*A部門入選作発表*


当季雑詠=全87投句(入選55句)

【特選】

一席
●まだ僕は海月の骨を探してる=ラスカル


◎村、や、ま、し、ぼ○砂、葱、ぶ△清、秀、入=24点
(村:骨があるのか?不思議な寓意に満ちた、現代語表記もいい。 や:どうぞご勝手に。 清:夢を追うとの表現を海月の骨に托したのが良い。 ま:私も海月好き、なんだかとても魅かれました。 し:不思議な世界でとても気になりました。 ぼ:夢と目標は違う。これは正に叶わぬ夢を追っている。 葱:先月の、夜汽車から降りてくる青い水母を思い起こしました。同じ作者だと思いますが、私は今回の海月のほうにより惹かれました。「海月」がなんの暗喩なのかは読者の想像にまかせられます。 自分の心の中に「骨」を探すのか、亡き母のことか、戦場に散った英霊か、はたまた若き頃の失恋のお相手か? ぶ:最初、毎月だと思って遺骨を探している句だと思いましたが、海月だった。虹魚さん?w 秀:100%、詩ですよね。俳句にするには、せめて30%は、俳味を足さないといけないのかもしれませんが、とても、好きです。 入:不思議な海の底に曳き込まれそう。)


二席
●青梅雨や停学の子と焼くもんじゃ=ぼくる


◎葱、久、茶○ラ、ま、入、水、喋=19点
(葱:尊敬している仲の良い親戚の叔父さんでしょうか? 話を聞いて、気持ちを分かってくれる大人が傍にいるというのは若気の至り易い青年にとっては幸せなことです。 茶:具材がごちゃごちゃと入れ乱れてる「もんじゃ」と停学になってしまったことへの混乱がリンクしてます。 ラ:作者の温かい心が感じられます。きっとすぐに復学出来ることでしょう! ま:こういう時にもんじゃ焼きを一緒に焼くような関係が温かく、ほっと和みます。 入:もんじゃで解け行く蟠りもあるでしょうから。 水:腹を割って話をして分かり合えたのでしょう。未来は明るい。)


三席
●黄昏を串刺しにせり夏燕=水音


◎子、メ○清、紅、淳、香△砂=15点
(清:串刺しとの措辞が面白い。 紅:夕方の大きな景が 描けています。 香:ゆったりした夕暮れに、素早い燕の動きを詠まれた?串刺しに、、がすごい。)


【入選】

●弔旗のごと翅を曳きゆく蟻の列=ラスカル
◎ぶ、香○紅△清、茶、し、白、喋、メ=14点
(ぶ:写実を越えたシュールな世界。 香:弔旗と表現することにより、厳しさが表れる。蟻にとっては勝利の旗でしょうか。 紅:比喩が巧みです。 清:よく見かける光景だが弔旗のごとなる措辞が良い。 茶:弔旗と翅の共通性の発見に。 し:情景が面白いですね。蟻の満足気な様子が見えます。)

●白南風や折目正しくたたむ傘=紅椿
◎清、◯ま、水、ぶ△十、資、入=12点
(清:日常的光景の中に俳味を追求した秀句。 ま:爽やかな風のなか、きちっとした姿が気持ち良いです。  ぶ:和服の清楚な美人の生き方を思う。 十:関東地方は6月の梅雨明けでした。中7がいい。 水:例えば姿勢が良い着物姿の人(それは女性でも男性でも)そういう人がたたむ傘。 資:折り目正しく傘をたたむこころの余裕。 入:白南風で梅雨も折り目正しく終息?)

●実梅落つそろばん塾は路地の奥=紅椿
◎十、資○茶△葱、虹、水、メ=12点
(十:今でもあるのでしょうか。昭和の雰囲気がよく出ています。 資:なんと昭和なそろばん塾。落ちた梅を蹴飛ばして子らが塾へ通う。 茶:香しき昭和の風情も路地裏に追いやられ、いずれ消え落ちていく。そんな哀傷に。 葱:いかにも熟練者の俳句、という感じ。キッチリと仕上がっていますが、それだけにあまりオリジナリティを感じることはなく、人位どまりか。 虹:塾は行かなかったが懐かしい。 水:路地の奥からの賑やかな声と、実梅が落ちる微かな音が重なって。)

●入れ墨の腕の太さの極暑かな=水音
○十、秀、し、裕△ラ、白、ぶ=11点
(十:景が見えます。「みこし瘤」でもありそうですね。 秀: この比喩、見たことがありません。 し:季語がとても合っていると思います。 裕:今時、入れ墨というかタトゥーの違和感がなくなりましたね。 ラ:「極暑」から「極道」という言葉を連想しました。季語の使い方が巧み。 ぶ:視覚的にも語感的にも暑い!)

