*A部門入選作発表*


当季雑詠=全90投句(入選59句)

【特選】

一席
●何処へでも行ける切手や雲の峰=十志夫


◎雪、虹、香○ラ、葱、水、砂、紅△智=20点
(ラ:現代ではラインやメールが主流で、ほとんど使われなくなった切手。ノスタルジーが感じられます。  香:楽しい発想。まるで空を飛んで届けられるみたい。 紅:発想が素晴らしいです。 葱:たしかに。雲の峰がいいんだろうなあー。 雪:確かに!私も切手になってどこにでも行きたい気分! 水:切手が一番自由かも。 智:上五中七好きです。季語がこれしか無いのかが少し気になる‥)


二席
●アマリリス何処にも属さない私=朱河


◎智、秋○葱、十、喋、修△雪、水、ぼ、し=18点
(智:長くて太い茎の先に、赤や白のはっきりした花を咲かせる、アマリリスに感じる意思の強さと、中七下五の言い切りが似合っている。 秋:ただ1本すくっと立ってそれだけで存在感があるアマリリス。作者の自我の強さとよく響き合ってると思います。 葱:アマリリスの音感が「余り栗鼠=はぐれリス」に聴こえました、季語選びの一本。 十:強い自尊心と女王のようなアマリリスの取り合わせ。 修:まさにアマリリスの本意。 水:アマリリスは茎が太いしっかりとした花なので、「私」の心もとなさが際立つ。 ぼ:きっぱり、唯我独尊。 し:アマリリスとの取り合わせが面白いです。)


二席
●交番に十円届く夏帽子=葱男


◎ラ、久、十、ス○虹△朱、智、ま、秋=18点
(ラ:幼い男の子が「落とし物です」と言っている場面を想像しました。可愛い♪ 十:10円を手渡す幼女の上目遣いが浮かぶ。ほっこりする句。 朱:何とも愛らしい一幕。 智:十円玉を手渡す小さな手も見えてくる。微笑ましい。 ま:可愛い。恥ずかしそうな姿が見えます。 秋:小さい子供なのでしょうね。微笑ましい。季語もいい。)


二席
●父の座にうなだれてゐる扇風機=十志夫


◎朱、し○智、ま、メ△清、や、村、裕、虹、紅=18点
(朱:一見シンプルな句のようで色々な取り方が考えられて面白い。擬人化の発見と成功。  智:エアコンに押され時代遅れだが、依然根強いファンがいる扇風機‥父の存在と被って哀愁がある。うなだれてがいい。  し:気持ちを扇風機で表すのがすごい。 ま:中七が効いていますね。 清: 父親の威厳がなくなってから久しいがこれは昭和の風景だろう。 や:クーラー嫌いで昭和の生まれ。 村:寂しく滑稽さも。 裕:お父さんの席には扇風機が回っている、昭和の光景ですね。 紅:お父さん愛用の扇風機だったのでしょうね。)  


【入選】

●ハミングの音符散らばる苺畑=水音
◎始○や、虹、ス、遊、メ△清、裕、し=16点
(始:なにか明るく夢がありますや:少女の様に老婆頬笑む。 遊:楽しい・キレイ・巧い。 清:確かに苺畑は音符の形に似て楽しげだ。 裕:苺狩りにはしゃぎまわるお子さんのようです。 し:めちゃくちゃ楽しそう。苺狩りですか?)

