何も警戒していない猫と言います。気候も良くなり、気持ちよく寝ている景が素敵です。 十:何も恐れない無垢な赤ちゃんの寝姿でしょうか。雰囲気出ています。 し:私もこのサイン分かります。)

●冷やかやじろじろじろと巻く竜頭=虹魚
○秀、し△ラ、水=6点
(秀:竜頭を巻く「じろじろじろ」の擬音がいい。 し:じろじろじろが気に入りました!!ラ:「竜頭」も、もはや懐かしい物となってしまいました。)

●秋雨の明朝体をつづりをり=葱男
◎ラ△メ、資=5点
(ラ:「明朝体」が、いかにも秋という感じがします。)

●水平器付きの文鎮月を待つ=葱男
○ラ、秀△資=5点
(ラ:そんな文鎮があるとは知りませんでした! 秀:文鎮で紙を抑えて、お習字でもしているのでしょうか。なぜ、水平器がついてるのかちょっと疑問ですが、水平器って、月を待ってることとかなり響き合っていると思いました。)

●露草の道より萩の道に入る=修一
○香△や、子、紅=5点
(香:道のリフレインがいいし、・・の道というのが好きです。 や:この道はさらに水音へと導いてゆく。 紅:秋らしい、静かなお句。色もいいですね。)

●苦瓜の葉裏に暮らし人嫌ひ=やんま
◎雪△ま、十=5点
(雪:中七の表現に惹かれます。 ま:グリーンカーテンのこちら側で、実はそうだったのですね。 十:日除け用に植えられたゴーヤー。日陰者生活が続けば人嫌いにもなろうか(笑))

●一日中ウインクをしてゐる案山子=ラスカル
△十、葱、裕、雪=4点
(十:現代的な形をした案山子の可愛い表情が伝わってきます。 葱:当たり前だけどとぼけた面白さがありますね。 裕:確かにそういう顔ですね。 雪:面白い発見ですね!)

●鱗雲クルーズ船より人の波=水音
○雪△茶、五=4点
(雪:まさにテレビの映像などでよく見る光景です。 茶:クルーズ船の収容人数と鱗雲の大きさとのマッチングが微妙のようにも思いましたが、取り合せは妙です。)

●銀漢を残らず映しとり神戸=秀子
◎紅△葱=4点
(紅:神戸の夜景のとらえ方がダイナミックで素敵です。 葱:メリケン波止場に佇んでいるのでしょうか?)

●新涼や女車掌の声白し=資料官
○や△子、裕=4点
(や:声が白いと言う感性も秋の空気ゆえか。 裕:白い声って、どんな感じかな。)

●病院に病気友達秋うらら=やんま
◎秀△雪=4点
(秀:病院の待合室が老人のサロン化しているとは、もうずいぶん前から言われていることですが、「病気友達」という言い方には、もう少し明るい気分を感じました。 雪:病院がコミュニケーションの場になっている人たち。皆さんお口は達者ですね(笑))

●秋雨や犬と猫とのいる暮らし=子白
◎秋=3点

●勝手から人来たるらし秋風鈴=淳一
○や△子=3点
(や:気配からして誰かがすぐにわかる。)

●コスモスの匂ひ人参大嫌ひ=久郎兎
△清、茶、葱=3点
(清:コスモスの匂いとはと考えさせて、人参大嫌いと来る所がユニーク。 茶:「匂ひ」「人参」「嫌ひ」のi音のリズムがよいと思います。 コスモスの匂いって嗅いだことないけど、ひょっとして人参の匂いににているのかな? そういえば葉っぱの形も似てるし。)

●ムスリムのガイドもゐたり月の酒=ぼくる
○裕△秋=3点
(裕:ムスリムの方は、お酒は飲めないのでしょうね。)

●もう髪は染めない星がとんだから=秀子
○水△雪=3点
(雪:因果関係がここまでとぶとは(笑))

●六道の輪廻を尋ぬ曼珠沙華=五六二三斎
△虹、メ、し=3点
(し:曼珠沙華がとても効いていると思います。)

●秋茜群れて忠魂碑の孤独=砂太
△久、葱=2点
(葱:もの哀しい秋の風情。)

●秋うらら忍者列車の切符買ふ=茶輪子
△ラ、資=2点
(ラ:忍者列車、僕も乗ってみたいです!)

●秋澄むや幼な子話す中国語=修一
○裕=2点
(裕:予想外の外国語をしゃべられると新鮮ですが、小学校の運動会辺りの光景のようです。)

●秋刀魚焼く風は天下の回りもの=入鈴
○久=2点

●秋気澄む「余市蒸溜所限定」=葱男
○ま=2点
(ま:何も言っていないのですが、すきっとしたウイスキーの香りと美味しさが浮かんできます。)

●新涼や自転車並ぶ塾の軒=秋波
○淳=2点

●静けさの森に落葉と暮るる日と=砂太
○ま=2点
(ま:ちょっとさみしいけれど、日常をはなれ穏やかなやさしい時間に身を置いてみたくなります。)

●月代や魔女の箒のスタンバイ=水音
○葱=2点
(葱:「魔女の宅急便」を想い起こしました。)

●露草や半分青い朝の道=メゴチ
△ぼ、五=2点
(ぼ:朝ドラですね。遊び心が楽しい。)

●野分去る倉庫の土間に小さき穴=紅椿
○清=2点
(清:台風の後倉庫の土間に小さい穴があき、何かを失った消失感が良く出ている。)

●蓮の実の飛ぶ妖精のちりぢりに=まさこ
○清=2点
(清:詠者は蓮の実にファンタジックな思いを描く、ちりぢりが一抹の淋しさを醸し出す。)

●暴風の晴れて田んぼに曼珠沙華=香久夜
○子=2点

●名月や君の心の晴れたから=ぶせふ
△ま、清=2点
(ま:そうなのですよね〜よく分かります。 清:原因と結果を逆にして描く、然もありなん心象風景。)

●秋風や揺れる船上レストラン=雪絵
△十=1点
(十:かすかな身体の揺れとともに、うきうきした心持ちをも感じる。)

●秋雨に断捨離まずは一袋=香久夜 
△紅=1点

●いふなれば星に恋する虫のこゑ=ぶせふ
△秋=1点
(秋:言われてみれば、虫の声って横に広がるよりは上に上る気がする。)

●大風のさなかも虫は鳴いている=秋波
△淳=1点

●喝采の一枚桜紅葉かな=五六二三斎
△砂=1点

●黒潮へ空を広げる鰯雲=ぼくる
△五=1点

●秋天や数珠だけ持ちて旅に出る=裕
△香=1点
(香:お遍路さんか?)

●底紅や真つ赤な嘘を吐くをんな =清一
△ぼ=1点
(ぼ:怖いと言うべきか、可愛いと言うべきか。(笑))

●月今宵野暮な電線避けて撮る=白馬
△淳=1点

●鼻折れし鞍馬天狗や野分立つ=清一
△葱=1点
(葱:肩の力が抜けていて、諧謔味がある。)

●花野来てゆふべの夢へ戻りゆく=ラスカル
△十=1点
(十:花野の放つ「夢幻」な雰囲気がそうさせたのでしょうね。)

●蛇穴に人は布団に世は静か=白馬
△水=1点

●満月の波動マグマに満ちゆかむ=しゃが
△虹=1点

●椋鳥や防犯カメラ作動中=雪絵
△水=1点


A部門入選作〈back number〉

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