*A部門入選作発表*


当季雑詠=全90投句(入選69句)

【特選】

一席
●休校の子らに空ありシャボン玉=清一


◎ラ、雪、入、茶、ぼ、秋○裕、遊△資=23点
(ぼ:コロナ休校中、空あり に希望を感じます。 ラ:空が、優しく見守ってくれていますね。 茶:大人が心配するほど、子どもたちは脆弱でなく、こんな風に空き時間を愉しんでいてくれたら。 雪:子供たちへの優しい心根を感じます。 遊:これも時事ネタながら明るい希望を俳句に成しているとおもいます。 秋:今はまだ出口が見えず気の休まらない状況ですが、校庭や公園の子供達の元気な声は希望です。その子供達がもっと安心して遊べる日が早く来ることを願うばかりです。 裕:やっぱり子供は外で遊ぶ方が健康的。 資:突然の休校だけど、シャボン玉に救いがあるような。)


二席
●懸垂の腕の八本風光る=雪絵


◎十、久○五、ス、葱△砂、ま=14点
(十:景鮮明。八本だから四人の子供たちが数を競い合っているのでしょうね。 ま: 校庭で競争しているのでしょうか、部活でしょうか。季語が効いていますね。)

<BR> 三席
●漆黒のネガより蝶の飛びたちぬ=十志夫


◎清、智○五、紅△久、秋=12点
(清:パンデミックの漆黒の世界よりいつもの春同様に初蝶が舞い上がる。 紅:写真を現像し終わった時の事を詠まれたのでしょうか?誰もが経験できる事ではないですね。 智:金粉、銀粉を散らす揚羽蝶。 秋:ネガを一心ににらみ被写体がクローズアップされていく様子が見えるようです。)  


【入選】

●川沿ひをゆらゆら続く道の春=秋波
◎始、ス○子、虹=10点

●春愁を割れば余りの出でにけり=十志夫
◎香、し○水△久、雪=10点
(香:この憂鬱を上手く表現されてると思いました。 水:余りが出まくりの春となりました。 し:面白い捉え方ですね。この感覚が好きです。)

●手の皺に溜息ひとつ雛の夜=秋波
◎砂、裕○香、雪=10点
(裕:毎年欠かさず雛飾を出している親御さんが浮かびます。 香:見ちゃいましたね。 雪:共感です!)

●花束の色のやはらか卒業す=紅椿
○清、茶、修△ラ、五、智、葱=10点
(清:花束だけを抱く卒業式のない淋しい年の卒業生。 茶:送別は悲しいけれども卒業だからこそ気持ちよく送り出したいし、素直に感謝を示したい。そんな風情に。 修:色がやはらかと表現したことで、やさしさとしみじみした感じが出ています。 智:色のやはらかで頂きます。 ラ:「やはらか」に祝意が溢れています。)

●九年目の黙祷の午後燕来る=まさこ
◎資○砂、裕△五、ぼ=9点
(資:この日も、つばめも毎年やって来る。 裕:毎年来るつらい思い出、でも新しい生命も育まれる。 ぼ:燕が震災で亡くなられた人の魂を運んで来たか。)

●校門の閉じられしまま桜東風=裕
◎メ○久△清、ラ、香、雪=9点
(清:新年度になっても校門は閉じたまま桜東風だけが吹く。 ラ:桜東風が明るい未来へ導いてくれそうな感じ。 香:さびしい学校の風景。)

●ふらここを蹴るや空より鳥の羽=やんま
◎遊○茶、秋△清=8点
(遊:特選にいただいたのはひとえにメルヘンでポエムだったからです^^) 茶:ふらここに羽がついていたのでしょうか。思いがけない出来事に驚きとすがすがしさを見ました。清:ブランコ遊びの休校中の子らの前に鳥の羽が舞う。 秋:ぶらんこを漕いでいたら鳥の羽が落ちて来た。偶然の出会いを素直に詠んでいると思いました。)

●亀鳴くやわが太腿の健康美=水音
◎葱○喋△し、ぼ、秋=8点
(葱:面白い!! し:私もこう思うことにします!!笑 ぼ:ははは、いいね。男女で見方違うかも。 秋:ユーモラスな句。)

●行く春や堰落つる水澱む水=智雪
○ま、始、喋△紅=7点
(ま:季節は移り替わるのに、留まっている地球、世界。巧く捉えていらっしゃいますね。紅:同じ水でも、色々なんですね。)

●押し寿司の四角四面や花の雲=ラスカル
◎水○ぼ△十、ま=7点
(水:直線ではあるけれど硬質ではないものと、花の雲の混沌とした輪郭の取り合わせで、季感が良く出ているとおもう。 ぼ:中七の措辞が巧みで、かろみあり。 十:押し寿司の断面って芸術的ですね。「いづう」の鯖寿司は最高。 ま:今年はお花見残念ですが、きっちりと姿が見えます。お花見のお寿司の美味しそうな切り口や談笑する人々の声など。)

