*A部門入選作発表*


当季雑詠=全86投句(入選62句)

【特選】

一席
●ふらここや未来に触るる足の先=十志夫


◎ス、智、秀、し、資、メ○ま△紅、修=22点
(智:一回転する程大きく漕いだブランコの足は天にも届きそうで、確かにその先は未来! 秀:「未来に触るる」がいいですね。 資:未来に触るるが良いですね。子供は大きく漕ぎたがる。 し:この感覚分かるような気がします。発想力が素晴しい! ま:確かに未来に触っていますね!この感性に魅かれました。 修:どこまでも高く。足の先が発見。 紅:中七がいいですね。)


二席
●つばめ来る明日から通ふ新校舎=資料官


◎清、雪○や、始、修△葱、砂、紅=15点
(清一:新年度に新校舎へ入る新たな気持ちを詠んだ佳句。 雪:コロナ禍で、何だか明るいほっとするような句でした。季語もいい。 や:新生の念強く抱ける。 葱:新しいスタートにふさわしい光景。 修:つばめと新校舎がとても新鮮。 紅:希望を感じます。)


三席
●死ぬ人の手の柔らかし花曇=秀子


◎葱、喋○十、遊、香、し=14点
(葱:「俳句的」なるもののまったりとした「穏便」に、果敢に挑戦状をたたきつけている。 十:まだ残る温もり。死後の変化を思うと切ない。 し:とても悲しい場の句ですが、看取る人の優しさが伝わります。 遊:悲しみと深い感謝を感じます。)


三席
●マネキンの唇真つ赤万愚節=ラスカル


◎十○清、葱、雪、朱、秋△秀=14点
(十:けばけばしい紅と季語が見事に融和した諧謔の一句。 清一:エプリルフールならではのド派手なマネキンの姿。 朱:唇だけを見てたら話出しそうな気になる、そういう意味で万愚説とは面白い取合せ。 秋:今のくすんだご時世には真っ赤な唇は眩しく違和感すら感じる。第一、人間は皆マスクだし。きれいな服を着たマネキンを見ても、うきうき感をそそられるというよりどこか冷めて、ジョーダンでしょと言いたくなる。そんな気分を万愚節という季語との取合せでうまく表現出来ていると思いました。 葱:マネキンは人の世の愚かしさや馬鹿馬鹿しさを体現しているかのよう。)


【入選】

●ひらがなのはるひろげたる駅ピアノ=朱河
◎始○ス、裕△ま、葱、秀=10点
(裕:駅においてあるピアノが「ひらがなのはるをひろげる」というのが上手い。 ま:駅ピアノ、テレビでしか聞いたことありませんが、これはきっとすこしたどたどしく、やさしいはるだったのでしょうね。 葱:ピアノが弾ける人が羨ましいなあ。「は」の連弾が美しい。 秀:「ひらがなのはる」がいいですね。上中がひらがななのも春らしい。)

●黄信号のしごと短し目借時=十志夫
◎紅○智、茶△朱、秋=9点
(紅:言われてみれば、確かにそうと感心しました。発見の手柄ですね! 智:なんとなくそんな気が‥ 茶:発見ですね。「しごと」とした点が妙だと思います。 秋:たしかに黄色の点灯時間は短い。目の付け所に脱帽です。思わず笑ってしまいました。 朱:黄信号をこんな風に詠むとはユニークな視点、季語も良いと思います。)

●土匂ふ地球の上で背伸びして=砂太
◎朱○雪、香、喋=9点
(朱:中七下五が春らしくて良い、季語もしっかり句を支えていると思います。)

●碑の文字のうすれて石に帰す朧=葱男
◎や△清、裕、智、秋、茶、メ=9点
(や:万物なべて風化の様なす。 智:形あるものはやがて消えて行くのですね。 清一:歳月を感じさせ出自が気になる碑文。 茶:古い句碑などは本当に読めず、ただあるだけに。存在性の季語との取り合せもよいと思いました。)

●病棟のカーテンひとつづつの朧=十志夫
◎ま○遊、久△葱、入=9点
(ま:中七にぐっと掴まれました。患者さん一人ひとりがそれぞれ抱えているものの深さがよく表現されています。 遊:何度か経験しました。 葱:区切られた空間にはそれぞれ別個の「憂鬱」が澱んでいる。)

●恋に似る兄と妹や土筆ん坊=やんま
○葱、ス、秀△遊、喋=8点
(葱:「土筆ん坊」が絶妙な演出家ですね。 秀:兄と妹が恋に似ているという発想、あるとは思うんですが。 遊:こういうときがありましたw)

