*A部門入選作発表*
当季雑詠=全90投句(入選63句)
【特選】
一席
●新聞の堅き手ざはり今朝の冬=雪絵
◎大、茶、五、資○秀、ラ△葱、十、水、ま=20点
(茶:冷たさではなく堅さで季節を感じているという細やかな感性がよいと思います。 秀:冬の朝の新聞の手触りが「堅い」というのは、その方の発見。 資:立冬の朝朝刊を取る時の感触。 ラ:確かな生活実感。葱:上手い! 十:俳句では「絹の手触り」などと詠まれることが多いが、この場合「堅き」には実感がある。 水:実感ですね。 ま:季節の移ろいを繊細に感じ取っておられますね。)
二席
●裸木に内緒話のひつかかる=水音
◎智、雪○清、ス、香、朱△入=15点
(智:内緒話が秀逸。 雪:裸木に内緒話がどう絡むのかと思ったら、「ひっかかる」で納得しました! 清一:枯木に内緒話が引っかかるところが面白い。 朱:ひっかかる、がいいんだなと思いました。 香:ひっかかって、なかなか解けないですよ。)
三席
●オカリナの穴の凸凹冬銀河=ラスカル
◎や、清○十、ぼ、ま△秀=13点
(や:一つ覚えの童べ歌あり。 清一:オカリナの穴と銀河、小さなものと大きなものの組み合わせが良い。十:オカリナの音色と銀河が響き合う。 ぼ:取合わせが何ともいいですねえ。詩情たっぷり。 ま:凸凹と冬の星々とが響きあっています。オカリナの透き通った音が空中に広がっていくようです。 秀:オカリナの穴に凸ってあるかなあというの偽らざる疑問。)
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三席
●恐竜を倉庫に入れて冬銀河=水音
◎喋、秋○ラ、ス△白、五、し=13点
(秋:展示か何かに使われた恐竜の模型。片付け終えると夜になっていたという景でしょうか。取合せが面白い。 ラ:冬銀河という季語がぴったり。 白:恐竜を飼って、おやすみを言って、見上げる空に銀河。取り合わせが凄い。 し: 恐竜を倉庫に入れてという状況が可笑しいですね。)
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三席
●立冬の氷の爆ぜるウイスキー=裕
◎入、朱○秀、雪△十、水、ぼ=13点
(朱:まるでCMのワンカットのような情景でお酒好きの触覚をくすぐる一句。 秀:たまに氷が爆ぜることがあってびっくりするんだけど、それは、この季語に付かず離れずで、響いていると思います。 十:まさにオン・ザ・ロック。 水:癒される音。 ぼ:おお、酒豪あり!)
【入選】
●紫に滲む帳や冬の宿=しゃが
◎十、紅○香、喋、ま=12点
(十:「紫の帳」は、ある意味で「黒」より漆黒である。大胆な把握。 紅:静かで、落ち着いていて、とても好きです。 香:紫に滲む、帳、表現が素晴らしいです。 ま:とても美しい景です。いつ旅行にゆけるのでしょうね。)
●魚屋のマスクに鱗冬に入る=秋波
◎砂○や、朱△大、紅、修、ま=11点
(や:小さな発見時に新鮮。 朱:実景の切取りなのかな…冬ざれた冷たい商店街の生活の切取り方が良いなと思いました。 紅:中七がリアルです。 修:鱗の光が寒さを呼ぶ。 ま:こういう姿を近くで見ることが少ないこの頃、力強い姿ですね。)
●山眠る孤村の星の無尽蔵=しゃが
◎白○紅△砂、や、遊、入、資=10点
(白:凄い星空。「無尽蔵」が効いています。 紅:こんな景を見てみたいです。 や:時に恐れを感じる瞬き。 遊:これに近い田舎に住んでます^^ 資:ぽつんと過疎の村、明かりもなく星が良く見える冬の夜。)
●銀杏落葉路肩に風を集めけり=十志夫
○砂、メ、紅△遊、智、裕=9点
(紅:「風を集める」、素敵な表現です。 遊:風を集めたってところがいいな。 智:中七下五が巧み。 裕:風が落葉を集めるのか、落葉が風を集めるのか、よく見る光景です。)