●台湾の空の匂ひのバナナかな=ラスカル
○雪、裕、紅、修、五△子、葱、始、虹、ス=15点
(雪:食べることしか考えない私には、目から鱗の感性です。 裕:台湾のバナナは、甘いんです。紅:台湾バナナは独特の匂いがあります。それを「空の匂ひ」としたところに詩を感じます。 修:台湾の空が身近に感じる。 葱:ま、台湾バナナ、なんですけど、、なんか気の抜けた、なんか可笑しい! 始:台湾バナナが懐かしい。)

●帯締めはト音記号よ夏は来ぬ=スライトリ・マッド
◎メ○ラ、久、裕、茶△子、し=13点
(ラ:オシャレな帯締めですね。ハミングが聞こえてくるような感じがします。 裕:薄物の着物で颯爽と出かけられるようです。 茶:着物にモダンな調子の取り合わせがいいと思います。川床なぞの風情にぴったりです。 し:とってもオシャレですね。明るい気分になります。)

●桐箱の夫婦茶碗や若葉冷=紅椿
◎資、裕、五○清△メ=12点
(資:使っていないけど捨てられないもの。 裕:思い出の夫婦茶碗、懐かしさと一抹の寂しさを感じる句です。 清:若夫婦の関係がもう冷えて来たとも取れる若葉冷。)

●心太余生に役目ありてよし=十五
◎や、茶○資、紅△十、智=12点
(や:ゴミ袋持ち町内巡回。 茶:ありきたりのようで、渋い心太が効いています。 紅:発想が素晴らしいです。 まだまだ貢献できますね。 資:引きこもりは良くない。心太がぴったりです。 十:いつまでも必要とされるよろこび。 智:淡々とさらりと、余生はかくありたい。)

●開けられぬデジタル遺品遠き雷=十志夫
○久、ま、香△資、村、水、秋=10点
(ま:今時の問題ですね、これから考えなくては! 香:遠き雷が、何か不穏な予感を表してますね。 資:永遠の秘密かも。遠き雷が効いている。 村:現代の深刻な一断面が。 水:「遠き雷」によりもどかしさや苛立ちを感じます。 秋:今日的なテーマ。)

●海月ならきつと分かつてくれる筈=ラスカル
◎葱、遊○雪△喋=9点
(葱:人間存在の不条理や不安を「海月」に託して詠ませたらこの人の右に出る人は居ないと思います。猫俳人は山ほど居るけど「海月俳人」は彼一人。 遊:もう文句なくそうだと思います、私の持ち点全部あげたい。 雪:分かち合えるだけで救われる気がします。海月は見ているだけでも癒されますね。)

●キャンプの火消えて高まる瀬音かな=ぼくる
○十、村、し△葱、遊、ま=9点
(十:喧噪の後の静寂。 村:状況がよくわかる。 し:子供の頃のキャンプを思い出します。葱:無人島でキャンプした時を思い出す。 遊:漆黒の闇。)

●沈黙のほどけて白い朴の花=遊歩
◎ま○香△朱、メ=7点
(ま:白い朴の花の明るい華やかさが、ぴったりでほっとした心の様子が巧く表現されています。 香:沈黙がほどける、、すばらしい表現ですね。 朱:甘いような気もするが白い朴の花が似合う措辞かと思いました。)

●ふるさとの橋の復興鯉のぼり=紅椿
◎村○五△ラ、ス=7点
(村:事柄的だがいろいろな物語を想像させる。 ラ:「鯉幟」という季語が、ぴたりと決まりました。)

●身勝手な風の帆となるアロハシャツ=朱河
◎砂○し△裕、秋=7点
(裕:ボタンをはめていないアロハが帆のようになる、ハワイに行きたい。 秋:上五が効いています。 し:面白い!”身勝手”がいいですね。)

●英国数早弁体育若葉風=葱男
○資、ス△十、砂=6点
(資:高校生活に慣れてきた五月の風景。 十:早弁を間に挟んだところの諧謔味。)

●風薫る袴の紐の十文字=スライトリ・マッド
○ぼ、秋、五△し=6点
(ぼ:凛々しく、爽やか。好みです。 秋:きりっとした緊張感が伝わります。 し:キリッとした風が吹いている感じです。)

●教卓に置き去りのペン風死せり=茶輪子
◎修○朱△ぼ=6点
(修:教室にはまだクーラーもないんだ。 朱:気怠いような寂しいような放課後の教室、そんな思い出の感触。 ぼ:気になって、通り過ごせない。)

