*A部門入選作発表*


当季雑詠=全84投句(入選66句)

【特選】

一席
●月が日を食べをり夏の蝶過る=スライトリ・マッド


◎秀、砂、紅、ぼ○遊△五、し=16点
(秀:感覚的! 紅:この前の日食はこちらでは見られませんでしたが、とても幻想的に詠まれていると思います。 ぼ:スケールおおきく、幻想的でもある。 遊:大景を背に浮き上がる蝶の真実。 し:月が日を食べをりが気に入りました!!)


二席
●空と海混ぜてコップのソーダ水=智雪


◎ス、し○メ、ぼ△や、十、砂、久=14点
(し:わ〜〜〜真っ青なビーチで、ソーダ水が美味しそう!!! ぼ:素直で、詩情あり、好感度高し。 や:胸がスカットする。 十:爽やかな一句。「コップの」は一考の余地あるような。)


三席
●客待ちのお化け屋敷の扇風機=十志夫


○葱、紅、朱、し△白、修、メ、ぼ、水=13点
(葱:今のアミューズメントパークとは違う、昭和の子供には昭和の楽しい場所がたくさんありました。紅:とても楽しいお句。早く再開してほしいですね。 ぼ:昭和の景か、のんびりした感じがいい。 修:働きものの扇風機さんの顔が見えるよう。 し:生温い風が吹いていそうです。。。 白:お客さん早く来い!寒いよ。 朱:着眼点にユーモラスなセンス。 水:昭和のお化け屋敷の景。暑そう。)  


【入選】

●短夜の膨らんでゆく時計音=まさこ
◎十、メ○や、砂、紅=12点
(十:中7のレトリックの効いた表現が秀逸です。 紅:中七の表現が面白いです。や:夜の長きを夢魔と戦う。)

●線描の円き躰や月涼し=しゃが
◎五○雪、秋、ス△メ=10点
(秋:線画と月の光、よく響きあってると思います。)

●蟷螂の子の斧細く構えをり=白馬
◎裕○ス、し△や、智、朱=10点
(裕:生まれたばかりでも蟷螂は蟷螂の形ですよね 元気で生きろよと言いたくなります。 や:本能によりひとり生き抜く。 し:蟷螂の赤ちゃんもしりっかり斧を構えているのが頼もしくて可愛い! 智:勇ましくも可愛いらしい。 朱:素直な写生句ですが好感持ちました。旧仮名で統一するなら「構へをり」ですね。)

●採りたてのぬるき野菜や雲の峰=水音
◎久○や、修△十、裕、し=10点
(や:命の源口に頬張る。 修:体感覚、季語がぴったり。 十:意外な表現の「ぬるき野菜」が、よりリアルな一句にしている。 し:なるほど!実際に野菜を育てていないと気付かないことと思います。)

●心拍数ゼロほうたるの火の軌跡=葱男
◎遊、白○十△始=9点
(遊:入院中バイタル音が廊下に洩れて、窓の外のビルの明滅と交信してました。 白:ほうたるは息をしないのです。 十:「ほうたるの火の軌跡」を実景と取るか、心電図の波形の比喩と取るかで解釈が二分。後者だと季語とならないので、心電図形と実景の取り合せとして鑑賞。)

●万緑や無住の寺へ若き僧=ぼくる
○子、雪△秀、遊、ま、ス、水=9点
(秀:山深いお寺なんですね。清々しい。 ま:昨今お坊さんも不足しているとか、志のある若者を万緑が応援しています。 水:「若き」が効いていると思います。 遊:無言のエールを送りたい。)

●サリンジャー閉ぢて溢るるソーダ水=朱河
◎清、智△遊、砂=8点
(清:長編の「ライ麦畑でつかまえて」の読後、一気に入れたソーダー水が溢れた。取り合わせが面白い佳句。 智:サリンジャーとソーダ水は如何にも似つかわしい。 遊:(ライ麦畑で逃げられた・・・グラース一家。)

●巴里祭ガレの贋作灯る店=秀子  
  ◎朱○智、五△雪=8点
(朱:贋作でもそれなりにきっと美しい装飾のランプなのでしょう。ミステリアスな取合せが効いていると思います。 智:日本の巴里祭とガレの贋作も似つかわしい。) 

●渡し舟に積み込む太鼓雲の峰=ラスカル
◎雪○白、久△葱 =8点
(雪:今から何が始まるのか、わくわくします。 白:未知の会場に向かいます。 葱:夏祭り前の風景でしょうか。風情がありますね。)

●河渡る裾野は広し五月富士=白馬
○始△資、秋、五、喋、香=7点
(資:新幹線の富士川鉄橋を渡る風景。指定席はいつも山側のE席。 秋:富士を讃える歌は数々あれど、やっぱり富士さんは美しい。大きい。 香:晴れた日は広い裾野が全てみえますね。)

●爺ちゃんの白髭きりり山法師=久郎兎
◎喋○香△雪、ス=7点
(香:山帽子、そういえばお爺さんの髭のよう。)

●沖縄の砂のびん詰南風=雪絵
◎子○五△秀=6点
(秀:とても素直。)

●蜘蛛の囲の向こう無音の室外機=秋波
○十、裕、メ=6点
(十:おそらく空家の景であろうが、「蜘蛛の囲」と「無音の室外機」によって営業自粛中の店舗をも想像させる。巧みな二重構造。 裕:空き家なのだろうか?)