●白南風や庭師の貝の首かざり=まさこ
◎秀○村、や、裕△ラ、茶=11点
(秀:庭師さん、貝の首飾り、そして、白南風。とても、気持ちがいいです。 :村:洒落た今風の若い庭師の姿。 や:青白い男ではないだろう、麗人何を憂ふかの図。 裕:仕事焼けか海焼けか? ラ:女性の庭師?それとも男性の首かざり? どちらにしても珍しいです。 茶:趣味がサーファーだったりするCOOLな庭師さんを思い浮かべました。)

●香水やからまる金のネックレス=まさこ
◎五、水○秀△葱=9点
(秀:エネルギッシュで、まさしく夏ですね。 水:香水をつけて出かけようとしているのに、微かな苛立ちが。 葱:生理的な感覚に直接響いてくる句。少しフォーマルなシチュエーションか? 働き盛りのキャリアウーマンが仕事上の付き合いで正装している感じ。)

●黴の香や父の書斎の古日記=資料官
◎砂○喋、メ=7点

●口紅を引くシャレコウベ蛍舞ふ=ぶせふ
◎裕○白、ぼ=7点
(裕:不思議と魅かれました。 ぼ:異界に引き込まれたような、妖しき美あり。)

●夏木立窓枠ありて絵となりぬ=メゴチ
◎虹△久、ま、子、淳=7点
(虹:巧いことを仰る。 ま:避暑地の静かな夏の景が浮かんできます。)

●万緑の奈落や我が身縮みゆく=十志夫
○久、葱、メ△ぼ=7点
(葱:上五の措辞に惹かれました。 ぼ:この自然の圧倒的な力よ。)

●本一人スマホ六人冷房車=十五
○虹、五△ラ、紅、子=7点
(虹:ちょっと軽いが描写が巧い。 ラ:現代世相を的確に描写しています。 紅:あるある感いっぱいです。)

●紫陽花や写真にできぬ風の色=虹魚
◎白○入△水=6点
(入:妖気とか精気とかは写真にとどめられないですよね。 水:紫陽花に重ねて風の色が分かるなら、どんなにきれいな写真になるのでしょう。)

●口笛に駆けて来る犬青葉風=五六二三斎
○ラ、虹△砂、や=6点
(ラ:健康的で明るい句。こういう句を読むと心が安らぎます。 虹:亡き愛犬<ゴールデンレトリバー>を思った。 や:この爽やかさは命の喜び。)

●打水や絶海となる散歩道=茶輪子
◎淳○五=5点
(淳:びちゃびちゃになった道が想像できますね。)

●口笛で三オクターブ風薫る=五六二三斎
◎喋△ま、水=5点
(ま:すごいですね!爽やかな音色を聞いてみたくなりました。 水:口笛と風が絡まって。)

●黒南風の砂丘に立ちて海丸し=メゴチ
○清、村△や=5点
(清:黒南風の砂丘確かに海が丸く見えるような気がする。 村:下五が季語の陰鬱さを和らげている。 や:そして地球は勿論丸い。)

●袖先を折る仕草佳き半夏かな=入鈴
○し、香△茶=5点
(茶:中七のリズム、調子がいいです。 し:私は男の色っぽさを感じました。)

●ねじれ花きれいにねじて空へ行く=修一
◎入○喋=5点
(入:捩花の淡紅色と空の青がシンクロします。)

●蛍火や息を継ぐこと忘れゐし=秀子
○久△十、虹、紅=5点
(十:あまりの美しさ。 虹:静かに静かに見守っている様子が伝わる。 紅:さぞや、きれいな蛍火だったのでしょう。)

●みちのくの砂の嗚咽や浜昼顔=十志夫
◎ラ○砂=5点
(ラ:「嗚咽」という一語が利いています。合掌。)

●駆け込み寺梅雨の蝶々のまとひつく=まさこ
△久、十、ぼ、淳=4点
(十:北鎌倉の東慶寺。なかなか縁は切れそうにない(^^♪ ぼ:不幸な女性、あるいは 無念を抱く女性の化身か。)

●眼球の奥の虹彩ルリトカゲ=ぶせふ
○白△十、裕=4点
(十:「眼球の奥」が秀逸。 裕:眼球の奥の虹 がいいですね。)

●新聞配達の腕半袖の日焼跡=しゃが
△久、子、入、淳=4点
(入:そういう記憶があります。)

