*A部門入選作発表*


当季雑詠=全93投句(入選68句)

【特選】

一席
●蹴上りや入道雲の裏がへる=十志夫


◎資、虹、遊、メ、朱○砂、白、裕、雪、水△清=26点
(資:一瞬逆さまになる入道雲を良く捉えている。 虹:夏を夏らしく詠み切った佳句。 白: 下5の表現が良いですね。 遊:高校の授業で必修で独り特訓しました。 朱:素直な正攻法な句だけれど季語を活かしている秀句だと思います。 裕:蹴上がりを頑張った頃が懐かしいです。 水:裏返った人から見れば、、、 清:鉄棒で逆上がりした風景を良く描いている。)


二席
●木琴はさかなのかたち大南風=雪絵


◎葱○ラ、十、清、五、朱△紅=14点
(葱:南の島の民族楽器のようです。 ラ:珍しい形の木琴。「大南風」が利いています。 十:そう見えたのか?実際にあるのでしょうか?ほのぼのとした句。 清:魚の形をした魚鼓のような木琴、大南風の音と混ざる。 朱:子供用の木琴って確かに魚の様な形。小さな発見と大きな季語で成功した作品だと思います。これも特選にしたい作品でした。 紅:言われてみれば確かに・・。)


三席
●海沿いのチャンポンの店古団扇=スライトリ・マッド


◎茶、喋○ラ△子、葱、水、雪=12点
(茶:グローバルな感じと風情がいいです。映画のワンシーンのよう。 ラ:古団扇の存在感が際立っています。 葱:あるあるの風景。 水:糸島の古い建物、脂ぎった店内、古い団扇、でも美味しい。)  


三席
●風鈴のりんで忘れし事一つ=やんま


◎入、智○ま△葱、清、秋、朱=12点
(智:最近こう言う事が良くあります。風鈴の例えが涼やか。 ま:佳い音色に聞きほれてた瞬間の出来事、その音を聞きたかったです。 葱:人は少しずつ「無」に還ってゆくのだろう。 清:歳を取ると忘れっぽくなり風鈴の音にも気を取られる。 秋:本当にちょっとしたことで今聞いていた事がとんでしまう。溜息出そう。 朱:一元俳句と見て涼やかな写生。)


【入選】

●浮いて来い人は生まれて一度きり=朱河
◎ぼ○資、し、修、智=11点点
(ぼ:そうだよねえ。共感しきり。 し:季語がいいですね。その通り! 智:本当にその通り。サラッと言い得てます。)

金星に人棲むやうな極暑かな=虹魚
◎水○村、紅、喋△し=10点
(水:毎日本当に暑い。ここは金星だったのか。 村:大胆な比喩が秀逸。 紅:本当に暑そう! し:まさにそうですね、参ってます。)

●収骨の中よりボルト梅雨寒し=十志夫
○裕、水△虹、茶、修、喋、朱、香=10点
(裕:悲しさがこみ上げてきます。 水:手術したことを後悔していた父のボルトを見た時のなんとも言えない気分。 茶:ボルトの冷ややかな感じが季語にしっくりきます。 朱:これは体験がないと生まれない句かな、季語の選択が成功。 香:見るとびっくりします。)

●豆飯の湯気や杓文字の切返し=入鈴
○遊、修、香△砂、朱、雪、五=10点
(遊:豆飯の鮮やかに浮かび上がった。 香:杓文字にピントを合わせたところが独特。 朱:炊きたてを表現するのに杓文字の切り返し、とは上手いなと思いました。)

●裏庭に獣の気配旱星=水音
○砂、清△遊、茶、紅、ぼ=8点
(清:私宅も色々な獣の出る場所にあり共感の一句。 遊:季語のあっせんにより上五中七がビビットになりました。 茶:気候が餌不足を引き起こす。人為の業こそ恐ろしいです。 紅:草むらからザサザサ音がしそうです。 ぼ:季語が効いていて、ムードあり。)

●熊蝉や粉末ジュース真つ赤つ赤=ラスカル
◎紅○秋、朱△十=8点
(紅:子供の頃を鮮明に思い出しました。 秋:まっかっか、リズムの良さでとりました。 朱:チャレンジな発想力だが面白い。真っ赤っ赤か効いている。特選にしようか迷いました。 十:エノケンがCMでやっていた「ワタナベの〜」。人工的に色でしたね。季語が微妙に合っている。)

●みつ編みの少しほつれて遠花火=まさこ
◎清○ぼ△白、茶、始=8点
(清:くるくると遠くを見渡す三つ編みの少女、遠花火の季語が効いている佳句。 白:可愛い娘。 茶:遠近の視点とみつ編みもまた火花を散らしているように。 ぼ:谷内六郎の世界、初恋の感じも少し。 始: いかにも俳句らしい、なんだか名句。)