●薫風や眠る娘のふくらはぎ=裕
◎喋△朱、ぼ、香=6点
(朱:太股でなくふくらはぎ…でないとね。笑 ぼ:健康的で、ちょっぴりお色気も。 香:チアガールの方でなく、娘のふくらはぎの方をいただきました。)

●薫風や太き手足のチアガール=修一
○や△ラ、村、紅、ま=6点
(や:時は今! ラ:「太き」という一語がよく利いています。 村:川柳っぽい、せめて長き手足なら。  紅:健康的。 ま:元気いっぱいのたくましい少女たち、細くないところが良い。)

●初蝉や耳掻き棒に金の鈴=やんま
○村、茶△十、紅=6点
(村:意外な取り合せが新鮮。  茶:ささやかではあるけれど、なくてはならない、始まらない添え物にスポットを当てた点がよいと思います。  十:些細なところの気づきを句にしている。 紅:作者さんはなんとなく分かります。いつもながらよく見ていますね。  葱:耳掻きの句ではラスカルさんに「耳掻きの端に梵天小鳥来る」も「丘ふみ」にありましたね。)

●友禅を抜け出でしかに大牡丹=雪絵
◎紅〇水△遊=6点
(紅:逆転の発想が功を奏していると思います。振袖に描かれている牡丹は、どれを見ても大振りで見事、とても共感できました。 水:ゴージャス。 遊:正統派の美しさ、気迫。)



●苺ミルクすべてを潰すまで待って=香久夜
○秋△葱、水、遊=5点
(秋:苺を潰す間は無心だったりして。 葱:かわいいー?? 水:待ちます。 遊:わかりました。)

●狛犬の四肢凛々と楠若葉=ぼくる
○清、智△砂=5点
(清:狛犬の堂々たる姿と楠木の若葉が良く合う。 智:楠若葉の勢いのある青と、狛犬の四肢の凛々とした様が良く響き合って力強い句。)

●神域に出入り自由青蜥蜴=水音
○子、遊△香=5点
(遊:静寂と不気味と遊び心。 香:発想が面白いです。)

●薔薇に雨今宵酒乱を許されよ=やんま
○朱△葱、ぼ、五=5点
(朱:酒呑みの句に私は弱い。心境の背景が美しい薔薇の雨なら許される。 葱:これは心が痛すぎて、特別枠で。 ぼ:おお、酒とバラの日々!)

●女子会へ牛蛙の声吹きあがる=まさこ
◎清△資=4点
(清:中八が気にならないぐらい女子会の姦しさと牛蛙の声が共鳴する。 資:喧しそうな風景。牛蛙が面白い。)

●日盛や街のしづかに溶けはじむ=ラスカル
○砂、ぼ=4点
(ぼ:実感あり、シュールも少し。)

●アラスカへの航路をなぞる指薄暑=まさこ
△清、葱、虹=3点
(清:アラスカは流石に夏も涼しいだろう。アンカレッジ経由でロスに行った時が懐かしい。 葱:旅のゆめが広がります。)

●ヴィーナスは泡から生まれ巴里祭=朱河
◎ぼ=3点
(ぼ:何とも 心ときめく句。)

●蜘蛛の囲や殺気に満ちし振動数=清一
△久、始、茶=3点
(始:荒々しい魅力。 茶:「振動数」の措辞が「殺気」を上手く表現しています。)

●夏燕道々ハモる女学生=秋波
△葱、ス、修=3点
(葱:「あみん」とか「シモンズ」とか思い出しますね、卒業したらフォークのデュエットでデビュー?? 修:屈託がなくていいなあ。)

●母の日の野菜畑でひと休み=メゴチ
○子△遊=3点
(遊:作者が母でなくてもいいと思う。)

●万緑や母が愛してくれたこと=葱男
◎水=3点
(水:すべては母の愛から始まる。「万緑」がいいです。)

●豆飯や母の匂ひの一膳を=メゴチ
○始△久=3点
(始:温かみを感じます。)

●山道にりすの現はる若葉晴=修一
◎子=3点

●若葉どき縄文美人に恋をして=子白
○始△葱=3点
(始:縄文美人という言葉の発想の斬新さ。 葱:縄文美人って、どんなんかな? 二重瞼で毛深くて、耳垢が湿ってるのかな?)

