*A部門入選作発表*


当季雑詠=全90投句(入選句)

【特選】

一席
●ごつつんこしては笑ふ子日脚伸ぶ=雪絵


◎葱、喋、紅○入、香、朱△ま、ラ、裕、修、秋、し=21点
(葱:無条件にいいよなあ、生まれたての命の躍動は! 紅:子供って、何度も同じ事をして、喜びますよね。景が浮かびます。季語もいいですね。 朱:日常の明るい切り取り方が好感が持てます。 入:平和なこのひとときに癒されます。 ま:かわいい!どうしてあんなに楽しげなんでしょうね。日脚伸ぶが効いていますね。 香:なんとも可愛くて季語もピッタリです。 ラ:可愛い〜♪ 修:愛につつまれて、笑顔も笑い声も見えるよう。 秋:何気ないことが遊びになって幼子は本当によく笑います。それを見ているとこちらも幸せな気分に。季語の取合せもよいと思いました。 し:子供達の無邪気な笑い声が聞こえそうです。)


二席
●ひとつづつつららでつららはらひけり=十志夫


◎ラ、秀○ス、砂、葱、水△遊、ま、入、五、朱、し=20点
(ラ:面白〜い! 独創性豊かな句。 遊:楽しい童心に戻れた。 秀:全部漢字とか全部平仮名という句は、えてして『どや顔』的なものを感じるのですが、この句はとても素直に読めました。 水:ひらがな書きが成功しているのでは?氷柱は硬いのに、子どもの柔らかさが見える。 葱:ひらがなだけの句は一読意味が見えてこない句が多いですが、この句はお見事! ま:やってみたいです!きっと、澄んだ音がするのでしょうね。これだけつが続くとひらがなが楽しいですね。 入:つとらの連続まさしくつららですね。 かなだけの句。つの字が五字。らの字も五字。 朱:「つ」と「ら」の連続のリズムが一つづつ折られていく氷柱をイメージさせて面白い試み。 し:内容を掴むまでに何回か音読しました。笑!つとらがいっぱいで面白い。)


三席
●おはじきに微かな網目春隣=ラスカル


◎久、水○始、喋、ぼ、秀△遊、香、メ、朱=18点
(水:確かに微かな網目がありますね。春近い光で拡大されて床に影を落したり。 ぼ:こういう小さな所に、春の近い事を感じとる繊細な感性。 秀:写生が効いています。季語もあっています。 遊:好きな句です。かわいらしくて上品で。 朱:透明感と微かな光の取合せが季語を生かしていると思います。)


三席
●夕暮ははちみつ色へ春隣=水音


◎ス、や、五○雪、修、メ△葱、喋、秋=18点
(や:そして濃厚な春の夢が待っている。 五:はちみつ色の夕暮れ。甘美なる春はすぐそこに。 雪:はちみつ色!雰囲気ありますね。 修:まさに希望の色。 葱:「はちみつ」と「春隣」の相性がとてもいいですね。 (秋:何でもない景ですが、「はちみつ色」が発見。そこから連想される甘さが春隣という季語ともよくマッチして素敵な句になりました。)  


【入選】

●なだらかな斜面は海へ水仙花=紅椿
◎清○雪、資、五△や、入、葱、ぼ、メ、久=15点
(清一:越前岬の水仙ランドの風景を思い出させて呉れる写生句の佳句。 雪:納得の光景ですね。 や:我ここに漂う。 資:水仙の群生地は海岸の傾斜地が多い。目に浮かぶ風景。 五:海辺に咲く水仙の群れを通り抜けて岬を目指す。 入:景が浮かびます。 葱:切り立った断崖もいいけど、なだらかな斜面も穏やかでいいですね。 ぼ:いい景色ですね。素直な写生句。)

●眠る子のぐうやはらかし炬燵端=秋波
○茶、入、葱、智、水△十、砂、ラ、喋、紅=15点
(茶: 拳ではなく「ぐう」と表現し、取り立てた点に功があります。「炬燵端」もいいですね。 十:中7の「ぐうやはらかし」という把握が秀逸。「炬燵端」はやや生硬な感じ。 入:ぐうがきいてます。 水:ぷっくりとしたぐう 見ているだけで幸せ。 葱:赤ん坊と動物の句はある意味ルール違反ですよね、どう切り取ってもカワイイし、CMの常道でもありますね。 ラ:「ぐう」と表現すると、確かに柔らかい感じ。 智:ぐうやはらかしが発見。 紅:下五の「端」は必要でしょうか? 普通に「やはらかき炬燵かな」なら、◎でした。)