●小春日や足湯に混じる女子男子=やんま
○葱、五△香、資、雪=7点
(葱:和やかな観光地の風景ですね、いい感じ。 香:足湯だったら恥ずかしくないか! 資:夏の豪雨で不通となり列車走らぬ由布院駅の風景でしょうか。気持ちはよく分かる。)
●小春日や猫の正座を拝見す=修一
◎子○秀△葱、朱=7点
(葱:確かにかしこまってるときありますな!悟ってるな! 秀:茶道の拝見のように、猫を矯めつ眇めつ眺めている様子がおかしくて思わず特選にしましたが、おもしすぎるのかも。 朱:拝見す、の下五の成功。)
●こりこりと首を回せば冬茜=裕
◎修○や△喋、資=7点
(身体感覚をさりげなく取合せていい感じ。か行の音が心地よい。 や:長く生き来て錆びゆく身体。 資:一日の疲れを癒すひと時。きれいな夕焼けが嬉しい。)
●冬の日の静かに積もる甕の底=秀子
◎水○砂△ラ、秋=7点
(水:「静かに積もる」がいいです。 ラ:「静かに」という一語が利いている。 秋:冬日の差し込む様子を積もると表現したところが面白い。)
●水底を飾る光芒色落葉=やんま
◎メ○葱、遊=7点
(葱:冬の日が透明な池の底まで届いて、新鮮な落葉が光を反射して、美しい情景です。 遊:巧みで美しい!)
●広告の少ない電車神無月=五六二三斎
○子、十、水=6点
(十:コロナの影響もあるのだろう。車内吊は日本経済の縮図。 水:電車の中がスカスカしてる。なぜかなぁ、、、神無月に着地する妙。)
●山茶花や母とふたりの七回忌=紅椿
○大、秋△メ、香=6点
((秋:親戚も高齢化して声をかけづらい。最近はありがちな光景かもしれませんが、それでも二人だけの法要は少し切ない。優しさと寂しさが山茶花ともよく響きあっていると思います。 香:お父さんの七回忌ですか?今年は、なかなか集まれなくて、リモートでお経を詠んだりしました。)
●田ン神さあに深ぶかと礼冬の婆=スライトリ・マッド
◎ま△秀、遊、秋=6点
(ま:おばあの姿が圧倒的に印象深く飛び込んできました。 秀:日本昔話のようでユニーク。でもね、「冬の婆」という季語の扱い方は、私は気になってしまいます。 遊:面白くて懐かしい。 秋:地の言葉が効果的で景がよく見えます。)
●バス停の手作りベンチ冬ぬくし=紅椿
◎ラ○資△ス=6点
(ラ:そのベンチに座ってみたい! 資:本数の少ないバス停での幸せな気持ち。)
●冬桜すきまに高く空のあり=入鈴
○智、清△修、し=6点
(智:楚々と間遠に咲く冬桜から溢れる空はあくまでも高く‥。 清一:花弁の少ない冬桜、その隙間から青い空が高く。 修:すきまの発見がいい。 し:冬桜は花が小さいから隙間からはたくさん空が見えますね。)
●逝く秋の能登の棚田の曲線美=資料官
○裕、し△や、十=6点
(裕:敢て「美」と言わなくても、十分美しさが浮かぶと思います。 し:能登の棚田の曲線美しいですよね。逝く秋もちょっと寂しげで、よく合っていると思います。 や:旅の局地に暫し動ぜず。 十:景が鮮明です。)
●凍蝶のやすらふ黙や尼の寺=ぼくる
○清、し△メ=5点
(清一:凍蝶と尼寺の組み合わせが面白い。 し:静かな尼寺に凍蝶の姿が美しい。)
●思い切りマスク外せば鳥の声=雪絵
◎葱○入=5点
(葱:開放感にあふれた句。日本人は自分で情報を集めて自分で判断することができない民族に成り下がったとつくづく思う。なんでも国に頼って「国がはっきりと道を指示してくれと懇願するが、今の政府が国民のことを考えず、自分たちの利権ばかり追いかけているのは明々白々です。そのときの状況を判断しマスクを外すのは自分です。)
●酉の市かっこめかっこめ時の運=メゴチ
◎香△茶、水=5点
(香:景気よい呼び込みのようで楽しくなります。 茶:タイムセールということでしょうか。「籠目」が懐かしく。 水:こんなご時世威勢よく!)