●赤ちやんを抱きしめ茅の輪くぐりけり=資料官
○裕、香△ラ=5点
(裕:赤子がすくすく育つようにという親心。 香:中七の抱きしめが愛情がこもってていいですね。ラ:その赤ちゃんが、健やかにそだちますように!)

●洗ひざらひ包み隠さず浮いてこい=清一
◎ま△雪、喋=5点
(ま:季語がぴったり、響きあっています。リズムが良くスカッとします。)

●切手を切り離す微音や含羞草=ラスカル
○清、久△遊=5点
(清:切手を切り離す様子と含羞草の触れると閉じて垂れる様子との対比。 遊:上五と中七の活舌の悪さが私には気になりましたが・・。)

●気を抜くな諭す泰山木の花=五六二三斎
◎香○資=5点
(香:泰山木の花にリスペクトです。 資:真っ白などっしりとした存在感。)

●昏き絵の掛けられてゐる夏館=秀子
◎葱○水=5点
(葱:旧い立派な洋館の壁にはいかにも重々しい、印象派以前の絵画が掛けられているのです。歴史の重味に圧倒されます。 水:古い建物、室内は薄暗くひんやりと、、イギリスの古い館を想像しました。)     

●黒南風は夜の街にも隔てなく=メゴチ
◎秋○清=5点
(秋:本当に「夜の街」という言葉を聞かない日はないくらいになってしまいました。季語の空気感も合っていると思います。 清:感染者が増加している夜の街にも隔てなく黒南風が。)

●これと決めし熱帯魚直ぐ見失ふ=智雪
○葱△紅、秋、久=5点
(葱:これが金魚すくいの情景だったら天位かも。家の水槽に飼うための小さな熱帯魚を必死で選んでいるのでしょう。 紅:どれも同じように見えますものね〜 秋:実感!)

●縄跳びの道を打つ音涼しかり=まさこ
◎や△子、修=5点
(や:路地に子供が戻る夕暮れ。 修:季語で音が生き生きと。)

●二階まで届く大声豆御飯=十志夫
○朱△紅、ま、裕=5点
(朱:大家族の夕餉なのか?と想像させるおおらかさを感じました。 紅:「豆御飯」ならではです。 ま:自粛でみんな家にいて、という景でしょうか。元気な家族の様子が見えます。)

●葉の裏に真つ逆さまの蝸牛=ラスカル
○喋△白、ぼ、し=5点
(白:落ちないでね。 ぼ:蝸牛がぐんと存在感増す。 し:葉っぱを裏返すとくっついていましたね。真つ逆さまが面白い。最近蝸牛を見ないのですが気のせいかしら。)

●名画座を出て溜め息に買ふダリア=朱河
○智、始△葱=5点
(智:ダリアを買いたくなるようなどんな映画だったのか‥ 葱:名画座が二句ありましたが巴里祭よりダリアにしました。そちらの方が映画の内容まで暗示してくれている気がしました。)

●教壇のフェースシールド玉の汗=清一
◎ラ△五=4点
(ラ:さぞかし暑いことでしょう。本当にお疲れさまです。)

●この道を辿れば湖へ月見草=やんま
○ぼ△清、朱=4点
(ぼ:素直で、詩情あり、好感度高し。 朱:類想がありそうな気もしますが月見草の季語は効いていると思いました。 清:森の中にある小さい湖だろうか、月見草が道しるべ。)

●珈琲屋へ百八十歩風薫る=まさこ
○修△清、喋=4点
(修:こんなウォーキングなら楽しい! 清:僅か180歩だからごく家の近く外出自粛でも行けそうな場所。)

●白南風や父が背負ひし戦傷=やんま
○秀、水=4点
(秀:たいせつな句ですね。私は戦争は知らないけれど、両親が経験した原爆を伝える責任はありますね。 水:元気にしておられるのでしょう。季語から活力を感じます。)

●ダークマターの話は尽きぬ麦酒かな=しゃが
○秀△資、修=4点
(秀:どんな方なんだろう、興味津々。 修:麦酒は美味し。ノンアルも。 資:オンライン飲み会の話題でしょうか。)

●ちゃらちゃらと雪駄のくぐる夏暖簾=裕
◎資△香=4点
(資:上五が良い。夏らしく涼し気。 香:ちゃらちゃらが、いかにものんびり、軽そうなのがいいですね。)

●蕃茄輪切りにすセラミックの包丁で=スライトリ・マッド
◎修△始=4点
(修:リアル。音まで聞こえる。)

