*A部門入選作発表*


当季雑詠=全81投句(入選59句)

【特選】

一席
●稲干すや胸にずつしり日の匂ひ=ぼくる


◎砂○ま、淳、し、メ△や、葱、修、雪、香=16点
(ま:日の匂いひにずつしり、という言葉の斡旋に魅かれました。良い匂いに包まれますね。 し:日の匂いがいいですね。稲穂の重さも伝わってきます。 や: ああ有難や日の光。 葱:秋分からこの時期にかけての稲刈りは気持ち良いですね! 香:稲穂の重さと暖かさを感じます。体験しないとこの言葉は出ないでしょうね。)


二席
●長き夜や古き写真に糊の痕=十志夫


◎秀、ラ、メ△葱、ぼ、紅、雪、裕=14点
(秀:このところ実家の片づけをしているんですが、実感ですね。懐かしいような淋しいような景色。 ラ:「糊の痕」が、とてもリアル。 葱:昔はアルバムに直接糊で貼ってましたね。 ぼ:アルバムから剥がして、別途保管している大事な写真。 紅:古いアルバムを開くと、何枚かの写真は外れているものもあって・・。季語が効いています。 裕:デジカメでは味わえない世界ですね。)


三席
●奧の間の般若の面や十三夜=清一


◎白○ラ、ぼ、水、雪△葱、虹=13点
(白:不思議な夜のひととき。 水:般若の面の妖しさは十三夜ならでは。十五夜では明るすぎる。 ラ:「十三夜」で、ぴたりと決まりました。 ぼ:十三夜故、この般若には凄みではなく、哀しみを感じる。 葱:ちょっと怖いけど雰囲気ぴったりです。)


【入選】

●かりがねやわが優しさの病んでゐて=葱男
◎や、ま○久、香△十=11点
(や: 傷つき易い性格は幼の頃より。 ま:中七下五がお見事です。わたしもです。 十:優しさと傷つきやすさは表裏の関係ですからね。  香:自覚されてるところが救いです。大空に癒やされる感じ。)

●小春日やあかごが寝付くほどの風=秀子
◎十、淳○資、香△砂=11点
(十:小春日の温み、赤子の肌あい、よぎる風・・・皮膚感で揃えている感覚句。 (淳:小春日の雰囲気が伝わってきます。 資:優しいおばあちゃんの句。)

●勾玉の記憶に月の都かな=水音
◎雪○紅、五△虹、し、裕=10点
(雪:勾玉に月をみる感性が素晴らしい。 紅:ロマンがありますね〜。 し:月の都ってどんなところだろう。 裕:神秘的な感じがいいですね。)

●大花野人それぞれの背中持つ=やんま
◎ぼ、資、紅○砂=10点
(ぼ:背中には各々の人生が滲み出る。それを大自然、花野が包み込む。 紅:中七、下五の内容が深いです。それを季語がしっかり受け止めていると思います。)

●逆さまに貼りし切手や蓮の実=まさこ
○砂、雪、水△清、茶、久=9点
(清:切手のスタンプのような蓮の実逆さまに貼ってある所に消印がある様子が見える。水:日常当たり前と思っていることから少しずれた感覚。逆さまの切手も蓮の実の形状も。 茶:花床の形状が逆円錐であることからの着想でしょうか。取り合せが妙だと思いました。)

●ポケットに探るのど飴文化の日=紅椿
◎五○十△や、清、ラ、水=9点
(十:季語「文化の日」と単なる「飴玉」という些末さのすらし方で成功している。 や:辛口甘口両党使いて。 清:色々な催し物のある文化の日の一日のど飴でも転がしながら鑑賞したいもの。 ラ:のど飴もまた、一つの文化ですね。 水:のど飴も文化なのかも。)

●老境は幼なに似たり猫じゃらし=やんま
◎水○茶、資△砂=8点
(水:無心で無邪気な老境もなかなか良さそう。茶:「境」と「幼な」。「老人」と「幼児」じゃ句になりませんね。措辞がよいと思いました。)

●朝寒や開けっ放しのクロゼット=茶輪子
○紅、ま、久△淳=7点
(紅:通勤前に慌ててコートを引っ張りだしたのかもしれません。朝の慌ただしさが伝わってきます。 ま:忘れてしまったのでしょうね、この後の物語をいろいろ想像させてくれます。)

