*A部門入選作発表*


当季雑詠=全96投句(入選66句)

【特選】

一席
●水澄むや穴から沈む五円玉=十志夫


◎葱、遊、清、ス○朱、雪、水、ぼ△や、虹、ま、し=24点
(葱:そんな感じが確かに、、。 遊:観察句かイメージなのかわからないけど、不思議な宇宙の仕組みまで言い当てているようです。 清:観察はしたことはないがそのような気にさせる佳句。 朱:これも特選にしたかった。措辞が巧みで一番俳句的に成功している一句だと思いました。 水:「穴から沈む」という言い方ができるんですね。 雪:目のつけどころがおもしろい。穴から沈むんですね! ぼ: とぼけた味あり、水澄むも効いている。 や:穴は沈みません。 ま:確かに、穴から沈む、がぴったりきます。季語もきいてると思います。 し:面白い着眼点ですね。)


二席
●長女とは重たい鞄石榴熟る=朱河


◎香○や、智、葱、虹△遊、紅、茶=14点
(香:私は三女だけど、「重たい鞄」あるんだろうな。石榴、中に秘めたものがよく表されてると思います。 や:とどのつまりは一切引き受け。 智:長女の私は身につまされます。そして石榴は赤いのです。 葱:「重荷」と言ってしまうより「鞄」には愛情が含まれていますね。 虹:長女に対してはいろんな思いが入り混じる。 遊:真面目でいい子を運命つけられているような長子の気持ちを表している・季語がいい。 紅:自分も長女なので、共感できます。  茶:後継問題は皇族含め、悩ましいものですね。)


三席
●クレヨンの無心に描く豊の秋=裕


○子、資、ま、喋、五△葱、メ=12点
(資:無心に描くが良い。災害が多かった今年だけにことさら。 ま:子どもが描いているのが豊の秋、というちょっとミスマッチな感じがよいですね。 葱:描いているときは何も考えていないですね。いい時間です。)  


【入選】

●胡桃割る伏線多きミステリー=十志夫
◎朱○虹、秋、ス△や=10点
(朱:これは上手いなあと特選で頂きます。季語の選択が効いてますね。 虹:クルミを割るその音に手掛かりが?! 秋:季語の取合せが面白い。 や:難解は不可勧善懲悪佳しとする。)

●月光を浴びエジプトの猫となる=水音
◎ぼ、し○葱△十、朱=10点
(ぼ:幻想的で、ポエジーあり。クレオパトラも浮かぶ。 エジプトの猫好きなのでイメージにとても惹かれました! 葱:猫はその時代から人間のそばにいつも居て、人間の醜い闘争の歴史を横から眺めていたのでしょう。猫をこのようなイメージでとらえた句はあまりないように思います。 十:エジプトでは猫は「神」だとか。首をもたげた凛とした猫の佇まいが浮かぶ。 朱:「エジプトの猫」と言うのは面白いと思いストーリー性を感じました。)

●指でみるパスタの固さ小鳥来る=十志夫
◎紅○裕△ラ、久、清、ま、雪=10点
(紅:言われてみれば、確かにそうですね。身近な句材で、しっかりと句作されていて、すごいと思いました。裕:なにかわからないけど、秋日和の感じです。 ラ:「指でみる」に、実感がこもっています。 清:パスタを丁度良い食べ頃にするのが少し難しい。 ま:日常の中の、楽しい、やさしい気持ちが小鳥来ると響き合っています。) 

●足上げてくつをせがむ子大花野=雪絵
◎や、ラ△葱、香、水=9点
(や:この大自然に健やかに育て! ラ:ちょっと甘えん坊(笑) でも可愛い♪ 葱:じっとしていられなくなったのかな? 香:花の中を歩きたいんだね。大花野がいいですね。 水:駆け回って脱げちゃったんですね。)

●勲章は無し釣り人にゐのこづち=やんま
◎水、茶○香△村=9点
(水:ゐのこづちはとっても尊い勲章です。 茶:川釣りなのでしょう。草深い岸までの往復。二段切れが小気味よい調子です。 香:勲章とは大げさで、その代わりにゐのこづちが面白い。 村:言い切ったところと季語がいいと思う。)

