*A部門入選作発表*
当季雑詠=全90投句(入選57句)
【特選】
一席
●春耕や軽トラックに積む夕日=まさこ
◎秀、十、ス、香、ぶ、五○紅、ぼ、水、秋△葱、メ=28点
(秀:夕暮れはトラックに日を積んで帰るんですよね。「軽トラック」がよかった。 十:農作業の終った夕方の帰宅途中の景が鮮やか。 香:日も長くなって、軽トラも軽やかな感じです。 ぶ:何気ない日常を大胆に切り取ってゴッホの絵のようです。 紅:色が豊かで、きもちの良い景です。 ぼ:健やかで気持のよい句。 水:夕方まで耕した老農夫の姿が浮かびます。 秋:荷台越しに眺める夕日。“積む”という表現がいい。 葱:働き者に幸あれ!)
二席
●しばらくは雛の視線の在りし部屋=朱河
◎虹,資、茶○砂、十、ぼ、白、修△葱、雪、香、し=23点
(虹:守られているような。 十:雛納の後にも残る殺気めいたものが雛人形にはある。 ぼ:上手い。確かに人形にも命がある。 茶:「雛人形」の視線に着眼したところが妙だと思いました。 白:お雛さまは片付けてしまったけれど。 修:空っぽになった部屋に雛壇が見えてきます。 葱:「しばらくは」には賛否あるかもしれません。香:雛の視線に着目したところがいいてすね。 し:人形の目気になりますよね。)
三席
●腕のない石膏像や春の風邪=葱男
◎朱、水○や、秀、ラ△久、十、資、修=16点
(朱:不完全な形状の石膏像とその肌の白さが春の風邪と微妙なバランスで合っていると思いました。好きなセンスです。 水:シャキッとしない躰のもどかしさが腕のない石膏像に現れているようです。 や:油断して肌を出し過ぎれば風邪を引く。 秀:「腕のない石膏像」にどきっとさせられますが、季語が納得させてくれました。 ラ:取り合わせの妙が感じられます。 十:トルソーと春の風邪の取り合わせがいい。 修:春の風邪の見苦しくない感じがよく伝わってきます。)
【入選】
●朧夜にラー油を少し足してみる=ラスカル
◎ま、ぼ○し、修△朱、十=12点
(ま:ラー油とは!でもラー油がぴったり合って、お見事です。 ぼ:不思議で面白い!ユニークさを買います。 し:〆のラーメンに? 修:視覚?味覚おもしろし。 十:「朧夜」は「のやうなぼんやりした料理」の隠喩(?)。理解ではなく感じる句。)
●梅真白港の音の上り来る=秀子
○ま、村、ぶ△砂、清、ラ、ス、茶=11点
(ま:梅の香、港の音も聞こえ小高い丘の春の景色がくっきりと気持ち良くみえます。 村:高台へ港のざわざわが伝わり見える。 ぶ:尾道かどこかを舞台にした映画のワンシーンみたいです。 清:高台にある梅林を港の音が包む。 ラ:「上り来る」が上手い! 丘の上なのだと分かります。 茶:音は海風が運ぶのでしょう。その風が見えました。)
●すべすべのベンチの木目鳥の恋=秀子
○虹、村、雪、ラ△葱、十、修=11点
(村:ストレートな描写と季語の取り合せが面白い。 ラ:「木」と「鳥」が、よく照応しています。 葱:都会のビルの谷間の小さな公園を想像します。 十:すべすべになるまで、多くの男女が坐ったためなのでしょうか(?) 修:初々しいベンチの二人を想像しました。)
●手のひらにしまふ言の葉囀れり=まさこ
◎や○朱、メ△十、紅、ス、香=11点
(や:手のひらの皮膚感覚、妙なり。 十:言わずもがなの言葉を呑み込もうとしても出てきてしまう一瞬。 紅:上五、中七がとても素敵です。季語との対比も考えられていますね。 香:囀りとは正反対に口をつぐんでしまう。暫くは囀りを聞いてようと?)
