*A部門入選作発表*


当季雑詠=全90投句(入選59句)

【特選】

一席
●鶴を折る人さし指の寒さかな=まさこ


◎子、村、喋、メ○秀、水、紅、雪、ス△虹、香=24点
(村:景が見え抒情がしみじみと。 秀:人差し指に焦点をしぼったのが、よかった。 水:今の不穏な様子を暗示しているのか。 紅:白くて細い指先が見えてきました。闘病中でしょうか。 雪:指先が冷たくてなかなか折れない。実感されたのでしょうか。 虹:千羽鶴を折っているのかな。 香:指先に視線を集中させて、そこから空へ想像が広がります。)


二席
●あんぱんの中の空洞初日記=まさこ


◎雪、砂○清、修、村、メ、五、久△紅、喋、ぶ=21点
(雪:この空洞を毎日埋めていくのでしょうか。 清:真っ新な日記にあんぱんの空洞の取り合わせが面白い。 修:なにかしら楽しいうつろな感じ。 村:新年が始まる感覚が絶妙に。紅:あんぱんの中が空洞と言う句は時々見かけますが、「初日記」との取り合わせは新鮮でした。 ぶ:楽しい句ですね〜、一年笑って暮らせそう。)


三席
●氷柱折るごとにドかレかミの鳴りぬ=虹魚


◎秀、ラ、資、葱○ス、し△清、茶、ぶ、入=20点
(清:氷柱の折る音にドレミの歌が聞こえる不思議な句。 ラ:楽しい発見です! もしかしたらファの音かも(笑) 葱:長さによって音程が違うことを発見した子供のようで楽しい。 し:氷柱にドレミとは!上手だなぁと思います。 茶:「ごとに」を工夫するともっと良いような気もしますが、調べがいいですね。 ぶ:俳句をこんな風に楽しめたらいいなと思います。 入:面白い着耳点やと思います。ただ、音的に声に出してみてごつごつ感。)


【入選】

●母の闇父の闇へと炭をつぐ=葱男
◎や○十、清、紅、ぼ、ぶ△秀、久=15点
(や:覗いても何も見えないが確かに有る闇。 十:亡くなった両親に対して暖を向ける優しさ。 清:亡き父母の思い出を炭を継ぐ事によって甦らせる。 紅:正直なところ、よく鑑賞できません。両親のいなくなった実家に戻り、暖をとっているのでしょうか?闇と火の色の対比。皆さんの鑑賞を読ませていただきたいと切に思ったお句です。 ぼ:亡き父母への思いの深い句。 ぶ:私も肉親の絆に深く悩んで育ち、今は感謝の方が大きくなりました。 秀: 「闇」とまで言わなくてもとは、思うんですけどね。)

●泥葱の土下座してゐる特売日=十志夫
◎茶、五○し△清、虹、葱、資=12点
(茶: 「O」の頭韻の調子もそうですが、特売に土下座という大サービス!滑稽味があってよいと思います。 し:積まれた葱、哀愁漂ってます。 清:取り立ての葱の朝市の風景。 虹:ネギはそんなつもりはなかったりして(笑) 葱:この擬人化には「軽み」がありますね。)

●浮寝鳥黙の錨を下ろしけり=清一
○虹、水、雪、香△十、葱、ラ=11点
(虹:見えない錨が面白い。 水:黙の錨、納得です。 雪:「黙の錨」、納得の表現ですね。 香:黙の錨がいいです。十:水面に静かに浮かぶ水鳥を巧く捉えています。 葱:「錨を下す」という表現に一票。 ラ:「黙の錨」という言葉が魅力的です。) 

●作業着の深き祈りや初明り=紅椿
◎ま、ぼ○葱、ラ△十=11点
(ま:作業着がすべてを物語っていて、厳かな気持ちになりました。祈りが届きますように。ぼ:作業着のまま迎える新年。幸多かれと応援したくなる。 葱:自衛隊かボランティアか、被災者に寄り添う優しさの滲みだす情景。 正月を返上して頑張ってくれていますね。 ラ:「作業着」の一語が、よく利いています。 十:災害復興前の黙祷の場面? あるいは「初明り」なので安全を願う職人さんたちの仕事始めの祈りかも。)

●寒行の声破裂して湯気の沸く=香久夜
◎虹、秋、裕△ぶ=10点
(虹:破裂の表現がいきいき。 秋:尋常ならざる声なのでしょう。臨場感あふれる句です。 裕:滝行でしょうか、迫力が伝わってきます。 ぶ:私も修養はしましたが、寒行等はありませんでしたw)

●万回もつぶやく醪冬銀河=茶輪子
◎ぶ、香○ま△秀、五=10点
(ぶ:微生物と宇宙の共鳴をこういう作品にでき、それを読める幸せ。 香:発酵の様子がよくわかります。星のきらめきと呼応して、豊かな感覚。 ま:醪と銀河が響き合ってとても美しいです。 秀:擬人化がちょっといやだけど。)

●老人は眠れぬ鮫がよぎるから=秀子
◎ス○久△葱、紅、砂、村、ぶ=10点
(葱:羊がよぎると眠くなり、鮫がよぎるとねむれない、って面白い! 紅:これまた難解ですが、それゆえに気になります。 村:兜太賛歌でしょうか。 ぶ:意表をつかれましたが、最近夜中に目が覚めるわけがわかりました。)

●エンディング迫るピアノや寒昴=雪絵
◎水○ぶ△入、資=7点
(水:熱演の音の粒が散らばって昇華して輝く。 ぶ:臨場感あふれる奥だと思います。こういう句を作りたいです。 入:思わずどんな作曲家の?チャイコ?ラフマニノフ?寒昴の光具合からサティ?)