●東京に秋の虹架け即位式=スライトリ・マッド
◎五○朱、紅△虹、雪=9点
(朱:新天皇への美しい挨拶句。雨で洗い流された空に現れた虹は神秘的でした。 紅:あの光景には驚きました。すぐに句にされるとは、俳人の鑑です。)

●ポケットの秋思の欠片弄ぶ=智雪
○久、村、清、雪△ス=9点
(村:きざっぽいがあれこれを読む人に誘う。 清:ポケットの中にある秋思、人様々。 雪:欠片でもなかなか思い通りにならない秋思。)

●読み書きを忘れたる母小鳥来る=修一
◎裕○資△智、朱、香、ぼ=9点
(資:小鳥来るに何か救いがある。 裕:小鳥に囲まれている童心に帰っているのでしょうか? 智:実感ですね‥小鳥来るが優しい。 朱:類想は確かにあるのですが素直に優しい一句だと思いました。 香:教師もやってた母ですが、手紙も書かなくなりました。 ぼ:童心に戻った、切なくも季語で救われる。)

●柿熟るる村に一つの杣の家=清一
○や、香△資、十、修、喋=8点
(や:終の住処に安住の日々。 香:「杣の家」が情緒があります。 資:昔ながらの村の秋の風景。 十:俳句特有の情趣あり。 修:昔親戚にちょっとだけ杣人だった人もいるけど、食っていけなかったよう。)

●渾身のジャッカル決まる月天心=葱男
◎智○ス△紅、香、五=8点
(智:あの日の興奮が蘇って来ますね。季語もピタリと決まっています。 紅:タイムリーで、気持ちの良いお句です。季語もピッタリです。 香:「ジャッカル」覚えましたよ!久しぶりに新しいことで興奮しました。)

●晩秋の候と記したまま夜更け=虹魚
◎久、秋△十、裕=8点
(十:秋の夜は、読書、酒宴など、やりたいことが沢山ありますね。 秋:書きかけて思案したまま筆が止まった景。書きにくい複雑な思いがあるのでしょうね。 裕:夜長も短い?)

●満開の白萩父の誕生日=五六二三斎
◎修○十△葱、村、朱=8点
(修:白萩がいい。お父上への尊敬の念が伝わってくる。 十:開花によって気づく「花と記念日との関係性」ってありますね。 葱:「白萩」がいかにも。 村:偲んでいるようにも。 朱:白萩が良いなと。高齢の御父様の品ある姿を感じます。)

●観音はマリアと似たり草の花=ぼくる
◎子○し△や、朱=7点
(や:わが東葛地域にマリア観音像のあり。 し:人が安らぎを求める顔は宗教を超えて同じなのかもしれませんね。 朱:「と似たり」が少し説明的だと思いましたが季語のセンスが好きだなあと頂きます。)

●おくれ毛にそつと触れたる十三夜=紅椿
◎始○メ△虹=6点

●ストローを上るタピオカ鳥渡る=水音
◎雪△紅、ぼ、茶=6点
(雪:今流行りのタピオカ、連なって上る光景を想像して楽しくなりました。 紅:これもタイムリー。行列まで眼に浮かびます。 ぼ:俳味あり、取合せが何ともいい。 茶:一列に行儀よく並んで飛ぶ鳥との取り合せ。着眼が良いと思います。)

●道標は西に傾き彼岸花=ラスカル
○喋△久、遊、メ、水=6点
(遊:人生の終末まで指示しているかのような…。 水:「西へ」が暗示するものと彼岸花の取り合わせがいい。)

●もう五時と立ち上がる母新豆腐=秋波
○ラ、遊△十、ま=6点
(ラ:夕餉の支度ですね。「もう五時と立ち上がる母」がとてもリアル。 遊:懐かしいホームドラマを見ているような暖かな気持ちになる。 十:日常のさりげない切り取りが巧い。 ま:こういう姿、見慣れています、新豆腐がまた良いですね。温かい気持ちになれます。)

●木犀や吾子に似る鼻似る瞳=香久夜
○裕、修、茶=6点
(裕:木犀を見て我が子を思い出しているのでしょうか? 修:お孫さん?木犀の香がおおらかに包みこむ。 茶:匂いまで似ていたりして。)

●月光のWi-Fiとしてピアニスト=葱男
◎喋○ラ=5点
(ラ:月光とピアノの取り合わせはよくありますが、この句はとても現代的!)

