*A部門入選作発表*


当季雑詠=全88投句(入選58句)

【特選】

一席
●陽炎や地球は大き玉手箱=ラスカル


◎清、秋、ぼ○葱、虹、水△十、喋、紅=18点
(清:宇宙空間に陽炎の様に浮かぶ地球を玉手箱にした所が面白い。 秋:納得! ぼ:そうなんだ、この世は。地球も。 葱:ほんと、何が飛び出してくるか分かりませんね。怖いものが飛び出さないように祈りましょう。 虹:45億年の歴史。人生は一瞬。 水:輪郭のぼやけた感が何かを期待させる。 十:言われてみればそんな気がする。 紅:メルヘンチックなのですが、奥が深いような・・。)


一席
●筆筒にその日を収め啄木忌=十五


◎秀、ス、し○雪、ま、秋△十、砂、資=18点
(十:「その日を収め」の「その日」は俳句か短歌を指すのだろう。 し:こういう表現に憧れます!! ま:上五中七が啄木忌と響き合っています。その日を収めがよいですね。 秋:日記でしょうか。 資:その日を収めが啄木忌という季語に妙に合っている。)


三席
●元号が変はるよ蝶が生まれるよ=ラスカル


◎水、朱、紅○葱、清△ス=14点
(水:軽やかな感じ。 紅:対句がお見事、期待感が高まります。 白:三語が互いに呼応して、詩となりましたね。 朱:何よりリズムが良い。口語の成功、蝶が生まれると言う季語との取り合わせの発見。 葱:新元号を詠んだ句の中では一番。 清:元号が変わっても人々の暮らしは変わらないが、令和元年に生まれる蝶と赤子。)


【入選】

●曳かれゆく波の爪痕さくら貝=十志夫
◎虹、メ〇裕、し△ラ、香、遊=13点
(虹:どこか艶っぽい、大人のストーリー。 裕:美しい光景。 し:波の爪痕、いいですね。ちょっと色っぽさもあって好きです。 ラ:「波の爪痕」という表現が巧みです。 香:津波の襲った海岸にも、今、さくら貝が。 遊:忘れてはならない鎮魂。)

●ゆつくりとはづす眼鏡や四月尽=紅椿
◎や、ま、資○秀△村、朱=13点
(やんま:春の名残は眼裏に。 資:(何かを読み終わり眼鏡を外すしぐさと厳かな代替わりをうまく取り合わせている。 ま:今年は特に四月尽が効いていると思います。ゆつくりとが良い。 村:新旧の時代を思ってしみじみとした時間か。 朱:上手く言えないが好きな句。)

●花は葉に友は千鳥と風になる=葱男
○ぼ、水、香、朱、遊△ま、秋=12点
(葱:5月1日・白鴨忌。 ぼ:追悼の思い、せつせつたり。 水:今年もまた巡ってきたのですね。 香:薫風になってるでしょうか。 朱:無き友への想い、季語との調和。またリズムが良い。 遊:永遠の友情。 ま:風になっていらっしゃいますね。)

●朧夜のバンドネオンの吐息かな=裕
◎五○ラ、白、ま△清、修=11点
(ラ:「朧」と「吐息」が即き過ぎるくらいにぴったり。 清:タンゴのときの楽器のバンドネオン好きな音色だ。朧夜がよく似合う。 ま: 吐息が佳く、朧夜と合っていて好きです。 修:ブエノスアイレスの冬は良かった!)

●キャンディの溶けゆく時間花の時=水音
◎雪、裕○メ△十、資=10点
(雪:今年は花の期間が長かったように思います。キャンディもゆっくり溶けていったでしょう。素敵な表現です。 裕:いかにも春ののんびりしている感じです。 十:いずれも一瞬の時。儚さの表出。)

●桜しべ降る何処からか水の音=紅椿
○十、秀、虹、遊△や、ま=10点
(十:石清水か小川か。一気に自然のひろがりが出た。 虹:作者がどこに立っているのか想像に楽しい。 遊:正統的な俳句の世界に遊ばせてもらいました。 やんま:視覚も聴覚も安らぐ。 ま:静かでとても美しい景、心穏やかに花の下に居らっしゃるのですね。)

●警策の響く僧堂鳥交る=清一
◎香○砂△秀、雪、朱、遊=9点
(香:座禅のモチーフが新鮮です。 朱:座禅の無の静けさと鳥の交りの叫ぶような音の対比で面白い。 遊:聖と性・詩と禅の融合。)

