*A部門入選作発表*


当季雑詠=全89投句(入選62句)

【特選】

一席
●語り部のまた一人逝き蚊遣の火=ぼくる


◎や、資、智○葱、清、茶、修△五、ス、久=20点
(資:上五のkと下五のkが響き合い,季語が効いている。 やんま:東京空襲を実体験しました。 智:戦争を知る世代が、もうすぐこの世から居なくなりますね。一話ずつ火を消して行く、百物語を思い出しました。 葱:語り部と「蚊遣」の美しき交響。 清:原爆の語り部だろうか蚊遣の火が消えるように淋しい。 茶:やうやう灰となりにけり 非戦の火は消さぬように。 修:小さな火が語り部のよう。)


二席
●雨降つて紫陽花色を整へり=雪絵


◎五、白、メ○虹、十、秋△紅、朱=17点
(白:綺麗な句ですね。 十:骨法のしっかりした典型的な俳句。 秋:下五の表現になるほどと納得。 紅:しっとりとした感じが好きです。 朱:どうも類想はありそうだが…。)


三席
●筆洗に一滴の青夏祓=智雪


◎秋、水、雪、紅○子、遊、村△資、ま=16点
(秋:絵の具の青が静かに溶けてひろがる景が涼やか。季語との取り合わせもいい。 水:季感に優れていると思います。 雪:何か清々しさを感じた句です。 紅:うまく鑑賞できないのですが、凛とした印象があり、季語も新鮮で、気になったお句でした。 遊:緊張するワンシーンのひろがり。 村:青が鮮やか。 ま:一滴の青が涼やかで気持ち良い句です。夏祓で少し迷いました。)  


【入選】

●父の日のフルスイングの代打かな=紅椿
◎葱、ラ、裕、始△ス、白、喋=15点
(葱:思いっきり一生懸命に走ればそれでよし。 ラ:「フルスイング」が力強い! 裕:お父さんの頑張っている姿が浮かびます。 始:ほほえましい。 白:少年野球。父代打。経験あります。)

●ところてん嘘つき通す喉仏=清一
○ぼ、喋、朱、茶、久△遊、水、雪、裕=14点
(ぼ:面白い! 嘘もするすると。 朱:喉仏とところてん…面白い視点かなと。 遊:面白いとしか言いようがない。 水:じーっとみると不自然な動きが、、。 裕:ところてんはすうーっと落ちるけど、嘘は喉仏のあたりでつかえているんですね。 茶:取り合せがいいと思います。ただ、頃合いには嘘はバラしましょう。)

●蛍や月の卵の孵る刻=水音
◎遊○ま、智、雪△葱、白、ス=12点
(遊:シュール!美しい!楽しい! ま:月の卵とは!素敵な表現ですね。 智:新月から十五夜へ。月の満ち始めを月の卵が孵ると言いなした。蛍との取り合わせも見事。 雪:幻想的な光景ですね。「月の卵」とは、、。 葱:蛍を月の卵としたところに詩情がある。 白:意味不明ながら、不思議な感じ。)

●漬け梅の瓶ひとゆすり手術の朝=まさこ
◎ス、茶○十、修△遊=11点
(茶:ルーティンの一つを大切にすることが命をながらえる祈りなのですね。 十:主婦の鏡ですね。実感ありの句。 修:梅すなわち日常がゆらり動いて次元が変わる 。 遊:不安な心理を巧みに表現している。)

●坂道を転げ落ちゆく夕立かな=十志夫
○メ△子、虹、ま、砂、村、清、雪、喋=10点
(ま:雨の激しさが巧く表現されています。 村:転げるのは何だと妙に気を引く。 清:大夕立が坂道を流れていく様子を上手く捉えている。)

●眉寄せて御輿に力移しけり =十志夫
○砂、智、ス、朱△虹、雪=10点
(智:中七下五の描写が素晴らしい。臨場感があります。 朱:これも特選にしたかった。力移しけり…が佳い。書けそうで書けない。)

●斜光入るプールの底の秘境かな=葱男
○遊、水、喋△秋、砂、裕=9点
(遊:こんなふうに刹那をきりとれたら・・・。 水:金沢21世紀美術館のレアンドロのプールの底にいると不思議な感覚になるのですが、それが秘境というものなのでしょう。 秋:プールの底で揺らぐ光の影をとらえて妙。 裕:確かに小世界ですよね。)

●点描画その一点より蚊の発ちぬ=ラスカル
◎喋○ま、水△修、久=9点
(ま:細かく観察されていて感嘆しました。 水:じっとみつめていたら、、、可笑しい。 修:映像を見ているよう。)