●夏つばき水琴窟の歌ひけり=修一
○資△し、喋=4点
(し:夏つばきと水琴窟の取り合わせが美しいなと思いました。)

●別姓の表札掲ぐ薔薇の門=清一
○資△秀、ぶ=4点
(資:別姓の表札に色々な発想が浮かぶ。 秀:別姓の表札は、強い意志の形。薔薇の門も又。 ぶ:教養と格式高いお金持ちの家だと思う。)

●短夜やシャガールの馬宙を行き=ぼくる
△十、清、村、五=4点
(十:季語とうまく合っている。 清:幻想的なシャガールの馬、それが宙をゆくのが良い。 村:季語と絵の感じがあっているのでは。)

●目印の青きハンカチ胸に挿す=虹魚
◎紅△ぼ=4点
(紅:想像の膨らむお句。いろいろなドラマが生まれます。 ぼ:このさわやかな青春性。)

●子ツバメの巣を日々愛でし老夫婦=久郎兎
○淳△入=3点
(入:風情というものを感じます。)

●さみだれや「拉致」ポスターの赤き帯=十志夫
○茶△ま=3点
(茶:「赤」の象徴性が浮き上がって見えました。取り残された感がよく表れていると思います。 ま:赤き帯が印象的で重いですね。良いほうへ向くことを心より願います。)

●縄文の緋の漆や大地炎ゆ=しゃが
○子△ぼ=3点
(ぼ:そう、大地は太古より炎え続けて来た。)

●積乱雲ニライカナイはあの腹に=茶輪子
△資、入、ぶ=3点
(資:沖縄は早々と梅雨明,そういう風景。 入:沖縄で一番多く車を走らせ、印象に残る橋です。 ぶ:あの腹にでとらざるを得なくなりました。)

●手の中に粉粉の蝶昼寝覚め=秀子
◯葱△虹=3点
(葱:夢の現実のあわひの一瞬の幻覚。 虹:SFファンタジー。)

●時々に木魚の音も濃紫陽花=紅椿
○子△や=3点
(や:紫陽花は寺に良く似合う。)

●鈍行に本読み進む夏の果=十五
○十△入=3点
(十:遅い電車、早い読書・・・スピードの対比が面白い。 入:憧れます。)

●深皿の底の河童や夏の膳=葱男
△砂、十、裕=3点
(十:これに酒の「黄桜」が付けば申し分なし(笑) 裕:深皿には何が入っていたのでしょうか?)

●雷鳴や木樽を揺らすウヰスキー=葱男
△五、ぶ、香=3点
(ぶ:コマーシャルのコピーに使えそう。 香:何か味が変わるかも。)

●炎天や石の呟き父の墓=砂太
△葱、メ=2点
(葱:家族に愚痴をこぼさなかった立派な父上の事を思い出しているのでしょう。)

●川音にすすむ地酒や鮎の宿=ぼくる
△裕、ぶ=2点
(裕:こんな休みを取りたい。 ぶ:連れて行ってほしいです!)

●日雷ビリケンさんの金の髷=葱男
△秀、紅=2点
(秀:季語がいい感じについています。 紅:景が立ち上がりました。)

●昼寝していよよ伸びたる無精髭=ラスカル
○や=2点
(や:さて何日分の長さだろうか。)

●御仏と交わりし夢ネムの花=ぶせふ
△葱、香=2点
(葱:こちらは鮮度のある。まだ俳句になりきらぬ「俳」のエキスが詰まったアンソロジー。 粗々しい魅力があります。 香:幻想的な花。)

●蚊喰鳥憂き世の闇を炙り出す=清一
△白=1点

●草芝居狼役に梅雨明けぬ=茶輪子
△村=1点
(村:ほっとしている農閑期を想像。)

●山椒魚あの清水から旅立ちぬ=喋九厘
△ぶ=1点
(ぶ:旅立ちの鮮やかな印象。)

●人類の始めは裸夏兆す=やんま
△香=1点

●梅雨湿り汽罐煙るや博多港=入鈴
△五=1点

●バス待つや早く来ぬかと夏帽子=メゴチ
△入=1点
(入:トトロの一場面がありありと。)

●一夏の麦わら帽子百八圓=久郎兎
△村=1点
(村:現代風俗も色々切り取られる例。)

●紅型の暖簾くぐるや走り梅雨=秋波
△資=1点

●夕立に身を清めけり天邪鬼=やんま
△し=1点
(し:ぐっしょり濡れた天邪鬼がいいですね。)

●らっきょうの匂い甘酢に封印す=香久夜
△入=1点
(入:ちょっと臭いですが、それも美味さの秘訣でしょう。)


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