●首長の恐竜食むや羊雲=水音
○し、裕△修、ま、メ=7点
(し:雲をみているといろんなストーリが生まれますね。 裕:のどかな秋を感じますま:映画や絵本で見た太古の姿が浮かんできます。厳しい世界なのでしょうが、こういう一瞬もまたあるのでは。)

●空晴れて猫の欠伸や稲の道=修一
○子、清、メ△秀=7点
(清:何処までも続く稲の道猫もその長閑さに欠伸をしている光景。 秀:とてものんびりした景色。猫もふあ〜〜んと欠伸。)

●芒が原一生分の風を聴く=葱男
◎虹○白△ま=6点
(虹:果てしない幅と奥行きのある秀句。 白:広い広い広野。 ま:壮大な芒原に立つと、そういう気分になりますね。)

●尾花散る色無き風に乗せられて=白馬
◎裕○子=5点
(裕:色無き風がいいです。)

●黄落や耳立てしまま犬眠る=やんま
△十、子、秀、ぼ、虹=5点
(十:聴覚の発達した犬にとっては、黄葉散る音すらも気になるのでしょうね。 秀:黄落の中でこんこんと眠る犬。耳が立っているからもしかしたら、起きてるのかもしれないとちょっと疑ってみたりもして・・・。 ぼ:静かな秋の情景。手堅い一句。)

●児の洟を拭く母若し秋深し=砂太
○秀、茶△白=5点
(秀:若し、深しのリズミが心地いい。茶:最近のママは「洟を拭く」といったイメージが薄いですが、やはり親は親ですね。 白:この子も立派に育つだろ。)

●小娘に惚れて入れ歯の秋の暮=子白
○白、修△淳=5点
(白:もう少し若ければ---。 修:ー作者が女性ならなおあはれ。)

●ゆふらりとバランスボール十三夜=まさこ
○葱、秀△水=5点
(葱:不思議な浮遊感。 秀:バランスボールなんて新しいものと十三夜というゆかしいものを 組み合わせたおもしろさ。 水:十三夜の緩い雰囲気。)

●レジ篭を斜交ひに座す深谷葱=久郎兎
○ラ△十、葱、資=5点
(ラ:「レジ篭を斜交ひに」で、その長さが見えてきます。 十:篭と葱・牛蒡との取合せは沢山ありますが、中7の「斜交ひに座す」が巧み。 葱:どうしても籠からはみ出しますね、でも、折れないし、、。 資:深谷葱の存在感を見事に表している。)

●秋白しつんつん尖る八ヶ岳=裕
○虹△や、五=4点
(虹:雪による鋭利なハイライト。 や:透明な空気感。)

●居酒屋にゾンビの集ふハロウィーン=ラスカル
○清△白、淳=4点
(清:元々はアイルランドから来たハロウィン日本に上陸して様変わりした風景。 白:変な人たちのワイワイガヤガヤ。)

●いわし雲五島より来る伝道師=五六二三斎
○裕△ぼ、香=4点
(裕:五島は世界遺産に入ってましたっけ? ぼ:切支丹と言われた時代か。想像を掻き立てられる。 香:はるばる船に乗ってやって来るのですね。)

●刈穂田の藁山放つ暖かさ=子白
◎香△葱=4点
(香:藁に陽が当たって暖かくなるんですね。収穫を終えた満足感も。 葱:陽だまりが藁に籠ってあたたかくて気持ち良いですね。)

●散髪の小さき庭に小鳥来る=メゴチ
○や、ぼ=4点
(や:空の頭に音符が弾む。 ぼ:昭和二十年代の景。女の子はおかっぱ、男の子は丸坊主で虎刈りも。)

●石蕗の花古希となりても母恋し=修一
◎茶△清=4点
(茶:身近かでささやかな母の存在と何年も枯れずに残る石蕗。素直な佳句だと思います。 清:幾つになっても亡き母親は恋しいもの、凜として咲く石蕗の花のように心に残る。)

●一口の番茶の熱き秋日中=砂太
○や、淳=4点
(や:賜る時の値千金。)

●ブローチのピエロの涙秋の海=まさこ
○葱△十、紅=4点
(葱:「海」まで飛んだところが良かった! 十:「秋の海」がやや安易にも思うが、多分ガラス製であろうピエロの大粒の涙が効いている。 紅:ブローチの中の小さな「ピエロの涙」を思い描くことができます。)

●紅葉かつ散り店先に金剛杖=ラスカル
△十、ま、久、し=4点
(十:観光地での「あるある」景ですね。 ま:紅葉のなかを歩いていくお遍路さんの白衣の姿がしっとりと伝わってきます。 し:金剛杖でどんな場所か分かりますね。)