●昼酒の大義名分小六月=智雪
△葱、砂、十、五、秋=5点
(葱:飲むにはそれなりの大義がないとあきませんね^^; じゃないと体が危ない! 本来酒は「神の水」、ハレの飲み物です。祭りのときにだけ飲むのがよろしい。 十:そんな数え歌があったやうな(笑)。 秋:こんな天気のいい日は…酒飲みには何でも大義名分になる。家族には迷惑な話ですが。滑稽味を感じていただきました。)
●ホットワイン「Moon River」を聴きながら=ラスカル
○ぼ△子、修、ま=5点
(ぼ:合う合う。今度真似しようっと。 修:恍惚のひととき! ま:私も似たのを詠みましたが、Moon Riverがぴったりきます!)
●水鉢の底に生あり初氷=大
○水△葱、秀、ス=5点
(水:無いところに確かに生命があることを確信する寒い朝。 葱:「水鉢」はここでは墓石に作られたくぼみではなく、「すいれん鉢」のような少し大型の鉢を想像します。めだかか何かが氷の下に泳いでいるのでしょう。「こんなところにも生き物の生活がある、という感慨です。「生あり」を具体的なものに置き換えると分かりやすくなるとおもいました。「水鉢の底のメダカや初氷」 秀:切り取り方がとてもいいと思いました。個人的に「生あり」という言い方がやや気になってしまうんですけどね。)
●コンソメを足して調ふ冬夕焼=茶輪子
◎遊△朱=4点
(遊:さりげなくてすごく旨いとおもった! 朱:素直に冬の家庭のつつましさが詠まれているなと思いました。)
●笹鳴や抽斗引けば母の帯=秀子
◎し△清=4点
(し:笹鳴と思い出のある母の帯がとても優しく響き合っていると思います。 清一:亡母が笹鳴のようにして知らせて呉れたのだろう。)
●晒さるる妖怪絵巻神の留守=雪絵
◎ぼ△し=4点
(ぼ:そうでした、そうでした。季語の斡旋がいいですね。 し: 晒さるるがちょっと大袈裟で面白い句になっています。)
●霜しんと大根葉にも夢模様=喋九厘
○子△葱、茶=4点
(葱:「夢模様」はちょっと言いすぎの感がありますが、情景はよく見えます。 茶:どんな模様か想像させる点と、寒さも明日の為の我慢とした点にいただました。)
●吊革に身を捩りたる十二月=朱河
○大、秀=4点
(秀:例えば退職なさった方が、思い出しているような。12月は、人の混み具合が半端ではなかったんだけど、もしかしたら、その「押し競まんじゅう」的賑わいが、ごこかで、サラリーマンのやる気に火をつけていたのかもしれない。と言ったら、元サラリーマンの皆様に怒られるでしょうか。)
●母と子の揃ひの帽子落葉踏む=やんま
△ラ、メ、紅、資=4点
(ラ:ほのぼの〜♪ 紅:心がなごむお句です。 資:平日は保育園、待ちに待った週末の親子でお出かけ。)
●冬旱兄と年忌の話しなど=智雪
○修、資=4点
(修:冬旱だからこそ出てくる話、納得。 資:普段疎遠な兄弟が久し振りに年忌の話を始めた。冬旱が微妙に効いている。)
●舞ひ落つる訳詩のことば枯葉かな=茶輪子
◎ス△=4点
●山の端に凛と遠富士冬うらら=資料官
○メ△子、し=4点
(し:美しい景色がはっきりと見えます。)
●狐火にをんな指環を失くしけり=朱河
○遊△ぼ=3点
(遊:絶対上位だと思うw ぼ:幻想的世界に誘い込まれる。)
●七五三短気な父のカメラマン=まさこ
◎裕=3点
(裕:晴着にスニーカーの走り回る子にイライラするお父さんの光景が浮かびます。)
●支払は電子音にて小春風=水音
○智△十=3点
(智:今時の景色。 十:いまどきの句材。)
●つはぶきの花に語りし誕生日=修一
△子、ス、喋=3点
