*A部門入選作発表*


当季雑詠=全86投句(入選62句)

【特選】

一席
●ぽつぽつと陽だまりを食ふ冬の山羊=しゃが


◎久、葱、メ、虹、ま、秋、ス○村、香、水、茶△や=30点
(葱:楽しい絵本の世界のようですね、可愛い山羊の顔がうかびます。 虹:絵本のような優しさのある句。や:太陽の恵みだもの。 しばし陽だまりの中に憩う羊たち。 ま:あたたかい世界観で、ぽつぽつがぴったりです。 秋:中七の表現が秀逸です。 村:冬の山羊にとって青草が乏しいのを上手く捉えた。 茶:中七がいいです。 香:ぽつぽつ、という表現がいかにも山羊が草を食むようすにぴたったり。そして、陽だまりを、、としたところがすばらしい。 水:陽だまりを食ふでいただきました。ぽつぽつも嵌ってます。)


二席
●凍て星の残らず掬へさうな丘=秀子


◎し○や、ラ、水、ま△十、葱、白、虹、香、雪、ス=18点
(し:星の綺麗さが良く伝わり表現が美しいですね。 や:透明な冬の空に寒々とした星の瞬き。 ラ:イーハトーブにある丘かもしれません。 水:とても寒い、街の灯りが無い丘なのでしょう。「残らず掬えそう」でいただきました。 ま:そんなに身近に星が感じられる丘へ行ってみたい。丘が良いです。 十:広大な夜空に輝く冬星の大景が見事。「残らず」がやや説明的かな? 葱:眼下、地平線にも星が瞬いています。 白:満天の星。 香:そんな丘へ行ってみたいです。)


三席
●雪女最終バスを見送りぬ=まさこ


◎雪、喋○久△や、葱、白、紅、裕=13点
(雪:闇の中に残された雪女のことを思うと、背筋が凍る感じです。 や:それまでは堀炬燵に居たのだろう。 葱:「過去生を晒して白し雪をんな」。 白:そして何処へ。 紅: 新しい雪女の句ですね〜! 裕:雪女の顔が見たい。)


【入選】 ●折りたたむ彼の日彼のひと初昔=十志夫
◎砂○喋、修△葱、資、ま=10点
(葱:時間を「折りたたむ」という比喩。 ま: 折りたたむ、とは何て素敵な表現でしょう。)

●音量を上げて近づく焼芋屋=五六二三斎
○村、雪、淳△や、ぼ、喋、修=10点
(村:近づいて上がったところを逆から詠んで面白い。 雪:待ちわびている気持ちが伝わってきます(笑) や:次第に食欲を刺激してゆく。 ぼ:そう、そう。リアリティあり。)

●平成を勤め上げたる柚子湯かな=五六二三斎
○紅、砂△秀、村、水、淳、茶、葱=10点
(紅:お疲れ様でした。満足感のある、至福の柚子湯ですね。 秀:ご苦労様でした。 葱:わが老体を労いましょう。 村:自然にゆったりした心境がでて納得。 水:我々の年代にとって平成とはどんな歳月だったのか。感慨深いです。 茶:感慨深く湯に浸かる。あともう少しお勤め頑張りましょう!とエールを送りたくなりました。)

●ゲルニカの贋作十二月八日=ラスカル
◎十、秀、五=9点
(十:開戦日であり、レノン忌でもある。「贋作」といった措辞に不思議な意味を感じる。 秀:ちゃんと現わそうという作者の強い意思を感じました。)

●しらたきの解けてゐたる霜夜かな=紅椿
○ラ、五、十、ス△茶=9点
(ラ:宴会が終わった後の虚脱感でしょうか。 十:この句のしらたきは「おでん」のことだろう。「解けるしらたき」には百人百様の寒夜がある。茶:取り合せの妙ですね。)

●抱けば子の顔歪みたるちゃんちゃんこ=雪絵
◎資、裕○し△久=9点
(裕:この光景 あるあるですよね。 し:ちゃんちゃんこがちょっと昔の母と子のよう。ぎゅっと抱かれた子の様子が愛おしいです。)

●通勤のラッシュのやうに干大根=ラスカル
◎水○十、紅、裕=9点
(水:ぎっしりと干された大根。「通勤ラッシュ」としたのが愉快です。 十:ズラリと並ぶ懸大根から通勤ラッシュへの飛躍が面白い。 紅:干大根と通勤ラッシュの取り合わせは見事です! 裕:干大根を通勤ラッシュというのは言い得て妙です。)