●湯煙のゆらりゆらりと星月夜=裕
◎子△メ=4点

●紅き赤小樽運河の蔦紅葉=香久夜
◎清=3点
(清:運河沿いの倉庫に生える蔦紅葉、紅き赤の措辞が素晴らしい写生句の秀逸。)

●石段をホップステップ木の実降る=紅椿
△ラ、砂、水=3点
(ラ:健康的な句。元気を貰えます。 水:リズム感があって楽しげ。)

●狼のまつり楽しむ聲がした=虹魚
◎し=3点
(し:こういうイメージ好きです。)

●このままで終はりたくない薄紅葉=五六二三斎
◎久=3点

●銀匙に葉のレリーフや小鳥来る=ラスカル
△秀、雪、し=3点
(秀:やや綺麗すぎ。 し:秋ののどかなお茶の時間ですね。)

●マリンバの美しき撥にと木の実降る=入鈴
◎葱=3点
(葱:「撥」が効いています。)

●明治とはきのふのことよ露の玉=十志夫
○修△紅=3点
(修:粋だねえ。露の玉がきいてらあ。 紅:私の祖父母は明治生まれです。確かに明治は遠いようで、近いですね。)

●秋の夕整骨院で眠りこけ=淳一
△修、茶=2点
(茶:施術中でしょうか。「あるある」ですね。行きたくなりました。)

●無花果やアフリカを出しわが祖先=水音
○五=2点

●丘の上の我等若し運動会=メゴチ
△葱、ラ=2点
(葱:筑紫丘高校の校歌です。卒業生にしか分からないと思うのですが、歌うと「われえらわかし〜?」となり、七音なんですね。 ラ:丘ふみ句会へのエールのような感じがしました。)

●榠?の実硬き形に色づきぬ=秀子
○十=2点
(十:中7の「硬き形」という捉え方が上手。)

●黄落や不動の眼ふと和み=ぼくる
△葱、香=2点
(葱:秋うらら、不動明王の顔も優しく見えます。 香:そんな感じにおもえてくる。)

●霜降の阿蘇の原野に星を見る=喋九厘
○子=2点

●櫨の実の青き天井より垂るる=雪絵
○虹=2点
(虹:大判の絵が浮かぶ。)

●秋灯し父の形見の萬年筆=資料官
△茶=1点
(茶:萬年筆を遺される身が、自分としては羨ましい限りです。)

●安達太良に集ふ小鳥や原発忌=ぼくる
△久=1点

●いつまでも青春気分万年青の実=清一
△十=1点
(十:今や、60、70洟垂れ小僧という時代。季語の本意でなく、「万年青」という字ずらで取り合わせた俳句の革新性。)

●霧晴れて羊蹄山を仰ぎ見る=香久夜
△資=1点
(資:昔登った羊蹄山に一票。存在感のある名峰)

●草紅葉匂ふ遠出の程の良き=入鈴
△五=1点

●草紅葉老いゆく吾の悪しからず=入鈴
△葱=1点
(葱:誰に向かって「悪しからず」と言ってるのか、ユーモアがありますね。)

●浄生院義誉理順居士鳳仙花=葱男
△十=1点
(葱:45歳で亡くなった兄の戒名です。 十:戒名だけの俳句。「名誉」と「忠義」を重んじ、「理」に「順(したが)」って生きた人の姿が浮かぶ。)

●天を突く仏舎利塔や鷹渡る=清一
△子=1点

●投げ銭を待つ死神やハロウィーン=しゃが
△葱=1点
(葱:大道芸でしょうか? 死神が人間に媚びてるところが面白い。)

●廃線のレール遥かに蔦紅葉=香久夜
△白=1点
(白:まっすぐに伸びる線路。)

●火恋しや若きロルカのゐし舞台=しゃが
△五=1点

●故郷の山粧いて水清し=白馬
△裕=1点
(裕:綺麗な紅葉が目に映ります。)

●水木の実三つ拾いて掌に=白馬
△資=1点

●矢印を辿りて秋のみづうみへ=虹魚 △メ=1点

●ラフランスどこからメスを入れやうか=雪絵
△葱=1点
(葱:あの瓢箪みたいな形はたしかに皮を剥きにくい。ナイフでなく「メス」としたところが上手い!)


A部門入選作〈back number〉

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