●現代音楽の音符無き譜や蚯蚓鳴く=しゃが
◎資○始=5点
(資:なんとなく面白い。音符のない楽譜が奇抜。)

●茶の花や打ち捨てられし畑の隅=遊歩
◎ま○子=5点
(ま:お茶の葉のために花は捨てられてしまうので、あまり目にしないのですよね。椿のような美しい白い花が悲しくも凛と感じられます。視点が素敵です。)

●どんぐりを拾ひ集めて捨てにけり=修一
◎十△葱、村=5点
(十:句意鮮明。拾ってはみたものの・・・の状況がよく伝わる。 葱:拾いたくなるけど、家に持ち帰っても邪魔になるだけなんだなあ〜^^; 村:丁寧すぎるがいかにも秋。)

●抽斗に眠るたまづさ酔芙蓉=茶輪子
○修△メ、秋、五=5点
(修:その時の言葉は文として生き続ける、その不思議よ! 秋:古風ですが、日本語の美しさを実感します。)

●草の絮青年はゆつくり歩む=まさこ
◎村△遊=4点
(村:句またがりもよく哲学的青年の像。 遊:句またがりだけど、不器用な青年が見えるようです。)

●心許なき秋霖の交差点=久郎兎
○智△十、朱=4点
(智:秋霖って何故心許なくさせるのでしょう? 十:やや難解だが、何となく納得させられる感覚的な句。 朱:秋の長雨の切ない光景が浮かびます。)

●はかどらぬ写真の嵩や雁渡る=雪絵
○久、茶=4点
(茶:散らばった写真がちょうど空に点在する群れのように。いつから断捨離や終活をこれほどまで気にしなくてはならなくなったのかなあ。)

●母の墓の麦藁蜻蛉まだ発たず=ラスカル
△智、葱、資、秋=4点
(智:麦藁蜻蛉はお母様の御魂でしょうか‥。 葱:思い、が胸にせまります。 資:自身を蜻蛉にたとえたか。 秋:墓前を立ち去りがたい心境。)

●光る度猫の固まる稲つるび=智雪
○メ△ス、し=4点
(し:猫も稲妻はビックリなんですね。)

●鬼灯や傷つけ合ふを恋と言ふ=朱河
◎虹△十=4点
(虹:一編の恋愛小説の最強ダイジェスト! 十:恋愛の本質を巧くついている。)

●マジパンのピンクの仔豚秋うらら=スライトリ・マッド
○秋△ラ、雪=4点
(秋:可愛いマジパンと季語がよく合っている。 ラ:とても好きな句ですが、「秋うらら」がちょっと安易すぎるかも。)

●木犀や吾子に似る鼻似る瞳=香久夜
○裕、修=4点
(裕:木犀を見て我が子を思い出しているのでしょうか? 修:お孫さん?木犀の香がおおらかに包みこむ。)

●赤とんぼ思い出だけが空を舞い=始祖鳥
◎メ=3点

●月しづか夜中の野外彫刻展=葱男
○遊△智=3点
(遊:月光と彫刻の音のないハーモニーを聞いているよう。 智:月しづかがいいですね。静寂の音がしそうです。)

●爪紅のひとつ弾くる掌=砂太
△資、修、始=3点
(資:ホウセンカの種のはじける感覚に同感。 修:なつかしい光景、生きている掌が感じられる。)

● 露草の青増す雨のひとしきり=五六二三斎
○村△ス=3点
(村:素直な自然描写。)

●フランスがイタリアとなる秋の雲=白馬
△葱、十、修=3点
(葱:雲の形の千変万化。 十:雲の変化(流れ)を国の形を借りて表現しているのでしょうね。 修:一瞬ギクリとするが、楽しいな。)