●「恋文」といふ結び帯初化粧=雪絵
○葱、秋△砂、香、修=7点
(葱:粋な帯の結び方があるんですね、いいな、若い子の着物姿! 秋:初々しい色気を感じる。 香:色っぽい名前。そんな結び方があるんですね。)

●冬帝や等圧線を統ぶる術=水音
◎香○し△資、五=7点
(香:等圧線を統ぶる、、という発想が大きい。まさにそんな形です。楽しくなります。 し:寒そう。面白い着眼点ですね。 資:気象予報士的な視点。)

●閉店の小さき貼紙笹子鳴く=まさこ
○虹、ス△清、紅、五=7点
(虹:寂しげだが、どこか落ち着く句。 清:閉店になる店は何か申し訳ないように小さい貼紙を出す、笹子鳴くの季語が効いている。 紅:季語の斡旋がお上手なので、閉店も寂しくない。次の何かが待っていそうです。)

●またひとつ老いしサンタクロースかな=紅椿
○秀、砂△ラ、水、し=7点
(秀:サンタクロースさんの背中が見えました。ぐっときました。 ラ:サンタクロースも歳をとるのですね。しみじみ。 水:サンタさんも年を取るんですね。 し:ほのぼのとした家族のクリスマスであったかい。)

●着ぶくれてコンビニで買ふフルコース=十志夫 
  ◎村△雪、秋、茶=6点
(村:「で」が気になるが題材がヒット。 秋:いかにも現代的な景。 茶:いかにもコンビニのヘビーユーザーに相応しい景です。)

●ストーブに張りつく父の髭や濃き=茶輪子
◎ぼ、淳=6点
(ぼ: 父老いたり。やさしくも複雑な思い。 淳:男らしい父さんが縮こまってストーブにかじりついている。)

●仏像の母なる丸太冬夕焼=水音
◎ラ○葱△五=6点
(ラ:「母なる丸太」に説得力があります。 葱:石の中には女神が、木の中には仏像が眠っている。)

●ぽつねんと静まりかえる冬座敷=淳一
◎子、修=6点
(修:これこそ冬座敷の本意。)

●ゆく年を枯山水に置いてみる=葱男
○メ、香△秀、虹=6点
(香:古寺の庭園で、、ゆったりと、一年を振り返りたくなります。 秀:発想が面白かった。)

●温め酒手と相性のよきお猪口=秀子
○修△葱、紅、し=5点
(葱:そこ、結構大事なポイント! 紅:下戸なので経験はありませんが、実感なのでしょうね。 し:お酒が美味しそう。)

●冬うらら古刹にジャズのラヂオ音=雪絵
○清△ラ、裕、し=5点
(清:この古刹はラジオからジャズを流しているところが、冬うららの季語と合っている。 ラ:ミスマッチが面白いです。 裕:結構合ってますよね。 し:なかなか洒落た取り合わせ。)

●寄せ鍋ややはりよき友よき地酒=ぼくる
◎白△虹、修=5点
(白:大共感!)

??あめつちにかくれんぼする冬の精=スライトリ・マッド
○メ、裕=4点
(裕:最近の天候異常をうまく詠んでますね。)

●お勝手のスリッパ揃へ除夜の鐘=紅椿
○茶△資、雪=4点
(資:何気ないしぐさに共感。 茶:「お勝手」というフレーズが懐かしく、また「揃へ」に敬虔さを感じました。)

●還暦のタワーのあかり寒満月=資料官
○十△メ、喋=4点
(十:昭和33年に東京タワーが完成。塔の照明を眺めつつ、しみじみ感じる60年の年月。)

●初雪に知らず両手を合わせけり=葱男
○子△久、淳=4点

●冬晴れや磨きし窓の駄賃かな=茶輪子
○久、五=4点

●古里の山茶花胸に降り積る=入鈴
◎清△水=4点
(清:山茶花の咲く頃ふる里を想い出した詠者、胸に降り積もるの措辞が良い。  水:しっとりとした望郷の思いに胸が詰まります。)

●綿虫やいのちの重み抱へたり=清一
○白、虹=4点
(白:小さな命への思いやり。 虹:少し観念的ながら、命を軽んずることへの警鐘。)

●死に場所をひたすら探る冬の蠅=清一
○白△淳=3点
(白:身につまされます。)

●小康の寝汗をぬぐう冬の虹=秋波
○喋△香=3点
(香:小康、、とのことで、ホッとします。)