●軽く会釈交わしゆく墓地あたたかし=ぼくる
○砂、資△十、ラ=6点
(十:景が浮かびます。 資:知らない人同士の何気ないあいさつの ぬくもりを感じる。 ラ:作者の心のゆとりが感じられます。)

●桜しべ降る沸点の大気圏=十志夫
◎五○メ△水=6点
(水:感覚的におもしろい。頬にぱんぱんに空気を入れて顔を真っ赤に力んている人を思い浮かべます。)

●重機止み首振る雨のフリージア=香久夜
○ラ△清、入、茶、修=6点
(ラ:重機とフリージアの取り合わせが斬新。 清:雨に濡れたフリージアの傍らに休業中の重機が何台も並ぶ。 茶:重機と雨、振動をうけるなら自然の方が好ましいです。 修:ああ怖かったわと、女性のイメージ)

●たましひの最後は祈り桜満つ=朱河
◎虹△砂、十、紅=6点
(十:)魂をどうとらえるか。「最期は祈り」としたらどうなるのか・・・。想像が広がる。これも秀句の条件。 紅:祈らずにはおられません。)

●養花天スローテンポにシャズピアノ=修一
◎子○智△十=6点
(十:季語がピタリと合っている。「スローテンポに」の「に」はやや説明っぽい。「の」がいいのでは。 智:曇空にはスローなジャズ。)

●上げ潮に滲む日輪桜貝=水音
◎朱△砂、ス=5点
(朱:美しいものの大小の対比、輝きの対比。)

●雨音のするかしないかヒヤシンス=遊歩
◎ま△智、ス=5点
(ま:静かな時間の中にいて 耳を澄ましている、繊細な作者が見えます。ヒヤシンスは薄紫でしょうか。 智:雨とヒアシンスが似つかわしい。)

●古希となり見つけし四つ葉のクローバー=修一
○久、入△喋=5点

●ぬばたまの黒きダンベル三鬼の忌=ラスカル
○し、修△ぼ=5点
(し:西東三鬼のことを良く知りませんでしたが、この句で知ることができました。黒きダンベルがとても面白い取り合わせだと思います。 修:枕詞によってダンべルが美的に! ぼ:三鬼のイメージとうまく合っている。)

●予定なき桜隠しの日曜日=資料官
○朱、虹△修=5点
(朱:花の雨とせず桜隠しとした事で寂しさの中にも色彩を深く感じられる句となったように思います。 修:さりげないつぶやくような感じ。ある種の諦めの感じが伝わる)

●足も腕も出してジョギング水温む=雪絵
○し、葱=4点
(し:水温むは私にはとても難しい季語なのですが、これは効いているなと思いました。)

●蘆芽を訪ねて遠し島の道=砂太
○朱△裕、ス=4点

●お母様変な桜となりました=香久夜
◎喋△始=4点

●雉鳩を見つけてけふの手柄かな=虹魚
○雪、入=4点
(雪:こののんびり感が何ともいいですねー。)

●其角忌や笹色紅の遊女の絵=しゃが
◎紅△茶=4点
(紅:どなたですか?こんな艶っぽい句を詠まれたのは。元禄時代(忠臣蔵の世界)にまでタイムスリップ させていただきました。 茶:「笹色紅」への焦点でいただきました。)

●二百年前は田畑おぼろ月=五六二三斎
◎修△遊=4点
(修:映画春を告げる町、広野町が浮かんできました。おぼろ月がいい。 遊:歴史の移り変わりを詠むのは難しいのに、漢字と平仮名の絶妙な配置に感心しました。)

●春の雪世界はやがて融けてゆく=メゴチ
○水△五、虹=4点
(水:春の雪のように、、融けるとは!)

●春場所初日横綱の息静か=秋波
○十、ま=4点
(十:時事俳句は時間を超えて残らないという観点で難しいが、歴史を切り取って置く意味からこうした句があってもいいかと。 ま:無観客試合では、息遣いがまで良く聞こえますね。そこをうまく捉えられています。)

●うつし世の穢れも知らず山笑ふ=清一
△喋、メ、水=3点
(水:どんなことが起きようとも季節は巡る。春は嬉しい。)

●王女てふ名の客船や別れ雪=葱男
○紅△遊=3点
(紅:すべてはここから始まったような気もしますが、離岸してしまうと遠い日の事のようです。 遊:時事俳句は難しいのにこんな優雅に詠めるとは。)

●戒厳は低くするりと燕来る=茶輪子
○清△始=3点
(清:日本のコロナ対策は自粛止まりそのゆるい中を若者(燕)が飛び回る。)

