*A部門入選作発表*


当季雑詠=全93投句(入選63句)

【特選】

一席
●合掌が猟のはじまり鹿の道=秋波


◎ま、砂、紅、ス○十、や、智、朱、葱、雪△水=25点
(ま:厳かなのですね、命をいただくということ。 紅:猟の事を知らなかったので、とても感激しました。 十:命を戴く動物への感謝の気持が巧く出ている。 や:神様の恵みを戴く。 智:智:感謝していただきますの心。 朱:猟に対する敬虔な気持ちを上手く一句に表した秀句だと思います。天にするか悩みました。 葱男:命を戴きます。)


二席
●黄落や大樹の幹に風の錆=やんま


◎十、喋、水○ラ△智、清、遊、紅、ス、雪、メ=18点
(十:季語の斡旋、リズム、言葉選びなど、すべてが上質<巧み>です。ザ・俳句の趣き。 水:風の錆というのが斬新です。 ラ:「風の錆」というレトリックが巧み。 智:風の錆で頂いた。 清一:黄落と風の錆の取り合せがユニーク。 遊:風の錆に魅せられました。 紅:下五が素敵。)

<BR> 三席
●届く荷は大空匂ふ今年米=雪絵


◎秀○ぼ、ラ、入、砂、水、香△ス=16点
(秀子:とてもおおらか。 ぼ:中七が素晴らしい。喜びが伝わって来ます。 水:「大空匂ふ」がいいすね。 ラ:とても美味しそうな今年米! 香:感覚が大きいですね。 入:平明で大らかな作風が好きです。)  


【入選】

●コーナーでまはす右の手天高し=十志夫
◎や、ラ、メ○葱、紅△朱=14点
(や:運動会は終生の思い出に。 ラ:情景がまざまざと目に浮かびます。 葱男:不思議と直線コースではやりませんね。 紅:三塁コーチの仕草が浮かびました。 朱:運動会のリレー応援で熱くなっている様子が上手い省略のもと一句になっていると思います。)

●吾が影の色なき風に攫はるる=ラスカル
◎し、香○秋、メ△智、秀=12点
(し:とても詩的ですね。どこに攫われたのでしょうね。 香:季語、色なき風を学びました。秋の心細さをよく表していると思います。 秋:例えば風に揺れる木の枝の影で自分の影が隠されてしまうような情景でしょうか。観念的で少しわかりにくいけれど、自身の立ち位置の心もとなさも感じさせて、気になる句でした。 智:冬に向かう何となく心許ない気分。 秀子:発想が面白いと思いました。)

●風吹けば金木犀の雨となる=修一
○雪△十、朱、裕、喋、水、メ、香=9点
(雪:綺麗な光景ですね。 十:香りを含む雨。素敵です。 朱:「風ふけば…」は大概失敗の句になるとよく言われますがこれは理に傾かず中七下五が良いなと思いました。 裕:金木犀の雨がいいですね。 水:金木犀の雨がいいですね。 香:このような散りかた、今日、テレビで見ました!)

●代筆の問診票や暮の秋=紅椿
◎茶○裕、秋、資=9点
(茶:付き添いの通院。高齢になると筆も怪しくなり、子としては何ともやるせないです。 裕:ご両親の代筆をする優しい姿が浮かびます。 秋:診療所でのあるあるの光景。年老いた親への様々な思いが交錯して…。季語とも響きあっていると思います。 資:今年のインフル予防接種は高齢者が殺到したようです。そんな風景かな。)

●波音は短音階に冬近し=雪絵
◎智○茶、メ△ラ、ス=9点
(智:暗い海の景色、音が聞こえて来る。 茶:季節による波音の違いを音階にたとえられた発想がいいですね。 ラ:「波音は短音階」というフレーズが魅力的。)

●猫じやらし次から次に風を生み=秀子
◎秋○智、久△十、し=9点
(秋:微かな風に猫じゃらしが揺れあっている。ドミノ倒しのようにも見える瞬間があって…。ひなびた秋の景です。風を生むという表現が巧み。 十:下5が眼目。「風を生み」でも問題ないが、個人的には「風となる」とすると視覚的により動きが出るように思う。 智:写生を超えた写生。 し:次から次に風を生みと捉えた感性がいいですね!)