●神仏を抱いて筑紫の山眠る=五六二三斎
○虹、子、喋△葱=7点
(虹:大きな句。 葱:「筑紫の」と限定したところに郷土愛を感じます。)

●たんぽぽを除けて普請の轍かな=十志夫
○入、裕△ま、ぼ、久=7点
(入:偶然ではないか?などと疑ったりもするが、タンポポの勝ちです。 裕:ささやかな気配りが素敵です。 ま:重機を操っている作業員の優しい気持ちが嬉しい。 ぼ:ふっと微笑を誘われる。)

●八十は使ひ走りよ女正月=紅椿
◎入△や、清、ま、村=7点
(入:女性の大平和を思います。 や:人間100歳時代特に女性たち。 清:日頃より使い走りで身体を鍛えられている元気な爺さんとのユーモア。 ま:今や、そうなんですね!納得です。 村:まさに日本の現状でユーモラス。)

●狐火は媚薬の匂ひ放ちたる=ラスカル
◎清○や△紅=6点
(清:狐火には引き寄せられるものがある。それを媚薬とする解釈が面白く斬新。 や:妖しく誘われて。 紅:狐火は見た事はありませんが、断定されると、そうかもと思ってしまいます。)

●捨て蜜柑積まれし匂ありにけり=十五
○ま、修△ラ、茶=6点
(ま:私たちの知らないところではこういうことが起こっているのですね、農家の方の想いが匂ってきます。 修:~小鳥にあげたらいいのに。 ラ:捨てられた蜜柑に目を向ける、作者の優しい心を感じます。 茶:中七の「積まれし匂」の立体的嗅覚!自分にはなかなかこういう発想はできません。)

●大根の土より出でて日向ぼこ=修一
◎し△や、ス、入=6点
(し:にょっきり出た大根、日向ぼこがいいですね! や:気持ちよさそう。 入:大根と日向ぼっこが季重なりというのか?惜しいです。)

●待春や擂粉木こんなにもちびて=秀子
◎修○秋△砂=6点
(修:発見が素晴らしい! 秋:擂粉木頭なんて言うけど、使い込んだ擂粉木、あんたは偉い。)

●曲がり来て猫が首掻く日向ぼこ=白馬
○十、裕△清、秋=6点
(十:ノンビリした冬の昼下がりの景を細部にわたり上手に切り取っている。 裕:気持ちよさそうな猫の鳴き声が聞こえます。 清:欠伸しながら日向ぼこする満足げな猫の様子が見える。 秋:猫の仕草は見ていて飽きないですね。)

●耳溶けて無音に帰する雪兎=葱男
○メ、香△入、し=6点
(香:陽が差して、雪の降る音さえも消える。 入:静けさをこういう情景に詠むのが素敵です。 し:音の無い深い森も想像しました。)

●産土の父母眠る雪無尽=清一
○葱△や、秀、ぼ=5点
(葱:「雪無尽」が深い思いを代弁していますね。 や:列島長し雪国の雪は無尽蔵。 秀:無尽に降る雪がやさしい。 ぼ:雪無尽に万感こもる。)

●ダイヤモンドダスト浴びつつ図書館へ=虹魚
○子、ラ△ま=5点
(ラ:ダイヤモンドダストと図書館、取り合わせの妙。 ま:ダイアモンドダストで、普通の雪より明るい気持ちで図書館へ行きたくなりそうです。)

●たどたどしくビーズ繋ぐ子春隣=ラスカル
○入△水、雪、修=5点
(入:ビーズのきらきらが、春隣にぴったり。 水:子の成長への期待と春への期待。 雪:かわいい!目に浮かびます。 修:女の児が見えるよう。)

●若き日に吐(つ)きしかの嘘軒氷柱=十五
○砂、五△ぼ=5点
(ぼ:まだ引きずっている過去、軒氷柱が眼に痛い。)

●動き出すムンクの叫び冬が行く=しゃが
○や、ぼ=4点
(や:確かに冬の色彩を感じる。 ぼ:いかにもあの叫びは、冬そのものの動きとも。)

●七草や日めくりめくる四日分=秋波
◎十△喋=4点
(十:正月休みが明けて、いよいよ仕事、という雰囲気が出ている。)

●冬さうび風に震へる夕まぐれ=雪絵
○喋△メ、し=4点
(し:同じ景色我が家にもあり共感しました。)

●犬連れて老女嬉しや土の春=砂太
◎久=3点

●お返しにみかん戴く句集かな=十志夫
◎紅=3点
(紅:ほのぼのとしていて、とても好きなお句です。この句集は大げさなものではなく、冊子のようなものでしょうか?)