●片恋は木通の花の濃紫=智雪
○秋△修=3点
(修小さな地味な花、片恋にぴったり。 秋:人知れず咲く花の様相。秘めた恋なのですね。)

●五分咲きの花五分咲きの心かな=雪絵
○遊△葱=3点
(遊:悟りの境地のように思えます^^)

●三月の日記空白亀鳴けり=朱河
○資△十=3点
(資:空白の一月が過ぎた。 十:句会も吟行も中止。外出の自粛で日記に書くこともない。実感。)

●人類の危機を余所目に風光る=虹魚
○香△子=3点

●タヒの字に生と死と有る春終る=スライトリ・マッド
△久、し、葱=3点
(し:最果タヒさんですよね?よく読んでいます。)

●廃屋はたきぎとなれり豆の花=修一
○ラ△ま=3点
(ラ:「輪廻転生」という言葉を思い浮かべました。 ま:木造の家がたきぎになってしまう、儚い景。豆の花が良いです。)

●春雨や納骨許可書を携えて=香久夜
○十△裕=3点
(十:誰しもが経験する年齢ではないでしょうか。リアルです。)

●春の空やさしき人の遠きかな=始祖鳥
○子△メ=3点

●アネモネや紙折る爪の濃むらさき=茶輪子
△喋、朱=2点

●声出さぬ授業せよとは花の冷=スライトリ・マッド
△始、五=2点

●子ら内にいつしか外は春の雪=メゴチ
△香、入=2点
(香:関東は雪でしたね。でも、街中では恵みの雪ではなかったか?)

●常磐線つながる九年目の春に=資料官
○ス=2点

●菜の花や光る川面に風誘ふ=久郎兎
△子、裕=2点

●春匂ふ山湖の水面光る時=砂太
○メ=2点

●引鳥や庭にはびこる外来種=紅椿
○智=2点
(智:在来種は太刀打ちできません。)

●闇を纏へる満開の花の黙=智雪
○ぼ=2点
(ぼ:桜の下には死体があるとや。)

●ゆつたりと流れて春の水のまま=虹魚
△メ、遊=2点
(遊:俺は男だ!で笠智衆が言っていたセリフをおもいだしましたw)

●あしあとに指の名残りや桜貝=葱男
△雪=1点

●鶯に嬉しくなりぬ庭仕事=子白
△茶=1点
(茶:自粛モードの折、週末は草取りにいそしむことが多くなりました。春告の慰み。素直に嬉しいです。)

●外出はしないと決める花曇=裕
△清=1点
(清:コロナの中の花曇り外出しないと決めた。)

●亀鳴くやパンデミックの只中に=ラスカル
△香=1点
(香:のんびり感が別世界のよう。)

●木の芽時楽しき花も咲かんとす=始祖鳥
△子=1点

●野焼後仙石原の空広し=まさこ
△智=1点
(智:いかにも。)

●花冷の人の眼差し遙かなり=やんま
△虹=1点

●母平穏九十七回目の桜=まさこ
△紅=1点
(紅:お幸せですね〜!亡き母はいつも「来年の桜は見られるかな?」と申しておりました。)

●春に病み君が哀しき嘘許す=やんま
△し=1点
(し:とても深いストーリーがありそうです。)

●春場所のぶつかる音や響く屋根=メゴチ
△修=1点
(修:屋根に響くとまで言ったことでリアルに。)

●春場所に言葉新し無観客=久郎兎
△秋=1点
(秋:「無観客」今年の流行語大賞にノミネートされるかな。)

●彼岸会の母の形見の紬かな=裕
△資=1点

●陽だまりの金網の柵土筆群れ=久郎兎
△入=1点

●ヒト亜族知性何処に春疾風=スライトリ・マッド
△水=1点
(水:知性はいづれ疾風を追い抜く。)

●マタイ伝読み了えし窓春の雪=ぼくる
△朱=1点

●学び舎にゆかしき木々や桜守=茶輪子
△虹=1点

●豆の花小さく生きてりやそれでいい=葱男
△資=1点

●わが家ありし菜の花横丁一番地=入鈴
△朱=1点
(朱:わが家あり、で上五を納めても良いように思いましたが…。)


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186号・清記に白馬さんの句が洩れていました。
白馬さん、大変申し訳ありませんでした。
あらためて、ここに白馬さんの投句分を掲載いたします。

●遠近の樹の色消して春の雪=白馬
(葱:時ならぬ別れ雪が降りしきり、春の景色全体をかき消す。)
●結局は彼の言いなり六花散る=白馬
(葱:そういう彼とはいずれ別れることになりそう。)
●一筋の道真っ直ぐに春の雪
(葱:山頭火も歩いた道でしょうか。)

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