●いつまでも大人になれず巴旦杏=スライトリ・マッド
○ま△砂=3点
(ま:巴旦杏ってこういう感じですね。)

●今朝もまた晴れで始まる梅雨日和=喋九厘
◎始=3点

●子等の声少し戻りて芋の花=白馬
○資△清=3点
(資:登校開始。里芋の黄色い花が迎える。 清:学校が再開され友達と過ごせて元気が出る、もう芋の花が咲く頃となる。)

●白薔薇の溢れて恋は未遂なる=朱河
△白、葱、秋=3点
(白:分かります。 秋:どんな恋だったのでしょうか。未遂…火遊び?を連想して、よくわからないけど気になる句でした。 葱:白薔薇に溢れる恋心を託したのでしょう。未遂で残念でしたが、いつの時代にも自己表現の根本にはエロスがあります。その事を忘れた俳人にはなりたくありませんね。)

●父の日の時間指定のクール便=資料官
○ラ△十=3点
(ラ:どんな品物が届けられたのだろうかと、想像出来る楽しさがあります。 十:「クール便」の一語でプレゼントの中身に様々な想像がわく。)

●沈々と古寺隆々と今年竹=ぼくる
◎水=3点
(水:漢詩のよう。静かな絵の中に入って行くよう。)

●半夏生草マスクで隠す無精髭=資料官
△十、智、水=3点
(十:最近の自分を見透かされているようです。 水:顔半分隠れるので都合が良い。私もお化粧サボったり、、)

●老鶯や水車はゆつくりゆつくりと=遊歩
○秋△智=3点
(秋:里山の風景でしょうか。季語がニクい。 智:老鶯の声と水車の音と全てはゆっくり。)

●カサブランカリリーやボガードバーグマン=ぼくる
△十、し=2点
(十:なかなか真似できない挑戦的な俳句がすばらしい。 し:カサブランカと言えばですね。冒険句!)

●さくらんぼ頂き物の甘きこと=修一
○喋=2点

●白き糞落とす鴉や梅雨曇=裕
○子=2点

●白抜きの日灼けの跡の眠りたる=十志夫
○砂=2点

●センサーライト蜘蛛囲に影のあるを知る=秋波
○遊=2点
(遊:繊細で微細な命の営み。)

●夏越の祓うさぎとなりて輪をくぐる=修一
△や、ラ=2点
(や:ぴょんと跳ねたる膝の響きよ。  ラ:「うさぎとなりて」という表現がユニーク。)

●日本語の聞こえる銀座五月晴=裕
△子、久=2点

●本物か確かめてゐる胡蝶蘭=紅椿
○白=2点
(白:造花でないと願いつつ。)

●水の辺に子の世界あり夏の午後=秋波
△葱、ま=2点
(葱:海でも川でもプールでも、子供と水はすぐ近くに存在します。これが大人になってくるとだんだんと遠ざかるんだなあー(≧∀≦) ま:本当にそうですね!夏の子供は水が好きで夢中ですね。)

●南風試合終われば肘タッチ=メゴチ
○ラ=2点
(ラ:「肘タッチ」が今年ならではの句。ちょっと切ないです。)

●名画座を出て黄昏の巴里祭=智雪
△秀、ぼ=2点
(秀:黄昏の町に出て、そうだ今日は巴里祭だと思い出されたんですね。 ぼ:舞台装置揃い過ぎの感あるも、好みです。)

●物売りの声の戻りく日の盛り=紅椿
△裕、メ=2点

●行く道は闇か光か梅雨の中=子白
○ラ=2点
(ラ:ちょっと抽象的ですが、今年の句ということで納得できます。)

●リモートのサイダーグラス気になりて=香久夜
△秋、ま=2点
(ま:とてもよくわかります!素敵な物など気になりますもの。 秋:今時(zoom?)のあるある。画面の向こうの相手も色々演出してるんでしょうか。)

●園庭にうごめく帽子梅雨晴間=雪絵
△香=1点
(香:上から見た俯瞰図のよう。)

●閑古鳥あの木この木と町内に=水音
△始=1点

●杉戸絵の涙のやうに涸れて海霧=雪絵
△清=1点
(清:古くなった杉戸そこに描かれた絵が涸れている海辺の家。)

●その事は聞かない事に明易し=やんま
△十=1点
(十:軽いタッチの俳諧味あふれた一句。)

●燕の子ステイホームも終わりだね=メゴチ
△紅=1点
(紅:語りかけるような言い回しに癒されます。)

●どくだみの花咲く前に引かれけり=紅椿
△ス=1点

●仏壇に山笠中止とくとくと=五六二三斎
△資=1点
(資:遺影の法被姿に報告。とくとくとからその無念さが伝わってくる。今年の夏はつまらない!)

●もう一度魚が跳ねた夏至夕べ=秀子
△子 =1点 

●笑えども泣き顔になる父の日か=始祖鳥
△葱=1点
(葱:俳句としてはまだ形が整っていないかもしれませんが、内容でいただきました。)


A部門入選作〈back number〉

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