●小夜更けて雪折れを聞く麹室=秋波
◎遊、ま、茶、始△子、裕=14点
(ま:遊:こういう句はきっと実体験でないとこういうふうには詠めないだろうと思った。 茶:三好達治の「雪」を想起させるような風情があります。「麹室」への空間的絞りがいいですね。)

●深々と闇に抱かるる冬林檎=秀子
◎裕○十、ラ、ぼ△智、子、香、久=13点
(裕:敢て「冬林檎」とされたのは? 十: 「闇に抱かれる」の表現は時々見かけるが、「深々と」で句に広がりが生まれた。 ぼ:この闇は生命を育む母体のよう。 ラ:「冬林檎」は、作者自身の象徴かも。 智:闇に林檎の赤は良く似合う。)

●クレーターの影まで見える寒夜かな=裕
◎修○し△十、雪、五、ぼ、紅=10点
(修:空気が澄み切っている。 し:クレーターの影というのがすごい。兎しか見えてなかった。冷えきった澄んだ空にくっくりと見える月の様子がよく分かります。 十:望遠鏡でもない限り無理とは思いますが、大仰な言い方が面白い。そう思えるくらい澄んた寒夜の月だったのでしょう。 紅:寒の月をうまく表現していると思います。 五:月のクレーターのことだろう。寒の満月だろう。 ぼ:ピリッと引き締まった句。)

●残照の最期の欠片凍蝶来=智雪
◎砂、ぼ○秀△十、香=10点
(ぼ:詩的で、見立てが見事です。 秀:『来』が消せたらもっと好き。 十:触覚、嗅覚、聴覚に訴えかけ、生きている?と静けさの対比、とても好きです。 一読やや大仰過ぎるとも思えるが、きらきらした絵画的なところに魅かれる。)

●霜柱踏んで地球を軽くする=ラスカル
◎メ○朱、紅△喋、水=9点
(紅:子供って、何度も同じ事をして、喜びますよね。景が浮かびます。季語もいいですね。 朱:小さな霜柱から地球への飛躍が面白い。なぜ軽くなるのかと言う理屈を超えている所が良い。 水:面白い発想かも。)

●寒鴉ラヂヲは雨を伝へをり=メゴチ
◎智○し△茶、入、葱=8点
(智:寒鴉との中七下五の取り合わせ、雨を伝えるラジヲの旧かなも似つかわしい。 し:寒鴉が寒々として、これから雨になるという雰囲気も、なんだかカッコいい句ですね。 茶:無機質な感じを強調するのにひらがなは全てカタカナにした方が面白いと思いました。 入:寒カラスとラヂヲがシュールな取合せですね。 葱:なんかそんな歌がありそうですね、清志郎が歌っていそう。)

●検診の前夜のお粥日脚伸ぶ=香久夜
◎資○や△清、入、ラ=8点
(資:不安な夜でしょうが何か明るさを感じる。 や:今有る命を確かめる様に啜る。 清一:結果が気になる検診、季節は春に近づく。 入:日脚伸ぶってお腹が空きませんか? ラ:検査結果が良好でありますように!)

●枝えだに雪の雫の咲きにけり=水音
◎朱○ま、喋=7点
(朱:映像そのままの透明感、美しい一瞬を感じます。 ま:下五の咲きにけりが佳く表現されていて、儚げで美しい景です。)

●遠火事や夜を走れば夜の聲=朱河
○十、遊、智△清=7点
(十:「秋の聲」が秋の気配という意ならば、「夜の聲」も感覚(イメージ)の世界でしょね。 遊:実景と幻想がまじりあっているよう。 智:中七下五秀逸。 清一:気になる夜の火事、車窓から夜の聲が聞こえる。)

●待春の耳を澄まして砂時計=まさこ
○久△清、五、し、秀=6点
(清一:春が近づく様子を砂時計に託す。 秀:春の足音が聞こえてくるような。 五:砂時計のように春はすぐやって来る。 し:砂時計に耳を澄まし春を待つ静かな時間に惹かれました。)
<BR> ●蒲団被る自宅待機といふ仕事=十志夫
◎入△清、砂、雪=6点
(入:布団という季語が救いになるのかよくわかりません。 清一:コロナ禍での仕事の様子を巧く表現。)