●花筏ボートの水脈にまた寄りぬ=白馬
◎ラ○十、資△や、ぼ=9点
(ラ:確かな写生眼が感じられます。 十:微細な景を巧く捉えている。 資:花筏の微妙な動きをうまく捉えている。 やんま:拡散して収束する。 ぼ:映像が眼に浮かぶ、動きも。)

●燥い(はしゃい)でも孤独は孤独告天子=朱河
○清、砂、白△十、紅=8点
(清:雲雀が燥いでいるときも人は皆孤独なもの繋がりを求めるもの。 白:成程。高みで孤独。 十:諧謔味があり。 紅:季語が効いていると思います)

●花菜雨隣の家の「猫忌中」=朱河
○子、ス、茶△雪、し=8点
(茶:告知紙を「」で表現している点の工夫に。 し:猫忌中というのを初めて知りました。今時ですね。)

●古書店に学ラン一人花の雨=ぼくる
○ラ、五△村、裕、遊=7点
(ラ:「学ラン」の存在感が際立っています。 村:半世紀前の自分を思う。 裕:学ラン一人 がいいです。 遊:バンカラの青春と風雅の出会い。)

●テロリストの卓布は真白朝桜=秀子
◎十、遊△修=7点
(十:観念の句だが、卓布の白とその後におこる血の海の対比が恐ろしい。 遊:ゴッドファーザーの愛のテーマとか聞こえてきそうです。 修:原子炉の句とずいぶん違う感じ。格好よく感じてしまう。朝桜が効いている。)

●友よ来よ今散る花と酒五合=砂太
○ぼ、朱、紅△葱=7点
(ぼ:行きます、行きます! 紅:今を楽しむ事の大切さ。 朱:酒飲みとしては深く胸に沁みる句。 葱:7日の「博多句会」への挨拶句でもあります。)

●老いぼれてたまるか登る花の山=ぼくる
◎砂○五△朱=6点
(朱:口語によって更に力強さを感じさせる句。)

●囀りや既読のあとの沈黙に=遊歩
◎久△虹、ま、喋=6点
(ま:待つ間の沈黙の最中に聞こえてくる鳥の声、ことさら大きく響いて来るようです。よく分かります。)

●ジョーカーを爪で弾いて春深し=秀子
◎茶△ラ、ぼ、久=6点
(ラ:上五中七のフレーズが魅力的。「春深し」より、もっと適切な季語がありそうな感じがします。 ぼ:トランプの? 何だか面白い。 茶:ここが思案どころ。まさに深しです。)

●瞬きの中をつばくろ雨来たる=久郎兎
○や、資△虹、メ=6点
(やんま:一瞬の光線。 資:つばめが低く飛ぶと雨ということわざをうまく使っている動きのある句。)

●鳥の影追ふて自転車日永かな=茶輪子
○雪△ま、修、朱=5点
(修:しまなみ海道こんな感じでした。 ま:自転車でふら〜と出かけたくなる時期ですね、なんと気持ち良い! 朱:景としてはとても佳い句と思うが語順が推敲かと、例として「銀輪の鳥影を追ふ日永かな」。)

●洗礼を受くるごと桜トンネル=香久夜
○久△葱、水、資=5点
(葱:題材でいただきました。 水:「洗礼を受くるごと」がいい。 資:洗礼とはそんなものかと妙に納得。)

●花冷や採血の針沈みゆく=十志夫
○村△砂、メ、朱=5点
(村:季語と下五でいかにも。 朱:季語との取り合わせの妙。)

●春おぼろ島より見ゆる原子炉よ=スライトリ・マッド
○修、香△久=5点
(修:不安感が写生的な感じでよく表されていると思いました。 香:どこも危うさが伴います。)

●顔のなき小さき小法師や養花天=スライトリ・マッド
◎修△茶=4点
(修:何か形となる前、起きる前のエネルギーのようなものを感じました。 茶: Kの多用のリズムにいただきました。)

●鍵付きの中世の書や鐘霞む=しゃが
○茶△十、清=4点
( 茶:謎、迷路、「鍵」に「霞む」の取り合わが、すっきりと。十:どこか美術館の景だろうか。中世と鐘が響き合う。 清:中世は暗黒時代鍵付きの書が流行る霞の季語も効いている。)

●ギロチンへ向かふ心地や新樹光=遊歩
◎白△秀=4点
(白:眩しい未来はその向こうに。心情が思いやられます。)

●茎立ちや愛がちりちりひからびて=秀子
○喋△十、紅=4点
(十:「ちりちり」で句意がリアルに立ち上がってきた。 紅:せつない。)

●巣燕を守りし夫婦の老いにけり=紅椿
◎村△白=4点
(村:永年生活の癒やしだったのでしょう。 白:いつまでも優しいご夫婦です。)