●定年の迫る勤労感謝の日=五六二三斎
○雪△紅=3点
(紅:特別な勤労感謝の日でしょうね、お疲れ様でした。)
●冬麗の枯山水に石の船=秋波
△ぼ、し、雪=3点
(ぼ:しばし幽玄の世界に遊ぶ。 し:とても俳句らしい美しい句だと思います。)
●初めての猫やはらかし冬日向=修一
○秋△清=3点
(秋:生まれて間もない子猫を抱いた感触を素直に詠んだ(と私は読みました)。猫の柔らかさ、温もりが素直に伝わります。ただ子供がおっかなびっくり初めて猫を抱いた図とも読めるかも…。上五が少し分かりづらいかも。 清一:初めての飼い猫には柔らかく感じるものだ。)
●バス停に老婆復活冬の朝=五六二三斎
○茶△入=3点
(茶:いつもの場所にいつもの人が。安心しますね。)
●ピラカンサ渡り鳥待つ祖母の庭=香久夜
○裕△智、=3点
(智:美味しそうに色づくピラカンサの実、優しい祖母の居る庭。 裕:丹精を尽くした庭で渡り鳥をまつおばあさんが浮かびます。 し:私の庭には渡り鳥の落とし物から育ったピラカンサがあります。笑)
●ラーメンの真中に小さき葱の山=ラスカル
○修△雪=3点
(修:狩行さんのパセリみたい。ラーメンの野に森。)
●オセローのごとき客席十二月=十志夫
○五=2点
●粕汁や四半世紀のNostalgi=大
○喋=2点
●シャッター音響く境内木の葉舞ふ=メゴチ
△や、修=2点
(や: 鈍き色多々俳人好みか。 修:静かな情景に音が加わり拡がる空間。)
●石蕗の花ばあばの足にあし絡め=香久夜
○茶=2点
(茶:縁側か掘り炬燵か、いずれにせよ、ささやかな親しみが石蕗と取り合されていると思います。)
●初孫をただ抱くだけよ暮早し=遊歩
○入=2点
●冬の梅利休の庭の目覚めけり=葱男
○白=2点
(白:静かな名庭に梅と共に朝が来た。)
●冬満月白壁に落つ己が影=白馬
○十=2点
(十:月、そして白と黒の織りなす冷え冷えとした叙景。)
●無人駅降りれば故郷忘れ花=白馬
△智、清=2点
(智:無人駅と忘れ花が呼応し合っている。 清一:故郷を忘れたような忘れ花、帰り花とした方が良かったのかも。)
●青空や踏んでみる枯葉の音=まさこ
△葱=1点
(葱:どうせ破調なら「青空や踏んでみる枯葉」の方が切ないような気がします。)
●嵐山マスクばかりが蟻の様=子白
△葱=1点
(葱:最後は「様=さま」と読みたい。)
●嵐山マスクばかりが蟻の様=子白
△葱=1点
(葱:最後は「様=さま」と読みたい。)
●枯園や安全地帯の影淡き=入鈴
△茶=1点
(茶:取り合せ的には微妙な気もしましたが、気候がよいとあまり気にならない安全地帯への視点をいただきました。)
●欠礼来角の更地の冬ざるる=智雪
△朱=1点
(朱:欠礼来ると淋しい更地の取合せが上手い一句。)
●小春日や法然院の鐘の声=子白
△裕=1点
(裕:穏やかな秋を感じます。)
●サバランのラム酒沁み入るクリスマス=しゃが
△香=1点
(香:ただ単にサバランが好きです。)
●残照やけやき紅葉のコンチェルト=入鈴
△ラ=1点
(ラ:「コンチェルト」という表現がオシャレ。)
●鐘楼に大綿宿る知恩院=清一
△裕=1点
(裕:冬を迎えた知恩院が浮かびます。)
●冬暁やもうすぐ逢へる母の星=葱男
△大=1点
●庭いぢる妻の背中の白婆=遊歩
△大=1点
●無限かな夢果てしなく木枯らしも=喋九厘
(資:鬼滅の刃の無限列車のことでしょうか。SLが走る夢が果てしなく続く。)
A部門入選作〈back number〉
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