*A部門入選作発表*


当季雑詠=全96投句(入選68句)

【特選】

一席
●雪虫や仏の指にほのと金=まさこ


◎遊、砂、紅、朱、秋、ス○ラ△雪、茶、入=23点
(遊:メルヘンと歴史が融合していますね。 紅:すべてが完璧で、ため息の出るお句です。 ラ:「雪虫」という季語がよく利いています。 秋:鄙びた古寺の風情。下五が儚げな雪虫とよく合っていると思います。 朱:フィクションであったとしても美しい。語感が柔らかい。 茶:色のコントラスト。小ささと僅かさのつながりを感じました。)


二席
●星条旗二つに裂かれレノンの忌=葱男


◎大、久○十、清△資、五、朱、子=14点
(十:アメリカの分断の現況と銃弾に倒れたレノンの取り合わせ。 清一:米国の分裂はレノンの頃からあり根が深い。 資:まさにトランプ禍、太平洋戦争の開戦日でもある。 五:「レノンの忌」は季語と認定されていないと思うが、私的な季語としてOK。アメリカの分断は、米中決戦が深く関わっているようだ。自由と民主主義か?全体主義か?分かりきったことなのに、世界が流されている。 朱:確かにそういう感慨のある忌日ですね。)  


三席
●仏心を醸す静寂や冬の寺=砂太


◎子○十、清,遊、し△雪=12点
(十:冷え冷えとした静かな空気感は、まさに信仰心に誘うもの。 清一:冬の寺は黙の中に仏心が見受けられる、そうかも知れない。 し:冬の寺にはぴったりの句ですね。 遊:静寂ほど今の世に貴重なものはありませんね。)


【入選】

●屋久杉の歪む年輪冬座敷=しゃが
◎水、裕○雪、秋△葱=11点
(水:立派な座卓なのでしょうね。存在感が際立ちます。 裕:千年の屋久杉の歴史を感じる座敷はすごい。 秋:しっかりした作りの句と思います。素敵な座敷なのでしょうね。 葱:よく玄関先にドーンと置いてありますよね。)

●冬茜浴びてビル群ゆるみけり=茶輪子
◎十、智、メ△雪、ま=11点
(十:「ビルがゆるむ」という不条理な表現が秀逸。 メ: 夕陽を浴びて暖かくなるビルの景が浮かびます。 智:ビル群ゆるむと言う表現が素敵 ま:冷たく凛としたビルが、ふっと緩んだように感じる、とうまく表現されていますね。)

●寡黙とは時に淋しや日向ぼこ=やんま
◎白、始○砂、メ=10点
(白:歳老いる毎に分かります。 メ:男は黙って日向ぼこ。)

●土の道のずつとつづいてゐる小春=葱男
◎や、ラ、ま△始=10点
(や:都市・近郊から消えた幻の土。 ラ:最近は舗装路ばかりですから、この感覚よく分かります。  ま:土の道だけなのですが、なんともいえぬ穏やかな、それでいて前向きなお句だと思います。)

●友多き八十路の幸や賀状書く=ぼくる
◎茶○や、砂、水△入=10点
(茶:終活で賀状のやりとりを辞めてしまう方が多い中、頼もしいことです。 や:我が身の事なり。 水:幸せなことですね。)

●晩年は余生に非ず冬薔薇=やんま
◎香○ぼ、ス△砂、智、秋=10点
(ぼ:考えさせられます。季語が効いてます。 智:少し既視感はあるが‥ 秋:まだまだやりたいことはある。その心意気に乾杯。)

●唇は毒林檎色虎落笛=水音
○白、し、裕△葱、メ、ス=9点
(白:ドラマの一場面のよう。 し:どんな色なんでしょう。どぎつい赤かしら。オリジナリティあります。 裕:妄想が膨らみます。 葱:唇が真紫に! さぶ〜*o*; メ:う〜寒い。)

●虹色の魚泳ぐ夢年惜しむ=ラスカル
○秀、秋△葱、ま、朱、ぼ、し=9点
(秀:虹魚さんのお誕生日には私も句を作りました。 秋:コロナで泣かされた一年。せめて夢のある夢くらい見たい。 葱:虹魚さん追悼。 ま:空を泳いでいらっしゃる気がします。 朱:虹魚さん、今頃どこを泳いでいるんだろう。 ぼ:カラーの夢はなかなか見れない。いい年だったのだ。 し:虹魚さん、偲ばれます。)

●這ひ這ひで何処まで行ける冬の虹=智雪
◎雪○水、朱△葱、し=9点
(雪:明るい未来に向かって頑張っているような、ふとそんな気持ちになりました。 水:「冬の虹」は希望や未来ですね。たどり着けますように。 朱:可愛らしいラブリーな一句。 葱:季語がやや安易な気もするけど、可愛いから許す。 し:赤ちゃんのハイハイ、本当にどこまででも行けそうですよね。)