●小さき手のピアノに届く梅雨晴間=雪絵
○や、五、白△智、修=8点
(やんま:音が聞こえた。 白: 鍵盤にやっと届いた。可愛い。 智:優しい梅雨晴間。たどたどしいピアノの音が聞こえてきそう。 修:白い鍵盤と可愛い手が見える。)

●初ものや友の呉れたる鮎ニ寸=修一
◎子○虹、始△朱=8点
(虹:優し気でほのぼのとした情景。 始:鮎は今や珍しい。 朱:上五が説明的かもと思いますが鮎二寸の具体性が良いかなと。)

●みちのくに令和の蜻蛉生れけり=ぼくる
◎朱○虹△ラ、五=7点
(朱:季題としては蜻蛉は秋ですが…。みちのくとした事で蜻蛉がただの蜻蛉ではなくなった。言葉が多義的な意味を持つ一句になったと思います。 ラ:このパターンはよく見かけますが、「みちのく」の一語が利いています。)

●喪の家の安らぎめきて釣忍=十志夫
◎ぼ○資△清、メ=7点
(ぼ:落ち着いたたたずまい、ご家族、故人の人柄までうかがわれる。 資:たしかに安らぎを感じる風景。 清:今は亡き人は長年床に臥せって居たのだろうか、釣忍が一部始終を知っている。)

●サンダルより小指はみ出す街薄暑=水音
◎清△葱、紅、裕、=6点
(清:仲夏の頃の街の足もとの様子を巧みに捉えている。 葱:若い子が街を闊歩する光景、いいですね、何事にも縛られずに少々はみ出すぐらいがいいんじやないか! 紅:いかにも街薄暑ですね。上五は字余りにしなくても「サンダルの」で良かった気がします。 裕:夏本番間近を感じます。)

●引き潮に転がる貝の涼しかり=まさこ
○資、雪△葱、十=6点
(葱:波の音まで聞こえてきます。 十:景がよく見えます。)

●父の忌や夏至の朝日のあかあかと=資料官
◎ま○ラ=5点
(ま:お父様の忌の、夏至の朝日、それもあかあかと、とてもインパクトがあります。お父様はすごい方だったのでは! ラ:作者の心情が、切々と伝わってきます。)

●初夏や結婚写真に犬も居て=スライトリ・マッド
△ラ、十、秋、智、紅=5点
(ラ:ほのぼのとした気持ちになります。季語はもっとよいものがありそうです。 十:双方が余程犬好きなのでしょうか。再婚同士かも。(笑) 秋:ほっこり。 智:最近はペットも大切な家族の一員。記念写真にも写ってたりして‥微笑ましい句。 紅:ジューンブライドでしょうね。幸せが伝わってきます。)

●夕立のスポーツジ厶を包みけり=修一
◎十△村、茶=5点
(十:ガラス張りのジム。ランニングマシンから見る窓の雫。景鮮明です。 村:ふり返って見上げたビル全体のきらめき。 茶: 景が立ちました。)

●和をもつて尊しとせず薔薇真紅=朱河
○秋、紅△ぼ=5点
(秋:大輪の赤薔薇は1本で存在感。気品とプライドをうまく表現していると思います。 (紅:聖徳太子が出てこようとは!(笑) 真紅の薔薇が際立っています。 ぼ:いいね、この矜持。着地がぴたりと決まった。)

●白紫陽花そつと祖父母の骨を撒く=資料官
◎村△ま=4点
(村:そつとが常套的だがそれしかない。 ま:最近増えてきた景でしょうか。そつとにお気持ちが表れていますね。)

●夏雲を駆け抜け銀のオートバイ=朱河
○裕△ラ、ぼ=4点
(裕:20代を思い出します。 ラ:松田聖子の「銀色のオートバイ」を思い出しました。 ぼ:おお、壮快!)

●花弁の鰓呼吸する水中花=葱男
○ぼ△や、資=4点
(ぼ:鰓呼吸という見立てがお見事です。 やんま:新発見。 資:水中花の鰓呼吸は面白い。)

●風鈴のリンや二度寝て三度寝て=やんま
◎砂△始=4点
(始:二度のリンが鼻につかない。)

●ぼーっとして生きております夕焼雲=やんま
○始△水、修=4点
(始:飾らないところがいい。 水:チコちゃんに叱られるパターンですね。 修:それはそうだ綺麗だもん。)

●「真夏の果実」夕焼の波に聴く=まさこ
○紅△葱、十=4点
(紅:固有名詞が効いています。「夕焼の波に聴く」が素敵。 葱:思い出のある歌です。 十:サザンの曲は海が似合う。 )