●冴返る監視カメラの奥の闇=清一
◎秋○資、水△秀、ぼ、五=10点
(秋:世情を考えれば必要な物なのですが…。現代版「壁に耳あり障子に目あり」 水:監視カメラは有用なのか怖いものなのか。 秀:「監視カメラ」の句はよく見ますが、「奥の闇」まで言ったのがよかった。 ぼ:現代の不気味さ。)
●下萌やわが背を超える治水の碑=十五
○久、紅、喋△や、五=8点
(紅:昔、その辺りは大きな水害があったのでしょう。そして今は治水のお陰で、みどり豊かな地になったのでしょうね。 や:河畔に立てば来し方行く末が思いやられる。)
●そやなあが口癖の人山笑ふ=ラスカル
◎葱○し△秀、ま、茶=8点
(葱:他人の言を消して真っ向から否定しない人っていいですよね。世俗の中に居て悟っている人かも。 し:お人柄も良さそう。 秀:これ以上俗に傾いたら、取りにくくなるんですが、俳味と詩情のバランスがよかった。 ま:つい話しかけたくなるようなお人柄なのでしょう。季語も良いですね。 茶:「そやなあ」って言いたくなりました。)
●浪やさし春の渚を裏返す=朱河
◎メ○喋△虹、や、葱=8点
(や:おなし浪でも心の中では春爛漫の浪となる。 葱:波が返すときに水面が裏返ったように見えることがありますね。確かに激しい波より穏やかな波のときに感じます。)
●恍惚と昏れゆく海や春の酒=ぼくる
◎修○葱△秋、喋=7点
(修:酒のためか春のせいか気持ち良さそう! 葱:酒飲みにはたまりません。 秋:ゆらゆらほろ酔い気分なのかな。)
●地下鉄の上に地下鉄冴え返る=十志夫
○秀、香△葱,雪、資=7点
(秀:幾層にも重なりながら、地下はひろがっているんですよね。季語が効いてると思いました。 香:東京の地下鉄の重なり、最低は10数センチしかないらしいですよ。 葱:東京の地下鉄の模型を見てビックリしました!)
●目薬の鼻へと流る初音かな=紅椿
◎清○ま、ぶ=7点
(清:思わず初音を聞いて目薬を注す手が止まる、日常の中の非日常を上手く描いた。 ま:ツーンと鼻に落ちる目薬と初音の取り合わせがゆるやかに響いて来ました。 ぶ:人体を使って微妙な感覚を巧みな描写できていると思う。)
●笑顔には笑顔が返り土筆ん坊=やんま
○資、香△清、ま=6点
(香:土筆からの発想がすばらしい。 清:土筆はいつも合う度に挨拶をして呉れそう。 ま:土筆の野を行き交う人の和やかさ、温かみが伝わってきます。土筆ん坊がよいですね。)
●鬼は外にらむでもなく鰯の目=秋波
◎喋、し=6点
(し:鰯の目かわいいですよね。にらむでもなくが面白い。)
●草萌えや園児がかこむ老神父=ぼくる
△村、ラ、資、水、し、ぶ=6点
(村:ほのぼのとした雰囲気。 ラ:作者の心の優しさが伝わってきます。 水:草萌えによって園児たちと老神父の暖かい交流が見えてきます。 し:とても良い友人だった神父様を思い出しました。 ぶ:老神父が生きてる。)
●抱くやうに奏でるギター春寒し=雪絵
◎紅○虹△水=6点
(紅:ちょっと寂しいけど、暖かい。とても好きなお句です。何の曲を弾かれているのでしょう? 水:路上ライブなのかしら。)
●ぶらんこに腰掛けてゐるギプスの子=ラスカル
○久△秀、葱、雪、ス=6点
(秀:お友達が遊んでるのを見てるんでしょうか。「ギプス」がよかった。 葱:何故そこに座っているのか、気になります。)
●まんさくの花より朝を告げらるる=香久夜
◎ら○や△虹=6点
(ラ:まず咲くまんさくの花。素敵な朝ですね♪ や:不意打ちの様な春の訪れ。)
●国境の壁を眼下に鳥帰る=清一
○砂、白△ス=5点
(白:移民でなく、移鳥。法律無用。)
●バス待ちのコートの陰の余寒かな=久郎兎
◎砂○秋=5点
(秋:春はもう少し先。)
●選りあぐむ苞の和菓子や春の雪=十志夫
○朱△ぼ、水=4点
(ぼ:なんだか幸せな気持になる。 水:様々なお菓子の淡い色合いと雪の白が美しい。)
●転校の今朝のためらひ沈丁花=まさこ
△朱、白、茶、メ=4点
(白:転校生の心情が思いやられます。 茶:「ためらひ」はつき過ぎのようにも思いましたが、取り合せがよいと思います。)
●木板の絵踏みのマリアうつすらと=スライトリ・マッド
◎雪△十=4点