●凍星に放り出されて乳母車=遊歩
◎秀○メ△朱、ス、久=8点
(秀:実際に放り出されては危険ですが、イメージとしてはとても鮮明で美しい。 メ:なんか切なくて寂しい。 朱:冬の野外に放り出された乳母車でしょうか。)

●粉雪や窓と言ふ字の恋に似て=朱河
○五、智△十、遊、喋、茶=8点
(五:「窓」という字に「心」が入っている。ロミオとジュリエットを想像した。 智:雪の窓を見ながら物思いにふけるひと時。 十:確かに。一つの発見。 遊:よくよく見れば本当に。 茶:発見ですね。粉雪が効いてます。)

●陽だまりに一人は淋し枇杷の花=秀子
○紅、資、入△清、水=8点
(紅:雰囲気が好きです。 資:一人と枇杷の花の対比の妙、下五が効いている。 清一:自粛中陽だまりの時は誰かと話したいが、出来ない淋しさ。 水:しみじみとします。枇杷の花も淋し気な花です。)

●九竅を閉ぢし吾が身や年の暮=十志夫
◎資△白、葱、香=6点
(資:コロナ禍における処世術。 白:ひとつひとつ閉じてついにーーー。 葱:「九竅=身体にある九つの穴」ですか^0^)

●声明の遠くなりゆく冬夕焼=紅椿
◎清○喋△秀=6点
(清一:京都大原での声明は聴いたことがある。冬夕焼の静寂と合っている佳句。 秀:季語がやや効きすぎてることが、やや面白さを損ねたような気がします。)

●ちろちろと届く訃報や散紅葉=資料官
○五、茶、久=6点
(五:「ちろちろと」が「散ろ散ろ」に感じるのは、年寄りの自覚か? 茶:上五のオノマトペと季語との取り合せがいいです。)

●年の瀬や茶柱にさへ祈る母=大
◎ぼ△喋、紅、し=6点
(ぼ:この素朴さと謙虚さよ。いいねえ。 紅:お母さまのお気持ち、よく解ります。 し:この句分かります!)

●ひのもとの心うつなり除夜の鐘=大
◎喋○香△始=6点
(香:やはり聞きたいです。)

●風上へむかふ歩みや冬の月=水音
○喋、ラ△十=5点
(十:「風上」に象徴される今の困難を乗り越えようとしている意志を感じる。 ラ:コロナ禍を象徴しているような。)

●終バス無人峠より雪女=智雪
○ス、久△秋=5点
(秋:人気のない峠で雪女を見たような…。発想が面白い。)

●冬の果一ツもぎとる窓の星=朱河
○秀、茶△ス=5点
(秀:「もぎとる」が効いてると思いました。 茶:「果」と果実、そして空を切り取る窓。漸層的で大きな句だと思います。)

●目を見張る幼や柚子のぷかりぷかり=入鈴
◎葱○遊=5点
(葱:面白い! カワイイ! 遊:温まるお句ですね〜、新鮮なまなざしの御句ですね〜)

●綿虫とはぐれしよりの一人かな=秀子
○ま△清、雪、朱=5点
(ま:ふと気づいたら一人、ズキンと胸に響きます。 清一:綿虫と友達だったのだろう。はぐれて仕舞った淋しさ。 朱:綿虫と自分が対等の存在で、しかも独り。)

●粉雪や睫毛にかすかなる重み=まさこ
○資、朱△メ=5点
(資:微妙な感触を上手く捉えている。 朱:一瞬の体験、実感を詠む…しかも雪の美しさが見える。 メ:思わず見上げてしまいます)

●数へ日や歯科医院より機械音=ラスカル
△十、葱、智、ぼ=4点
(十:歯を削る機械音が年末の押し詰まった感じを象徴している。 葱:寒々しい音ですよね! 智:歯科医院より聞こえる機械音はなんとなく切羽詰まった感じ。 ぼ:このクールな感じ、イケてます。)

●白葱の映へる形見の蒔絵椀=しゃが
○香△喋、始=4点
(香:お正月にも登場しますか?)

●スノードーム雪は無重力のごとく=秋波
◎し△水=4点
(し:たしかにふわ〜〜と舞って、無重力のようですね。面白い発想です。 水:確かにそう見えます。)

●対面の最終講義年の果=五六二三斎
○ぼ△清、紅=4点
(ぼ:定年最終講と読みます。コロナにめげず。 清一:今年ならではの対面講義なる言葉、来年は以前に戻って欲しい。 紅:今年ならではの句。)

●裸木の立ちやう影の尖りやう=十志夫 
○入△や、朱=4点
(や:一層寒くなった。 朱:景色の鋭さを上手く表現出来ている一句と思いました。)

●舞ひ上がる落葉に一打猫パンチ=智雪
○始△大、ぼ=4点
(ぼ:なるほど、猫パンチねえ。)

●逝く年や繰り返し聴くアヴェ・マリア=ぼくる
◎五△砂=4点
(五:新型コロナ禍の一年。アヴェ・マリアに収束を願う。)

●家々に見かけぬ男年用意=修一
○裕△智=3点
(裕:古い町ではこういう光景はあるのでしょうね。 智:年一回駆り出される男達は普段何処に居る?)