●をさなごのたより机のつくしんぼ=茶輪子
○裕、入△白、久、香、メ=8点
(裕:帰ってきたら書斎の机に子供が摘んできた土筆がある、ほのぼのとする光景。 白:孫の摘んだつくしんぼを目の前にして。 香:嬉しいお土産ですね。)

●うららかや置けばプリンのゆらゆらと=ラスカル
○し△十、葱、ス、智=6点
(し:うららかとゆらゆら揺れるプリン、なんとも幸せな取り合せ〜。 十:まさにうららかな景。 葱:あの「ゆらゆら」が食欲と心を震わすんですよね、(笑) 智:うららかとプリンは良く合っている。)

●哀しみを背負ひて枝垂桜かな=雪絵
◎白、香=6点
(香:福島の枝垂桜でしょうか? 白:枝垂桜の一花一花が背負うものあり。)

●声なきこゑ演奏だけの卒業歌=清一
○砂、秋△朱、資=6点
(秋:コロナ下では卒業式も入学式も。でも皆心の中では歌っている。甲子園の応援も生演奏ではなく録音を流すだけでした。いつまで我慢すればいいのでしょう。 資:皆心の中で歌っている。 朱:今の時期だからこその句。)

●田楽や野暮な話はこれつきり=ぼくる
○ま、朱△雪、茶=6点
(朱:田楽を肴に飲むんだろうな、と思わせる一句。 ま:田楽がとても美味しかったのですね!よく伝わってきます。 茶:さあもう無駄口はなし。だまって頬張るぞ!粋ですね。)

●山の呼ぶ声かと春の鳶の笛=砂太
◎入△十、葱、朱=6点
(十:「山の呼ぶ声」に実感が籠っている。 葱:のどかな鳶の声が聞こえてくるようです。 朱:クラシカルな一句だけれど景色の大きさとアニミズムな深みを感じます。)

●朧夜やはんなり甘き京言葉=ぼくる
○智△清、や、資=5点
(智:朧夜と京言葉は合う気がする。中はそんなに甘くないかも‥ 清一:実際の京言葉はきつい面もあるが、外部の人から見ればそう感じるのだろう。 資:甘き京言葉が良い。 や:心の芯を覆う言の葉。)

●思ひ個々改札を出て春光へ=秋波
○メ△遊、始、し=5点
(遊:個々が思いおもいだったらもっとよかったなって思いました^^ し:いろんな人生を背負って改札を出る人々。春光が前向きでいいですね。) 

●摘む人の逝きて久しき山椒の芽=雪絵
◎秋△十、ま=5点
(秋:似たような話はそこかしこで聞くことが増えました。それが山椒というところにより身近さやささやかさが感じられて作者の寂しさが伝わります。 十:亡き人とその中に漂う香りの記憶。 ま:私も同じように父を想います。)

●母のゐて白磁に開く桜漬=まさこ
◎裕○資=5点
(裕:お母さんと桜漬が白磁の椀の中で開くのを見ている桜の季節を今年も迎えた喜びが伝わってくる。 資:白磁にピンクとは良い組み合わせ。)

●母の背を追ひかけてゐる春の夢=紅椿
○子、ラ△メ=5点
(ラ:切ないです。)

●マイセンの器に盛られ春苺=智雪
◎子△ラ、資=5点
(ラ:とても美味しそうに見えます。 資:さぞかし立派な苺でしょう)

●幾年を断捨離すれば春うらら=子白
○メ△遊、ス=4点
(遊:感謝離ですね^^)

●此処彼処異形なるものさくらどき=スライトリ・マッド
○十△や、葱=4点
(十:「異形なるもの」は読み手の数だけある。コロナ禍の街の景色のすべて。 や:桜に狂う異邦人あり。 葱:漢字六文字の怪しさが桜と符合してます。)

●春光の海リュウグウノツカイ来る=智雪
△葱、ス、雪、し=4点
(し:なんだか縁起が良さそう。 葱:「リュウグウノツカイ」という固有名詞の力は大きいですね。)

●彼岸会やコロナ知らずに父と母=資料官
○砂、紅=4点
(紅:私も両親がコロナを知らなくて良かったと思っています。)

●豆柴が尾を振る土手の花見かな=修一
◎ラ△葱=4点
(ラ:可愛い〜! 心が和みます。 葱:ほのぼの漫画の一コマ。)

●水温む子らは石ころ投げたがる=雪絵
○紅△入、秋=4点
(秋:水辺でのあるあるの風景。余談ですが、私も何度も挑戦しましたが、水切りはついに一度も成功出来ませんでした。)

●夜も更けて土筆も笑ふハカマ取り=喋九厘
◎久△修=4点
(修:摘んだ後が大変。でも楽しそう。)