●青時雨ひじ付く天使見上げをり=しゃが
△ラ、葱=2点
(ラ:おそらく天使像だと思いますが、もしかしたら本物の天使かも! 葱:ワインのラベルにもなってるやつですな(^^))

●黒百合を野付半島奥密か=入鈴
○喋=2点

●顕微鏡の古りし北里文庫初夏=雪絵
△葱、五=2点
(葱:阿蘇の近くにあるそうですね、一度訪ねてみたい場所です。)

●木の下の闇を抜け出づ車椅子=清一
△や、始=2点
(や:緑陰にまた居場所あり。 始:本当にあったの?と思わせます。)

●手を振って歩こう躑躅満開に=砂太
△資、茶=2点
(資:手を振って歩きたくなる光景。 茶:となりのトトロのメイちゃん!爽やかな風が吹きました。)

●どくだみや犬も食わない喧嘩して=水音
△朱、ぼ=2点
(朱:面白い、リズム良いし確かに季語どくだみで成功している。 ぼ:ははは、ほっとけ、ほっとけ。)

●ひらかなのうまれてひとりしずかかな=遊歩
△十、香=2点
(十:春季なのでやや遅しだが、小花の一人静のイメージがオール平仮名句とうまく合っている。 香:珍しい花ですね、ひとりしずか。)

●朝風にカッコウ鳴いて草引きす=子白
△喋=1点

●あぢさゐの色づきそむる朝の雨=紅椿
△修=1点
(修:やはり雨が似合う。)

●哀れなり母なき子猫の潰れし眼=始祖鳥
△葱=1点
(葱:浅川マキの歌にありそう。)

●湘南にヨットの舳先卯波立つ=久郎兎
△や=1点
(や:かくの如きに未来輝く)

●新緑や揺れる絵馬には勝の文字=秋波
△子=1点

●痛風の足に優しき青嵐=資料官
△喋=1点

●鳶の影植田の水を袈裟懸けに=秋波
△砂=1点

●夏雲やペダルに鍛ふふくらはぎ=茶輪子
△雪=1点

●夏帽子最初の一こぎ踏み出せず=香久夜
△メ=1点

●何度目の禁煙宣言夏の風邪=資料官
△秋=1点
(秋:お大事に。)

●農協の太きビル映ゆ青田かな=茶輪子
△紅=1点
(紅:俳諧味があります。)

●母の日や靴箱探すローヒール=メゴチ
△久=1点

●光薄き海の番所や蝦夷の夏=入鈴
△茶=1点
(茶:北海道の初夏の風情の景が浮かびます。「光薄き」が功ですね。)

●マンゴーのとろりとろける薄暑かな=裕
△修=1点
(修:夏らしい色だなあ。)

●向い合ふ距離の遥かの夏の月=遊歩
△雪=1点


6月4日に虹魚さんから投句がありました。

〆切に遅れたことには大いに同情の余地がありましたが、すでに編集が大幅に進んでいて、作り変えるには大変な作業が必要でしたのでやむなく選外といたしました。

〆切後の投句、選句は編集の手間が大きくずれることになります。できる範囲で再編集を行っていますが、あまりにも大幅な改訂が必要な場合は今回のように、句会に反映されないこともありますので、ご了承ください。


【選外】

●一本の薔薇百本に勝りけり=虹魚
△葱
(葱:「一」という言葉(イデア)は俳句の根本にあるものだと思います。)

●白靴は静かな君によく似合ふ=虹魚

●ルピナスと風とガーデンベンチかな=虹魚
△葱
(葱:富良野の「風のガーデン」を思います。)


A部門入選作〈back number〉

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