●いびつなる孤独のまろみくわりんの実=スライトリ・マッド
◎資○清、遊△香=8点
(資:中七が良いですね。 清一:孤独のまろみの措辞が面白い。 遊:やわらかなひらかなの連用が、孤独と実の固さを引き出している。 香:孤独のまろみ?とても個性的な表現。同じ物二つとないですね。)

●黄落や茶屋がねぐらの太き猫=秋波
◎裕○子△や、入、葱=8点
((裕:天高し猫肥ゆる秋?秋を満喫している猫が見えます。 や:最適な居場所を見つけた。 入:金茶色の秋の豊かさを背負った猫が目の前に見えます。 葱男:食い扶持には困っていない猫ですな!)

●知盛のこゑの海鳴り十三夜=紅椿
◎ぼ、遊○白=8点
(ぼ:凄絶と言うか、時空を大きく詠み込んでお見事。 白馬:平知盛の声が壇ノ浦の底から聞こえてきます。 遊:平家琵琶が鳴り響き祇園精舎の鐘の音も聞こえる。)

●馬肥ゆる神代の文字のやはらかし=葱男
◎朱○茶△智、清=7点
(朱:時候の季語や天文の季語ではなく「馬肥ゆる」とした事で成功した句だと思いました。 智:肥ゆる、やはらかしが、争いの無い穏やかな世を想起させる。 茶:「馬」の古代文字という伏線も考えられて、季語選択もよいと思いました。 清一:神代の文字があったとすればの話、馬肥ゆるが合っている。)

●言葉より確かなダッコ赤まんま=葱男
○砂、紅△や、ま、雪=7点
(紅:確かに、そうですね。昔を思い出しました。 や:肌の温もりに安堵の顔あり。 ま:触れ合うことは確かですね。)

●母方の家系図辿る花野かな=清一
○十、香△茶、葱、資=7点
(十:母方が「花野」ならば、父方は何だろう?という興味が沸く。 茶:「花野」ゆえの「母方」、「母方」ゆえの「花野」なのでしょうね。 香:季語がぴったりです。 葱男:ヒューマンヒストリーにはそれぞれに花があります。 資:一瞬華やかだがやがて来る枯野を彷彿させる。)

●ひとつづつ団栗洗ふぐりとぐら=ラスカル
○ま、し、ス△ぼ=7点
(ま:ほっとする、永遠のベストセラーですね。 し:ぐりとぐら懐かしい。団栗の絵を覚えてます。 ぼ:おお、可愛い!好みです。)

●伏線の多きミステリ藪枯=智雪
◎雪○水△朱、資=7点
(雪:ミステリー大好き!季語がいいですね。 水:こんがらがっていそう。 朱:「伏線の多きミステリ」は既視感のある措辞で悩みましたが…頂きました。 資:藪枯が効いている。)

●秋天を震わす開脚ソーラン節=香久夜
◎修○裕△葱=6点
(修:大地をも揺るがすエネルギー!裕:「天を震わす開脚」ってどんな感じですか? 葱男:男も女も思いっきり開脚しますね! 土佐は激しいなあー(^∇^))

●音立てず波は寄せ来る月明り=秀子
△や、子、紅、メ、修=5点
(や:孤高の耳をそばだてる。 紅:静かな景。下五の斡旋が的確だと思います。)

●学級の日誌にハート秋うらら=茶輪子
○清△秀、砂、秋=5点
(清一:コロナ禍の中でも子どもらは陽気。 秋:微笑ましい! 秀子:いいクラスなんでしょうね。)

●鴨来るほこり被つた旅鞄=清一
○資△遊、秋、雪=5点
(資:コロナ禍で旅行も儘ならず。それでも鴨は北からやって来る。 遊:旅にあこがれながら日常に追われて年を取っていく。 秋:GO TO トラベルとは言いますが…。)

●白露と遊んでみたきたなごころ=雪絵
◎葱○久=5点
(葱男:レトリックが巧みですね!「たなごころ」と収めたところがお見事!)