●煎餅屋の醤油の香寒昴=秋波
◎や=3点
(や:煎餅の味は醤油が決めてか。)

●年の瀬や今さらながら独り者=ぼくる
◎紅=3点
(中七が秀逸です。普段は独身貴族かもしれませんが、お正月とお盆だけは寂しいと聞いた事があります。)

●啼きおとす寒鴉一声そして闇=十五
○ぼ△子=3点
(ぼ:啼きおとす の措辞おみごと。)

●肌寒や鬼神の住まふダリの家=しゃが
○や△秋=3点
(や:感覚的にはそんな気が。 秋:発想の面白さでとりました。)

●眉月の残る朝なり歳つまる=砂太
○ぼ△ま=3点
(ぼ: 端正で姿のよい句。 ま:月も年を惜しむかのように美しい景です。)

●焼鳥の一串ごとの煙かな=虹魚
○淳△ぼ=3点
(ぼ:よきかな、居酒屋文化!)

●雪掻きのスコップの跡一人親=久郎兎
◎茶=3点
(茶:何気ない跡にも親を思う、いや親を思う気持ちが、そんな跡にも目を落とさせる。)

●アサツキを曇る眼鏡でほうり込む=香久夜
○雪=2点
(雪:私も体験はするのですが、、。)

●寒月や誰に叫ぶか猫の声=子白
○清=2点
(清:野良猫だろう、冬の夜に塒を求めて彷徨い、月に叫ぶが月は答えては呉れない。)

●還暦の近づいて来る炬燵かな=ラスカル
○秀=2点
(秀:還暦って大きな節目。私なんて、とうの昔のことですが。「炬燵」がよかった。)

●限定品テレビに溢れ年詰まる=十五
△十、久=2点
(十:慌ただしさの表現の一つとして成功している。アイロニーもありや。)

●山茶花の微笑している家出時=子白
○ま=2点
(ま:家出の動機はなんでしょう、そういうときもありますね。山茶花は味方です。)

●しみじみと昭和語るや榾明り=やんま
△ぼ、ラ=2点
(ぼ:榾明り も今や得難い景。  ラ:類句がありそうですが、やはり心惹かれます。)

●単線の一輌電車冬紅葉=裕
○資=2点
(資:その電車何時まで走っているのかなと思いつつ,冬紅葉のあざやかさが目に浮かぶ。)

●伝言は十五の我へ冬?=秀子
△メ、ス=2点

●年の暮何するもなく座りおり=淳一
○子=2点

●日日を好日として年暮るる=香久夜
○資=2点

●冬の暮玄関に起つ母の下駄=入鈴
○秋=2点

●プラットホームの肩で息するコートかな=裕
△ス、し=2点
(し:勝手に若きイケメンを想像しました。)

●実万両政治枯れ行く音の有り=砂太
△白、ま=2点
(白:来年はどうなるのか−−−。 ま:実万両の鮮やかな赤との対比が効いている。)

●飴色の母のお椀や晦日蕎麦=資料官
△清=1点
(清:使い古したお母さんの晦日に使うお椀、想い出が飴色のお椀に浮かぶ。)

●おほどしの朝風呂の湯の那由多かな=葱男
△秋=1点
(秋:大晦日に朝からお風呂とは。なんとも贅沢。)

●数へ日や分別ゴミの掲示板=資料官
△十=1点
(十:回収日時の変則スケジュールを知らせる掲示板。押し詰まった感じを巧く伝えている。)

●教会とモスクの並ぶ神無月=裕
△清=1点
(清:ロシアの光景だろうか、そこでは教会とモスクが共存しているが、神道の神はいない。)

●極月の礼拝堂に一人なる=ぼくる
△子=1点

●殉教者増ゆる世界やクリスマス=水音
△秀=1点
(秀:今の世界に対する批判を感じます。私は、俳句は思想を語るものではないと 思ってはいますが。)

●手や腋や柚子の香ほんのり湯屋の夜=秋波
△子=1点

●年越しの玄関灯と息子待つ=久郎兎
△砂=1点

●とんがつてやつて来る鮫目は優し=虹魚
△裕=1点
(裕:確かに鮫の眼って優しいですよね。)

●二年ぶり元気ですよと賀状書く=メゴチ
△砂=1点

??ふくろふ啼く佳き知らせほうほうほうと=スライトリ・マッド
△喋=1点


A部門入選作〈back number〉

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