●着ぶくれてなくせしものは土踏まず=水音
○秀△秋=3点
(秀:俳味たっぷりだし、哀しみもたっぷり。 秋:私も運動不足を痛感。)

●障害児作品展や春近し=ぼくる
○砂△村=3点
(ま:春が待ち遠しいですね。温かいまなざし。 村:ことさら語らず季語で。)

●水仙の群れて背伸びの牛舎裏=久郎兎
△清、秋、五=3点
(清:水仙の成長と牛の泣き声が呼応している風景が牧歌的である。)

●半月に冬星の友なかりけり=白馬
○秋△子=3点

●日脚伸ぶ駐車場の猫の影=久郎兎
○資△修=3点
(修:そうそう猫も活動的になる。)

●雪の夜の人形の目の虚ろなる=やんま
△葱、ス、し=3点
(葱:雰囲気ありますね、好きな世界です。 し:かなりホラー入ってます。)

●新しき御代へ目覚めの初明り=五六二三斎
○資=2点

●賀状来る夫の記憶のぽつぽつと=紅椿
○村=2点
(村:亡夫を慕う友人からでしょうか。)

●校長が奇声あげたる雪合戦=ラスカル
△香、裕=2点
(香:校長先生だから、句になるんですね。 裕:こういう校長先生がいいですね。)

●大寒や息深く吸ふ太極拳=やんま
△子、香=2点
(香:気合の入った情景が浮かびます。)

●つれ合ひとげんまんキラリ春隣=茶輪子
△メ、入=2点
(入:あまりのラブラブぶりに座布団一つ。)

●初富士やカップラーメン待つ青春=しゃが
△雪、入=2点
(雪:まさに青春ただ中!まんぷくになりましたか? 入:懐かしいです。私の時は日の出町の御岳山頂で、寒かったあ。)

●初ヨガや空に描かるロケット雲=スライトリ・マッド
△十、入=2点
(十:指先を宙に突き上げるようなポーズですね。中7の受け身の助動詞の連体形は文法的に「空に描(えが)かる」→「描(えが)かるる」が正しいような? 入:ヨガって奥が深そう。ロケットまで想念が達しそうです。)

●訃報後に故人の文来星冴ゆる=スライトリ・マッド
○茶=2点
(茶:死期が近いと悟ってみえたのかは分かりませんが、お人柄が垣間見えるように思いました。)

●本厄の子に成り代はり初大師=資料官
△五、裕=2点
(裕:お子さんは大丈夫ですか?)

●マニキュアは濃いめのピンク雪を掻く=水音
△ラ、雪=2点
(ラ:下五の展開に意外性があります。)

●土竜打ち喝へ歌など声そろへ=砂太
○茶=2点
(茶:実際に見たことはありませんが、こういった年中行事はなるべく遺していきたいものですね。せめて、句としてだけでも。)

●新たなる実りを運ぶ春一番=喋九厘
△メ=1点

●いそいそと妻はカラオケ女正月=資料官
△ラ=1点
(ラ:お惚気俳句ですね。ごちそうさまです(笑))

●腕の振り大きく歩く春まぢか=雪絵
△修=1点
(修:朝ドラ、サクラちゃんの感じ。)

●屋上の空底抜けて深雪晴=秀子
△砂=1点

●数の子を食めば厨の朝日かな=入鈴
△裕=1点
(裕:徹夜のお節作りでしょうか?)

●風邪の子に早く来て欲しアンパンマン=資料官
△水=1点
(水:早く良くなれ!)

●寒鮒を釣る人一人釣れますか?=砂太
△水=1点
(水:きっと遠くから見て、心の中で質問しているんだと思う。)

●水仙や家族賑はふ夕餉時=五六二三斎
△資=1点

●待春や土竜の土塁ぽこぽこと=葱男
△ス=1点

●手を挿せば吾が懐の秘かなり=虹魚
△久=1点

●ひこうき雲の二列や春の海=まさこ
△喋=1点

●火の酒やぼんぼん時計朧なる=やんま
△茶=1点
(茶:つい飲みすぎちゃって頭も「ぼーんぼーん」と、いや「ガーンガーン」か。)

●べらんだに七草粥の材摘みぬ=入鈴
△子=1点

●薮入りの姐やはお好み焼苞に=入鈴
△十=1点
(十:土産がお好み焼とは実家も近いのでしょう。現代的な里帰りの景。)

●露天風呂見あぐる先の氷柱かな=メゴチ
△虹=1点
(虹:素敵な景色。)

【無選】

●落葉踏みゆくやヴェルレーヌの詩なぞ
(秀:どうしてわざわざ「なぞ」とゆるくなってしまう言葉をいれるのでしょうか。好きな句なので、注文を書かせていただきました。)


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