●滑り台に靴の片方赤とんぼ=裕
◎清△十、秋=5点
(清一:幼い子の忘れ物の靴と赤とんぼが映像としてしっかり捉えられている佳句。 十:夏が過ぎて、いかにも「秋」という寂しげな風情が上手に詠まれている。 秋:片方脱げて置き去りになっているんですね。靴はどうしたの?ってお母さんに叱られないかと心配するのは杞憂でしょうか。)

●ぞみぞみす月光樹々に波立ちて=葱男
○し、喋△茶=5点
(し:ぞみぞみは方言?樹々に波立つ月光素敵な表現ですね。 茶:オノマトペでいただきました。)

●空耳の厨の音や柿熟るる=紅椿
◎入○修=5点
(入:これ程までの秋の寂しさを表現できるとは!)

●晩学の学成り難たし小鳥来る=やんま
○修△ぼ、白、入=5点
(ぼ:小鳥で慰められる。否定的でなくむしろ余裕を感じる。 入:取合せが素敵。 白馬:知識欲はまだまだ健在。)

●晩稲のそよぐ故郷に知る人もなし=始祖鳥
◎久△入、修=5点
(入:そういう古里に向かい合うというのも、つらいです。)

●子狐が散歩してゐる土手の秋=修一
◎子△ま=4点
(ま:このような景はどこで見られるのでしょうか、遭遇してみたいです。)

●さやうならの背に泡立ち草の綿毛=まさこ
○や△紅、修=4点
(や:そんな野末の別れも古びて。 紅:ロマンですね〜!)

●秋麗やチーズ事典にボナパルト=茶輪子
○秀△し、ラ=4点
(秀子:気づきが句になるんですよね。 ラ:一つの発見! し:チーズを調べたらナポレオンの逸話が残るValen?ayというチーズが出てきました。チーズをいろいろ調べて楽しみました。)

●ポケットに団栗三個郷土史家=秀子
○入△十、ぼ=4点
(入:その郷土史家さんの人となりまでわかりそう。 十:上5+中7まではあり勝ちの景だが、下5の「郷土史家」という意外な展開で成功。 ぼ:温かな人柄が団栗三個に出ています。)

●稲藁の匂いいつぱい犬と歩く=スライトリ・マッド
△ラ、入、秋=3点
(ラ:稲藁の匂い、ほっこりとした気分になります。 入:そんなに匂いの量が多いのは大型犬でしょう。 秋:臨場感があって、藁の匂いや日差しの温かさまで伝わって来そう。今そんなことしたら叱られますが、昔は刈田の中に入って犬を遊ばせたりしてました。そんなことを思い出しました。)

●大甘な男でござる柿をむく=遊歩
△ま、砂、久=3点
(ま:どなたでしょうか、お知り合い?ご自分?知りたくなりました。)

●骸骨の弦勇ましきハロウィーン=しゃが
○ぼ△始=3点
(ぼ:盛り上がってる風景が目に浮かぶ。)

●鶏頭花邪心憚ることなかれ=朱河
◎始=3点

●不知火や千年のちの火は青し=朱河
   ○喋△始=3点

●ドナテッロのマリアの気魄月満る=しゃが
◎白=3点
(白馬:『悔悟するマグダラのマリア』像には凄惨な気魄が感じられますね。晩秋の作品でしょうか?)