●運転手の視線ぶつかりあう炎天=裕
◎村○虹△ラ、し=7点
(村:現代のゆとりを失った世相に季語ぴたり。 虹:いかにも暑苦しい。 ラ:視線に熱い火花が飛び散っていたりして(笑) し:暑い街、運転もイライラしますよね。)

●夏空や木蔭に眠る修道女=ぼくる
◎修○子、や=7点
(修:修道女が健やかな少女のように見えてきます。 や:この道に入りし訳は秘密。)

●ワタクシの転がってゐる夏座敷=遊歩
○ぼ、始△や、紅、メ=7点
(ぼ:とぼけていて、可笑しい。 始:最近座敷は少なくなったけど、やや投げやりなところが面白い。  や:どうしようもない肉塊。 紅:難しいお句ですが、この「ワタクシ」が本当の私? )

●からつぽのままの菓子鉢昼寝覚=ラスカル
◎雪△砂、や、朱=6点
(雪:昼寝から覚めた時の何とも言えない感覚!表現が面白い。 や:惰性で生きている。 朱:昼寝覚からの空っぽへの視線が成功。)

●傷口のぱつくり開いてゐる海月=ラスカル
○清、白△葱、裕=6点
(清:傷口がどこか分からない海月、詠者の心境か。 白: 痛くないだろうか。 葱:痛みは感じないのだろう、妙に落ち着いて見える。 裕:夏の終わりのような情景で、なにか寂しいです。)

●梅雨明けや初まご頬に陽のにほひ=茶輪子
◎砂、香=6点
(香:陽のにほひが、いかにも初々しい。)

●カチコチと音のうるさき熱帯夜=メゴチ
◎や△葱、水=5点
(や:眠れない一夜。 村:扇風機か目覚ましか季節感あり。 水:寝られないときはとても音が大きい。)

●空港の足湯に並ぶ登山靴=スライトリ・マッド
△ラ、十、五、メ、雪=5点
(ラ:下五の展開に意外性があります。 十:空港でない方がいいと思ったが、その意外性がいいのかも。)

●黒服のをんな五人のビアホール=朱河
◎十△ま、ぼ=5点
(十:葬儀帰りのビアホールという哀しみから日常への転換がいい。 ま:バーではなくてビアホールへがきどりがなくて良い。今時の女性のありようですね。 ぼ:魔女達かも、面白い。)

●高らかに燃ゆるカンナや空と海=ぼくる
◎秋△子、遊=5点
(秋:盛夏! 遊:単にカンナが好きなのですが、空海も思いましたw)

●廃線の駅舎を隠す鉄葎=智雪
○香△十、遊、喋=5点
(香:鉄葎という言葉で、詠みたい景色に個性が見えます。 十:「鉄葎(かなむぐら)」という植物季語をはじめて知りました。 遊:鉄葎を初めて知りました。)

●ひかみなり神獣孕むをみな在り=葱男
◎し○や=5点
(し:こういう世界観好きです。神獣孕むがいいですね。 や:如何なる人物やら。)

●ヘルパーが見違ふほどの浴衣着て=虹魚
○始△資、白、入=5点
(始:個人宅訪問でなら稀有な現象。 資:どこかでばったり会ったのでしょうか。 白: ほーと思った。)

●紫陽花のステンドグラス灯る朝=五六二三斎
◎裕△喋=4点
(裕:紫陽花をステンドグラスに見立てた景は素敵です。)

●空蝉の縋りついてる幹太し=白馬
〇五、喋=4点

●餃子に歓声子ども食堂の夏=秋波
○十、ま=4点
(十:現代的かつ社会的な素材。景が浮かぶ。 ま:子ども食堂、増えているのですね。子どもたちの喜ぶ様子がありありと目に浮かびます。)

●限界集落の空っぽのプール=智雪
○村△ま、ぼ=4点
(村:閉校になった小学校のプールこれも現代。 ま:今時のさみしい景ですね。地方からどんどん子供の姿が見えなくなっていきますね。 ぼ:何とも、深刻です。)

●関取の蹲踞の像や雲の峰=雪絵
○葱△虹、裕=4点
(葱:下から上に、ググググっと睨みあげる力士像の姿が季語にぴったりです。 裕:川崎大師に北の湖の像がありました。)

●突き指を冷やしてゐたる海の家=紅椿
◎ラ△雪=4点
(ラ:ビーチバレーの熱戦の後でしょうか。)

●母の忌やおとうとたちと鰻食ふ=資料官
○茶△葱、ま=4点
(茶:兄でも妹でもなく「おとうと」がいいと思います。 葱:小津安の映像にあるような静かな風景。リアリティと生活感に溢れています。 ま:なにげない風景に、お母様への気持ちと家族がつながっている温かさが伝わって来ます。)

●暇さうな外野にキャンデ―売りの鉦=十志夫
○白△ラ、香=4点
(白: 草野球のシーン。私にも経験があります。ラ:キャンデー売りの鉦、懐かしい〜♪ 香:おもしろい。草野球ののんびりした風景。)