●一匹のツクツクボウシ鳴き止まぬ=淳一
○始=2点

●産声の澄みわたりける星月夜=香久夜
△清、喋=2点
(清:初孫が出来た喜びが溢れる。)

●影法師何を言ふたか秋夕焼=やんま
△始、喋=2点

●黄落や悲しき知らせ呑み込んで=ぼくる
○清=2点
(清:友人の訃報が届いたか黄落が効いている。)

●月仰ぐシートベルトを外しつつ=ラスカル
○十=2点
(十:ふと気づいた良夜に対する切り取りが上手。)

●天高し信楽焼きの狸の眼=白馬
△子、五=2点

●止り木や胡桃の襞の固き淵=秋波
○ま=2点
(ま:何も言っていませんが、心に何かを深く想っている姿が見えます。)

●冬支度させてやりたし泥の町=虹魚
○紅=2点
(紅:本当にそう思います。一日も早い復旧を願います。)

●ふるさとの廃駅標示鳥渡る=十五
△清、ぼ=2点
(清:地方はどんどん寂れる一方、鳥は人間社会とは別。 ぼ:ただ、ただ、憮然たり。)

●実紫どこかで水が漏れてゐる=まさこ
○水=2点
(水:実がぽろぽろと零れる様がみえます。)

●逝く秋や動物園のモノレール=資料官
○五=2点

●宵寒や微かにくゆる聞香炉=秋波
○し=2点
(し:とても美しい情景ですね。お香が香ってくるようです。)

●羅生門の老婆なるやも残る虫=しゃが
○ぼ=2点
(ぼ:哀れを誘う、不思議な情趣あり。)

●檸檬置くボードレーヌの詩が翳る=智雪
△子、遊=2点
(遊:梶井基次郎の短編小説を思い出した。)

●秋鯖やツ抜け狙ひてビシ落とす=メゴチ
△久=1点

●秋祭りみこしの前に店じまい=始祖鳥
△茶=1点
(茶:担ぎ手なのか観客なのか。いずれにせよ開けてられない。風情ですね。)

●拡散の文字の拡散夜長し=紅椿
△葱=1点
(葱:おそらくFaceBookの記事をシェアしようとしてる情景だと思いました。応援したり、深く共鳴したりするような記事がたくさんあります。)

●啄木鳥や皆極めたるその作法=虹魚
△秋=1点
(秋:正に。作法と言いたくなる程その動きは皆一様で巧み。)

●決まりそう人材派遣秋近し=淳一
△始=1点

●休日も残業のあり穴惑い=裕
△清=1点
(清:過労死しそうな穴惑い。)

●木守柿雲の行方を鳥にきき=遊歩
△裕=1点
(裕:のどかな田舎。)

●秋刀魚焼く煙立ちこめ高架下=裕
△ラ=1点
(ラ:昭和の頃はよくある風景でしたが、今は珍しい。

●全天の秋雲毫も動かぬ日=十五
△し=1点
(し:秋雲毫も動かぬという表現が面白いです。)

●だみ声の鳥の来てゐる朝の露=紅椿
△水=1点
(水:尾長が来たのかな。)

●月天心筆圧強く句を修す=砂太
△朱=1点
(朱:月天心が上手く効いてると思い頂きます。)

●遠富士の初雪屋根に差す朝日=資料官
△裕=1点
(裕:我が家からも冠雪した富士が見えます。)

●飛石の間合ひ流るるうすら寒=清一
△十=1点
(十:微妙なところを詠んでいる。)

●虫の音に窓を開けては涼し過ぎ=淳一
△子=1点

●要衝をずたずたに雨末の秋=十五
△朱=1点
(朱:「末の秋」と言う言葉、もっと別にもあるかなあとも思いましたが上五中七が巧みで今回の災害を端的に詠んだ一句。)

●離婚届宙ぶらりんの秋と修羅=朱河

△秋=1点
(秋:身近な人のもめ事でしょうか。当事者ならばこんなにクールには詠めない。)

●天高し信楽焼きの狸の眼=白馬
△子=1点


A部門入選作〈back number〉

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