●ほのぼのと餅焼く匂ひ今朝の春=ぼくる
◎子○秋△白=6点
(秋:上五が効いている。お餅の焦げる鄙びた匂いと共に穏やかな正月の雰囲気が伝わります。 白:ゆったりしたお正月の雰囲気がよく出ています。)

●夜明け前着きし列車の窓凍る=メゴチ
○砂、五△入、資=6点
(入:奥羽本線の夜行はまさにそうでした。 五:撮り鉄のどちらかの句か?いずれにせよ朝早くからの撮影お疲れ様。 資:木曽路を走る一番列車を思い浮かべた。)

●オリオンの落ち行く先の大河かな=白馬
○遊、裕△葱=5点
(遊:情景が闇に大きく浮かびます。 裕:ボルガ川を思い出します。 葱:大きな景で気持ちいいです。どこから眺めている景色なのでしょう?)

●浮寝鳥前世の記憶紡ぎ出す=清一
○裕△ス、ぼ=4点
(裕:前世も浮寝鳥? ぼ:確かにそんな印象を受ける。)

●おっぱいをさがす赤子や冬日向=裕
◎雪△修=4点
(雪:たくましい生命力に明るい未来を願うばかりです。 修:よく見えてすこし恥ずかしいけど、おっぱい万歳。)

●寒月や怒るがごときバイク音=紅椿
△十、葱、雪、水=4点
(十:尾崎豊のような少年が浮かんできました。 その怒りをどこか違う方へ向けてほしいな、アートでもいいし、市民運動でもいいし。 水:怒るがごときと聞こえます。)

●笹鳴くやもの狂はしき変声期=やんま
○清△茶、水=4点
(清一:舌打ちに似た地鳴きが変声期の少年と合う様だ。 茶:「狂ほし」ではなく「狂はし」とした点がよいと思いました。 水:変声期の気持ちはわからないけど、鶯も少年も同じ苛立ちか。)

●花立の水凍りをり初御空=まさこ
◎十△入=4点
(十:正月の墓参りでしょうか。景が浮かびます。 入:花立てから淑々と見上げる空への視線が良いです。)

●母のなき子に優しくて冬茜=秀子
○資△始、入=4点
(入:七十近い私でも亡き母の子ですから、冬茜の有難さは身に沁みます。)

●帆かけ舟の白きふくらみ春隣り=雪絵
◎し△や=4点
(し:何かの映像でちょうど帆かけ舟をみました。風をうけた帆の白いふくらみが美しかった。なんとなく春への期待を感じさせる句で素敵です。 や:明るさは希望の光でもある。)

●仄赤き雨滴たづさへ枯木立ち=入鈴
○メ、秋=4点
(秋:冬木の新芽はほの赤く、そこについた雨滴を詠んだ。表現が巧みと思いました。)

●雪すかしかくも無口にさせること=水音
○修△ス、葱=4点
(修:雪すかし〜きれいな言葉ですね。 葱:これも金沢の方言ですか、「雪すかし=雪かき」)

●凍蝶や翅の重さを思ひ知る=清一
○香△入=3点
(入:観察の凄さを想像します。)

●老いの目に凍てる一葉よ鳥になれ=入鈴
○久△秀=3点
(秀:下5への展開が素晴らしい)

●大くさめまだ眠りたい眠れない=五六二三斎
△十、入、資=3点
(十:年齢とともに眠りが浅くなってきますね。実感の句。 入:誰かのヒット曲のように口ずさみたくなります。 資:夜中にちょっと目が覚めるとなかなか寝付かない。実感。)

●クリスタルの地球を渡る宝船=しゃが
○ラ△ス=3点
(ラ:「クリスタル」がとても美しい。)

●心憂き風花の舞ふ身のほとり=朱河
◎秋=3点
(秋:トコトン落込むわけではないが何となく物憂い。そんな心情が風花とよく合っていると思います。)

●孤独なり枯れ葉の径を踏みにじる=始祖鳥
◎白=3点
(白:上5下5の対象が良いですね。)

●何食はぬ顔して膝のかじけ猫=智雪
○清△入=3点
(清一:猫は寒さに弱い、本能的な仕草が浮かぶ。 入:膝の席番争いもあることでしょう。)