●夕涼や佳人の巡る神の庭=ぼくる
○資△や、智=4点
(や:わが悪童にひがみ心が。 智:浴衣の似合う佳人が目に浮かびます。)

●夕立のにほい流れてペダルこぐ=メゴチ
○遊△裕、し=4点
(遊:茶輪子さんかなぁ〜。 裕:夕立が来るのってわかりますよね。 し:子供の頃思い出します。)

●雷鳥の大きな影よガスの尾根=修一
◎五△葱=4点
(葱:剣岳に登った時に目撃しました。)

●アスファルト灼けて佇むジャコメッティ=智雪
○葱△朱=3点
(葱:ジャコメッティのあの、痩せさらばえた塑像はいかにも灼熱の大都市の孤独を表現しているかのようだ。 朱:ジャコメッティは確かにそういう感じ。)

●申年の父のたましひ百日紅=五六二三斎
○秋△資=3点
(資:サルにサル。うちも大正9年生まれ。)

●七月や連合チームの夢と汗=秋波
◎白=3点
(白: 野球を通していろいろな友達が出来た!)

●砂粒と背中の日焼け蚊遣香=水音
◎子=3点

●晩夏なり立て看消ゆる大学門=葱男
△村、秋、始=3点
(村:夏休み新学期前の寂寥感、消えしがいいかも。 秋:季語との取り合わせがいいと思う。 始:そうでうね、京都大学は。ただまだ晩夏じゃないかもしれない。)

●万緑を萎えさせている高気圧=裕
○メ△水=3点
(水:私も萎えています。)

●町中の植田に風の生まれけり=修一
◎ま=3点
(ま:町中の喧騒の中に見つけた静けさ、さわやかさが、とても心地よいです。)

●よくしなる竹箸で盛る梅雨穴子=まさこ
△資、入、修=3点
(資:よくしなる竹の箸が良い。)

●世直しの熱弁さやか誘蛾灯=清一
◎始=3点
(始:れいわ新選組とも断言できないが。)

●わが家にてつくるトマトの厚き皮=始祖鳥
○茶△入=3点
(茶:「厚き」が効いてますね。)

●空蝉となりて時空の檻に入る=清一
△香、智=2点
(香:時空の檻、すごい発想です。 智:自由すら時空の檻の中での事。)

●風孕む夏シャツにモンナリーザ=スライトリ・マッド
○修=2点

●歯を磨く朝も早から蝉時雨=香久夜
〇入=2点

●日焼けした脚大胆にビーチの夜=しゃが
△砂、子=2点

●向日葵や異口同音の黄信号=清一
○メ=2点

●風鈴のリンや嬰児に片笑窪=やんま
〇入=2点

●真黒な鋸岳や霧の空=修一
○虹=2点
(虹:「真っ黒」と言い切る屈託のない一句。)

●木星は瞬かぬ星バンガロー=虹魚
○紅=2点
(紅:改めて、木犀を眺めてみたくなりました。)

●ややこしき恋の一句や夜の秋=やんま
○し=2点
(し:その句読んでみたいです。)

●行く夏や声なき鵙のシルエット=遊歩
○智=2点
(智:シルエットが郷愁を誘います。)

●朝顔へまづコップ水話しかける=入鈴
△メ=1点

●雨蛙いのちの時を弾ませて=遊歩
△葱=1点
(葱:弾ませて、でいただきました。)

●鰻食ひ且つ呑み男ひとくさり=十五
△朱=1点
(朱:ひとくさりの自虐的な落ちがいいかなと。)

●老ゐ得ては二鉢程の日々草=入鈴
△秋=1点
(秋:中七の程ほどな感じがいい。)

●老楽の何は扨置く昼寝かな=十五
△五=1点

●街宣に炎ゆる民衆新宿西口=葱男
△子=1点

●交替の舁き手吸ひ込む朝の山笠=砂太
△葱=1点
( 葱:吸い込む、が人の動きをうまく捉えている。)

●日曜の朝の校庭羽抜鳥=十五
△清=1点
(清:日曜の校庭を宿直の先生が見た風景だろうか。)

●凌霄花の奥に廃屋ありにけり=白馬
△十=1点
(十:最近の空家問題は深刻。)

●一夜さの「甘い生活」蚊火燃ゆる=しゃが
△葱=1点
(葱:バレ句ではあるが、芸術性を感じるのはモチーフにフェリーニの作品を持ってきたところだろう。)

●100均の日傘の中の良いをんな=白馬
△始=1点
(始:見てすぐわかるのか?と思いますが)

●ヒーローの五色鮮やか日雷=水音
△虹=1点

●山滴り湖は沈沈と水を貯む=砂太
△村=1点
(村:中八がもったいないが一滴から大きな湖へと鮮やか。)

●霊長類ヒト科ヒト属熱帯夜=朱河
△し、智=2点
(し:上手くまとまって面白い。 智:熱帯夜に喘ぐ人類を淡々と‥人工も又自然の一部。)


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