●無花果の木の芽柔らに空を指す=白馬
○始△ラ=3点
(ラ:「柔らに」の一語がよく利いています。)

●風光る海岸線をオープンカー=智雪
○ラ△や=3点
(ラ:カッコいい〜! や:気分爽快けふは何処まで。)

●さみしさはひねもす四月の膝の上=朱河
△十、ま、葱=3点
(十:誰しもが感じている今の思い。 ま:春なのに、いえ、春だから感じるさみしさでしょうか。膝の上がよいですね。 葱:「膝の上」がいい。)

●敷きしめし花踏みゆけり万歩計=やんま
△始、久、香=3点

●畑打の小さき翁の背中かな=裕
◎遊=3点
(遊:こういう人に私はなりたひ)

●花いかだ旅籠の窓にそろふ顔=茶輪子
○喋△雪=3点

●花菜漬食むほどに黄を想ふ=入鈴
◎茶=3点
(「黄」は色だけでなく、黄にまつわる様々なものを。味ではない色に転化した所が良いと思いました。)

●花の下幼歩かせ父と母=砂太
○修△茶=3点
(修:まさに黄金風景。 茶:自分の足で体、五感で味わう、満喫することは大事ですね。こういった若夫婦が増えるといいな。)

●花まるはもらへないまましやぼん玉=まさこ
△白、秀、喋=3点
(白:それはそれで。しゃぼん玉よ飛べ! 秀:作者は、そんな自分の人生を肯定しているんですね。)

●春場所や妖精凛と溜り席=メゴチ
○白△香=3点
(白:あゝ、あの人だな。妖精! 香:そう、気品あるお嬢様が、正座を崩さず、毎日、、。見てましたよ。お相撲さんも気になってたのでは?)

●牧場で卵を拾ふ春日傘=秋波
◎砂=3点

●メガネなき目に菜の花の黄色かな=遊歩
○茶△入=3点
(茶:老眼鏡への視点をあげて、遠景を見たのでしょう。上五が秀逸だと思います。)

●柳絮飛ぶ別れの時は微笑んで=秀子
○資△修=2点 (修:柳絮のようにかっこよくね。)

●レジ袋に溢れる野菜春日傘=裕
◎修=3点
(修:いい天気のなかの幸せ感いっぱいの情景です。)

●アンフォラに寝かせしワイン春の峰=しゃが
○秀=2点
(秀:アンフォラって、ワインを寝かせるものだったんですね。)

●薄紅や桜の一樹二樹と増え=入鈴
○や=2点
(や:刻一刻とその時が来る。)

●落椿鮮やかな死を過去へ向け=清一
△白、喋=2点
(白:いろいろな過去があったでしょうね。)

●おぼろ夜や弁財天の琵琶の音=紅椿
△裕、し=2点
(し:弁財天の琵琶の音、どんな音がするんでしょうね。)

●花を待つ運動用具箱の鍵=葱男
△十、砂=2点
(十:暫く使っていないのでしょうね。最後を「鍵」で収めたところがいい。)
<BR> ●フリル剥ぐ芯は固めの春キャベツ=秋波
○久=2点

●蛇穴を出づ新聞に表紙無く=まさこ
○白=2点
(白:下5に合点。)

●金縷梅やダダダダダダダッ箔を打つ=スライトリ・マッド
○入=2点

●あいらぶゆ桜と人と遠くまで=喋九厘
△砂=1点

●鶯のこゑ木霊する奥比叡=清一
△裕=1点

●朧夜に神曲詠ふ詩劇かな=しゃが
△清=1点
(清一:ダンテの神曲詠うなら天国編であって欲しい。)

●恋猫の硝子を砕くやうな声=ラスカル
○清=1点
(清一:硝子を砕くとは大袈裟な表現だが面白くもある。)

●小言いう妻の手料理花菜風=裕
△久=1点

●来し方も行く末もまた霞みけり=やんま
△紅=1点
(紅:共感しています。)

●地鳴りのやうな歌の朗詠蠅生る=修一
△ラ=1点
(ラ:「地鳴りのやうな」という比喩がユニーク。)



●太鼓響き春の宴の踊りだす=遊歩
△子=1点

●魂も抜け殻になる春の宵=始祖鳥
△=1点
(清一:仕事疲れで飲み過ぎた春の宵の感じかな。)

●花曇り鈍く光れる庫裡の屋根=修一
△智=1点
(智:中七下五を季語がしっかり包んでいる。)

●逝く春やジュゴン絶滅基地の海=ぼくる
△始=1点


A部門入選作〈back number〉

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