(雪:信者の哀しい歴史が偲ばれます。 十:記念館でみた踏み絵の版画なのでしょうか。「うつすらと」に時代の経過がうかがえます。)
●野菜色のくわりんたう食む春の風邪=雪絵
○茶△朱、葱=4点
(葱:野菜色とわざとぼやかした表現が季語に合っている。 茶: ビタミンをどう摂取するか。「くわりんたう」でしょ。好物に限りますね。)
●余寒なほ鳥のさらひし鯉の餌=紅椿
◎久△秋=4点
●あみだ籤たどるがごとき受験かな=十志夫
○五△白=3点
(白:どの問題から手を付けようか。)
●凍解けの星や失くせしイヤリング=水音
○雪△ぶ=3点
(ぶ:かっこいい楽曲を聴いてるみたいです。)
●暗闇に光りし殺気猫の恋=メゴチ
◎白=3点
(白:闘争心の凄さ。)
●建国の日やヒーローの決め台詞=紅椿
○十△し=3点
(十:季語と後半の「ヒーロー」以下の微妙な離れ具合が秀逸。 し:子供達と楽しい休日を過ごしているのかしら。)
●たんぽぽの絮飛ぶほんのこれくらい=秀子
◎村=3点
(村:素っ気なさが逆にあれこれ思わせる。)
●地から湧く如き音色や涅槃西風=しゃが
○ス△メ=3点
●鉢植えの土のめくれや春浅し=メゴチ
○茶△十=3点
(十:「土のめくれ」の把握が巧み。 茶: 「めくれ」にスポットを当てられた点がよいと思います。)
●分校の子らに雪解の雫かな=ぼくる
△久、紅、ぶ=3点
(紅:雪の中でも、元気に遊ぶ子供たち、この分校がいつまでも続きますように。 ぶ:長かった冬をみんなで越した懐かしい思い出。)
●あたたかや突張り男のカプチーノ=葱男
○清=2点
(清:突っ張り男とカプチーノの取り合わせが面白い。)
●あたたかや陽だまりを来し羽ならば=虹魚
○清=2点
(清:陽だまりの羽が如何にも暖かそうです。)
●朧夜の頬杖に聴く汽車の音=やんま
△清、喋=2点
(清:少年の頃聞いた汽笛の音を回想させる。)
●遮断機の下りたるあわい寒明くる=スライトリ・マッド
△砂、清=2点
(清:日々の遮断機の音、いつの間にやら寒明けを迎える。)
●すつぴんを通し筑紫の山笑ふ=五六二三斎
△葱、白=2点
(葱:山が「すつぴん」というのが面白い。秋の山は化粧して冬の間はその化粧を落としてスッピンだったのだろう。春になればパフぐらい叩きそう(^^) 白:潔い!)
●大吉てふ猫はずっこけ二月尽=水音
○葱=2点
(葱:「あさイチ」で華丸大吉はブレイクしましたね、博多もんの自慢です。)
●浅春や人来て消ゆる都府楼址=砂太
△修、五=2点
(修:淡い映像を見ているよう。)
●春めきてメトロは赤く丸くなる=資料官
○五=2点
●平成終る倒木多き春の山=修一
△ま、秋=2点
(ま:災害が多く倒木もそのまま春を迎え、また、世の中では国会議員などもたくさん倒木のごと、とも取れ現代への警鐘かと。)
●浮かれ猫闇に即興ラブソング=しゃが
△清=1点
(清:恋猫は必至のパッチなのが良く出ている。)
●川やなぎ着物姿とすれ違う=白馬
△ぼ=1点
(ぼ:好みです。この日本的情緒。)
●教室に秘めし菓子の香バレンタイン=茶輪子
△メ=1点
●後掲の小さき文字列匂鳥=十五
△紅=1点
(紅:難しい場面を句にされていて、感心しました。)
●佐保姫を迎えに鴎群れ為して=朱河
△香=1点
(香:春の女神の裾の形に飛んでるようです。)
●ジェット機の余寒振り切り離陸せり=裕
△葱=1点
(葱:中七の感性に一票。)
●しつっこくじゃれ来る猫や春の風邪=やんま
△ラ=1点
(ラ:可愛い〜♪)
●しゃぼん玉刻の彼方の虚空へと=清一
△喋=1点
●春塵や校門わきのビラ配り=茶輪子
△村=1点
(村:予備校募集か?)
●税務署の扉重たき春の昼=裕
△十=1点
(十:扉も重いし、気分も重い(?))
●春しぐれ弁当開く廃寺跡=修一
△村=1点
(村:よく人が訪れ雨除けもあるかも。)
●一つだけ小さきつぼみの落椿=五六二三斎
△久=1点
●人をればみな友春の花愛づる=虹魚
△砂=1点
●よく曇る電車の窓や春の雨=五六二三斎
△や=1点
(や:季節の変わり目が可視化される。)
●風に聞く椿の落花夜更け道=久郎兎
△虹=1点
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