●残されて一本白き葱の声=砂太
○村△葱、久=4点
(村:葱の声という季語があるのかわかりませんが堂々たる葱坊主が見える。 葱:どのようにも読めますが、内容より形でキレイ。)

●花筏母ゆふらりと振り返る=まさこ
◎喋△秀=4点

●飛花落花何に目を剥く阿修羅像=やんま
△砂、ぼ、朱、し=4点
(ぼ:きっと見惚れているのでしょう。 朱:阿修羅像の視点と飛花落花の動きの取り合わせの妙。 し:何に目を剥いているのでしょうね。私も知りたい。)

●富士山に雲ひとつなし桃の花=資料官
◎子△白=4点
(白:富士山と桃の花は綺麗な感じですね。)

●ふらここの持つ手はぎゅっと一年生=久郎兎
△雪、裕、香、茶=4点
(裕:新一年生の元気な声が聞こえます。 香:まだ幼い一年生の感じがよく表されています。 茶:可愛らしい手がひょいと浮かびました。)

●満開の桜をダウンロードする=虹魚
◎葱△五=4点
(葱:自分の眼と記憶の中にダウンロードする満開の桜、鮮烈な生の在り様!)

●見舞つては見送られして燕の巣=茶輪子
△十、秋、ス、朱=4点
(十:よくある景。中7の「して」が少し緩い感じもする。 秋:こういうことが増えました。 朱:季語の選択が良い、しかし上五中七は違う言い方が出来るような気もする。)

●伶人の両性具有春の月=葱男
○秋、ス=4点
(秋:雅楽の音色や楽人の中性的なイメージを表現したと思うのですが、実際は?)

●明け方の夢の疲れや春疾風=十五
○や△水=3点
(やんま:風の音に夢でも疲れる。 水:朝の倦怠感は強風で払拭されない。)

●古代アンデスのチチャ注ぐ音や貎よ鳥=しゃが
○修△清=3点
(修:かおよどりという季語がよく合っていて絵本を見ているよう。 清:チチャと言うアンデスの古来よりの酒を嗜み空を飛んでいる貌鳥を仰ぐ。)

●春暁の吐息は時代またぎけり=十志夫
△虹、メ、秋=3点
(秋:今しか詠めない句。)

●逃水や宛名漂流郵便局=清一
○喋△朱=3点
(朱:面白いが郵便局?では漂流感が今ひとつか…郵便夫ではどうかと一考。)

●風光る少女の足へ水かげろふ=まさこ
○し=2点
(し:美しいアニメ映画を観ているよう。)

●乾杯を赤と黄のチューリップにて=虹魚
△喋、ス=2点

●競技場の文字盤時計風光る=雪絵
△葱、水=2点
(葱:清一さんの教え子の桐生君、がんばってますね。 水:若い人たちが躍動する感じが見える。)

●護摩祈願の読経流るる牡丹園=資料官
△修、五=2点
(修:漢字が多く重厚な感じ、季語もピッタリ。)

●囀りのいよよ高まり令和来る=ラスカル ○紅=2点 (紅:タイムリー!)

●花の雨潮の香りの文学館=まさこ
△葱、茶=2点
(葱:まさに映画のワンシーンですね、鎌倉あたりか? 茶:つき過ぎのようにもおもいましたが、かえって現実味があると思いました。) ●花の夜や工事了へたる男酒=ぼくる
△ラ、し=2点
(ラ:「花の夜」と「男酒」のミスマッチが面白いです。 し:旨そうな酒です!!)

●道草の菜の花摘みや数へ歌=久郎兎
○子=2点

●行く春の北より寄する波頭=雪絵
△子、メ=2点

●神田川渡る都電や飛花落花=資料官
△葱=1点
(葱:素直な写生で好感が持てます、やはり「神田川」がいいのかな?)

●桜散る野心無き身をもて余し=朱河
△白=1点
(白:済んでしまった過去。)

●四月馬鹿かつぽれ道場覗き見す=やんま
△裕=1点
(裕:かっぽれって興味惹かれますよね。)

●少女らの夢の語らひ八重桜=雪絵
△遊=1点
(遊:本当に八重桜ってそんな感じです。)

●清流や夢に向かひて花一輪=白馬
△子=1点

●誰が弾く桜月夜のフォークギター=虹魚
△や=1点
(やんま:気分も高揚して)

●馬鈴薯の強き芽二つづつ残す=修一
△子=1点

●蕗味噌と黒豆もらい一人飯=子白
△香=1点
(香:侘しくも美味しそうなご飯です!)

●平成の記憶残して春行かむ=メゴチ
△五=1点


A部門入選作〈back number〉

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