●永らへて今日は落葉の中に有り=砂太
△入、葱、喋=3点
(入:至福のひとときと想像されます。 葱男:枯淡の境地。)

●秋の夕おはら鹿児島花電車=喋九厘
○ま=2点
(ま:初めて知りましたが華やかなお祭りなのですね。秋の夕べを鮮やかに染めて。 資:まさに今頃おはら祭。花電車懐かしく、せめて三段切れでなければ頂きました。おはら祭の花電車で良かったのでは?)

●大風が来るよ梢の鵙の声=五六二三斎
○始=2点

●落葉掃く僧の衣は朝の露=子白
△裕、喋=2点
(裕:掃いても掃いても積もる落ち葉を一生懸命掃くお坊さんが浮かびます。)

●爺婆で守る里山鶴渡る=ぼくる
△砂、葱=2点
(葱男:本当は若者たちで守らなければいけません。)

●十三夜丹波の豆を供へけり=智雪
△子、し=2点
(し:こんな一三夜のお供え物素敵ですね。丁寧な暮しですね。)

●そぞろ寒爪半月の波のかた=茶輪子
○遊=2点
(遊:印象的な絵画を見ているようなドビュッシーの音楽聞いてるような。)

●寝袋に体温のある夜寒かな=遊歩
○秀=2点
(秀子:実感なんですね。ただ、「夜寒」だと原因結果になるので、季語を少しずらしたらもっといいと思いました。)

●後の月雲間に追いてひとり酌む=白馬
△清、始=2点
(清一:十三夜に一人で妻のことを思い浮かべながら酒を酌む詠者。「追い」は「追ひ」だろう。)

●ハリーポッターの魔法薬や菌狩=しゃが
△葱、水=2点
(葱男:このサイケデリックアーツはマジックマッシュだったのか? 水:どんな薬かとわくわく、、)

●青北風や片流れ屋根鋭く見えて=入鈴
△朱=1点
(朱:澄んだ十月の強い風の向きまでが俯瞰で見える句だと思いました。)

●秋の夜や赤き火星の自己主張=資料官
△香=1点
(香:南の空に見つけます!大きく光ってますね。)

●いつもごと誰も採らなき柚子ありて=メゴチ
△久=1点

●印鑑じやなくてサインを秋の暮=水音
△久=1点

●万年青の実母の荷物を持つは父=まさこ
△資=1点
(資:老々介護のすがたでしょうか。長寿のめでたさを感じました)

●義太夫の泣き節冴へる暮の秋=秋波
△秀=1点
(秀子:旧かななら「冴える」)

●茸飯よそへば遠く筑波かな=入鈴
△ス=1点

●少しづつ遠のく虫の声淋し=白馬
△入=1点
(入:さんずいに林のさびしさにぴったり。)

●少年死す一夜劇なり月の毒=朱河
△葱=1点
(葱男:意味はイマイチ曖昧ですが、雰囲気抜群!)

●電線の額装もまた後の月=智雪
△入=1点
(入:「もまた」があいまいですが、面白い発想ですね。)

●廃屋の庭に群れ立つ麒麟草=五六二三斎
△子=1点

●貧血を治療するべし草紅葉=水音
△茶=1点
(茶:「草」の手入れのように「血の道」はなかなかやっかいですね。)

●プロペラ音の果てたる空や暮の秋=入鈴
△裕=1点
(裕:やっと飛行機も飛び始めプロペラ音に秋の終わりを感じます。)

●星満つる甲斐の盆地や豊の秋=ぼくる
△遊=1点
(遊:信玄の偉大さを思います、俳句なら蛇笏や隆太さん。)

●杜鵑草今さら帰る家もなく=資料官
△入=1点
(入:ほととぎすの花の上品な色に、不如意な心が救われます。)

●道端に一つ転がる富有柿=五六二三斎
△清=1点
(清一:多汁で甘味の強い富有柿。転がっている筈がないものがある。)


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