●ハリエット・タブマン紙幣春近し=しゃが
△葱、資、秋=3点
(秋:いまだに続く人種差別。早く春になって欲しいものです。 資:アメリカに春が来るか?トランプ後のアメリカの象徴か。 葱:知らなかったことを学べるのも俳句の効用のひとつですね。 ハリエットさんは女性解放運動に尽力した黒人女性で、その肖像が20ドル紙幣に使われたとか、、。 話は変わりますが、この手のニュースはとても民衆に訴える力を持っていますが、「人種差別」を謳っておかしな方向へ民衆を導こうとする存在に気をつけることも肝心です。私たち「学生運動」をまぢかに見た世代はリベラルな考え方に共感しがちです。その裏にある共産主義のからくりに騙されないようにしないととんでもない支配に囚われる危険性もあり、自由を奪われることになりかねません。 イメージ操作にはよほど注意してかからないとあぶない、あぶない。)

●日脚伸ぶ地蔵菩薩の笑みこぼれ=清一
◎香=3点
(香:夕日を浴びて笑ってるように見えるのかも。)

●補陀落は遠くて近く雪しんしん=秀子
○紅△入=3点
(紅:祈りのようなものを感じます。 入:そういうイメージなのか、どこか共感します。)
<BR> ●破れたる軍手洗ひも捨てもせず=修一
△遊、入、葱=3点
(遊:共感。 入:無季でしょうか、手袋として焼芋屋のおいちゃんの軍手を思い出しました。 あるある、ですね、「軍手」が季語なんかな? 面白い!)

●凍蝶や手紙したたむ硝子ぺん=雪絵
○茶=2点
(茶:硝子のペン先のいかにも危うい感じが季語と取り合わされています。)

●悴めるメールに知れる恋の怪我=茶輪子
○白=2点
(白:どんな怪我なのか気になります。)

●白壁の街の音消す寒の雨=裕
○や=2点
(や:今が寒さの極みか。)

●装甲車との大綱引きや成人の日=スライトリ・マッド
○始=2点

●大寒の夜ひとり出て仰ぐ星=白馬
○子=2点

●魂去りて屍あらはとなる寒夜=十志夫
○ス=2点

●春を待つ十年刻む大時計=五六二三斎
○ま=2点
(ま:一緒に、 長年暮らしを見てきたのですね、よい時も悪いときも。春が待たれます!)

●冬の雲破る光の理力(フォース)かな=葱男
○子=2点

●娘より入籍の報春隣=香久夜
△十、久=2点
(十:コロナ禍で式が挙げられなかったのかも。籍だけにしても慶びの報せ。おめでとうございます。)

●をさな子の大き拍手淑気かな=茶輪子
△裕、朱=2点
(朱:無邪気な子供らしい明るさとめでたさ。)

●書き添へしコロナてふ文字賀状来る=資料官
△紅=1点
(紅:私も書き添えました。)

●枯芝に凛と牙むく薔薇の枝=始祖鳥
△メ=1点

●冠雪の伊吹水中木静か=智雪
△ま=1点
(ま:遠近がはっきり大きな景で、おそらく足元の静かな景が美しい。)

●寒日和野鳥観察して和む=資料官
△や=1点
(や:赤い実を求めて寒禽が飛び交う様は見ていて飽きない。)
<BR> ●北風に負けるなチビッ子深呼吸=久郎兎
△始=1点

●子どもらの遊ぶ声聞き日向ぼこ=修一
△子=1点

●待春やがしがし齧るサングァチグァーシ=葱男
△茶=1点
(茶:じれったさの実感がよく伝わります。下五の措辞もいいですね。)

●大木の切り株二つ日脚伸ぶ=五六二三斎
△修=1点
(修:きっとまた芽が出てきます。)

●探梅やこんなところに千社札=紅椿
△智=1点
(智:千社札が面白い。)

●手のひらに初雪載せてすぐ溶けて=ラスカル
△入=1点
(入:のせてとけてのリフレインが新雪にぴったり)

●遠吠えのシルエット冴ゆウルフムーン=スライトリ・マッド
△始=1点

●呑み鉄のふらつく背中雪風巻く=香久夜
△入=1点
(入:おばか〜〜早く駅舎へ入らんと、危ないですよ。)

●弾初や意中の人と「春の海」=ぼくる
△入=1点
(入:雅ですね。)

●不意に鳴る子のオルゴール冴ゆる夜=まさこ
△秀=1点
(秀:ありますよね。季語がぴったり。)

●松とれてトイレに花のない花瓶=遊歩
△智=1点
(智:普段に戻った暮らしを上手く言い得ている。)

●喪正月明けてこの世の水を呑み=朱河
△砂=1点


A部門入選作〈back number〉

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