●わが裡の波の高まり麦の秋=十五
△や、十、清、朱=4点
(やんま:未だ青春の最中。 十:そよぐ麦と胸の高まり。心情を景色に置き換えての一句。 清:我が胸のうちの高鳴りと麦秋の対比が良い。 朱:胸なら高まりよりも高鳴りかな。季語の選択が良。)

●大杉はただ夏空へ根を下ろす=遊歩
○五△虹=3点

●片蔭の巨大なるかなコロッセオ=葱男
△十、ぼ、朱=3点
(十:豪快な一句。 ぼ:なるほど、さもありなん。敢えて片蔭と言ったのが面白い。 朱:巨大なコロッセオの片蔭を詠むのは吟行句?として面白さ。大西日では尽きすぎ。)

●海月より教はりしことまだ秘密=ラスカル
○清△白=3点
(清:脳も心臓もない海月他にも人間には分かっていないことがあるようだ。 白: 何を教わったのでしょうか?)

●砂粒のまぶたに当たり海開き=ラスカル
◎修=3点
(修:目の前に海が感じられます。)

●爪を切る仕事怠けて梅雨晴れ間=秋波
◎久=3点

●西日なり忘れ去られた文庫本=始祖鳥
○村△朱=3点
(村:文庫本が何かを放っている。 朱:景の取り合わせも良いが上五が「なり」でキレるのが勿体無い。)

●朝ドラのゆるい方言時鳥=智雪
○葱=2点
(葱:朝ドラにはいつも方言指導の方がつきますね。岸和田が舞台の「カーネーション」で友人である女優の林英世が尾野真千子他に厳しい方言指導をしました。)

●紫陽花も朝霧纏い薄化粧=喋九厘
○メ=2点

●栗の花たぶん私がわたしです=遊歩
△葱、喋=2点
(葱:やや俗っぽいので選を迷いましたが季語に幾ばくかの「精気」を感じました。)

●滴りや天然石のブレス買ふ=茶輪子
○ラ=2点
(ラ:「滴り」という季語がぴたりと決まっています。)

●砂浜を駆くる車や能登涼し=水音
△子、遊=2点
(遊:バス旅行したときの記憶がよみがえってきた。)

●たちまちに夏野となれる空き地かな=紅椿
△秋、智=2点
(秋:雑草たちの逞しさ。“たちまち”に実感。 智:雑草の旺盛な生命力。)

●七夕やピンピンコロリと願ひ書く=資料官
○久=2点

●溶けさうなオレンジの月梅雨の月=智雪
△子、メ=2点

●友集ふ釧路の夏の夜熱し=メゴチ
○子=2点

●合歓の花咲きて大木発見す=香久夜
○や=2点
(やんま:咲いてこその存在感)

●浜木綿の花や日帰りバス旅行=紅椿
△葱、資=2点
(葱:夏の小旅行、いかにも浜木綿の花が似合います。 資:花言葉の「どこか遠くへ」と日帰りバス旅行がぴったり。)

●針金のごときキャベツをほほばれり=雪絵
○ス=2点

●ピンホールカメラ逆立ちのさくらんぼ=スライトリ・マッド
△水、久=2点

●干し篭の青梅日々に錦成す=久郎兎
○砂=2点

●来年を交はす指切蛍舞ふ=茶輪子
○裕=2点
(裕:短い夏を精一杯生きて、次の夏別の命で出会う 素敵です。)

●ロマンスを語る古本梅雨の星=虹魚
○白=2点
(白: ロマンス、古本、星。)

●阿寒湖の毬藻無口で風薫る=メゴチ
△砂=1点

●紫陽花のそのまま枯れて毅然たる=砂太
△五=1点

●妹の描く自画像額の花=清一
△葱=1点
(葱:なんということもないが、清楚で気持ち良い句です。)

●散水のプリズム追ってはしゃぐ子ら=秋波
△メ=1点

●飛魚のごとき幼ら水しぶき=修一
△茶=1点
(茶:「ごとき」を使わずに推敲できるとさらによいと思います。)

●バス停を降りて五分の五月闇=裕
△朱=1点
(朱:五月にかけて五分としたのか、五分の成否を悩む所。)

●羽抜鶏やや高みより舞い落ちぬ=白馬
△や=1点
(やんま:痛たそう)

●水しぶき上げて離陸や迎え梅雨=裕
△始=1点
(始:意外に出そうで出ない発想。)

●耳で飛ぶ象愛らしや風薫る=虹魚
△葱=1点
(葱:ダンボですね、懐かしい。)

●目を凝らす人の集りや蛍の夜=十五
△始=1点
(始:蛍より人が多いかも。)

●痩せ細る紫陽花晴れの日は続く=五六二三斎
△茶=1点
(茶:自然の対照のメカニズムをこんな風に切り取れたらと思います。)


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