●犬と吾引いて引かるる師走かな=入鈴
△ラ、朱、裕=3点
(ラ:「引いて引かるる」が面白い。 朱:愛嬌のある一句。 裕:犬も師走は忙しい?)

●薄目あけ物知り貌の竈猫=清一
△秋、し、裕=3点
(し:この表情わかります〜! 裕:猫のマイペースが羨ましい。)

●おばちやんもケーキにじやんけんクリスマス=香久夜
△十、砂、茶=3点
(十:3世代で過ごす聖夜のホンワカさが滲み出ている。 茶:トランプや花札、大人気ないと言われようと勝負は勝負!トッピングのチョコ板もじゃんけんで!)

●オリオンや三兄弟と父と母=白馬
○子△資=3点
(資:二つの一等星と三つ星を家族のように見たのは面白い。)

●白髪の奏づヴィオロンクリスマス=雪絵
△秀、十、香=3点
(秀: 「白髪」」がよかった。 十:景が見えてきます。)

●富士山を夕日の染める冬至かな=裕
○子△メ=3点
(メ:赤富士を思い浮かべました)

●冬桜父の仕草の乗り移り=修一
◎入=3点

●ワンカップぐびと北行く暖房車=ぼくる
△秀、し、裕=3点
(秀:やや類想感。 し:乗り鉄にはたまらないのではないでしょうか。笑 裕:こういう旅いいですね。)

●冬満月酌む父の忌の特級酒=まさこ
○紅△大=3点
(紅:下五で、じんと来ました。)

●大岩の落葉の滝となりにけり=入鈴
○始=2点

●キャンドルやつんとケーキの冬苺=紅椿
○智=2点
(智:つんとが良い。)

●子らの声待つ冬のメリーゴーランド=雪絵
○大=2点

●山茶花や冷たき雨に紅散らす=裕
△や、子=2点
(や:美しきザ・エンドかな。)

●初対面マスクを外すタイミング=葱男
△清、五=2点
(清一:コロナ禍ならではの初対面での仕草。 五:今年ならではの俳句。マスクを外してしまうとイメージとはかけ離れたご尊顔となることを今年は経験した。所謂、マスク美人。)

●瀬戸の風露地に蜜柑をほおばりぬ=香久夜
○ま=2点
(ま:旅先の道端でもぎたての蜜柑を頬張っている姿がゆうゆうと気持ちよく映ります。)

●鯛焼やマスクずらして頬張れり=資料官
△遊、ラ=2点
(遊:実景実感。 ラ:なるほど。今年ならではの句。)

●ドラマの来春みんなマスクを外してた=スライトリ・マッド
△大、子=2点

●長き影体躯くの字や杖の先=久郎兎
○や=2点
(や:長々した我が影もかく老いたり。)

●ぬる燗や森の香りの牡蠣フライ=裕
○葱=2点
(葱:想像してみました、合う〜。しかし、海ではなく森の香りとは?味覚異常?)

●ビル風の行き着く先や寒夕焼=十志夫
△メ、香=2点
(メ:ビル風はホント寒いもんなあ)

●街路樹は裸になりて風寒し=子白
○大=2点

●漱石忌なお青春の悩みかな=始祖鳥
○葱=2点
(葱:自我を確立し、そして、最後には自我を手離す。)

●無花果の枝のみ残る影絵かな=白馬
△久=1点

●エコバッグ抱きかかえるや初霰=香久夜
△水=1点
(水:抱えないと濡れてしまう。)

●数へ日や実家の父に買ふ灯油=茶輪子
△ま=1点
(ま:何気ない日常が年末も続き、その中にあるお父様への気遣いがいとおしい。)

●感染を減らすべくいさ冬至の湯=茶輪子
△五=1点
(五:「いさ」の使い方が古風で面白い。冬至の湯が禊ぎとなることを願いたい。)

●客寄せの声あれこれと年の市=秋波
△ラ=1点
(ラ:昔は当たり前でしたが、今は珍しい。)

●賑やかに機械餅つく二人かな=修一
△久=1点

●冬の雲故郷の山に落とす影=五六二三斎
△資=1点
(資:何か懐かしい風景であり、最後の影が不気味に感じる)

●星の夜や床頭台のミニ聖樹=秋波
△遊=1点
(遊:よくわかります、早く良くなられますように)

●街歩き子らも集まる焚き火あり=メゴチ
△入=1点

●木星に土星寄り添ふ寒暮かな=資料官
△紅=1点
(紅:新聞で大きな写真を見ましたけど、土星の輪に感激でした。)

●餅を焼く父母の茶の間を思ひつつ=秀子
△十=1点
(十:コロナで帰省できない哀感。)

●火傷跡のうつすら残る年湯かな=ラスカル
△や=1点
(や:来し方に様々な事あり、行く末には夢。)


A部門入選作〈back number〉

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